核情報

2002.12.26〜

北朝鮮の核開発データ──プルトニウム関係

  1. 問題の施設はどこにあるのか?
  2. プルトニウムを製造したと見られている原子炉は?抽出されたプルトニウムの量は?
  3. 抽出されたプルトニウムの合計量は?
  4. このプルトニウムで作れる原爆は何発?
  5. 燃料棒からプルトニウムを抽出するのに使われた施設は?
  6. 5MWe実験用原子炉から燃料を取り出したのはいつ?
  7. 現在問題になっているプール中の使用済み燃料というのは?
  8. プール中の使用済み燃料(約8000本)の中に含まれているプルトニウムの量は?
  9. この使用済み燃料から抽出したプルトニウムでできる原爆は何発?
  10. 使用済み燃料はどこにおかれているのか?
  11. 放射化学実験室(再処理施設)の燃料処理能力は?
  12. 放射化学実験室(再処理施設)の燃料処理能力は増やせるか?
  13. 5MWe実験用原子炉が運転再開された場合のプルトニウム生産能力は?
  14. 後数年で完成というところで建設が凍結されている2基の黒鉛減速・炭酸ガス冷却原子炉の生産能力は?
  15. 北朝鮮が2基の原子炉の建設を再開した場合の数年後のプルトニウム生産能力は?
  16. これでできる原爆の量は?
  17. 疑惑の核廃棄物貯蔵施設とは?
  18. 5MWe実験用原子炉の追加的データ
  19. 5MWe実験用原子炉からの抽出量の推定の根拠は?
  20. IRT-2000研究用原子炉の追加的データ
  21. IRT-2000研究用原子炉からの抽出量の推定の根拠は?
  22. 抽出されたプルトニウムについての他の推定値は?
  23. 北朝鮮がすでに核兵器を持っているとの発言は?

出典:
特に明記していないものは、米国の「科学・国際安全保障研究所(ISIS)」発行の『北朝鮮の核パズルを解く(Solving the North Korean Nuclear Puzzle)』(デイビッド・オルブライト及びケビン・オニール編著:2000年)
CRSとあるのは、米国議会調査部の報告書『北朝鮮の核兵器計画』(2002年10月21日改訂)
パイクとあるのは、「米国科学者連合(FAS)」のスタッフを長年務めたジョン・パイクの主宰するNGOグローバル・セキュリティーのホームページから。


Q問題の施設はどこにあるのか?

Aここで触れられている施設は、建設中止となっている200MWe原子力発電所を除き、すべて平壌(ピョンヤン)から北に約90kmの寧辺(ヨンビョン)にある。
 → 関連地図寧辺核施設配置図

Qプルトニウムを製造したと見られている原子炉は?抽出されたプルトニウムの量は?

A 

  1. IRT-2000研究用原子炉  最大 2〜4kg
    (旧ソ連提供のプール型軽水減速・冷却炉)
  2. 5MWe実験用原子炉    最大 6.3〜8.5kg
        (電気出力5000kw。独自開発のコールダーホール型黒鉛減速・ガス冷却炉。天然ウラン燃料。)
    (この場合、最大とは、あり得ると想定される最悪のケースの意味。実際の量は北朝鮮にしか分からないとオルブライトは強調し、特に北朝鮮がすでに核兵器を持っているとの見方については注意を要すると述べる。「最悪のケースについて分析・評価するのは、正当かつ必要ではあるが、これらの評価が、しばしば事実として描かれ、北朝鮮に対するタカ派的な行動に対する支持を作り出すために使われる。」と彼は言う。)

Q抽出されたプルトニウムの合計量は?

A 最大 6.9〜10.7kg
 (1)の数字は、2)の数字と比べ確度が低いものなので、統計的手法を使って合計を計算した結果。)

Qこのプルトニウムで作れる原爆は何発?

A 1ないし2個
普通最初の1個を作るのに8kgがいるとされるが、製造過程でのロスを計算に入れたもので、実際にいるのは5kg程度。大きい方の数字だと、回収したもので2個目が作れるとの計算。(米国エネルギー省は、1994年1月、小型原爆の製造に必要なプルトニウムの量の推定値を、8kgから4kgに下げている。*CRS)

Q燃料棒からプルトニウムを抽出するのに使われた施設は?

A  

  1. 同位元素生産加工研究所(アイソトープ生産施設)
    北朝鮮は、ここで、1975年にIRT-2000の燃料(ターゲット)から300mgだけ抽出したと主張。
  2. 放射化学実験室(再処理施設)
    (主要な建物は192mx27m。6階建てのビルほどの高さ)
    構造(上下2層)
     再処理セル 6 (地上レベルの下層)
     サンプリングセル 3 (上層)
    1985年建設開始(*モントレー国際問題研究所)
    北朝鮮は、1989年に5MWe実験用原子炉から取り出した少量の燃料をこの施設で処理し、プルトニウムを約100gだけ抽出したと主張。

Q5MWe実験用原子炉から燃料を取り出したのはいつ?

A 1989年に約70日間炉を停止した際に、大量の燃料を取り出し、その後再処理したのではないかと疑われている。1990年と1991年にも燃料を取り出したと見るものもいる。

Q現在問題になっているプール中の使用済み燃料というのは?

A1994年に5MWe実験用原子炉から燃料全部を取り出したもの。
この後は炉は空の状態。
炉心全体で約8000本入る構造だが、1994年に実際に炉心にあったのは、約7700本。これが四捨五入で約8000本と表現されている。これらの燃料棒は、再処理されておらず、IAEAの監視下にあったが、北朝鮮は封印を解いて監視カメラに覆いをして監視不能にしてしまった。

Qプール中の使用済み燃料(約8000本)の中に含まれているプルトニウムの量は?

A約25-30kg (Pu240含有率7.5%)
炉心の燃料は約50トン。運転歴から妥当な燃焼度を600〜700MWth-d/tとして、27-31kg。丸めると上の数字。

Qこの使用済み燃料から抽出したプルトニウムでできる原爆は何発?

A5〜6個

先の計算の際と同じ考え方で、抽出の際のロスなどを無視したもの。

Q使用済み燃料はどこにおかれているのか?

A5MWe実験用原子炉のすぐ南にある貯蔵プール。
この燃料は、長期保存には向いていない。ステンレススチールの容器に入れて缶詰状態にして、プールで保管中。カンの中には、アルゴンガスと少量の酸素を注入してある。缶詰作業は1999年半ばでほぼ完了。これで4〜7年保つ予定。国外に運び出して再処理するというのが枠組み合意の取り決め。
 →缶詰の図
 * 2003年1月31日付の『ニューヨークタイムズ』紙は、北朝鮮が使用済み燃料をトラックで移動しているところを米国の衛星が捉えたと報じた。
 →プール内の使用済み核燃料─カーネギー国際平和財団のサイトよりカーネギー国際平和財団のサイトにあるプール内の使用済み核燃料の写真。(1996年撮影、米国の技術者らが缶詰にする前の状態)

Q放射化学実験室(再処理施設)の燃料処理能力は?

A年間110トンの燃料(1日24時間、年間10ヶ月運転)
北朝鮮は、25トン/年と説明。8時間/日x200日。設計能力は、燃焼度760-800MWth-d/tで、プルトニウム18kg/年の抽出となっている。

24時間体制にすると、75トン。プルトニウム54kg。
年10ヶ月運転だと、110トン。プルトニウム80kg。
(核兵器用には燃焼度をもっと低くした方がいい)

Q放射化学実験室(再処理施設)の燃料処理能力は増やせるか?

A短期間で2倍の年間220〜250トンの能力となる。

1994年の時点で第二系統がほとんど完成していることをIAEAが確認している。

Q5MWe実験用原子炉が運転再開された場合のプルトニウム生産能力は?

A6kg/年 (兵器級プルトニウム:Pu240含有量6%以下)
設備利用率約85%として。

Q後数年で完成というところで建設が凍結されている2基の黒鉛減速・炭酸ガス冷却(天然ウラン燃料)原子炉の生産能力は?

A

  1. 50MWe原子力発電所 200MWth フランスG2がモデル
    56kg/年 (兵器級プルトニウム:Pu240含有量6%以下)
    設備利用率約85%として。
  2. 200MWe原子力発電所(泰川:テチョン)800MWthフランスG2がモデル
    220kg/年

Q北朝鮮が2基の原子炉の建設を再開した場合の数年後のプルトニウム生産能力は?

A3基で約280kg/年
大きい方の2基の設備利用率を60%とすると3基で210kg/年

Qこれでできる原爆の量は?

A40〜55個/年

Q疑惑の核廃棄物貯蔵施設とは?

A

  1. ビルディング500 (25mX70m)
    再処理施設の主要な建物から東南東に約300m。 1991〜1992年の冬にこれら二つの建物を結ぶ形で溝が掘られていることが衛星で確認されため、地下に埋設されたパイプで再処理の廃液をこの貯蔵施設に移して、再処理のデータを誤魔化したのではと疑われている。2階建て構造だった建物の1階部分が盛り土で隠されている。2階部分には軍用機器がおかれていることが査察で確認されている。
  2. 地下に隠された建物
    50MWe原子力発電所から南西にのびる道路から西に230mのところにある貯蔵施設らしき構造物が、1992年8月に土で覆われてしまった。ここにも再処理からでた廃棄物が隠されているのではと疑われている。IRT-2000研究用原子炉からの燃料の廃棄物があるのではとの推測がなされている。
  3. 北朝鮮が申告した貯蔵施設
    道の反対側にある建造物。査察官らは1992年11月にここに案内された。北朝鮮は、1977年の建設だと言うが、1992年5〜6月の衛星写真では存在しない。

 5MWe実験用原子炉の追加的データ

黒鉛減速・炭酸ガス冷却
25MWth(熱出力25MW) 実際には20MWthを越えることはほとんどない。
1986年運転開始
北朝鮮の独自開発
モデルは、1956年に運転を開始した英国のコールダーホール型炉(50MWe)
(この炉の設計に関する情報はほとんどが公開)
垂直のチャンネル(管)に入れた燃料を上部から取り出す方式
 普通は運転を停止して取り出すが、低出力で取り出すこともある。

燃料棒(天然ウラン)
 長さ50cm
 直径3cm
 重さ6.24kg
 金属:ウラン・アルミ(0.5%)合金
燃料被覆:マグネシウム・ジルコニウム(0.5%)合金
チャンネル当たりの燃料棒:10本(積み重ねて入れる)
812チャネル
圧力容器
 内径8.8m
 高さ16.8m

Q5MWe実験用原子炉からの抽出量の推定の根拠は?

A1989年に約70日間、炉を停止した際に、炉の半分(25トン)あるいは全部(50トン)を取り出したと想定し、その時点での燃焼度を運転歴から200MWth-d/tとして、最悪のケースを計算。

米国は衛星で煙突の煙を観察している。(曇りだと分からない。)
1993年12月7日、レス・アスピン国防長官(当時)が、テレビで「北朝鮮は、1989年に炉を100日間停止した。」と述べ、さらに、このとき取り出した使用済み燃料を再処理して原爆1個分あるいは1個半分のプルトニウムを取り出したかもしれないと論評した。1994年米国当局者が、70日の方が正確と述べている。

ロイター(1994年8月7日)が、89年の他、90年に1ヶ月、91年に50日運転が停止したと報じている。このときにも大量の燃料を取り出したと仮定すると、抽出量の推定はさらに大きくなる。米国当局者は、この2回の停止の際に北朝鮮が意味のある量の燃料を取り出した可能性を否定している。オルブライトも同じ立場をとるが、やはりこの点も検証が必要と言う。

 IRT-2000研究用原子炉の追加的データ

旧ソ連提供(1977年から旧ソ連との3者合意の形でIAEAの保障措置)
プール型 軽水減速・冷却
1965年臨界 
 2MWth 燃料は10または36%濃縮ウラン
1974年 
 4MWthに 燃料は36または80%濃縮ウラン
1980年代末 
 8MWth
現在のIAEAデータベースでは、36%濃縮ウラン
濃縮ウランの燃料(ドライバー)からは、プルトニウムがほとんどできない。
だが、天然ウランで作ったターゲット燃料を装入してプルトニウムを作ることが可能。
北朝鮮は、1975年に少量のプルトニウムを作ったことを認めている。

QIRT-2000研究用原子炉からの抽出量の推定の根拠は?

A北朝鮮が旧ソ連から受け取った濃縮ウラン燃料の量(ウラン235で約29kg)が最大限に活用されたとして、最大で2.8〜3.6kg(丸めて3〜4kg)のプルトニウムがターゲット燃料内にできたと計算。IAEAは、最大で2〜4kgと推定。これらは最悪のケースの見積もりで、実態については、廃棄物を含めた査察で確認するしかない。

Q抽出されたプルトニウムについての他の推定値は?

ACIAは、1993年末に12kgと見ているとの報道。(*CRS)
CRSとパイクはともに、各国の推定を下のように説明。
韓国 7−22kg
日本 16−24kg (どこからでた数字か?)
ロシア 20kg
 各国の推定値の幅:7−24kg
 これで作れる原爆の数:最大6個 1個に4kg必要として(*パイク)

Q北朝鮮がすでに核兵器を持っているとの発言は?

A


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