核情報

2004.2.19

ブッシュの新提案と日本のプルトニウム計画

 ブッシュ大統領は、2月11日に発表した『大量破壊兵器の脅威に対する新しい措置』(原文)の中で、「『核供給国グループ』の40ヶ国は、すでに本格的で稼働しているウラン濃縮・再処理施設を持っていない国には濃縮及び再処理機器・技術を売ることを拒否すべきだと」述べました。米国の民間団体「核管理研究所」のポール・レベンサールは、日本の施設は、本格的でないし、稼働していないと指摘しています。つまり日本は計画を断念すべきだという意味です。レベンサールと別の民間団体「軍備管理協会」の主張を簡単に紹介しておきます。

核管理研究所(NCI)」のレベンサールは、2月12日に声明を出し、「原子力先進国」と「原子力発展途上国」を差別し、プルトニウムよりもウラン濃縮に力点を置くブッシュ大統領の提案の限界を批判した上で、日本についてつぎのように述べています。

しかし、大統領は、日本の萌芽期にあるプルトニウム計画の中止を求める好機を提供した。「すでに本格的で稼働しているウラン濃縮・再処理施設を持っていない国への濃縮及び再処理機器・技術」の輸出の中止を呼びかけることによって、大統領は、すくなくとも、これらの分野における米国の日本に対する援助を中止する基礎を確立した。日本には、「本格的で、稼働中の」再処理施設も、濃縮施設もないが、日本は、商業規模の再処理施設の完成に突っ走ることによって周辺諸国を非常に心配させている。施設で生産しようとしているプルトニウムは、コストの高さと、この燃料に関連した論争のため、電力業界が使うことを嫌っているものである。日本の非経済的なプルトニウム計画は、地域的及び世界的安全保障に大きな影響を与える。「ウラン濃縮や再処理は、原子力を平和目的のために利用しようとする国々には、必要はない」とする大統領のステートメントは、特に、日本にあてまる。なぜなら、長年に渡る、そして保証された米国からの低濃縮ウラン燃料の供給があるからである。
兵器級ウランも分離されたプルトニウムも、民生用の燃料として欠くことのできないものではない。どちらも、正当な民生用原子力の必要を満たすには、経済性がないうえに、危険すぎるものである。だから、どちらも、現在の核拡散防止条約(NPT)のもとで禁止すべきであり、禁止が可能である。欠けているのは、政治的意志である。

「供給国グループ」には米・露・英・仏などの核兵器国に加えて、日本・ドイツなどのほか、ベラルーシ、チェコ、トルコなども、入っています。ブッシュ大統領がどこで線引きをするつもりなのかは定かではありません。

一方、「軍備管理協会(ACA)」は、2月11日に声明を出し、危険な兵器の拡散防止努力を強化することの必要性に焦点を当てた点で大統領の提案を評価しながらも、不十分な点を指摘し、つぎのように提案しています。(原文)

「IAEA事務局長が述べているとおり、一つの有用なモデルは、健康、農業、医学、発電用原子炉などのための原子力技術へのアクセスを保証し続けながらも、プルトニウム再処理及びウラン濃縮能力を制限する新しい議定書をNPTに加えることだろう。」

また、米国自身が、核兵器用核物質生産禁止条約の締結や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効に努力すべきだとも述べています。

さらに、つぎのように先制不使用政策の重要性を指摘しています。

「米国がとるべき政策は、新しい用途のために新しい核兵器を作ろうとすることではなく、核兵器を持っていない国に対しては、核兵器を使用しないことを再確認し、紛争において、最初に核兵器を使う国にはならないと宣言することであろう。」

最後にダリル・キンボール事務局長の次ぎような言葉で結んでいます。

「長期的には、少数の国による核兵器の保有と使用の威嚇の継続は、すべての国の安全保障を脅かすものである。これらすべての分野で、米国がもっと効果的なリーダーシップを発揮しなければ、核拡散に対する闘いは、不十分なものに終わり、将来の世代に今より危険な世界を残すことになる。」


- 核供給国グループ(外務省説明)
- 毎日新聞記事
- ブッシュ大統領7つの核拡散防止措置提案



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