核情報

2019. 4.28

世界の核状況─米ロの核軍拡競争へ?

4月29日から5月10日までニューヨークの国連ビルで「核不拡散条約(NPT)」2020年再検討会議準備委員会が開かれます。以下、その参考のために、世界的に定評のある「米国科学者連合(FAS)」の『世界の核戦力の状況』(2018年11月更新)のデータを見ておきましょう。ハンス・クリステンセンとロバート・スタン・ノリスが米国核専門誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(BAS)』の連載記事「ニュークリア・ノートブック」や「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」の年鑑で提供したデータを整理し、適宜更新しているものです(ノリスは、昨年10月、「自然資源防護協議会(NRDC)」時代以来31年間かかわってきたBAS誌連載記事共著者としての活動に終止符を打ちました)。


FASは、世界の核弾頭の総数を約1万4485発と推定しています。この93%が米ロのものです(上の図参照)。1986年のピーク、約7万300発と比べると減っていますが、まだ非常に高いレベルにあると言えます。政府関係者は大幅削減だと強調するが、削減の圧倒的な部分は1990年代に起きているとFASは指摘しています。旧ソ連崩壊前後のブッシュ大統領(父)の核削減イニシアチブによるものです。

下の表にあるように総数のうち、実際に配備されているもののほか予備などを含む「軍用保有核」が約9335発、残りは退役して解体待ちのものです。解体待ちの状態の退役核は、米国が約2650発、ロシアが約2500発です。(米国は他に、核弾頭の芯の部分(プルトニウム・ピット)2万個以上、水爆部分のセット約4000発分をそれぞれテキサス州パンテックス工場とテネシー州Y-12工場に保管しています。)

世界の「軍用保有核」のうち、約3750発が運用状態にある「配備核」です。このうち米、ロ、英、仏の合計約1800発が短時間で発射可能な「高い警戒態勢」(ハイ・アラート)状態に置かれています。大半は米ロのものです。米国の配備非戦略核(戦術核)というのは、欧州5ヵ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコ)の6基地に配備されているB61型核爆弾(約150発)を指します。

世界の核兵器(FAS)2018年11月

国名 戦略核 戦術核 予備/非配備 保有核 解体待ち
退役核(*)
総数
ロシア 1600 0 2750 4350 2500 6850
米国 1600 150 2050 3800 2650 6450
フランス 280 20 300 300
中国 0 280 280 280
英国 120 95 215 215
イスラエル 0 80 80 80
パキスタン 0 140 -150 140 -150 140 -150
インド 0 130 -140 130 -140 130 -140
北朝鮮 0 ? 10-20 10-20
合計(概数) 3600 150 5565 9335 5150 14485

(*退役核の欄は核情報による挿入 )

米ロの核戦力制限の条約消滅?

米国は2月2日、米ロによる射程500〜5500kmの地上発射弾道・巡航ミサイルの開発・配備を禁じた1987年「中距離核戦力(INF)」全廃条約の破棄をロシアに通告しました。ロシアの地上発射巡航ミサイル「9M729」が条約に違反しているからというのが米国の説明です。ロシアも同日破棄の意向を表明しており、同条約は規定に従い6か月後の8月に失効と見られています。

また、配備戦略核を制限した新「戦略兵器削減条約(START)」(2011年発効)が21年2月に失効します(上限:運搬手段700基、弾頭1550発)。5年間の延長が可能ですが、残された期間は2年足らずです。その間に同条約のような相互査察などの検証措置を定めた新たな条約が締結できる見込みは乏しく、条約延長もできないとなると両国間の核戦力に関する法的拘束力を持つ制限がない状態になると懸念されています。そうなれば、1972年以来のことです。米国は条約延長に積極的な態度を示してなかったのですが、ポンペオ米国務長官が4月10日、上院の公聴会でロシアと延長のための予備協議を始めたと述べています。延長交渉を本気で進め、延長後の新たな条約締結も狙うという話なのか、実際は米国の一方的な主張に基づく新たな条約の提唱で終わるのか、協議の行方が注目されます。

参考のために、下にFASによる米国の核兵器のデータを載せておきます。2018年3月のデータなので、上の表「世界の核兵器(FAS) 18年11月」にある米国のデータと若干異なります。なお、図表類の翻訳・転載については、FASから承諾を得ています。

米国の核兵器(FAS)2018年3月

カテゴリー/名称運搬手段数配備年搭載能力個数
弾頭名 x 威力kt
核弾頭数
ICBM
ミニットマンIII
Mk-12A20019791-3 W78 x 335(MIRV)600
Mk21/SERV20020061 W87x300200
合計400 800
(注1)
SLBM
トライデントII D5
Mk-4 19921-8 W76-0 x 100 (MIRV)216
Mk-4A 20081-8 W76-1 x
100 (MIRV)
1320
Mk-5 19901-8W88 x 455
(MIRV)
384
合計240 1920
(注2)
爆撃機B-52H
ストラトフォートレス
87/441961ALCM/W80-1 x 5-150528
B-2A
スピリット
20/161994B61-7, -11,
B83-1
452
合計107/60
(注3)
 980
(注4)
戦略核計3700
非戦略
(戦術)核
B61-3, -4 爆弾19790.3 -170300
(注5)
保有核総計(概数) 4000
 解体待ち退役核 2550
 解体待ちを含む総数 6550
 保管中のピット(注6) 20000
以上
  • 注1:このうち400が実際に運用配備。残りは長期的貯蔵状態。
  • 注2:このうち約945が発射管搭載のミサイルに運用配備。
  • 注3:最初の数字は総機数(訓練・実験・予備用を含む)/次の数字は主要ミッション用
    (戦争時用)機数のうち核ミッションに割り当てられていると見られる機数。
  • 注4:実際に爆撃機基地に配備されているのは約300発。ALCM 約200発と核爆弾約100発。
    残りの680発は長期的貯蔵状態
    [新START 条約では1 機= 1 発という特殊な計算方法を採用]
  • 注5:約150 発のB61-3 及び4 がヨーロッパに配備。残りは米国で集中的に保管。
  • 注6:解体で取り出されたプルトニウムの芯の部分。テキサス州パンテックスで保管。
  • ICBM =大陸間弾道ミサイル
  • SLBM =潜水艦発射弾道ミサイル
  • MIRV =複数目標多弾頭
  • ALCM =空中発射巡航ミサイル
  • 出典:United States nuclear forces, 2018, Bulletin of the Atomic Scientists: Vol 74, No 2

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