核情報

2007.9.20

核拡散防止団体、ウランをインドに売るとのオーストラリア政府の決定を激しく非難


ACAプレス・リリース

2007年8月15日

米国の有数の核拡散防止研究・提唱活動団体である「軍備管理協会(ACA)」は、インドへのウランの輸出を追求するとのオーストラリア政府による決定を強く批判した。

「この動きは、オーストラリアの長年の国際的な核拡散防止の取り組みに矛盾するものであり、再検討して破棄すべきだ」とダリル・キンボールACA事務局長は述べた。

「インド──包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名しておらず、核兵器用のプルトニウムの生産停止を拒否している国──へウランを輸出するとの閣議決定がオーストラリアでなされたと報道されいるが、このような決定は、核技術・物質の供給の条件として包括的(フルスコープ)国際保障措置を原則とするオーストラリアのこれまでの政治的及び条約上の約束に違反するものだ。」とキンボールは語った。

「この決定は、核不拡散と全ての国による核軍縮とを支持するリーダーとしての評判を酷く傷つけるものだ」とキンボールは批判した。

南太平洋非核地帯条約の下で、オーストラリアは、非核兵器国に対しては、その国がNPT3条1の下で規定された保障措置を受けていない限り、いかなる「核原料物質あるいは特殊核分裂性物質又は機器」も提供しないと約束している。インドは、NPTの下で非核兵器国とみなされる。インドは、2014年までに、8基を部分的保障措置の対象に追加することに合意しているが、NPT第3条で言及されている全ての核施設・物質に対する包括的保障措置を拒否している。

「要するに、オーストラリアは、インドに対してウランを移転しないとの国際条約上の義務を負っているのだ」とキンボールは述べた。(http://www.armscontrol.org/documents/rarotonga.aspにある南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)の条文を参照。)

「オーストラリア政府の主張するところとは異なり、保障措置下に置くインドの原子炉の数を数基増やすということには、核拡散防止上の利点はほとんど無い」とキンボールは主張した。「インドは、そのすべての原子炉、プルトニウム分離・ウラン濃縮施設を国際的保障措置下に置くことを拒否しているから、保障措置下に置かれる施設が少し増えたところで、インドによる核兵器用の核分裂性物質の生産をスローダウンしたり、止めたりするのにはなんの役にも立たない」とキンボールは指摘した。

米、英、仏、露は、核兵器用の核分裂性物質の製造のモラトリアムを公式に宣言している。中国も、核兵器用の核分裂性物質の製造を中止していると見られている。

「オーストラリアは、インドとの間の国際的及び二国間の保障措置が、インドの核兵器用にオーストラリアのウランが直接使用されるのを防ぐのに役立つだろうと主張している。しかし、インドによる核兵器用物質の製造を止める行動──単なる約束でなく──がない限り、オーストラリアのような国によるウランの輸出は、インドの核兵器計画を間接的に援助することになる。なぜなら、インドがその限られた国産ウランの供給を、核兵器用核物質の生産増大に回せるようになるからだ。」とキンボールは述べた。「これは、NPTの目的及び意図に反するものであり、結果としてパキスタンが核兵器用物質の生産能力を増大させる──減らすのではない──ことになることは間違いない」とキンボールは付け加えた。

「懸念を持つオーストラリア国民は、ハワード首相の政府に対し、オーストラリアのウランの輸出がインドの核兵器計画を間接的に援助することにはならないと、疑問の余地なく、示してみせるよう要求すべきだ」とキンボールは呼びかけた。

「1992年、オーストラリア及び他の原子力供給国グループ(NSG)のメンバーは、包括的なIAEA保障措置を受け入れていないインドのような国との原子力貿易を規制するガイドラインを採択した。1995年、オーストラリア及び他のNPT加盟国は、NPTの無期限延長を認めたパッケージ決定の一環として、同じ方針を承認した。」とキンボールは付け加えた。1995年NPT延長会議の決定2『核不拡散と核軍縮のための原則と目標』のパラグラフ12は、「核兵器その他の核爆発装置を取得しないという国際的に法的な拘束力のある約束」をしていない国に原子力援助を与えてはならないと述べている。

オーストラリアは又、1998年国連安全保障理事会決議1172を尊重する義務を負っている。決議は、インド(及びパキスタン)に対し、核実験をしないこと、CTBTに署名すること、そして、核兵器用の核分裂性物質の生産を中止することを要求している。<http://www.armscontrol.org/pdf/UNSCR1172.pdf>を参照。印パ両国の相互措置的核実験の直後に採択されたこの決議は、また、「すべての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器計画に何らかの形で資する可能性のある設備、物質及び関連技術の輸出を防止するよう奨励」している。

「オーストラリアがインドへウランを輸出することになり、また、NSGの規則をインドへの輸出を認めるように──CTBTについて再検討するとのインドの約束もなく、しかも、インドが核実験を再開した場合にはこの例外措置を撤廃するとの条件も入らないまま──変更することをオーストラリアが支持すれば、それは、CTBTの発効に関するオーストラリアの指導的立場がまやかしであることを示すものとなるだろう」とキンボールは述べた。

わずか2年前、オーストラリアのアレクサンダー・ダウナー外相は、ニューヨークで開かれた国際会議において、先頭に立って、CTBTの未署名・批准国に対して署名・批准するよう呼びかけた。2005年9月21日、ダウナー外相は、会議に対し次のように述べている。「はっきりさせておきましょう。私たちは、継続中の自発的核実験モラトリアムは歓迎しますが、これは、永続的で法的拘束力を持つ条約の発効の代わりにはならないのです。」

署名あるいは批准をしないことによってCTBTの発効を妨げている国々について、ダウナー外相は、次のように付け加えている。「私たちは、長年に渡って、なぜそうなっているのかという数多くの説明を聞かされてきました。言い訳の時は過ぎました。今や、これらの国々が行動するときです。」

「言い訳の時は過ぎ、行動の時はまさしく今だ」とキンボールは述べた。彼は次のように付け加えた。「オーストラリアは、インドのようなCTBT非参加国に対して、署名・批准を迫り、署名はしているが批准をしていない米国及び中国に対して批准を迫る上で持っている影響力を無駄にしてはならない。現行の米国の法律は、インドが核実験を再開した場合、米国がインドとの原子力貿易を停止することを定めており、また、米国の全ての原子力機器・物質の返還を認めるものとなっている。オーストラリアは、少なくとも、同様の要件を定めるべきだ。」

「オーストラリアは、もっと良いことができるし、しなければならない。オーストラリアの指導者達は、NPT非加盟国との原子力貿易に反対する自国の政策を放棄し、核不拡散に関する国際条約及び基準を無視するのでなく、インドがもっと核兵器について抑制を行使し、他の核兵器国に要求されるのと同じ核不拡散の基準を満たすまで、インドへのウラン輸出を控えるべきである。」とキンボールは付け加えた。

論争を呼んでいるインドとの原子力貿易の提案に関してさらに詳しくは、次を参照。< http://www.armscontrol.org/projects/india/ >.


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