印パ軍拡競争の火に油を注ぐ米印原子力協力協定
米印原子力協力協定(8月3日発表)の何が問題か
- 協定は、NPTに加盟していないインドに対し例外的に核燃料・技術の輸出を認めるもの。今後核実験や核兵器用核分裂性物質の生産をしないとの約束も義務づけず、おまけに、インドが核実験を行っても、燃料供給を保証する内容。インドは、輸入ウランを原発に使い、量に限りのある自国のウランを核兵器用に回すことができるようになる。
- インド側の譲歩:22基の運転中及び建設中の原発のうち14基を国際原子力機関(IAEA)の保障措置下に置く。6基は外国製であるため元々保障措置義務がある。譲歩は国産原子炉16基のうち、半分の8基だけを2014年までに保障措置下に置くことだけ。
*「原子力供給国グループ(NSG)」(45ヶ国)の役割は?
米印協定が実施されるには、日本も加盟しているNSGのコンセンサスによる規則変更が必要。NSGは1974年のインドの核実験を契機に米国の先導で輸出規制強化を目的に作られた。規則が変更されればオーストラリアなど他の国々も輸出に関わる可能性がある。
すくなくとも次の8議会が意見書を政府に提出──
佐賀県、長崎市、東京都調布市、山梨県甲府市、鹿児島県4市町(長島町、さつま町、枕崎市、指宿市)
世界の声
英国『エコノミスト』誌 2007年8月23日
「日本は、イランその他の国に対し、原子力技術を持っても良いとの信用を得たければ日本のように『全てのIAEAの保障措置を厳格に守る』するべきだと主張している。インドに対する例外措置を認めれば、『まず核兵器を保有せよ』との異なったメッセージを送ることになる。このような規則の改悪は、他の全ての国の安全性・安全保障の基礎となっている反核体制を危険にさらすことになる。NSGやIAEAの参加国でこれについて不満を持つものは、その信念を示す勇気を持ち、これを阻止すべきだ。」
ハンス・ブリックス元IAEA事務局長(1981〜1997年)
[オーストラリアからウランが輸出されれば]「彼ら[インド]にとって兵器級物質の生産が容易になり、これが、パキスタン及び中国との緊張を高めることになる恐れがある。」
『ヒンドゥスタン・タイムズ』紙 2007年8月27日
*ブリックス氏は「国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)」委員長・大量破壊兵器委員会(WMDC)委員長歴任
- 英国『エコノミスト』誌 2007年8月23日
- 『ヒンドゥスタン・タイムズ』紙 2007年8月27日