核情報

2018. 7. 6

MOXは滅びつつある技術だ──米専門家、国会議員に

6月27日、衆議院第2議員会館で開かれた国会議員との意見交換会「日米原子力協定と核燃サイクル、アジアの核不拡散政策に関する米著名識者との意見交換会」の米側発言者メモ第2弾。アラン・クーパーマン准教授(テキサス大学オースティン校 核拡散防止プロジェクト NPPP.org )の発言メモを当人の了解を得て訳出しました。

  • この1年間、私は、MOX製造と熱中性子炉[高速炉でない普通の原発]におけるMOX使用に関する初めての世界的比較研究を率いてきた。日本を含む7カ国が対象だ。私たちは、それぞれの国において、現地調査を行った。来月、その結果が本として出版されることになっている。 www.Pu4Energy.com にもアップされる(日本語版のサイトのリンクも)。他国の経験は、日本がその燃料サイクルやプルトニウム保有問題について重要な決定を行う際に役立つだろう。

  • 結論:MOXは滅びつつある技術だ

    • 歴史的に、7カ国が熱中性子炉での商業的MOX使用に関わってきた:3カ国がMOX燃料を製造し、使用した(ベルギー、ドイツ、フランス);3カ国は使用だけした(スイス、オランダ、日本);1カ国は、製造だけした(英国)。
    • 今日、7カ国のうち5カ国がMOXを完全に放棄することを決めている: ドイツ、英国、ベルギー、オランダ、スイス。2カ国だけが継続している:フランス(製造及び使用)、そして日本(使用)。
  • 教訓: MOX燃料は熱中性子炉では低濃縮ウランと同様にうまく使える。しかし、五つの大きな問題がある。

  1. 経済性: MOX燃料は低濃縮ウランより製造費用がずっと高い。3~10倍。これには二つの理由がある。

    1. 再処理をして、MOX燃料を製造するには金がかかる。
    2. たとえプルトニウムがタダだとしても、MOX燃料製造には、低濃縮ウラン燃料の場合の少なくとも3倍の費用がかかる。これは主としてプルトニウムの毒性のため、高額の安全上の措置が必要なためだ(空気浄化、グローブ・ボックス、自動化、事故の後の除染など)
  2. 製造欠陥問題: MOX工場の半分以上は、ひどい運転実績に直面したり、永久閉鎖に至ったりしている(例えば、セラフィールドMOX工場は、その製造能力のわずか1%の製造しかしないまま閉鎖となった)。これはMOX製造コストの高いコストを削減しようとしたことが裏目にでた結果であることが多い。

  3. 論争: MOX使用と再処理は、低濃縮ウランのワンススルー・サイクルよりずっと論議を呼ぶ。例えば、ドイツ、ベルギー、そして日本(柏崎刈羽原発の住民投票はMOXを禁止したが原子炉の閉鎖は要求していない)。MOXは反原発世論を高める。

  4. 使用済みMOX: 使用済みMOX燃料を再処理してプルトニウムを再度リサイクルすることは技術的には可能だ。しかし、あまりにも高くつき効率が悪いため、だれもそんなことをしようとしない。となると、使用済みMOX燃料が残る。これは使用済み低濃縮ウラン燃料よりずっと高温で、処分を複雑にする。使用済みMOX燃料を早期に処分しようとすると、その熱のため、処分場で必要なスペースがずっと大きくなる。必要なスペースを減らすため冷えるのを待つと(100年間)、処分場の完了をずっと遅らせることになる。

  5. セキュリティー: 分離済みプルトニウムと未使用MOX燃料の製造過程及び輸送中の保障措置と物理的防護は、核拡散や核テロの防止を確実なものにするには極めて不十分だ。

  • 日本は、MOX利用計画を続けるのではなく、そのプルトニウムのMOX以外の処分方法を追求すべきだ。
    国際的な圧力があるからというのではなく、その方がより安全かつ迅速で、セキュリティー上好ましいからだ。米国エネルギー省は、このような決定を最近行った。日本は、このオプションを追求すべきだ。次のような国際的協力のメカニズムを通じて:

    • PMEG (Plutonium Management Experts Group) 米・日プルトニウム管理専門家グループ
    • IPMEG (International Plutonium Management Experts Group) 国際プルトニウム管理専門家グループ(米・英・仏との)

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