インドへの原子力輸出を可能にするためのNSGガイドライン修正案を米国のNGO「軍部管理軍縮協会(ACA)」が入手してそのウェッブサイトに載せました。インドが核実験をした際には協力を停止するとの条項さえなく、米印原子力協力協定や8月1日のIAEA理事会で承認された保障措置協定の問題点を改善するための文言は一切入っていません。
この修正案は、8月21−22日の原子力供給国の臨時総会で検討され、その後、9月初めに再度開かれる総会で最終案が決定される予定と報じられています。そもそも、NPT未加盟のインドには原子力協力をするべきではないので、米印原子力協力を許すためのNSG修正は一切なされるべきではなく、米国提出の修正案など議論する必要もないと言えますが、下に粗訳を載せました。
参考:
- 原子力供給国グループ(NSG)の概要 外務省
- NSG現行ガイドライン(英文:IAEAの配布文書 INFCIRC/254/Rev.9/Part 1a Date: 7 November 2007, pdf)
- インドとIAEAの保障措置協定案の問題点核情報
- インドの主張を全面的に飲んだ米印原子力協力協定 核情報 (協定、関連条約・法規の解説・抜粋訳など)
- オーストリア、IAEA理事会で、インド・IAEA保障措置協定を鋭く批判
- NPT運命の夏──2008年8月 NPTを根底から覆す米印原子力協力協定──問題点の整理
インドとの民生用原子力協力に関するステートメント
(NSGに対する米国の提案テキスト案 2008年8月 英文)
- xx日におけるxx総会において、原子力供給国グル―プの参加国は、以下のように合意した。参加国は:
a. 効果的な不拡散体制と核不拡散条約の目的の可能な限り広範な実施とに寄与することを欲する。
b. 核兵器のさらなる拡散を制限することを求める。
c. 伝統的な核不拡散体制の外にいる国々の不拡散のコミットメントと行動とに建設的に影響を与えるメカニズムを追求することを望む。
d. 平和利用目的の原子力移転のための保障措置及び輸出規制の基本的原則を推進することを求める。
e. 持続的成長と繁栄のためのクリーンで信頼できるエネルギー源を世界が必要としていることを認識する。- この点において、参加国は、不拡散体制に寄与するパートナーとしてインドが自主的に取ってきた措置に留意し、以下の不拡散のコミットメントと行動に関しインドの努力を歓迎する。
a. 段階的な形で民生用核施設を分離し、その民生用核施設に関し、IAEAに申告することに決めた。
b. 民生用核施設に対する保障措置の適用に関し、IAEAのスタンダード、原則、及び、慣行(理事会文書GOV/1621を含む(*訳注1))に従った保障措置協定についてIAEAと交渉し、その理事会の承認を得ている。
c. インドの民生用核施設に関し追加議定書に署名し、これを順守することを約束している。
d. 濃縮及び再処理技術をすでに有していない国に対し、これらを移転することを控えている。
e. 多国間で規制されている核及び核関連物質・機器・技術の移転を効果的に規制できる国内輸出規制システムを採用している。
f. その輸出規制リストを、原子力供給国グループのものと一致させ、NSGのガイドラインを遵守することを約束している。
g. 核実験に関する一方的モラトリアムを継続しており、また、多国間の[核兵器用]核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の締結に向けて他の国々と協力する用意があると宣言している。 (*訳注2)- 上記に鑑み、参加国政府は、IAEAの保障措置下のインドの民生用原子力計画との民生用原子力協力に関する以下の方針を採用した。
a. Infcirc/254 (Rev. 9) パート1のパラグラフ4(a), 4(b) 及び 4(c)にかかわらず、参加国政府は、インドに対し、トリガー・リスト品目及び/または関連技術を、平和利用目的かつ保障措置下の民生用原子力施設での使用のために移転しても良い。ただし、移転がパート1の他のすべての規定に従うものとする。
b. パート2のパラグラフ4(b)にかかわらず、参加国は、核関連の二重目的機器などを、IAEAの保障措置下の民生用原子力施設において平和目的で使用するために移転しても良い。ただし、移転がパート2の他のすべての規定に従うものとする。
c. 参加国は、ガイドラインの実施に関連した問題に関し、関連の国際的コミットメント及びインドとの間の二国間協定について考慮しながら、コンタクトを維持し、正規のルートで協議する。- 非参加国でInfcirc/254 のパート1及びパート2を遵守している国々がガイドラインの実施において最新の状態であろうとするその努力を容易にするため、NSGの議長国は、すべての非参加遵守国とともに、非差別的な形で、提案されているガイドライン修正について検討し、非参加遵守国として修正に関してコメントしたいことがあればそうするよう求めることが要請される。提案されている修正に関する決定へのインドの参加は、インドによるその実施を容易にする。
- NSGのポイント・オブ・コンタクト(*訳注3)は、このステートメントをIAEA事務局長に対し、すべての参加国に配布するようにとの要請とともに、提出するよう要請される。
訳注:
- パキスタンからIAEA理事会国及び原子力供給国グループ参加国に送られた書簡 核情報 の注3「部外秘文書」GOV/1621(1973年8月)を参照
- 最低限の条件は? 核情報を参照
- 事務局機能を果たす日本のこと。