核情報

2004.3.19

ならず者国家は、米国にとって本当の核の脅威か?

 ブルース・ブレア

「米国防衛情報センター(CDI)」のブルース・ブレアー所長(元戦略空軍ミサイル発射要員)は、同センター発行の『ディフェンス・モニター』誌(2004年1/2月号)(原文pdf) で、ならず者国家が米国の核兵器の重要な対象となっていると考えるのは間違いで、米国の核兵器の大半はロシアをその目標にしていると説明しています。そして、今では、敵であるはずのないロシアとの核戦争を即座に遂行できる体制を維持していること自体が、偶発的核戦争の危険性をもたらし、それが米国にとって大きな脅威になっていると論じています。以下簡単に彼の論文「ならず者国家:核の目眩まし(Rogue States:Nuclear Red-Herrings)」の概要を紹介しておきます。

「ならず者国家が米国を脅かす核兵器を入手しようとしているとの議論がなされ、ならず者国家を寄せ付けないようにするためという小型核・バンカーバスター(地下施設破壊兵器)の開発に関する激しい論争が起きているが、米国の核兵器関係エスタブリッシュメントは、「悪の枢軸」には、あまり関心を払わっていない。米国の核兵器関連機関──オマハの戦略司令部からニューメキシコの核兵器管理・設計担当者に至るまで──が本当に心を奪われているのは、即座に大規模な核戦争を戦える体制に米国の核戦力をおいておくということである──ロシアを相手に。」

「米国の現在の核政策の紛れもない事実は、核兵器予算、計画、目標設定、作戦活動の99%は、今でも、この時代錯誤的なシナリオを中心に動いているということである。その正当化の論理は、冷戦への逆戻りの可能性であり、いかにばかげたものといえ、これこそが現在の核関連活動の中核にあるのである。」

ロシアが敵のリストから消えれば、核兵器の製造工場の新設、核実験再開の話も消えてしまう。また、

「新しいバンカーバスター──ならず者国家をねらうためと言うことになっているが、実際は、ロシアの二つの山の中にあるトップ・レベルの核司令部バンカーの破壊能力を獲得するためのものの──の開発の推進力も、消えてしまうだろう。」
「米ロは、世界の核兵器の総量約3万発の96%を所有している。」

「ロシアとの間の大規模核戦争を戦うという考えが、ばかげたものだという当たり前の評価を受けさえすれば、米国が現在保有する1万650発の核兵器のごくわずかな部分だけで、米国本土や同盟国、外国における所有物などに対してあり得る核の脅威すべてに十分に対処できることになるだろう。」
ロシアとの大規模な核戦争という「時代錯誤的な考えが、[ロシアから核攻撃が仕掛けられているとの警報が入ると即座に報復攻撃をかけられる]一触即発の体制を維持するという危険なやり方を永続させる。・・・たとえばオマハの司令部の司令官は、大統領に報復のオプションとその結果について説明することになるが、この説明の時間は、30秒しかない。」

「ロシアは、もやは敵ではない。この真実を否定することによってわれわれは、自らを危険にさらしている。この真実を正面から見据え、受け入れることが、大幅な核削減と真の安全保障への道を照らすことになる。」

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