核情報

2007.9.18

欠陥「原子力協定」を正す


米国ACT誌巻頭コラム

欠陥「原子力協定」を正す(原文) 『アームズ・コントロール・トゥデー』2007年9月号

ダリル・キンボール

数ヶ月の激しい交渉の末、米国とインドの担当者らはこのほど原子力協力に関する公式の協定締結に漕ぎ着けた。この協定は、米国の長年の原子力輸出政策と矛盾しており、国際的拡散防止秩序を脅かすものである。

提案されている合意は、定義を示さず「インド限定の」保障装置を是認しており、また、インドによる核実験再開は米国の原子力輸出の終了をもたらすと明言していない。協定は、さらに、燃料供給の保証と機微な原子力活動の実施に対する事前の同意を約束している。これらは、前例のないものであり、昨年議会が承認した法律に矛盾する。

これらやその他の米国による譲歩は、インド−−平和利用原子力協力の過去の協定を、核実験の実施によって破った国−−に対して、「核不拡散条約(NPT)」の全ての義務と責任を負っている国々よりも有利な原子力輸出の条件を与えるものである。インドはNPTに署名していないのである。

大変な事態である。これから数ヶ月、米国議会と45ヶ国からなる「原子力供給国グループ(NSG)」は、その権限を使って、酷い欠陥を持つ米印協定の抜け穴を埋めることによって、これ以上の損傷を防ぐことができる。

協定は、2005年7月のマンモハン・シン首相の約束に基づくものである。すなわち、インドの軍事用と民生用の核施設を「分離」し、2014年までに国際的保障措置下に置く原子炉を8基追加するというものである。これと引き替えに、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、「包括的(フルスコープ)」保障措置を受け入れていない国との貿易を制限している米国の法律とNSGの規則においてインド限定の免除措置を追求することを約束した。米国議会は、米国の原子力輸出関連法の修正を条件付きで認めたが、米印原子力協力協定そのものの承認はこれからである。議会は、NSGがその包括的保障措置の要件についてインドを免除対象とすることをコンセンサスによって認めなければ、協定を承認できない。

NSGの多くの国々は、インドの正当な原子力のゴールを支持しているが、同時に、協定について極めて困惑している。それもそのはずである。インドにおける部分的保障措置は、年間1000万ドルと推定されるコストには到底値しないものである。米印協定は、インド限定の保障措置という概念を是認する共に、燃料供給が途絶えた場合には「是正措置」をインドが講じることを−−具体的にその内容を規定せず−−認めることによって、保障措置の価値を下げている。議会とNSGは、インドの原子炉に対するいかなる非標準的な保障措置をも認めてはならない。

他の国との原子力協力協定と異なり、米印合意は、核実験の再開が核関連移転の終了と米国提供の機器・物質の返還をもたらすことを明記していない。核実験のオプションを守るため、インドは、いかなる供給の支障に対しても備えるために核燃料の戦略備蓄をインドが形成するのを助けるとの−−前例のない−−約束を米国から得ようと試み、これに成功した。驚くべきことに、協定は、また、インドが核実験を再開しても、ニューデリーが他の国々からの燃料供給を確保するのに協力することをワシントンに義務づけている。

国務省の関係者は、燃料供給の保証は、政治的なものであり、法的な約束ではなく、インドの国内の読者をなだめるためにだけあると主張するかもしれない。しかし、インド政府は協定をそうは解釈しない。このようなあいまいさは、国際的な不拡散規則に入れるべきものではない。議会とNSGは、既存の原子力貿易関連規則に関するインド限定の免除措置は、インドが核実験を再開すれば終了すると明確に規定すべきである。

米国の交渉者らは、また、ウラン濃縮及びプルトニウム再処理関連品目を含め、機微な核技術輸出の将来の可能性をも認めた。このような移転が保障措置下の施設向けのものであったとしても、それはコピーされて、インドの核兵器計画を支援するのに使われる可能性がある。NSGは、インドに対するこのような移転を明確に禁止すべきである。

インドが既存の再処理施設を保障措置下に置くことを拒否しているにもかかわらず、インドは、米国起源の核燃料の再処理について長期的な事前承認を勝ち取った。この権利を行使するためには、保障措置下の新しい再処理施設に関する追加的米印協定が必要となる。しかし、再処理に関するこの譲歩によって、インドは、ロシアのようなあまり厳密でない供給者からもっと良い条件を得る可能性がある。

NSGが原子力輸出の条件として、核兵器用核分裂性物質の生産中止を要求しなければ、インドに対する発電用ウランの供給は、インドが、その限りある国産ウランを核兵器用に回すことができるようになることを意味する。これは、他国の核兵器計画の援助を禁止したNPTの規定に矛盾するだけでなく、隣のパキスタンに対し、核分裂性物質生産能力の拡大を促すことになる。

米印協定は、通常は良識のある国家にその法的約束を忘れさせることになるかもしれない。すでにオーストラリアは、ウランをインドに売る用意があると発表している。現在の外相が1996年に、南太平洋非核地帯条約は「NPT3条第1項で要求された保障措置、すなわちフルスコープ保障措置の対象となっていなければ核物質を提供しないとの法的義務を課している」と述べているにもかかわらずである。

米国議会や他の国々の政府は、自らの不拡散政策・法律を無視するのではなく、他の責任ある国々に課せられているのと同じ基準をインドが満たすことを保証する助けになるように、原子力関連輸出に関する常識的条件を維持すべきである。今こそ、ホワイトハウスや原子力関連の金儲け主義者らに対して立ち上がり、問題山積の不拡散システムのさらなる侵食を防ぐときである。


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