NPT再検討会議における再処理規制要求の声(抜粋)
1. アナン国連事務総長
5月2日NPT再検討会議開会セッション 原文pdf
[大都市の一つで核爆発が起きてしまった場合、各国の指導者は]
「どうしてこんなことになったのか?良心に照らして、やましさはないか?リスクを減らすための体制を強化する上で、他にやれたことはなかっただろうか?」と自問しなければならなくなるだろう。・・・
原子力がヤヌスのような性格を持つという問題に真剣に取り組まなければならない。[ウラン濃縮と再処理という]燃料サイクルのもっとも機微な部分を何十もの国が開発し、短期間で核兵器を作るテクノロジーを持ってしまえば、核不拡散体制は維持することができなくなる。そして、もちろん、一つの国がそのような道を進めば、他の国も、自分たちも同じことをしなければと考えてしまう。そうなればあらゆるリスク−−核事故、核の違法取り引き、テロリストによる使用、そして、国家自体による使用のリスク−−が高まることになる。
これを防ぐには、平和利用の権利と核不拡散という命題とを調和させる永続的な道を見いださなければならない。平和目的のために原子力を開発し使用するという紛う方なき権利を行使しようとする国々は、「核兵器を作るのに使用されるかもしれない能力を開発することによってのみそれが可能だ」と主張してはならない。同時に、原子力の開発の権利を行使しようとする国々に、「原子力の恩恵に浴する唯一の道は国内に燃料サイクル能力を持つことだ」と感じさせるべきでもない。
最初のステップは、各国が燃料サイクル施設の開発を自発的に放棄するようにインセンティブを作り出す合意を促進することでなければならない。私は、IAEAとそのモハメド・エルバラダイ事務局長がこの極めて重要な問題にコンセンサスを得ようとして努力していることを称賛するとともに、すべての国が同じように努力するよう求める。
2. エルバラダイIAEA事務局長
5月2日NPT再検討会議開会セッション 原文pdf
核燃料サイクルにおける核拡散面でセンシティブな部分−−ウラン濃縮とプルトニウム分離をともなう活動−−についてもっと良いコントロールが必要である。経験が示しているとおり、核物質の効果的なコントロールは、核兵器開発を防ぐ上での「隘路」である。核兵器利用可能物質を製造できる施設のコントロールの改善が、安全保障の「余裕」の増大に向けて、大きな意味を持つことは疑いを入れない。
ここではっきりさせておかなければならないことがある。それは、「核燃料サイクルのコントロールの強化と、原子力の平和利用の拡大との間には、矛盾はない」ということである。実際、核拡散のリスクを減らすことによって、原子力の平和利用用途の拡大への準備をすることができるのである。私には、核燃料サイクルのコントロールの最善の仕組みがどのようなものになるかを確言することはできない。しかし、今日のものとは違うものになるべきだということについては確信している。何にもまして、それは、公正で効果的なものでなければならない。
[国連改革に関する]『脅威・挑戦・変革に関するハイレベル・パネル』は・・・[ウラン濃縮と再処理についての]取り決めについて交渉が行われている間、新規の燃料サイクル施設に関する自発的な期間限定のモラトリアムを実施するようにとの要請−−以前に私も行った提案−−を行っている。このようなモラトリアムは、国際社会が体制の脆弱性に対処する意志があることを示すものとなる。それはまた、すべての関係者の分析・対話のための機会を提供することになる。
3. 4人のノーベル賞受賞者やペリー元米国防長官など27人 原文へ
5月5日発表要請書
国際社会は、核兵器に利用できる世界の核分裂性物質─高濃縮ウラン(HEU)及び分離済みプルトニウム─の量の最小化を、優先順位の高いものにすべきである。それは、核軍縮と核不拡散を推進するとともに、テロリストが核兵器を手に入れるのを防ぐことにつながるだろう。しかし、日本は、工業規模の分離済みプルトニウムの製造者として、いくつかの核保有国の仲間入りをしようとしている。核不拡散体制がその最大の試練を迎えている時に、日本は、六ヶ所再処理工場の運転開始の現在の計画を進めるべきではない。
4. NGOプレゼンテーション 原文pdf
5月11日NPT再検討会議特別セッション
プルトニウム・エネルギーの悪夢は、核兵器国に限られたものではない。この文脈において、非核兵器国における初めての商業規模工場として2007年に運転を開始する予定の日本の六ケ所再処理工場が放棄されることが極めて重要である。
5. 世界各国の平和団体の代表者など18カ国の約180人
5月24日発表要請書
六ヶ所再処理工場は、年間8トンのプルトニウムを分離する能力を持つことになる。原爆1000発を作るのに十分な量である。この生産がまったく必要のないものであることは、日本が、すでに、国内とヨーロッパに置かれたものを合わせて40トン以上のプルトニウムを持っていることが如実に示している。原爆5000発を作るのに十分な量である
これ以上の核兵器利用可能物質を日本が生産し蓄積すれば、それは、北東アジアにおける核拡散問題をさらに複雑なものにすることになる。工場の運転が開始されれば、それは、核兵器(及び核兵器用物質)の取得を追求している国々に「日本の例」という口実を与えることになる。
参考:
6. 兒島伊佐美日本原燃社長
5月30日定例記者懇談会(電気新聞2005年6月3日)
上記3.について:
「雑駁に言えば”他の国と一緒にするな”ということ。」
「核の平和利用によって人類がどれほどの恩恵を受けるのか。平和利用できちんと(原子力開発を)進めるとの結論が出なかったのは残念だが、われわれの施設はIAEA(国際原子力機関)によるフルスコープの査察を受けている。それだけ透明だ。」
7.秋本勇巳三菱マテリアル名誉顧問 電気新聞2005年6月3日付け
「米の”核ロビー”は核拡散の危険性をけん伝し続けて、存在力を維持しようとする。」