核情報

2005.3.8

地中貫通型は放射能をまき散らす ─ エネルギー省開発責任者

地中貫通核型兵器というと、地中深くまで潜っていって爆発を起こして地下施設を破壊し、地表には放射能が漏れ出てこない「便利な」核兵器という印象がありますが、米国の核兵器の開発の責任を負うエネルギー省国家核安全保障局のトップは3月3日、放射能を帯びた大量の破片を生み出さないような核兵器はないと答え次のように述べました。

「われわれ政権内にいるものが、全ての放射性降下物を閉じこめられるほど深く潜ることのできる核爆弾を持つことが可能だと思われていたとしたら、私の方で正確さが欠けていたことについて本当にお詫びしなければなりません。」

地中貫通型というと、爆弾の先にドリルでもついていて、何百メートルも潜っていきそうですが、要するに、爆弾の殻を先のとがった形状で固いものにし、高いところから落ちる際の衝撃で少し地中に潜らせようというものです。爆弾の長さのせいぜい4倍ぐらいが潜る限度で、地面には当然のことながら大きな穴が開いてしまいます。ツンドラでの実験で、地面に頭の部分が突き刺さって、お尻の部分が地表に出たままという状態を示す写真もあります。うまく潜ってくれても、3メートルの爆弾で、深さ12メートルということになります。ですから放射能がまき散らされない訳はありません。放射能を漏らさない「便利な」核兵器ができるような話しをして、「敵」に恐れを抱かせたり、議会から予算をとりやすくしたりするとをねらう一方で、それだと、簡単に使おうという力が働くから、そういう「便利な」兵器の開発は許さないと批判されると、今度は、いや、そんな「便利な」ものなど元々考えていないと説明せざるを得なくなります。

 2003年5月米国上下両院は低威力の核兵器の開発を禁止した条項を廃止する決定をしましたが、「低威力地中貫通型核兵器」開発計画というのは現在のところ存在しません。計画したとしても、上述「貫通」の物理的限界からいって、放射能はやはりばらまかれるし、破壊力は小さくなるしでは、「有用性」のないものになってしまいます。

 以下は3月2日下院軍事委員会小委員会での「堅固な地中貫通型核兵器(RNEP)」を巡るやりとりです。

「堅固な(robust)」というのは、高いところから落下の衝撃を受けてもそれに耐えられるという意味です。RNEPのフィージビリティー・スタディーの対象とされているのは、B61−11(TNT火薬換算で300キロトン級)とB83(1−2メガトン=1000−2000キロトン級)です。広島は、16キロトンでした。

エレン・タウシャー議員(民主党:カリフォルニア)

「われわれが投下できるRNEPで、どんな大きさにしろ、放射能を帯びた大量の破片を生み出さないようにする方法がありますか。」

リントン・ブルックス国家核安全保障局長官

「いいえ、ありません。」

「われわれ政権内にいるものが、全ての放射性降下物を閉じこめられるほど深く潜ることのできる核爆弾を持つことが可能だと思わせるようなことを言っていたとしたら、私の方で正確さが欠けていたことについて本当にお詫びしなければなりません。」

「物理的原理から言って、そのようなことが現実化するとは思えません。それがわれわれのやろうとしていることでないことは間違いありません。われわれが地下に潜らせようとしているのは、地下深くまでエネルギーが届いて、そこに埋設された施設を脅威にさらせるようにするためです。」

「われわれは威力を変えようとはしていません。」

「あるのは核兵器です。広範な地域に膨大な破壊力を持つ核兵器です。正気の人なら、そういう核兵器を簡単に使ったりしません。」

「本当に破壊的でない核兵器なんて考えは、とにかく狂っているということをはっきりさせておきたいと思います。」

注: 昨年11月20日(土曜日)に米国議会を通過した2005年度予算(04年10月1日からのもの)では、エネルギー省のRNEP予算(要求2755万7000ドル)が完全に削除された。核拡散防止の努力に逆行するものだとの批判があったからだ。だが政府は、これであきらめることなく、2006年度予算として、400万ドルを要求している。さらに、空軍の関連予算として450万ドルを要求している。後者には、B2爆撃機をRNEP搭載用に改造するための研究に要するものが含まれる。タウシャー議員はエドワード・マーキー議員(民主党:マサチューセッツ州)らとともにこの予算に反対する下院議員の署名を集めている。─署名呼びかけ(英文pdf, 108kb)

参考

地中貫通型核兵器・小型核・核実験準備態勢基礎情報




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