核情報

2007.11.19

米国科学アカデミーの報告書、ブッシュ政権の再処理計画を批判
 「国際原子力パートナーシップ(GNEP)」の再処理計画を縮小せよ

10月29日に発表された「米国科学アカデミー(NAS)」の報告書がブッシュ政権の再処理推進計画を批判し、むしろ「新しい商業用原子力発電所の運転開始促進を最大の優先課題とすべき」であると述べました。「日本政府関係者に波紋が広がっている」(電気新聞)ようです。報告書では「もんじゅ」の経験が反面教師として触れられています。報告書プレス・リリース全訳及び本文抜粋訳を、GNEP批判の中心的論客として知られるプリンストン大学のフランク・フォンヒッペル教授の関連論文抜粋訳、11月1日の参議院会館での講演パワーポイント資料訳とともに載せました。

解説

報告書は、原子力推進支持の立場に立つ17人のメンバーが、再処理に関する研究の意義は完全に否定しないながら、「GNEPのゴールを達成するのに必要な技術に関連した知識の現状は、まだ初期の段階にあり、良く言っても、工学規模での作業を開始することを正当化できる段階でしかない」と論じている。再処理技術の商業利用に向けて大規模な投資をするぐらいなら、新たな軽水炉の建設・運転開始促進のためにお金を、という議論だ。

日本の再処理・高速増殖炉推進派は、遅ればせながら日本の政策の正しさを認識した米国が、GNEPで日本に教えを請うてきていると胸を張ってみせるが、報告書は素直に読めば日本の政策の批判にもなっており、「もんじゅ」の経験が反面教師的に取り上げられているのは皮肉である。(例えば、日本原子力文化振興財団秋元勇巳理事長「米国では原発の新設が約三十年間なかったために、原子力を再開しようとしても人材がいない。しょうがないから日本と組んでやろうとしている」(11月14日青森で開催の「地球環境と核燃料サイクル」での発言:東奥日報 2007年11月14日)

再処理で出てくる高レベル廃棄物の処分にせよ、使用済み燃料の直接処分にせよ、最終処分場ができていないことでは日米に変わりはない。日本は、文書による調査の対象とすべき候補地も決まってないのだから、予定より遅れているとはいえ、ネバダ州のヤッカ・マウンテンが処分場開発の場所として決定されている米国の方が現状では大分先を行っている。フランク・フォンヒッペル教授は、再処理で生じる高レベル廃棄物はやはり行き場がないから、再処理工場で長期貯蔵することになる、それなら、各原子力発電所で使用済み燃料を長期貯蔵しておいた方がずっと得策だと論じる。米国ではこれまで使用済み燃料を高レベル廃棄物と呼んできた。使用済み燃料の処分場がすぐにできないからと、別の高レベル廃棄物に変えてもしょうがない。

日本と異なり、使用済み燃料を再処理しないでそのまま地下に処分することを決めていた米国で、その処分場の建設計画が遅れていることや、同処分場の容量限度と使用済み燃料の発生状況からすると第二処分場の建設も早急に計画しなければならないと予測されたことなどから、パニックになった議会が新再処理政策の策定をエネルギー省に支持し、これをうけてエネルギー省が提唱したのがGNEPの再処理推進政策だ(下の略年表参照)。(1987年にババ抜き的に、ネバダに処分場を押しつけることを議会が決定した際、「公平」を保つため、第二処分場の運転まで、ネバダでの貯蔵限度を7万トンに定めた。6万3000トンが民生用使用済み燃料。残りは軍事用。実際の容量は、単純計算すれば25万2000トンに達するとの評価もある。報告書によると、2006年末 米国の原発の使用済み燃料累積発生量 約5万6000トン。年間2000トンの割合で増加しており、すべての原発が20年の運転期間延長許可を得ることになれば、現存の原子力発電所の使用済み燃料の総量は、12万トンを超えるという。)

議会による再処理見直しの動きの背景には、政府が使用済み燃料を引き取って処分するという前提で資金を出してきた電力会社が、計画の遅延のために発電所などでの貯蔵期間が伸びたことによる損失について訴訟を起こしていることがあった。行き場のなくなりそうな使用済み燃料を再処理工場に運ぶことにすれば、当座問題が解決され、また、再処理で発熱量の多い超ウラン元素などを取り除けば、処分場のスペースが節約できるという夢もあった。

そして、新しい再処理技術を開発して、プルトニウムと他の超ウラン元素とを混ぜて取り出せば、核兵器に使用しにくくなり、核拡散抵抗性が高まるとの宣伝がなされてきた。

しかし、取り出した超ウラン元素を経済的に燃やす技術が確立されておらず、しかも超ウラン元素の混合物でも核兵器ができることは報告書が指摘しているとおりだ。超ウラン元素は、高速燃焼炉で何度もリサイクルしないとなくなってくれない。一回燃やしただけで、その使用済み燃料をそのまま処分場に持っていったのでは、その発熱量は軽水炉の使用済み燃料よりずっと高いため、目論んだスペース節約は達成できない。

当初再処理を支持した議会も、パニック状態から解き放たれるにつれ、現在の計画に難色を示し始めている。ブッシュ政権は、2008年度(2007年10月−2008年9月)のエネルギー省予算案(英文) (pdf)で原子力局GNEP予算として、約3億9500万ドル(+防衛核不拡散部門1000万ドル)を要求したが、下院は1億2000万ドルしか認めなかった。上院は予算委員会は2億4200万ドルを承認したが上院全体では未承認。両院の協議が開かれないまま、暫定予算として昨年度と同じ額の1億6750万ドルを割り当てる格好となっている。(参考:エネルギー省スパージャン原子力担当次官補証言11月14日) (pdf)

報告書の主要な課題として検討されたのは、2007年1月にエネルギー省が発表したGNEP戦略計画に挙げられている次の二つの主要目的だ。

プルトニウムを分離する方式でない先進使用済み燃料リサイクル技術を開発・実証・導入する。ゴールは、いずれプルトニウムの分離を中止し、最終的に民生用の余剰プルトニウムのストックを無くし、現存の民生用使用済み燃料を減らすこと。このような先進燃料サイクル技術は、核廃棄物を相当程度減らし、その処分を単純化し、また、今世紀末まで米国の地下処分場の必要性一カ所にとどめることを保証するのに役立つだろう。

リサイクルされた使用済み燃料からの超ウラン元素を消費する先進原子炉を開発・実証・導入する。

このために、戦略計画は、次の目標を掲げている。急いで再処理だけでも始めてしまおうという勢いだ。

2008年6月までに、核燃料サイクル・センター[再処理施設]一カ所と原型先進リサイクル原子炉を一基建設するための政府・産業パートナーシップを推進するという決定パッケージをエネルギー省長官のために用意する

米国科学アカデミー(NAS)の研究機関「米国研究委員会」がエネルギー省の委託でまとめたこの報告書は、ヤッカ・マウンテンの容量限度は恣意的に法律で定めたものであること、使用済み燃料は乾式キャスク貯蔵方式を採用すれば、少なくとも100年間は安全に貯蔵できることなどを根拠に、「国内の廃棄物管理、安全保障、燃料供給の必要性などは、商業レベルの再処理と高速増殖炉を早期に導入することを正当化するのに適切なものではない」「商業レベルに近づくようなレベルでこの計画を進める経済的正当性はない」と述べている。そして、2008年決定という計画を延期するよう勧告している。

日本の再処理推進派は、GNEPが日本の再処理政策の正しさを証明したととして喧伝しているが、そもそも、プルトニウムを分離する現在の再処理方式は核拡散抵抗性が低いとの判断に立って、別の再処理方法の開発を提案し、すでにたまっているプルトニウムをできるだけ速やかに燃やす高速燃焼炉開発(増殖炉ではない)を骨格とするGNEPは、日本のこれまでの計画と対立する位置にある。一方、米国で現在提案されている新しい再処理方法というのも実は核拡散抵抗性は高くならないと報告書は述べ、再処理だけを先行させて、高速燃焼炉の建設が遅れれば、プルトニウムを含む超ウラン元素の貯蔵に費用がかかると指摘する。これはまさしく、日本の現状そのものに当てはまる。要するに日本の二の舞を踏むなということだ。

ヤッカ・マウンテン関連略年表

1974年
インドの初めての核実験(民生用に米国が提供した重水と再処理技術が利用された)
1976年
核拡散問題・経済性などから再処理政策からの撤退へ
1982年
核廃棄物政策法(NWPA) 使用済み燃料をDOEの運営する地下処分場に入れることを決定
1987年
議会、ヤッカ・マウンテンのみを処分場候補地として評価することを決定。
1998年
当初計画では運転開始予定
2002年
議会・大統領ヤッカ・マウンテンを処分場とすることを承認(最終許可は原子力規制委員会(NRC)が審査に基づき出す。)
2005年11月
両院協議会報告(109-275) (pdf)がエネルギー省長官に対し、2006年3月31日までに再処理の詳細な計画を提出し、2010会計年度中に「一つ以上の統合的使用済み燃料再処理施設の建設」を始めることを義務づける(pp.156-157/199)
2006年2月
エネルギー省、GNEP発表
2006年5月
エネルギー省、前年11月の議会の指示に応じてGNEPに基づく「使用済み燃料リサイクル・プログラム計画」(英文) (pdf)提出
・予定
 
2008年6月
エネルギー省、NRCにヤッカ・マウンテン建設許可申請提出
2012年
NRC審理終了
2017年
ヤッカ・マウンテン、使用済み燃料受け入れ開始

報告書はこの予定について次のように述べている。

 「しかし、DOEでさえ、このスケジュールに従えるとはまず考えていない。その間、使用済み燃料燃料廃棄物は、原子炉サイトで貯蔵され続ける。」



DOEの使用済み燃料再処理研究開発プログラム、縮小すべき
──新しい原子力発電所の送電開始のための努力拡大が必要

米国アカデミープレス・リリース

ワシントン──「米国研究委員会National Research Council」の新しい報告書は、米国エネルギー省の「国際原子力パートナーシップ(GNEP)」──使用済み燃料の再処理を目指すプログラムで、これをパートナー諸国と共有しようというもの──の研究・開発部分を現在のペースでは進めるべきでないと述べている。DOEの原子力局(GNEPはその一部)は、むしろ、新しい商業用原子力発電所──現在資金不足から予定が遅れている──の運転開始促進を最大の優先課題とすべきである。

原子力への関心が高まる中、「原子力局」の予算は、2003年以来70%近く伸びている。この伸びに鑑みて、政府の2006年度予算案は、「研究委員会」が「原子力局」のすべてのプログラムを検討し、優先順位をつけるための予算を要求した。これらのプルグラムには、再処理及び新しい発電所の補助の他に、新型原子炉の開発、原子力を使っての水素製造、アイダホ国立研究所の施設の改修などが含まれる。

使用済み燃料の再処理の目的は、放射性廃棄物から、リサイクルして別の発電所で使える物質を取り出すことである。過去においては、米国は、再処理を避けてきた。なぜなら、当時利用可能だった方法では、核拡散リスクを高めることになるプルトニウムが副産物として生まれるからだった。しかし、近年、連邦政府は、再処理について再検討を始めた。プルトニウムを分離せずに使用済み燃料をリサイクルできる新しい技術が登場してきたためである。このプロセスは、GNEPの主要な技術的ゴールである。報告書を書いた委員会はパートナーシップの国際的側面については検討をしておらずコメントもしていない。

しかし、GNEPのゴールを達成するのに必要な技術の開発状況は、これらの技術を使う商業施設の建設に関するDOEの急速なスケジュールを正当化するには、まだ早すぎる段階にあると報告書は述べる。DOEは、このようなプログラムは、商業規模で追求すれば時間と金の節約になると主張するが、委員会は、その逆が本当と言うことになるだろうとみており、経済的な正当化の根拠を見いだし得なかった。そして、言明されているゴールは、放射性廃棄物の全体的量を減らすことであり、それはヤッカマウンテンに加えて第2地下処分場を作る必要性を減らすことなるとされているが、そのような必要が現在存在するかどうかが委員会には明確ではなかった。さらに、プログラムに関する「peer review(他の専門家による審査)」が十分になされていない。

委員会の17人の委員全員がGNEPの研究開発プログラムは、現在の計画通りには進めるべきでないと結論に達したが、15人は、現在のプログラムの前にあったもっと控えめの再処理研究プログラムは続けられるべきだと述べた。しかし、DOEが以前のプログラム──「先進燃料サイクル・イニシアチブ(AFCI)と呼ばれる──に戻る場合、明確な経済面、国家安全保障面、あるいは環境面の理由がないかぎり、大規模な再処理実証計画あるいは商業再処理にコミットすべきでない。二人の委員は、再処理研究に関するDOEの支出をAFCIより前のレベルにとどめることを提唱し、DOEは商業再処理技術を初期の研究室段階より進んで開発すべきでない述べた。

GNEP研究開発プログラムは、縮小されるべきだが、原子力局は、「原子力2010」プログラムにもっと力点を置くべきであると委員会は述べた。このプログラムの主要要素には、新しい原子力発電所のサイトを見つけること、先進軽水炉の設計工学作業の完成、建設許可と運転許可の両方を一度に出すという方向に向けた「原子力規制委員会(NRC)」の援助が含まれる。原子力局は、設計の完成作業などこのプログラムの多くの面に力を入れ、また、産業側と良好な協力関係を築いてきたが、全般的な進展は、予想より遅れているとの結論に委員会は達した。NRCと産業側は、原子力発電所の個々の許可審理のペースを──以前に解決を見た問題についての審理を避けたり、より密なスケジュールを設定したりすることによって──改善する必要がある。原子力が米国のエネルギー需要を満たし、温室効果ガスの排出を削減する上で、より大きな役割を果たすようにするには、「原子力2010」は、計画のすべての面で十分な資金を得る必要がある。政府の2008年度予算案では、予算の拡大が要求されているが、それでも、プログラムがすべてのゴールを達成するには十分ではない。

同様に、原子力局のもう一つのプログラム「ジェネレーションIV」も、GNEPに力を入れている為に、2017年までに次世代原子力発電所の運転開始というゴールを達成できそうにないと委員会は結論づけた。原子力局の原子力水素プログラム(原子力を使って水素を発生させるプログラム)は、「ジェネレーションIV」の成功に依存しており、その予算とタイムテーブルは、この関係を反映すべきだと報告書は述べている。委員会は、また、アイダホ国立研究所──原子力局の運営責任及び予算のかなりの部分を占める──についても検討した。研究所は、原子力技術の研究・開発のための重要な能力を原子力局に提供するが、このプログラムの予算は施設の改修に必要なレベルより相当低い。

報告書は、米国エネルギー省から資金を得た。米国科学アカデミー、米国工学アカデミー、医学機構、米国研究委員会が米国アカデミーを構成する。これは、民間の非営利研究所で、議会の規定に基づき、科学・技術・保健政策に関する助言を提供する。研究委員会は、米国科学アカデミー及び米国工学アカデミーの主たる活動機関である。[委員会のメンバー原文参照]。



『エネルギー省原子力研究・開発プログラムのレビュー』(英文)

抜粋訳

核拡散

新しい再処理プロセスは、採用されれば、安全保障にいろいろな影響を与えるだろう。核分裂性物質の秘密裏の転用の脅威を防ぐ上で、他の物質をプルトニウムと混在させたままにすると、保障措置上の閉じ込め及び監視措置の効果を上げるが、物質計量管理の問題を複雑にする恐れがある。純粋なプルトニウムの分離を避けることは、有益である。なぜなら、物質の重さ、嵩、放射能などが増大し、また、物質の取り扱いがホットセルなどのようなアクセスの難しい場所に移る可能性があるからである。しかし、同時に、プルトニウムとアクチニドを合わせた放射能はプルトニウム自体と比べてそれほど高くない。しかも、プロトニウムとアクチニドを合わせて分離しても、それが核兵器用に使えなくなるわけではない。この混合物質で作った核兵器は、核兵器用に用意された物質で作ったものよりも破壊力が小さくなるが、それでも、その影響は壊滅的なものになるだろう。

乾式キャスク貯蔵

ヤッカマウンテンの運転開始が遅れれば、使用済み燃料は、乾式キャスク貯蔵によって貯蔵することができる。原発敷地内のプールで5年間冷却された使用済み燃料は、受動冷却キャスクに入れることができる。各キャスクには、約10トンの廃棄物[使用済み燃料]を入れることができる。このようなシステムは、少なくとも100年間安全で保安の確かな貯蔵を提供するとの一般的な合意があり、NRCの認可がなされている。

ストロンチウムとセシウム

Wigeland(2006)らによると処分場に入る廃棄物に含まれる超ウラン元素(TRU=プルトニウム、ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)の量を減らすとともに、短寿命の核分裂生成物(セシウムやストロンチウム)の量を減らすことによって、処分場の容量を拡大できるという。例えば、処分場の面積当たりの容量は、廃棄物に含まれるプルトニウム、ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムの割合を元の値の10%に減らせれば4.4倍になり、また、セシウムとストロンチウムも10分の1に減らせれば、10倍になる。セシウムとストロンチウムの崩壊熱は、100年間の中間所蔵・処分場換気の組み合わせによって10分の1に減らすことができる。約300年間貯蔵すれば、放射線レベルは、低レベル廃棄物としての処分が可能なぐらいに下がる。セシウムとストロンチウムを取り除くと新しい問題が登場することに留意しなければならない。この廃棄物を、数十年あるいは数百年に渡ってどこでどのようにして貯蔵するかという問題である。

サイクル回数

GNEPの文書は、予測されるリサイクルの回数についての数字を示していないが、他の資料がこの問題の範囲を示している。例えば、ある報告書(OECD2002,p.41)は、アクチニド(TRU)燃焼には、燃料を何度もリサイクルすることのできる燃料サイクルが必要だと述べている。・・例えば、25%の最大燃焼率と6年間のリサイクル期間だと、廃棄物の量を100分の1に減らすには・・・96年かかる。

もんじゅ

ナトリウムの関わる事故は深刻に、壊滅的にもなりうる。もんじゅ炉は、1994年に日本で運転開始して1年後にナトリウム漏れを起こし、それ以来運転が停止されたままである。フランスのスーパーフェニックス(電気出力120万キロワットの高速ナトリウム冷却炉。世界最大)は、多くのナトリウム漏れを起こし、1990年代に2年運転が停止され、最終的に1998年に完全に運転中止となった。この発電所が最大出力で運転されたのは174日間だけである。運転再開の予定は発表されていない。・・・

ナトリウム冷却高速炉の資本コストは、軽水炉のそれより10−50パーセント高いと推定されている(バン他、2003年)。高速炉は米国で商業規模で導入されたことはない。そして、研究資金は、この10年間、あるいはそれ以上、低いレベルでしか出されていない。これは、もちろん、前述の「もんじゅ」及びスーパーフェニックスの複雑な(そして失望させる)歴史に照らして見なければならない。

高速炉の導入

GNEPの閉じた燃料サイクルを現実のものにするには、高速炉が向こう数十年間で新しい建設の相当の部分を占めるようにならなければならない。委員会は、このシナリオをまったく信じられないものと考える。・・・

2008年決定

「GNEP戦略計画」は、これらの分析が、2008年6月までにエネルギー省長官に提供される予定のビジネス・プランに含まれることを示唆している。委員会は、このような不確かさを伴う分析が、その時までに完了させられるというのはありそうにないと考える。信頼できる決定が2008年6月までに下されうるとの含意を持つこのような計画を策定しようという努力を実施すること自体が委員会にとっては懸念をもたらすものである。

高速炉のコスト高と電力業界

高速炉は、先進燃料サイクルの選択を複雑にする。なぜなら、資本コストの推定が、軽水炉のそれより10−50%高いからである。例えば、ハーバードの研究(バン他、2003年、p.68)。また、DOEのM・P・クロザト(Crozat,2007, p.8)による暫定的な経済評価は、高速ナトリウム冷却炉の原子力発電電力のコストは、軽水炉の$55/MWhにたいして$70/MWhとなることを示している。この差が一定程度正しいとすると、原発発電会社は、高速炉を採用することや、熱中性子炉の「核廃棄物ファンド」料金(現在僅か$1/MWh)の増加によって補助することに躊躇するだろう。

再処理先行の問題点

さまざまな理由から、分離施設は完成しているが高速炉は導入まで何年もかかるということになると燃料サイクル・コストは高くなる。一つの理由は、その間、使用済み燃料から分離されたTRUを貯蔵しておかなければならなくなるからである。さらに、GNEPは、リサイクルが繰り返されるごとに新しい燃料の使用許可を出すのに時間がかかることから、長い遅延を被ることになるだろう。委員会は、リサイクリングと高速炉に向けて急進する計画には経済的根拠がないとの懸念を持っている。


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