5月13日、オバマ大統領は、新START条約を上院に送付するともに、条約の下でどのように核削減を実施するかを説明する報告書(機密文書)を送りました。来週には、外交委員会での公聴会が始まるとのことです。報告書の中身を簡単に要約したホワイトハウスのファクトシートを翻訳して載せました。
参考
ファクトシート(ホワイトハウス)新START条約──強力な核抑止力の維持(原文pdf) 2010年5月13日
新START条約──強力な核抑止力の維持
本日、大統領は、助言と批准の承認を求めて新START条約を上院に送った。大統領の核不拡散アジェンダにとって重要な里程標となるこの条約は、米ロの戦略兵器に対し相当低いレベルで制限を課す一方、それぞれの国に対して、条約の制限内でその戦略戦力の構成について決める柔軟性を許すことになる。
大統領は、また、議会に対して、2010会計年度国防歳出権限法のセクション1251が定めた機密報告書を送った。以下のことを行うための総合的計画に関する報告書である:(1)[核兵器]運搬手段を維持する(2)安全でセキュリティーの確保された、信頼性のある保有核兵器を維持する(3)核兵器施設群を近代化する。この報告書は、「核態勢の見直し(NPR))の政策及び原則に基づくもので、新START条約の期間中及びその後、強力な核抑止力を維持するための総合的計画について説明してある。同計画は、向こう10年間、核兵器施設群の維持・近代化のために行う800億ドルの投資を含んでいる。
新STARTの下での核戦力構成
国防長官は、統合参謀本部の勧告に基づき、米国の安全保障の要件を完全に支えると同時に新STARTの制限に従うベースライン核戦力構成を作り上げた。この戦力構成──将来の計画の基礎を提供するもの──は、必要に合わせて、そして、条約の許す範囲で調整をする柔軟性を提供する。
- 米国は現在、450の「大陸間弾道弾(ICBM)」発射用サイロを保有している。ベースライン計画は、最高420基の配備ICBMを維持し、すべて単弾頭とする。
- 米国は、現在、核搭載能力を備えた配備可能爆撃機を94機保有している。ベースライン計画の下では、この一部は、通常兵器のみ搭載可能な爆撃機(条約の下での制限対象としては数えられない)に転換され、最高60機の核搭載能力を持つ爆撃機が維持される。
- 米国は、現在、戦略原子力潜水艦(SSBN)を14隻保有している。ベースライン計画の下では、14隻すべてが維持される。米国は、SLBM発射機(発射管)の数を、1隻当たり24から20に減らし、どの時点においても、SLBM[潜水艦発射弾道ミサイル]の配備数が240を超えないようにする。 向こう10年間、米国は、現存能力を維持し、一部の戦略システムを近代化するために1000億を優に超える額を核運搬システムに投資する。
保有核維持管理及びインフラ近代化
米国の核兵器の安全性、セキュリティー、効果を確保するために、これから何年にも亘って広範な寿命延長プログラムが実施される。信頼性のある核抑止力を維持するには、米国が近代的な物理的インフラを運用し、高度な能力を持った労働力を維持することが必要である。政府は、我が国の核兵器施設群が、向こう10年間、そして、その後も、強力な核抑止力──そして軍備管理、不拡散、拡散対抗の要件──を維持するのに必須の能力を持てるようにする。大統領は、核施設群を近代化し、核実験をすることなく安全で、セキュリティーの確保された、効果的な核抑止力を維持することにコミットしている。
大統領は、保有核の維持とインフラ投資のために、2011会計年度の予算として70億ドルを要求した。これは、2010会計年度と比べ10%近い増額である。下に示してあるように、この政権は、核兵器施設群を維持し、近代化するために向こう10年間で800億を投資する意向である。
表 保有核兵器・インフラコストの見積もり
(単位:10億ドル(その年のドル))会計年度 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 合計 6.4 7.0 7.0 7.1 7.4 7.7 8.4 8.9 9.0 8.7 8.8