核情報

2005.4.7

ウラン濃縮及び再処理の開発を差し控えるよう求めるアナン国連事務総長

アナン国連事務総長は、3月21日付けの国連改革に関する勧告において、「ウラン濃縮及びプルトニウム分離の能力の自国における開発を各国が自発的に差し控えるようなインセンティブを創出することに焦点を合わせるべき」だと述べた。「軍縮と核拡散防止の両面における進展が極めて重要であり、どちらも他方の人質となってはならない」として、核保有国の核軍縮の努力を求めると同時に、核拡散防止措置の強化の重要性を強調した。

 以下は、核兵器関連部分の粗訳である。

92.
核物質にテロリストの手が届かないようにすることが極めて重要である。これは、危険な物質を集結し、安全に保管する ─ そして可能な場合には廃棄する ─ とともに、効果的な輸出規制を実施することを意味する。主要工業国8カ国(G8)及び安全保障理事会はこれを行うための重要な措置を講じているが、これらの措置が完全に実施され、互いを強化しあうようにする必要がある。私は、国連加盟国に対し、遅滞なく、核テロリズム行為防止条約を締結するよう要請する。
97.
核技術の有望性を活用しながら、その危険を抑制するための多国間の努力は、国連そのものと同じぐらい古い歴史を持っている。核拡散防止条約(NPT ─ 今月で35周年を迎える ─ は、欠くことのできないものであることが明らかになっている。核の脅威を小さくしただけでなく、国際の平和と安全を保障する上での多国間協定の価値を実証してきた。しかし、今日、NPT条約は、その加盟国の始めての脱退を経験し、検証と実施の困難の増大から生じた信頼性及び遵守の危機に直面している。軍縮会議(CD)も、また、一つには機能不全の決定手続き及びそれらに伴う麻痺状態から来る「relevance」[当面する問題に関して意味のあることをできる主体であるかどうかという点での存在意義]の危機に直面している。
98.
軍縮と核拡散防止の両面における進展が極めて重要であり、どちらも他方の人質となってはならない。最近の核兵器国による軍縮への動きは評価されるべきである。米国とロシア連邦が調印した2002年戦略攻撃兵器削減条約を初めとする二国間協定は、何千もの核兵器の解体をもたらしており、ストックのさらなる急速な削減の約束を伴っている。しかし、核兵器国のユニークな地位は、また、ユニークな責任を伴うものであり、これらの国々は、もっと行動しなければならない ─ 例えば、保有する非戦略核兵器のさらなる削減や、解体だけでなく逆転不能性をも伴う軍備管理協定の追求などがあるが、これらにとどまるものではない。核兵器国はまた、消極的安全保障の約束を再確認すべきである。核分裂性物質生産禁止協定の迅速な交渉は不可欠である。核爆発実験のモラトリアムも、また、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効が達成できるまで、維持しなければならない。私は、核拡散防止条約(NPT)加盟国が、2005年再検討会議において、これらの措置を支持するよう強く奨励する。
99.
核技術の拡散は、核体制内の長期的な緊張を悪化させてきた。民生用核燃料が核兵器の開発にも使えるという単純な理由から来るものである。この緊張を緩和するための措置は、核拡散の脅威に立ち向かうものでなければならいが、同時に、環境やエネルギー、経済、研究などの面での核技術の重要な用途を考慮に入れたものでなければならない。まず、国際原子力機関(IAEA)の検証権限を、モデル追加議定書の普遍的採択によって強化しなければならない。第二に、核技術への恩恵に対する非核保有国のアクセスは減じてはならないが、われわれは、平和的用途を開発するのに必要な燃料の供給を保証しながら、ウラン濃縮及びプルトニウム分離の能力の自国における開発を各国が自発的に差し控えるようなインセンティブを創出することに焦点を合わせるべきである。一つのオプションは、民生用核利用者に対する核分裂性物質の市場価格での供給保証者としてIAEAが機能するような仕組みである。
100.
核拡散防止条約(NPT)は、核不拡散体制の基礎であり続けるが、われわれは、それを補完する最近の取り組みを歓迎すべきである。この中には、例えば次のものがある。安全保障理事会決議1540(2004年) ─ 核・化学・生物兵器、並びにその技術、物質及び運搬手段が非政府アクターの手に入ることを防止するために考えられたもの。自発的な「拡散防止安全保障構想(PSI)」 ─ この構想の下で、核・生物・化学兵器の非合法貿易を防止するために協力する国が増えている。

参考:

  1. G8の試み
  2. 国連安全保障理事会決議1540
     大量破壊兵器の非拡散に関する決議(2004/04/28)
  3. 「拡散防止安全保障構想(PSI)」


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