原子力委員会の岡芳明委員長は、6月10日の同委員会定例会議で、MOX燃料のプルトニウムはもちろんのこと、六ヶ所再処理工場の製品も、ウランとプルトニウムを混ぜた混合酸化物(MOX)だから核拡散上の懸念はたいしたことはないとの認識を示しました。「国際原子力機関(IAEA)」の『保障措置用語集』の「核爆発装置の金属構成要素に転換するのに必要な時間」の項目では、二酸化プルトニウムとMOX製品及びMOX燃料は区別されておらず、「転換時間」はともに「週のオーダー(1-3週間)」です。プルトニウム金属の場合は「日のオーダー(7-10日)」です。原子力委員会は、IAEAの見解に挑戦しようということでしょうか。
640kgのプルトニウムを報告に入れなかった件に関し、政府は、共同通信に「意図的な過小報告でない」と述べるともに、原子炉内のプルトニウムは毎年報告対象に含めていなかったと説明しているようです。意図的でないのはその通りとして、未使用のMOX燃料が年末に炉内に入っていたのは2011年末が初めてのことで、前から報告対象に入れないことにしていたというのは説明になっていません。
日本政府は、2012年9月、2011年末の国内保有分離済みプルトニウムの量を9.3トンとして国内外に向けて報告し、翌2013年9月にも同様の数字を2012年末のものとして使いましたが、2011年3月に九州電力玄海3号機の原子炉に装荷し、使わないまま2年後に取り出した「ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)」燃料を計算に入れていません。この燃料に含まれるプルトニウムは640kg。8kg行方不明なら1発核兵器ができているかもしれないとするIAEAの「有意量(SQ)」で計算すると80発分です。これを加えると、2011年末の日本の国内保有量は9.9トン、英仏に保管中のものも入れた総保有量は、約44.3トンから約44.9トンに増えます。