核情報

2014. 6. 9

政府、意図的な過小報告でないと共同通信に
 報告から消えた640kgのプルトニウム

長崎新聞1面 6月8日
長崎新聞1面 6月8日

長崎新聞1面 6月8日

640kgのプルトニウムを報告に入れなかった件に関し、政府は、共同通信に「意図的な過小報告でない」と述べるともに、原子炉内のプルトニウムは毎年報告対象に含めていなかったと説明しているようです。意図的でないのはその通りとして、未使用のMOX燃料が年末に炉内に入っていたのは2011年末が初めてのことで、前から報告対象に入れないことにしていたというのは説明になっていません。

日本、プルトニウム保有量を640kg過小報告──玄海3号装荷後使用せず取り出したMOX燃料で取り上げた640kgの未報告プルトニウムの問題に関する共同通信の記事は、6月8日(日曜日)、長崎、東京、信濃毎日、愛媛の各紙で一面トップに掲載された他、多数の地方紙で採用されました。

信濃毎日新聞 6月8日
信濃毎日新聞 6月8日

信濃毎日新聞 6月8日

長崎新聞2面 6月8日
長崎新聞2面 6月8日

長崎新聞2面 6月8日


共同通信は次のように報じています。

政府関係者によると、日本は 毎年、「核の番人」とされるIAEAにプルトニウム保有量を自己申告しているが、原子炉内の燃料は燃焼中でプルトニウム量が確定できないことから、報告対象に含めてこなかった。

ウラン燃料を原子炉内で燃やすと燃料のウランの一部がプルトニウムに変わっていきます。また、MOX燃料を原子炉内で燃やすと、燃料内のプルトニウムが減っていくと同時にウランの一部がプルトニウムに変わっていきます。「原子炉内の燃料は燃焼中でプルトニウム量が確定できない」というのは、この状況については言えます。この状態のプルトニウムについては確定出来ないし、また、直接核兵器に転用されることもないでしょう。

報告対象を問題にする場合、報告相手・形式について区別する必要があります。一つは核兵器転用を防ぐ目的の保障措置用にIAEAに報告するものです。この目的では、玄海3号に装荷し、未照射のまま取り出したMOX燃料に関し、日本は状況を報告しており、IAEAはその監視を行っています。

もう一つは、日本が国内外の理解を得るために自発的に公表したり、一部の国との合意に基づいてIAEAに自発的に報告したりしているものです。今回問題になっているのはこちらの二つです。

日本がIAEAに提出した自発的報告書にある区分は、

  • 1)民生未照射プルトニウムの年次保有量
  • 2)使用済民生原子炉燃料に含まれるプルトニウム推定量

です。

確かに、2011年12月31日に炉内にあった使用中ウラン燃料及び使用中MOX燃料に含まれていたプルトニウムは、この分類では当てはまるところがありません。これは報告対象から外れてしまうと言えます。

しかし、12月31日に原子炉に装荷しているけれども未照射のプルトニウムは、1)に入らざるを得ません。計算などする必要の全くないものです。政府の担当者らは、前から報告対象に入れていないと説明しているようですが、そもそもMOX燃料の装荷は2009年と2010年にあっただけで、何年も前からMOX燃料の報告について慣例ができていたわけではありません。そして、装荷されたMOX燃料は、その年の年末には照射されており、そのまま照射が進むと考えられる状況にありました。

日本のプルトニウム保有量の一番下にある表「MOX 燃料輸送・装荷・保管まとめ」が2009年と2010年の試運転開始の状況を示しています。

MOX 燃料輸送・装荷・保管まとめ(数字kgは全プルトニウム量・四捨五入のため合計が合わない場合がある
 輸送原子炉に装荷・試運転原発敷地内保管
20095月
 浜岡 BWR28体 213kg
 玄海 PWR16体 677kg
 伊方 PWR21体 831kg
 合計 1,721kg
玄海3 号 11月5日試運転
(16体 677kg)
1458kg
 浜岡4号 28体 213kg
 伊方3号 21体 831kg
 柏崎3号 28体 205kg
 福 I -3号 32体 210kg
20106月
 玄海3号 20体801kg
 高浜12体 552kg
 (3号は秋、4号は2011年
運転予定だった)
 合計 1,353kg
福 I -3号 9月18日試運転
(32体 210kg)
伊方3号 3月2日試運転
(16体 633kg)
高浜3号 12月25日試運転
(8体 368kg)
1,600kg
 柏崎3号 28体 205kg
 浜岡4号 28体 213kg
 高浜4号 4体 184kg
 伊方3号 5体 198kg
 浜岡4号 28体 213kg
 玄海3号 20体 801kg

つまり、2009年と2010年の12月31日に完全に未照射の状態で炉内にあったMOX燃料というのは存在しません。2011年12月31日末の状況を扱った報告において初めて、未照射のまま原子炉内にあるMOX燃料に含まれるプルトニウムの報告の仕方という問題が発生したのです。上記の分類

  • 1)民生未照射プルトニウムの年次保有量
  • 2)使用済民生原子炉燃料に含まれるプルトニウム推定量

では、1)を選択するべきであることは言うまでもありません。特殊な報告の仕方をするのであれば、少なくともそれを明確に説明する義務が日本の側にあります。

同時に、このような不透明な報告を受けたIAEAは、問題を指摘すべき立場にあったでしょう。日本とIAEAは、この問題について明確に説明をする責任があります。


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