核情報

2009.6.19

先制不使用宣言支持を求める地方議会意見書を──年内に終了するオバマ政権の核態勢の見直しが焦点

オバマ政権は、現在、議会が義務づけた「核態勢の見直し」の作業を行っています。この過程で、日本政府が、核兵器の大幅削減や先制不使用宣言に反対する動きをしていると米国の専門家らが警戒しています。「核態勢の見直し」は、年内に終わります。日本政府のこのような動きを止めさせるための運動を日本国内で早急に作る必要があります。日本が核兵器廃絶の障害となろうとしているのを放っておいては、世界に核兵器廃絶を訴えることは出来ません。

米国の代表的な軍縮・平和運動関係者は、昨年末の書簡で、核兵器の大幅削減の実現のために、「核兵器が存在する限りにおいては、核兵器は他の国の核兵器の使用を抑止する役割だけを果たすとの原則に基づいて『核態勢の見直し』を行うよう指示すること」をオバマ[次期]大統領に要請しています。また、日豪両政府の提唱で設置された核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)の報告書案は、核兵器の役割を、他国による核使用の抑止に限定し、先には核兵器を使わないとの「先制不使用政策」を米国が発表することを勧告していると報じられています。ICNNDは、10月に広島で予定されている最終会合を経て、この「先制不使用宣言」の勧告を含む報告書を年内に発表する予定とのことです。

ところが、ICNNDのギャレス・エバンズ共同議長(元オーストラリア外相)は、5月末に来日した際、日本に対する核兵器以外の攻撃にも核で報復することを米国に望む日本の政策が、勧告の採択にとって障害になっていると述べています。

日本政府は、1994年以来国連に核廃絶を求める決議文を提出する一方で、核以外の攻撃に対しても核報復のオプションを米国が持たなければ日本の安全保障が達成出来ないと主張しているのです。エバンズ共同議長は、「核兵器廃絶を唱える一方で核兵器が大好きだと言っていたのでは、世界からまともに相手にされない」とは日本に忠告しています。

地方の声を政府やマスコミに届けるために、地方自治体議会の意見書案の例文を作成しました。各地の状況に合わせて加筆修正して使ってください。合わせて 説明資料「先制不使用問題早わかり」を作成しましたのでご活用ください。

また、様々な方法で各地の首長や国会議員・候補などに、米国の「先制不使用宣言」を支持するよう訴えかけることも重要でしょう。支持できないとする政治家は、そのことと核兵器廃絶の要求との間の整合性について、そして、先に核を使うしかない状況として、どのような攻撃のシナリオを想定しているのかを具体的に説明する責任があるでしょう。




米国による核兵器の先制不使用宣言を要請・支持するよう求める意見書(例)

キッシンジャー及びシュルツ両元国務長官ら米国政界重鎮4人の提言にある「核兵器のない世界」の達成を目標に掲げるオバマ政権の登場を背景に、世界的にも核兵器廃絶の機運が高まった今、日本の私たちも、これを活かすために、積極的に行動しなければならない。

オバマ大統領は、4月5日、チェコ共和国プラハでの演説で、「米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言する」と述べた。また、「米国は、核兵器のない世界に向けて、具体的な措置を取ります。冷戦時代の考え方に終止符を打つために、米国は国家安全保障戦略における核兵器の役割を縮小し、他国にも同様の措置を取ることを求めます」と約束した。

この考え方に従った核兵器廃絶早期実現のための即座の最低限の措置として、核兵器の役割を他国による核使用の抑止のみに限定することを米国の平和・軍縮運動が提案している。先に核兵器を使う国にはならないと明確に宣言するというものである。オバマ大統領は、プラハの演説において、「核保有国として、核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任があります。米国だけではこの活動で成功を収めることはできませんが、その先頭に立つことはできます」とその決意を表明している。米国はこの決意に基づき、核保有国の先頭に立って、上のような「先制不使用宣言」を行うことができる。

ところが、米国内には、米国が核兵器の役割を縮小すると、不安に感じた日本などの同盟国が核武装してしまうのではないかと心配する声がある。オバマ政権は、今年中にその「核態勢の見直し」の作業を終える。この過程で、オバマ大統領が唱える核兵器廃絶への道を阻止するために日本の立場が理由とされるようなことがあってはならない。

よって、○○議会は、日本政府が、核兵器のない世界の実現に向け、各国政府に包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進や大幅核削減、核拡散防止などのために一層努力するよう働きかけるとともに、米国による先制不使用宣言に反対しないとの立場をオバマ大統領に伝えるよう求める。

以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出する。

○○議会議長

 提出先 内閣総理大臣、外務大臣 あて



先制不使用問題早わかり


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