核情報

2006.3.10

六ヶ所再処理工場における保障措置:機能するのだろうか

憂慮する科学者同盟(UCS) (米国ワシントンDC)
上級スタッフ科学者
エドウィン・ライマン博士
2006年2月

日本政府は、六ヶ所再処理工場は厳しい国際原子力機関(IAEA)の保障措置が実施されるから脅威にはならないと主張する。しかし、IAEAの保障措置ゴールを満たすために六ヶ所再処理工場のような大きさの再処理工場に保障措置を講じることが技術的に可能かということについては以前から論争がある。プルトニウムに対するIAEAの保障措置の主要ゴールは、一ヶ月以内に1「有意量(SQ)」(8キログラム)の転用を探知する能力である。しかし、IAEAは、ずっと以前に、このゴールは、六ヶ所再処理工場よりもずっと小さなプラントに適用された通常の計量管理方法──普通、年に1度の運転停止と在庫検認だった──では達成できそうにないことを認めている。

六ヶ所再処理工場のような大きさの工場に置いてプルトニウムの行方を追い続けることがなぜそれほど困難なのかという理由は単純である。工場のさまざまな部分にあるプルトニウムの在庫量を計測する技術が8キログラム程度の不足──不明量(MUF=Material unaccounted for)として知られる──が実際の転用のせいなのか、単なるランダムな測定誤差のせいなのかを確認できるほど正確ではないからである。六ヶ所再処理工場のような工場──年間、8000キログラムのプルトニウムを処理しうる──では、8キログラム、つまりは年間取扱量の0.1%の転用を探知するというのは、虫眼鏡を使って干し草の山の中の針を探すようなものである。

六ヶ所再処理工場の場合、保障措置には、年に1度の物理的な在庫検認に加えて、毎月、1度の中間在庫検認と、2度か3度の短い間隔の中間検認が含まれる。しかし、工場を7日に1度の割合で運転中止にするわけにはいかないから、これらの追加的検認は、工場が運転している状態で行われる。工場のプロセス区域内に置かれた機器を使って、それぞれの区域にある核物質を計測するのである。問題は、これらの計測システムが、比較的高い不確実性を抱えているという点にある。たとえば、工場の中のプルトニウムとウランの溶液が粉末に転換される部分においてプルトニウムを計測するのに使われるシステムは、6%の計測誤差を有している(1)。7日に1度の在庫検認があるとすると、この期間のプルトニウム取扱量は、工場がその期間の約75%操業するとして、約200キログラムとなる。しかし、統計分析によると、95%の信頼度(及び5%の誤警報率)で転用が実際に起きたと言えるようになるには、最低約40キログラムが転用されなければならない。従って、1ヶ月の間には、160キログラム──20「有意量(SQ)」のプルトニウム──が転用されなければ、IAEAは、転用が起きたと合理的に結論づけることはできないのである。従って、1ヶ月に1「有意量(SQ)」だけでも転用が起きれば探知するという保障措置のゴールは満たすことができない。

IAEAは、六ヶ所再処理工場の保障措置システムがこの検認ゴールを達成することができるとは信じていないことを示す証拠がある。毎年出されるIAEAの「保障措置実施報告書」は、「公用のみ」の文書で、普通、一般には手に入らない。「保障措置ステートメント」として知られる要約だけが公表される。しかし、「2004年保障措置実施報告書」は、インターネットに載せられ、一般に手に入るものとなった。

この文書には、六ヶ所再処理工場における「強化された保障措置システム」について簡単に触れたところがあり、このシステムは「施設が悪用されておらず、未申告の再処理がない」との保証を提供すると文書は説明している(2)(訳注1)。

このステートメントが、IAEAの保障措置の結論と幾分異なる形で表現されているのが注意を引く。保障措置の結論は、「申告された核物質の非転用」及び「保障措置下にある原子炉、再処理施設、ホットセル、そして、濃縮施設における直接利用物質の未申告の製造及び分離の不在」に基づくものである(3)。言い換えると、六ヶ所再処理工場のアプローチに関する描写は、「申告された物質の非転用」の保証を提供する能力に具体的に触れていないのである。

これが意図的でない脱落なのか、IAEAが実際に、六ヶ所再処理工場の保障措置システムが保証措置下にある他の施設におけるのと同じ基準において非転用の保証を提供するだろうとの結論を出していないのかは明らかでない。しかし、IAEAは、普通、その保障措置ゴールの描写において非常に厳密であるから、脱落は、おそらくは意図的なものと思われる。(訳注2

  1. Y. Noguchi, N. Majima, H. Nakamura and T. Iwamoto, JNFL, “Material Accountancy and NDA Approach for U-Pu Co-Denitration Area at Rokkasho Reprocessing Plant,” 46th Annual Meeting of the Institute of Nuclear Materials Management, Phoenix, Arizona, July 2005.
  2. International Atomic Energy Agency, “The Safeguards Implementation Report for 2004,” paragraph 80, section C.4.4.
  3. International Atomic Energy Agency, “The Safeguards Statement for 2004,” paragraph 19.

(核情報訳)


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