核情報

2014. 6. 23

日本のプルトニウム、拡散懸念小さいと原子力委・岡委員長

原子力委員会の岡芳明委員長は、6月10日の同委員会定例会議で、MOX燃料のプルトニウムはもちろんのこと、六ヶ所再処理工場の製品も、ウランとプルトニウムを混ぜた混合酸化物(MOX)だから核拡散上の懸念はたいしたことはないとの認識を示しました。「国際原子力機関(IAEA)」の『保障措置用語集』の「核爆発装置の金属構成要素に転換するのに必要な時間」の項目では、二酸化プルトニウムとMOX製品及びMOX燃料は区別されておらず、「転換時間」はともに「週のオーダー(1-3週間)」です。プルトニウム金属の場合は「日のオーダー(7-10日)」です。原子力委員会は、IAEAの見解に挑戦しようということでしょうか。

岡委員委員長がこの見解を示したのは、玄海3号機の未照射MOX燃料に含まれる640kgのプルトニウム報告漏れを共同通信が大きく報道したことを受けて、6月10日の同委員会定例会議でこの問題が議論された時のことです。

岡委員は大体次のように述べています。

書き方は少し分かりにくいと言うこと。

まあ、炉内に入ったものは、今までは全部照射済み、[参考1の]一番右の欄は基本的には照射済みのものですね。ですから、基本的に核拡散上の懸念はないものだと。だが今回は、一遍入れて照射せずに出したものが出てきた。だから、それをもうちょっと分かるように。そして核拡散の懸念と言う意味では分かるようにと。

ただ、まあ、MOX燃料になってますので、分離されたあれではないですから、日本の分離されたプルトニウムも、混合酸化物でウランと混じっていますので、核拡散という観点で言えば、燃料に加工されたものは、又戻すまでにずいぶんかかりますし、それから、プルトニウムとウランは混合した状態で分離されていますから、そう言う意味でも、核拡散上の懸念は、少しステップがあると言うようなことは事実なんですけど、まあ、海外の方に、よく、この辺りを、分かって貰うと言うことも非常に重要なので、まあ、少し、公表の仕方、今の新しい事例を含めて、公表の仕方を工夫をすると言うことではないかと思うんですけど。

そう言うことでよろしいでしょうか。

岡委員長の発言は、報告方法の問題点を指摘する阿部信泰委員長代理の次のような発言の直後でした。

国際的関心、不拡散の関心からすると、まさに照射したかどうかで大きく分かれる

拡散を心配する人からすると分離をして未照射のプルトニウムが危ないとなる。それが、何キロ、何トン何処の国に残っているかとこれが非常に心配なので・・・。この表を拡散の観点から、ものすごい関心がある人が見るためには、ある意味では、問題のない数字も含まれているので、彼らの観点からすると、もっと一番大事な数字が欲しいと。そう言う意味においては640kgが大事な数字だったんですね。炉に入れたけど照射しないで、その気になれば又[核兵器用に]加工できるプルトニウムだったのですね。・・・

一端、装てんしてそのまま取り出すというのは普通はあり得ないことで、福島事故の後と言う異常な状態で起こったわけだが、それについて、いろいろ誤解混乱があってこういう報道が出たかもしれないんで、これはこういうことなんだと言うことはできるだけ早く、出した方が良いんじゃないかという感じが致します。以上。

報告漏れ問題について、国際的に早く説明をした方が良いという発言の後を受けて、まあ書き方が少し分かりにくいが、いずれにしても、MOX燃料や六ヶ所再処理工場の製品から直ぐに核兵器ができる分けではないから、そこを外国の人に分かってもらうことが重要と岡委員長は述べているのです。二酸化プルトニウムだと問題だが、ウランと混ぜた六ヶ所再処理工場の製品は大丈夫だとの主張のようです。「死の灰」の混ざった使用済み燃料からプルトニウムを取り出すのは大変ですが、「死の灰」を取り除いてウランとプルトニウムを1:1で混ぜた混合酸化物からプルトニウムを分離するのは簡単です。そのためIAEAの「用語集」では、二酸化プルトニウムとウラン・プルトニウム混合酸化物を区別していないのは冒頭で見たとおりです。

原子力委員会は、福島第一原子力発電所の事故の後、その機能が縮小された後も「原子力の平和利用の番人」としての役割は果たすことになっています。その委員会の委員長のこのような発言は、国際的疑念を呼び起こすものです。そもそも、640kgの申告漏れが国際的疑念を呼ぶのではないかと言うことについて話し合われていた場での発言であったことを考えると、その意味は重大です。マスコミや国会は、岡井委員長にどういう意図の発言か説明を求めるべきでしょう。

参考


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