核情報

2015. 1.30

見えない新原子力委員会の役割

 昨年、12月16日、原子力委員会設置法の一部を改正する法律が施行されました。福島原子力発電所の事故の後、原子力委員会の在り方ついて議論された結果、委員の数を5人から3人に縮小すると同時に、その役割を原子力の平和利用(軍事利用しないこと)の確保と放射性廃棄物の処理処分などに限るという提案がされました。しかし、設置法の改正では、そのことは明らかではありません。また、施行同日に開かれた原子力委員会定例会議でのやり取りを見ても、新しい委員会が何をしようとしているのか見えてきません。

 以下、改正の文言と、12月16日の原子力委員会定例会議における山口俊一科学技術政策担当大臣及び岡芳明原子力委員会委員長の発言、そして、在り方見直しのための有識者会議の提案の平和利用関連部分を抜粋・整理しておきましょう。


  1. 改正事項
  2. 山口科学技術政策担当大臣挨拶
  3. 岡原子力委員会委員長談話
  4. 「原子力委員会の在り方見直しについて」
  5. 参考

改正事項

 (年末に施行となった2014年6月27日の改正の主眼は、委員の人数の削減の他は、以下の色つきの部分を削除するということです。)

(所掌事務)

第二条 委員会は、次の各号に掲げる事項(安全の確保のうちその実施に関するものを除く。)について企画し、審議し、及び決定する。

一 原子力利用に関する政策に関すること。

二 関係行政機関の原子力利用に関する事務の調整に関すること。

三 関係行政機関の原子力利用に関する経費の見積り及び配分計画に関すること。

四 核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること。

五 原子力利用に関する試験及び研究の助成に関すること。

六 原子力利用に関する研究者及び技術者の養成及び訓練(大学における教授及び研究に係るものを除く。)に関すること。

七 原子力利用に関する資料の収集、統計の作成、及び調査に関すること。

八 前各号に掲げるもののほか、原子力利用に関する重要事項に関すること。

山口科学技術政策担当大臣挨拶

 新たな原子力委員会におきましては、原子力行政の民主的な運営を図るとの原点に立ち戻りまして、原子力に対する国民の信頼を回復することを目指していただきたいと考えております。そのためには今後の原子力の研究、開発及び利用の目指す方向とあり方を示す基本的考え方を幅広い意見を聞きながら取りまとめ、実施を担う関係各省に対してしっかりと示していただきたいと考えております。このことは改正法案審議の過程で国会からも求められておりますので、早急に着手していただきたいと思っております。こうした基本的な方向を打ち出しながら、関係各省が原子力の施策を実施する上でのまさに羅針盤としての役割を十分に果たしていただきますようにお願いをして私からの御挨拶といたします。

岡原子力委員会委員長談話

 新たな原子力委員会においては、原子力基本法にある「原子力行政の民主的な運営を図る」との原点に立ち戻り、公正・透明な運営をもって国民の信頼を回復することを目指します。その上で、原子力の平和利用、放射性廃棄物の処理・処分等の原子力利用に関する政策の重要事項に焦点を当てて、国民の目線で取り組んでまいります。また、これまで原子力委員会は網羅的かつ詳細な長期計画や「原子力政策大綱」を作成してきましたが、新たな原子力委員会では、将来を展望する新たな視点から、原子力利用の在り方、そのための研究活動、人材の養成・確保等の幅広い分野を対象とした基本的考え方を策定いたします。この基本的考え方に基づき、必要に応じて今後の取組等に関する提言等を示すことにより、具体的な施策の実施を促していきます。……我が国は、引き続き、原子力の平和利用を担保する国際約束を遵守していくとともに、原子力安全や核セキュリティに係る取組を率先して推進し、国際社会における原子力利用について高い水準の安全と核不拡散・核セキュリティを確保する必要があります。……

「原子力委員会の在り方見直しについて」

(有識者会議:2013年12月10日)

B平和利用に関する政策について

 我が国が原子力利用を平和目的に限って行うに当たり、プルトニウム利用・管理の透明性の向上のための取組は今後とも重要な事務の一つであり、これを実施する意義がある。平和利用、核不拡散等に係る政策の観点から、ウラン濃縮を含む核燃料サイクル政策等についても独自の立場から意見を言うことが考えられる。

 なお、海外プルトニウムの保管量の確認は、保障措置における国内プルトニウムの保管量の把握と併せ、原子炉の平和目的利用の審査を行っている原子力規制委員会が、原子炉等規制法に基づく報告を徴収することなどにより、法的根拠を有したものとすることが望ましい。

 また、現在、原子力委員会が行っているプルトニウム利用目的の妥当性の確認(将来のプルトニウム利用計画の確認)は、電気事業者等の公表資料をもとに行うのではなく、原子力委員会設置法に基づき、経済産業省、文部科学省を通じて電気事業者等から必要な資料の提出を求めるなど、根拠を明らかにした形での確認とすることが望ましい。……

参考


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