2016年01月28日

再処理経済性問題英国専門家論文訳出

先に紹介した「核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)」の報告書『原子力計画におけるプルトニウムの分離──世界の民生用再処理の現状、問題点と今後の展望』(2015年7月)第10章「核変換」に加えて11章「経済性」を訳出し掲載しました。

再処理の永遠化を目指す「使用済燃料再処理機構」設立法案が国会に提出されようとしている今、示唆に富む論文です。主著者はゴードン・マッケロン(英国政府「放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)」の創設委員長[2003~2007年])。

参考

著者略歴

2014年まで英国サセックス大学ビジネス・経営・経済学部「科学技術政策研究ユニット(SPRU)」ディレクター及び教授。以前はSPRU内「エネルギー・グループ」ディレクター。2001年には、英国政府エネルギー再検討チームの副リーダー。英国政府「放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)」の創設委員長(2003~2007年)。環境問題について英国政府及び公衆に助言する「英国環境汚染王立委員会」の3年の任期(2010~2013年)を務めた。IPFMメンバー。

以下、論文から:

再処理の経済性については、数多くの研究がなされている。全般的なものと特定の国に関するものの両方がある。これらの大半が、再処理によって分離したプルトニウムを新しい燃料にリサイクルするのは使用済みウラン燃料を廃棄物として扱うのより相当高くつくとの結論に達している。

それにもかかわらず、ここでまた経済性について検討するのはなぜか。

  1. 二つの燃料サイクルのコストの間には大きな差はないとの結論を下している研究が少数ながらある。とりわけ、「経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)」が最近発表した研究は影響力が大きく看過できない。
  2. 少数の国においてではあるが、高速中性子炉の開発について関心が今も存在する──これまで技術的にも経済的にも成功していないにもかかわらず。……

プルトニウムを(場合によってはウランも)リサイクルすることは、しばしば、燃料サイクルを「閉じる」ことになると説明される。一方、使用済み燃料を廃棄物として処分することは、「オープンな」燃料サイクルを意味するとされる。しかし、このような用語の使い方は誤解を招くものである。現在やっているように使用済み燃料の再処理によって回収されたプルトニウムを軽水炉で再利用するのは、再処理をしない「ワンス・スルー」(1回限り使用)燃料サイクルに対し、「トゥワイス・スルー」(2回限り使用)燃料サイクルとでも呼んだ方がいい。なぜなら、プルトニウムを複数回リサイクルするという計画は現実的には世界の何処にもないからである。実際には、使用済みのウラン・プルトニウム「混合酸化物(MOX)」燃料は、例外なく貯蔵されている。現在の計画は、使用済みMOX燃料はそのまま処分場に「直接処分」するか、将来高速炉が相当数建設されるようなことになった場合に備えて高速炉用として非常に長期にわたって貯蔵しておくというものである。また、今日再処理によって回収されたウランはほとんど例外なく貯蔵されている。……

現在のトゥワイス・スルー・サイクルでは、再処理で回収されるすべてのウランがリサイクルされたとしても最大22~25%のウラン使用の節約にしかならない。もしプルトニウムだけがリサイクルされるとすると12%の節約にしかならない。……

「経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)」の想定を全部そのまま使ったとしても(再処理及びMOX燃料製造コストが歴史的に経験されたものよりずっと低くなると想定する「基準ケース」のものを含め)ウランの「均衡」価格──二つのサイクルのコストを同じにするウラン価格──は650ドル/kgUに達する。これは、NEAが想定している将来の価格の5倍、歴史的な平均の6倍の高さである。……


投稿者 kano : 19:03

2016年01月12日

日本のプルトニウムお断り─サウスカロライナ州も怒る「不条理劇」

『サウス・カロライナ州の世界に向けたメッセージ──「ノー・モアー・プルトニウム」』と題された社説が新年早々同州地方紙に掲載されました。1月2日のこの社説は、米国エネルギー省が昨年12月末に「外国の国々から最大900kgのプルトニウムを最終処分までの間の貯蔵・処理のためにサウス・カロライナ州のサバンナ・リバー・サイト(SRS)に搬入しても重大な影響はないとの結論」を発表したのを受けてのことです。「結論」は、東海村の「高速炉臨界装置(FCA)」に警備体制の不十分な形で置かれている331kgのプルトニウムを3月末にワシントンで開かれる核セキュリティー・サミットの前にSRSに運び込むことを可能にするためだと見られています。このプルトニウムの日本からの搬出に関する日米合意が、前回のサミットで発表された主要成果の一つだったからです。

詳しくは…

投稿者 kano : 18:42