- 印刷用加筆版⇒核の傘を示すためにB1爆撃機展開?環境に支配される記者の思考(pdf)
北朝鮮の核実験に対する措置として米国のB1爆撃2機が韓国上空を飛行したことに関し、核搭載能力を持つ爆撃機の飛行は核の傘を示すものだとの報道がありました。しかし、同機の核搭載能力は2011年に物理的に無効化されており、この爆撃機を飛ばしたということは、核実験に対する措置としては核は必要ないとの米国の姿勢を示すものと見た方がいいでしょう。
- 追記:米国科学者連合(FAS)の核問題専門家ハンス・クリステンセンによると、B52も少なくとも2010年以降は自由落下核爆弾搭載の任務から外されていて、現在、米「国家安核全保障局(NNSA)」の核爆弾搭載可能爆撃機のリストにも載っていない。同機は空中発射巡航ミサイル(ALCM)搭載能力は維持している。また、2020年代末には新型空中発射長距離巡航ミサイル(LRSO)が搭載されることになっている。
出典:B-52 Bomber No Longer Delivers Nuclear Gravity Bombs (2017年5月25日)
米国空軍のサイトのB-1Bランサー(2015年12月16日)という項目は次のように説明しています。
米国は、1994年にB1を核の任務から外した。空軍は、その後同機の核能力を維持するために予算を使うことはなかったが、B1は2007年まで核搭載能力を持つ重爆撃機とみなされていた。通常兵器用のみとするための転換作業が元々のSTART条約の下で始まったのは2007年11月になってからで、新START条約の下で2011年3月に完了した。この転換を可能にするために二段階の措置が取られた。
空軍のサイトはこう述べた後、
- 空中発射核巡航ミサイル(ALCM)の取り付けを溶接によって不能にする、
- 爆弾倉の核兵器用投下準備シグナル発信ケーブルを外す、
という2段階の措置によって、核搭載能力を物理的に無効にしたことを解説しています。
米国科学者連合(FAS)の核問題専門家ハンス・クリステンセンは、再保証と抑止のための非核爆撃機(2016年9月13日)で次のように論評しています。
非核限定の戦略爆撃機を拡大抑止の任務支援に使うということは核兵器の役割を減らすという米国の軍事戦略の新しい段階を示すものである
以下に示す日韓両国の報道の例は、抑止=核の傘とする現実無視の硬直的思考からくるものでしょうか。
- B1爆撃機展開、空母を演習に…米が北をけん制 読売新聞 9月12日
B1戦略爆撃機は航続距離が長く、核爆弾や巡航ミサイルなど大量の武器を搭載可能。……韓両軍が機密扱いのB1爆撃機の展開をあえて公開するのは、攻撃が常時可能との警告を北朝鮮に送るためだ。
- 米戦略爆撃機B1B、韓国に派遣 「核の傘」を誇示 朝日新聞 2016年9月13日
米太平洋軍は13日、北朝鮮が9日に5度目の核実験を行ったことを受け、核兵器も搭載できる戦略爆撃機B1Bを韓国に派遣した。米国の「核の傘」を見せつけて北朝鮮を牽制(けんせい)すると同時に、韓国の一部で広がる「核武装論」を抑え込む狙いがあるとみられる。
- 「核の傘」米B1B超音速戦略爆撃機、天候不良で開かず 朝鮮日報日本語版 9月13日
米国は、B1B超音速戦略爆撃機2機を12日午前に韓半島(朝鮮半島)上空へ緊急出撃させる計画を立てていたが、出発地のグアム基地の気象条件が悪化したため、出撃を延期した。米国は、北朝鮮による核ミサイルの脅しに対し、「核の傘」などいわゆる「拡大抑止」を通して同盟国たる韓国の安全を保障すると公言してきた。しかしその「核の傘」が、天候のせいで開かれないという状況になったわけだ。……
戦略爆撃機の三銃士ことB1、B2、B52は、韓半島有事の際には真っ先に出動して北朝鮮の指揮所や中心施設を精密攻撃できる、最も重要な「核の傘」の戦略部隊だ。
- 米国戦略爆撃機B-1B、韓半島へ出撃 中央日報日本語版 2016年09月13日
核爆弾24発(W-83)を積載できるB-1B超音速戦略爆撃機はB-52・B-2とともに米国の3大戦略爆撃機だ。最大24発の巡航ミサイルを装着して最大マッハ1.2の速度