核情報

2011.10.14 

原子力政策新大綱策定会議は、関電の説明会?

10月3日に開かれた原子力政策新大綱策定会議で、電気事業連合会の代表が、福島第一原子力発電所では「非常用ディーゼル発電機は全て正常に自動起動し、原子炉の冷却に必要な機器は正常に動作した」と原子炉が地震に耐えたと断定し、事故の原因をすべて津波のせいとした上で、関西電力でいかにすばらしい対策が講じられているかを強調しました。電事連代表というのは、6月29日の関西電力株主総会で、原発はテポドンの着弾にも耐えられるほど堅固だとの趣旨の発言をした同社の豊松秀己常務取締役でした。



  1. 3分ルールを破る裏技?
  2. 時間の有効利用
  3. 津波の高さの水増し?
  4. 関西電力豊松秀己常務取締役テポドン発言 2011年6月29日関西電力株主総会



3分ルールを破る裏技?

新大綱策定会議には、電気事業連合会会長が参加しています。会長は、以前は清水正孝元東京電力社長でしたが、事故の後、八木誠関西電力社長に替わっています。八木社長が策定会議の委員として普通に発言すれば、3分ルールというのがあって、発言が制限されます。例えば、1月14日の第2回会合において、近藤駿介議長(原子力委員会委員長)が、原子力資料情報室共同代表の伴英幸委員に対し、「一応3分ルールですので、もうそろそろまとめてください」と警告しています。ところが、策定会議の事務局が、電事連代表として豊松常務を招聘して、「原子力発電所における取り組み状況」(pdf)について説明を求めれば、常務は時間を掛けて滔々と、原子炉の堅固さと関電の素晴らしさについて話せるわけです。

後に豊田常務は、地震そのものの影響について新たな事実が判明すれば考慮するとの趣旨の説明をしていますが、そもそも、事故について電事連側の説明を聞くのであれば、最初から、東京電力や電事連の説明について批判的な専門家を呼んで、同じだけの時間を掛けて説明してもらうべきでしょう。

時間の有効利用

時間配分の奇妙さは、政府説明についても言えます。「東京電力福島原子力発電所の事故から現在までに得られた教訓とその取組みの進捗状況について(PDF:224 KB)」という内閣府参与による説明は、東京電力原発震災リンク集にも載せてある「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書─東京電力福島原子力発電所の事故について─(6月7日公表)」と「国際原子力機関に対する日本国政府の追加報告書-東京電力福島原子力発電所の事故について(第2報) (2011年9月11日)」の「教訓」部分の抜き書きについてのものです。資料を事前に配布しているのですから、読んでいることを前提に質疑をすればいいはずです。ところが、この種の審議会の常で、ここにこう書いてありますとの説明が延々続きました。せっかくそれぞれ多忙な委員が集まっているのだから時間をもう少し有効に使うべきでしょう。

津波の高さの水増し?

なおこの参与による説明は、「福島原子力発電所を襲った津波については、設置許可上の設計及びその後の評価による想定高さを大幅に超える14〜15mの規模であった」と述べていますが、これは、元の報告書にあった津波高と浸水高の混同を反映したもので、原子力委員会として、訂正・解説すべきでしょう。通常海面から岸に到着した時点での高さを測ったのが、「津波高」で、これは「10メートル以上」とされています。想定は、5.7メートルでした。これに対し、押し寄せた津波が陸地でどのぐらいの高さに達したか、つまりどの高さまで浸水したかを示すのが「浸水高」です。建物に残された痕跡と通常海面との差異です。これが14-15メートル。想定は、約10メートルでした。(このほか、陸地の地形により水が駆け上がった場所での到達点を示す「遡上高」もあります。)ところが、東電や政府の説明のために、津波高の想定5.7メートルと浸水高14〜15メートルを比較する記述が多くなってしまっています。

参考

関西電力豊松秀己常務取締役テポドン発言 2011年6月29日関西電力株主総会

質問:北朝鮮が原発に対して、テポドンを打ってきたらどうしますかね。その対策を教えてください。・・・

司会:ありがとうございます。今のご質問、テロ攻撃に対する対応という風に理解しておりますが、その件につきましては、豊松常務の方から答弁いただきます。

回答:常務の豊松でございます。まず、テロ攻撃につきましては、発電所侵入に対しましては、まず、先に侵入についてお話ししますと、監視装置などを設置して、何かあれば、すぐ治安機関に通報すると、それから、緊急時対策本部を対策本部を設置すると言う処置を決めています。何かあった場合には、緊急マニュアル、これはオープンにできないのですが、そういう緊急マニュアルを作りまして、そういう侵入があった場合には、どういう対応するかを綿密に決め、訓練をしております。仮に大規模テロのような可能性がある場合には発電所にテロ対策本部を設置しまして、その後、国が緊急事態を設定された場合には、例えば先ほどのテポドンのような場合には、発電所に国民保護対策本部を作り、基本的には国と中心となって対応するということになりますけれども、いろんな段階で事前に進入を阻止していきたいということであります。
仮に着弾がありましても、原発の場合には、堅固な、堅い、立派な格納容器等を持っておりますので、どういう状況になれば被害があるかとかいうのをいろいろ検討は致しておりますけれども、基本的には、いろいろなデータとかそういうのを持っいることと、そういう治安機関に通報して、治安機関と一緒に対応するということになる訳でございます。

出典:関西電力株主総会2011質疑応答02.wmv

(上の発言は、8:00頃から。聞き取りにくい部分もあるがほぼ再現)

参考


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