核情報

2003.8

地中貫通型核爆弾・核実験再開

 B61−11は、旧ソ連の地下司令部攻撃用のB53という9メガトン(広島の約600倍)の核爆弾が古くなったので、それに代えるために開発されたものです。地中貫通型というと、地下深く潜って爆発するので、化学・生物兵器施設を破壊するが、その毒物や放射能は地上にでてこないというイメージがありますが、B61−11は、元々、少しでも地下に潜れば破壊力が増すという発想で開発されたもので、全面核戦争用の兵器です。B61-7は威力を4つのレベル(最高350キロトンまで)調整できるのですが、B61─11は、高い威力しか持っていないとNPRは述べています。エネルギー省は、B61とB83の2つの核爆弾に修正を加えて地中貫通型核兵器(RNEP)とするフィージビリティースタディーを2006年完結を目処に行う計画です。同省は、RNEPは、低威力を目指すものではなく、相当高い威力のものとなると説明しています。ロシアの新しい地下司令部用施設が南ウラルのコスビンスキーで稼働を始めたのが、地中貫通型核爆弾への関心の高まりの背景にあるのかもしれないとブレアーはいいます。
 周りに被害を及ぼさない「便利な」低威力の地下貫通型はできそうにもありません。B61−11は、ツンドラでの実験では2〜3メートルしか潜っていません。コンクリートでも、6メートルほどしか潜りません。このぐらいの深さだと1キロトンの爆発でも、都市部だと数万人の死者が出てしまうとの計算がされています。しかも、この威力と深さでは、地下深くの施設自体は破壊できません。3メートルの長さの爆弾の場合、潜れるのは、物理的限度が、長さの10倍の30メートル。実際には、4倍の12メートル程度。放射能の噴出を防止するには、5キロトンの爆発でも200メートルの深さが必要です。
 5月に米国上下両院は、それぞれ、5キロトン未満の低威力の核兵器の研究を認めるが開発段階への移行を禁止する似たような法案を通過させました。(同一の文言ではないので近々上下両院協議会で調整する予定です。)実際に具体的な計画があるわけではなく予算も付いていませんから、上下両院協議会で、同様の法案が通過しても、実際の研究は先のこととなります。今回の許可を求めたのは、次のようなことを可能にするためだと政府は言っています。将来低威力の地中貫通型爆弾を開発すること。次世代の核兵器科学者やエンジニアを訓練すること。国際的安全保障環境における変化や所有核兵器の予測外の技術的問題に、迅速に断固として、対応することのできるような核兵器事業を再生すること。ブレアは、戦略司令部と核兵器研究所の両方が自己の延命のために新たな核兵器やその開発能力が米国の安全保障のために必要だと主張しているにすぎないと言います。「国防省の制服組で、[地中貫通型核兵器の]新しい必要性について、笑わずに語れるものがいたら、コーヒーをおごってやる」というのは、サンディア国立(核兵器)研究所元副所長のB・ピューリフォイです。

核実験再開

 米国は、核実験実施決定があってから2〜3年で実施できる状態を維持するという現在の態勢を、18ヶ月以内で実施できる態勢に移行することを目指しています。この移行事態に3年かかるとエネルギー省は言っています。たとえ軍事的要請に基づく核兵器でなくとも、開発が進められると、核実験再開への圧力になる可能性があります。

 


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