アージュン・マキジャニ(米国:インド出身)、オリバー・マイヤー(ドイツ)、田窪雅文(日本)によって起草。1968年にNPTを締結する際に米国代表団で中心的な役割を果たしたジョージ・バンを含め、世界各国から約30名のNGO関係者が署名し、1998年5月5日、ジュネーブでのNPT再検討会議準備委員会に際して発表。
NPT第6条の目的を推進し、核兵器廃絶条約の実際の達成に向けた過程の障害をとり除くために核兵器国と非核兵器国の双方がただちにとれる重要な措置がいくつもある。下に署名した私たち個人及びNGOは、1998年NPT再検討会議準備委員会が、締約国に対し、下記の措置を1999年の準備委員会までにとるよう勧告する文書を採択することを求める。このような文書の採択は、核軍縮の過程を推進するだけでなく、核軍縮に向けた進展度の計り方を定める機関としての準備委員会の役割を明確にするものである。
1998年準備委員会は、以下の具体的措置を締約国がとるよう勧告すべきである。
- 締約国である各非核兵器国(以下「非核兵器国」)は、締約国である核兵器国(以下「核兵器国」)が先制不使用政策を採用しても、それは自国の安全保障に反するものではなく、それによって自国の安全保障が脅かされることはないと、一方的宣言を行うべきである。とくに、私たちは、核兵器国と同盟関係にある日本、ドイツその他の非核兵器国がこのような宣言を1999年準備委員会までに行うよう求める。
- 核兵器国は、1999年の準備委員会までに先制不使用政策を一方的に採用すべきである。中国はすでにこれを行っている。とくに、準備委員会は、米国に対し、最大の軍事力と経済力を有する国として、率先して先制不使用政策を一方的に採用するよう求めるべきである。これは、1991年に米国が核の危険を減らすためにとった、戦術核のほとんどを一方的に配備からはずという措置に続くものとなる。ロシアも同様に先制不使用政策を採用すべきである。フランス及び英国は、中国と同等の核兵器を有しているから、中国の例にならい、米国の措置とは独立に、先制不使用政策を一方的に採用すべきである。
- 核兵器国は非核兵器国の領土に配備されているすべての核兵器を、1999年準備委員会までに、それらの領土から撤収すべきである。さらに、核兵器国は、現在核兵器が置かれていない国の領土に核兵器を配備しないものとする。
- 核兵器国は、1999年準備委員会までに、すべての戦術核を配備からはずし、核兵器のストックから永久的にはずすべきである。
- 核兵器国は、1999年準備委員会までに、核弾頭の数と核兵器利用可能核分裂性物質(商業用に分離されたプルトニウムも含む)の量とを完全なかたちで発表すべきである。これらの発表は、生産、核物質計量管理、その他のデータの検討によって定期的に最新のものにすべきである。
- 偶発的核戦争の危険性を減らすために、核兵器国は、すべての核兵器の警戒態勢解除(ディアラーティング)を行うべきである。警戒態勢解除は、単にミサイルの目標をはずす(ディターゲティング)という以上のものでなければならない。警戒態勢解除の例としては、核兵器を配備からはずす、ミサイルの発射に対する物理的障害を加えるなどの措置がある。すでに述べた理由から、米国はこのプロセスをすぐに率先して開始すべきでる。その後ただちに、その核戦力の警戒態勢解除についてロシアと二国間で、その後は他の核兵器国と多国国間で作業を進めるべきである。すべての核兵器国は、技術的に可能かつ安全性を脅かさない限りの最短の期間内に、核戦力すべてについて少なくとも一つの実質的な警戒態勢解除の措置を完了すべきである。核兵器国は、また、すべての核弾頭を配備からはずし多国間のモニタリングのもとに置くための多国間交渉をする用意があることを、一方的に宣言すべきである。
- 米国及びロシアは、その核戦力を戦略核弾頭1000発のレベルより相当低いレベルまで削減する用意があることを一方的にただちに宣言し、このような削減を達成するための交渉を1999年準備委員会までに始めるべきである。