核情報

2015.12.16

再処理は永遠に不滅です──再処理実施主体としての認可法人設立案

総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)原子力小委員会のワーキングループが再処理事業の実施主体として、国の監督権の及ぶ「認可法人」を新たに電力会社に設立させようという中間報告案をまとめ、2015年12月4日から2016年1月5日までの予定でパブリックコメントを募集しています。(2016年年1月20日結果発表。2月5日法案閣議決定、国会提出)2016年4月からの電力市場における小売の参入全面自由化に備え、競争激化の中でも再処理が進められるよう再処理会社を国有化するとの案も一時出ていましたが、主として電力会社の出資で設立されている民間会社日本原燃に新認可法人が再処理を委託するという折衷案となりました。

発生した使用済み燃料の再処理費用をこの認可法人に払いこませて、電力会社の再処理からの撤退を防ごうということです。しかも、これまでの外部積み立て制度では、六ヶ所再処理工場での再処理分だけを積み立ていましたが、今回の案ではこれまで電力会社内部で積み立てられていた、第2再処理工場用の資金約12兆円も、この認可法人に払い込ませることになっています。何が何でも再処理を続けるための方策を考えようというのがワーキングループ設置の趣旨です。ベースにある考え方は、2014年4月に策定されたエネルギー基本計画(pdf)の「プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を進める」というものです。しかし、宮沢洋一経産大臣は国会(2015年5月28日)で「衆議院でもお答えいたしましたように、現段階で新増設、リプレースは想定しておりませんし、また今回のエネルギーミックスにおいても新増設、リプレースというものは想定しておりません」と述べています。第2再処理工場をこれから計画して建てたとしても、本格的に稼働する頃には動いている原発はないということになります。

国会議員事務所筋によると、1月末から2月初めにパブリックコメントを経た中間報告が原子力小委に提出され、それに基づいて法案が作成されて閣議決定を経て国会提出となるのは遅くとも3月上旬、実際の審議は4月以降となるだろうとのことです。

中間報告案は、「発生者負担」責任=再処理という非論理的な主張をして、再処理政策を電力会社に義務付け、たとえ電力会社が倒産したり、脱原発を決めたりして原発が運転されなくなっても再処理を永続させようというものです。非経済的な再処理の資金は電力消費者から取り立てられることになります。

2014年3月にオランダのハーグで開かれた核セキュリティー・サミットの日米首脳共同声明において、安部首相は「高濃縮ウランとプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励」しました。日本はすでに核兵器6000発分もに相当するプルトニウム約50トンを保有しています。その日本の政府が2016年3月にワシントンで開催予定のオバマ政権最後の核セキュリティー・サミットを前に再処理永久化法案を国会に提出しようとしています。

(制度の対象となるのは原子力発電所を運営する会社で、中間報告案では「原子力事業者」と呼ばれている。9電力会社とこれらの会社が設立した日本原子力発電所、それに大間原子力発電が運転されることになれば電源開発も含む。ここでは文脈によっては電力会社は9電力会社を指す場合と、広く、原子力事業者を指す場合がある。)

以下、この認可法人案について簡単にまとめた後、関連情報を整理しておきます。

参考





第一部 概要

なぜ認可法人が必要か?

現在の再処理費用積み立て制度は、再処理用資金を外部の「原子力環境整備促進・資金管理センター(原環センター)」に積み立てるもの。原環センターに積み立てられたカネはあくまでも電力会社に属しており、電力会社は取り戻したカネを日本原燃に払う仕組みになっている。法律はこのカネを再処理に使うことを定めてはいないし、自由化で電力会社が潰れた場合、他の借金取りに持って行かれてしまうかもしれないから別の仕組みを考えるべきだというのが経産省の説明である。認可法人なら国が監督できるし、勝手に解散できない。資金の強制徴収権限も付与できる。役員や外部有識者の人事等については、国が承認・認可等を行なえる。国が重要事項に関して一定の命令権限等を持つことにより、新法人の適切な運営の担保を図れる。「認可法人」を立ち上げて再処理実施主体とし、ここに使用済み燃料発生の段階で再処理費用を「拠出」し帰属させる仕組みにすれば、そのカネは認可法人のものとなる。認可法人は、日本原燃に実際の再処理を委託するとの案である。また、「再処理工場での工程と不可分な関連事業(MOX加工事業、廃棄物処分等)の実施に要する費用についても、制度の趣旨に鑑みて拠出金制度の対象とする」という。(再処理で生じる高レベル廃棄物の最終処分については、電力会社が実施主体「原子力発電環境整備機構(原環機構=NUMO)」に拠出し、NUMOがこの資金を原環センターに積み立て、必要に応じて払い戻しを受ける仕組みになっている)。

提唱されているのは、このNUMO方式の採用である。ただし、資金管理を原環センターにまかせようという話しかどうかは不明。

積立金の状態は?

2005年に施行された積立金制度の対象は、六ヶ所工場再処理分と英仏からの返還廃棄物及びTRU廃棄物の管理費用など合わせて12.6兆円である。表1にあるように、2014年末現在、この内、約5.1兆円が積み立てられている。内、2.7兆円が払い戻され、残額は2.4兆円となっている。電力会社側は取り戻した資金を日本原燃に支払っている。契約上の基本料金のようなものがあり、実際の再処理が行われない状態で年間2600億円以上が支払われている。

再処理積立金年度末残高推移 単位:億円 (原子力環境整備促進・資金管理センター)
 2005200620072008200920102011201220132014年度末累計・残高
積立額10,4327,0365,9405,5325,7885,8545,0071,8381,7731,73050,934
取戻額474,9422,7372,8252,7332,8822,8522,7572,6662,68427,129
残高10,38412,47815,68218,38821,44324,41526,57125,65324,75923,80523,805
(注) 億円未満は切り捨てて表示
出典:http://www.rwmc.or.jp/financing/file/H26_saisyori_zisseki.pdf

日本原燃に支払われたカネ?

日本原燃に支払われたカネ、同社の借金の支払いなどに当てられている。日本原燃は、再処理工場の建設のために約2兆円を銀行からの長期借入金及び電力会社からの際処理費用前受金の形で入手した。表2にあるように、日本原燃はこの返済を続けていて、2014年末現在約1.1兆円が残っている。

日本原燃財政状況 (年度末) 単位:100万円
 200320042005200620072008200920102011201220132014
長期借入金1,162,0111,118,3161,094,6261,001,304986,445926,406863,649871,251802,273757,695722,771724,264
再処理料金前受金
(電力会社への借金)
1,000,9611,115,9031,093,8881,020,555947,222873,888800,555727,222653,888580,555474,003405,473
出典 日本原燃有価証券報告書及び会社概況書

一部の使用済み燃料が積立の対象でない?

中間報告案は、さらに第2再処理工場の分まで、新設の認可法人に拠出させて、全量再処理政策の虚構を維持しようという。中間報告案には「現行の積立金制度においては、一部の使用済燃料が積立の対象とされていない・・・拠出金制度においては、現行の積立金制度の対象となっていない使用済燃料も含め、全ての使用済燃料を対象とする」とある。報道も大体この「一部」という言葉を使っている。これでは何のことか分からないが、一部というのは第2再処理工場分ということである。むつ市の中間貯蔵施設に送られるはずの使用済み燃料などが対象となる。

第2再処理工場の費用?

2005年の段階では、中間貯蔵された後に第二再処理工場または直接処分に送られる分は、原環センターでの積み立て対象とはならず、また方針未決定のため電力会社内部での引当・積立についても規定がなかった。2007年3月(2006年度分)から、電力会社内部で積み立てることが決まった。原子力委員会の2005年原子力政策大綱で2010年頃から検討とされた第2再処理工場は、その処理方法、処理規模、開始時期等が決まっていなかったが、六ヶ所再処理工場と六ヶ所再処理工場と同程度の費用になると仮定して計算し、約12兆円を2043年までに積み立てることとなった。2048年度にアクティブ試験開始して、試験期間も合わせ42年間運転との想定である。

第2再処理工場の役割についての検討は?

2006年の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会報告書「原子力立国計画」 (pdf)では、第2再処理工場は、軽水炉の普通の使用済み燃料に加え、使用済みMOX燃料、高速炉使用済み燃料も再処理することになっている。2010年頃始まるはずの検討はまったくなされていない。日本原子力研究開発機構はもんじゅを運転する資格がないから別の運営主体が必要との勧告を原子力規制委員会が出している状況である。第三者機関に預けて原子力政策の再検討を待ってからどう使うか検討するというのならともかくも、何が何でも再処理を進めることを目的とした認可法人にこの資金を拠出させるということの意味がワーキングループではまったく検討されていない。国が関与する認可法人が六ヶ所再処理工場資金が足りないと判断すれば、第2再処理工場用の費用を回すのか、それでも足りないとなれば税金を投入するのか。

他の国は? 

経産省は、7月14日のワーキングループ第1回会合で、世界では再処理は「国の機関だったり国営企業だったり」がしており、日本原燃のような民営に任せておく現状の方式だと不安だと主張している。要するに経済性がないから再処理は「国の機関」や「国営企業」しかやらないということである。これまで国策・民営で電力会社に再処理をやらせてきたが、自由化で再処理から撤退されては困る。これまで以上に強制的な資金確保措置が必要だとの考え方である。他の国々は、次々と再処理から撤退している。現在大規模な民生用再処理をしているのは英・仏・ロだけである(中国とインドが小規模な計画を持っている)。そして、英国も国内外の顧客の契約が切れる2018年には再処理中止の方針である。

再処理中または計画中の国(容量の%)
(100万kW)
顧客国で再処理を中止したか、中止する計画の国
(100万kW)
再処理をしたことのない国
(100万kW)
中国(?)11.7アルメニア(ロシアで)0.4アルゼンチン1.6
フランス(85%)63.1ベルギー(フランスで)5.9ブラジル1.9
インド(約50%)5.3ブルガリア(ロシアで)1.9カナダ13.5
日本(約85%計画)40.2チェコ共和国(ロシアで)3.9イラン0.9
オランダ(フランスで)0.5フィンランド(ロシアで)2.7メキシコ1.3
ロシア(10%)24.7ドイツ(フランス/英国)10.7パキスタン0.7
 ハンガリー(ロシアで)1.9ルーマニア1.3
 スロバキア共和国(ロシアで)1.8スロベニア0.7
 スペイン(フランス/英国)7.1南アフリカ1.9
 スウェーデン(フランス/英国)9.7韓国21.7
 スイス(フランス/英国)3.3台湾5.0
 英国(終了予定)9.4米国(1972年以来)98.7
 ウクライナ(ロシアで)13.1 
合計(65%)147.5合計70.8合計149.2

出典:フランク・フォンヒッペル

仏・日が85%となっているのは、平衡状態においてサイクル内に15%のMOX使用済燃料が存在することになり、これが再処理されないと想定したため。

来年3月竣工(完工)まだあきらめずに? 

日本原燃の酒井代表取締役副社長は、2015年8月7日のワーキングループ第2回会合で「来年3月竣工・・・まだあきらめずに、とにかく安全審査の早期に合格をもらうというところに傾注」していると述べている。3カ月後の11月16日、日本原燃は再処理工場の竣工時期を、これまでの「2016年3月」から「2018年度上期」に延期すると発表した。これは日本原燃側が8月の会合で意図的に嘘をついていたか、客観的な判断能力がないかどちらかを意味する。だが、ワーキンググループはこのことを議論しないまま、予定通りの中間報告を出してしまった。

減容・有害度低減?

報告書案は「高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から」再処理を推進していることを強調している。この議論はまず、超ウラン元素廃棄物や使用済みMOX燃料を無視している。六ヶ所再処理工場ではMOX使用済み燃料は再処理できずそのまま処分されると見られている。地下処分場の容積を決めるのは廃棄物の発熱量であって廃棄物の体積ではない。使用済みMOX燃料は、その燃料製造のために再処理された使用済み低濃縮ウラン燃料と同じ熱量を発生する。使用済みMOX燃料を処分場に入れれば、スペースの節約効果は消え、元の木阿弥である。高速炉による減容・有害度の低減は高速炉が大量に導入されて何百年も運転されれば可能かもしれないが、経済性のない絵に描いた餅である。2005年には2050年頃導入開始とされた高速炉の夢は遠ざかり続けている。

そもそも、貯水池に入れても安全だと言っていたプルトニウムを含む使用済み燃料を地下500メートルの深さに埋設した場合に、溶解度がずっと低くなるはずの地下水にそのプルトニウムが溶けて地上に上がってきて数万年後の人類に与える影響を再処理推進派の人々が心配しているというのも妙な話である。1993年に日本原子力研究開発機構の前身「動力炉・核燃料開発事業団(動燃)」が作成した広報用ビデオに登場する「プルト君」は次のように語りかけている。

今悪者たちが僕を貯水池に投げ込んだとしてみましょう。ボクは水に溶けにくいばかりか重いためほとんど水底に沈んでしまいます。万一水と一緒に飲みこまれてしまっても胃や腸からはほとんど吸収されず身体の外に出てしまいます。

参考

コストは大きな差ではない? 電事連

廣江譲電気事業連合会副会長(関西電力執行役員)はワーキングループ第2回会合(2015年8月7日)で直接処分の方が再処理より安く上がるが「全体の、電気料金全体をお考えいただきますと20円強、頂戴しているわけでございますので、その中での50銭程度の差というのは、それほど火力燃料費等々と比べましても大きな差ではない」と述べている。

原子力委員会「燃料サイクルコスト、事故リスクコストの試算について」(見解)(2011年11月10日、pdf)には次のようにある。

モデルプラント(120万キロワット、過去7年間で建設された軽水炉プラントを基準)に係る核燃料サイクルコストを試算した結果、割引率3%のケースにおいては、軽水炉使用済燃料を全量再処理する再処理モデルが約2円/kWh、軽水炉使用済燃料の直接処分モデルが約1円/kWh である(表1、表2)。

使用済燃料の一部を中間貯蔵したのち再処理する現状モデル(再処理50%、中間貯蔵後に再処理50%)のコストはそのほぼ中間(約1.4円/kWh)に位置する。

再処理だと2円、直接処分だと1円、倍の差ということである。(現状モデルというのは、六ヶ所をさっと建ててドンドン再処理するという計画が上手く行かず、結果的に長期間使用済み燃料を貯蔵し再処理を先送りすることになってしまっている状況を計算して再処理を安く示そうというもの。会計計算上、作業は先送りにした方が現在価値で安いことになるという妙な状況を示したものである。)六ヶ所再処理工場が運転されるはずの40年間で計算すると約10兆円の差となる。年間約2500億円。大した額でないなら、それぞれ電力会社の経営努力でひねり出せばいい。総括原価方式で電力料金に費用を入れて徴収する体制だから大した額でないなどと言って来られた。だが、中間報告案にあるとおり、「平成28年4月に開始される電力市場における小売の参入全面自由化をはじめとする」「電力システム改革に伴って地域独占・総括原価方式の料金規制による投資回収保証が失われた競争環境下においては、原子力事業者が破綻した場合など、使用済燃料の再処理等に必要な資金が安定的に確保できなくなる可能性がある」との考え方が今回の検討の出発点のはずである。自由競争下で破綻を避けるためには、高くつく再処理・高レベル廃棄物処分より、中間貯蔵・直接処分の方を選ぶのが当然である。

自由競争は2016年4月から?

2016年「4月に開始される電力市場における小売の参入全面自由化をはじめとする」「電力システム改革に伴って地域独占・総括原価方式の料金規制による投資回収保証が失われた競争環境下」の状況について議論をしているにしては、電事連の主張はのんきである。実は、下の経産省の説明にあるように、2016年4月の段階では、規制料金制度は継続され、料金規制の経過措置期間の後に送配電部門の法的分離とともに料金規制の撤廃となるのは2020年である。この料金規制撤廃の時点でいよいよ破綻の可能性も出てくることになる。猶予はあると言っても4年程度。それでものんきなことを言っているのは、何らかの原子力優遇措置がそれまでに決められることを電力会社は当てにしているからだろうか。

電力システム改革の全体像
  • 3段階での改革の実施スケジュールが第1弾改正法で規定されている。今年の通常国会に、
    送配電部門の法的分離等を盛り込んだ第3弾の改正法案を提出

出典:経産省ニュースリリース「電気事業法等の一部を改正する等の法律案が閣議決定されました」(2015年3月3日)

法律案概要「電気事業法等の一部を改正する等の法律案について(参考資料集)」(pdf) 6ページ

参考

電力会社が破綻しても再処理続行?

中間報告案は、「原子力事業者が破綻した場合など、使用済燃料の再処理等に必要な資金が安定的に確保確保できなくなる可能性がある」ので「毎年度、発電量に応じて再処理等の実施に必要な費用を再処理等の実施に責任を負う主体に拠出することを義務付け、拠出された資金を新法人に帰属させる制度(「拠出金制度」)に改め」再処理だけでなくMOX加工事業も確実に実施できるようにすると言う。

再処理やMOX加工事業の資金を出すことを義務付けられた電力会社がその余分なコストのために自由競争に敗れすべて破綻してしまったらどうするか?発生している使用済み燃料を再処理する工場も、そこで分離したプルトニウムをMOX燃料にする工場も運転できるから安心らしい。だが、そのMOX燃料を使える原子炉を運転する会社はなくなっている。MOX燃料の山ができていく。認可法人はそこで「再処理は永遠に不滅です!」と叫ぶのだろうか。

ロシアで今も働いているとされる自動報復システム「死の手」が思い起こされる。核戦争でロシアの指導部が攻撃されることになっても、核戦争続行命令を出すロケットが飛び立って、そのロケットから各地の核ミサイルに発射信号が送られるというものだ。指導部がなくても核戦争の続行は保証される。

参考 ロシアで今も働く自動核報復システム「死の手」(2003年11月6日) 核情報

原子力発電継続の保証とセットでのみ機能する再処理主体認可法人

中間報告案は電力会社の破綻に備えるために認可法人が必要だと言うが、上に見たとおり、自由競争の中で原子力発電所を持つ電力会社が破綻したり、生き残っても脱原子力を決めたりすれば、再処理続行が意味をなさないことは明らかである。つまり、再処理遂行認可法人案は原子力発電を何らかの形で自由競争の枠組みから外して続行させることとセットでなければ機能し得ない。

自由競争体制において使用済み燃料についての責任を発生者に放棄させないシステムを望むのなら再処理計画を中止し、使用済み燃料中間貯蔵と直接処分の資金を確保するシステムを構築しようとする方が論理的である。そのようなシステムであれば、原子力発電をする会社が破綻したり、経営判断によって脱原子力を選択しても、使用済み燃料の保管・処分は保証されることになる。最終処分が実際に上手く行くかどうかは別問題である。

再処理は「発生者負担」の原則による電力会社の責任か?

中間報告案は次のように述べて、「発生者負担」責任=再処理と主張している。

使用済燃料の再処理等は新たな環境下においても滞らせることのできない事業であることから、政府においては、本報告を踏まえ、これらの課題や懸念に対応するために必要な措置を適切に講じるべきである。

ただし、検討に当たっては、原子力事業者が使用済燃料を発生させた主体として、発生者負担の原則に沿って、引き続き、責任を果たすことを大前提とすべきである。

・・・

使用済燃料を発生させた主体として、発生者負担の原則に沿って、使用済燃料の再処理等が適切かつ効率的に実施されるよう、引き続き責任を果たすことを大前提として、再処理等に必要となる費用を拠出金として負担し、機微な扱いを要する物質等を適正に管理する。・・・

だが、「発生者負担」責任は発生した使用済み燃料の管理・処分に関するものでしかない。他の国々のようにその責任は電力会社が乾式中間貯蔵・直接処分の道を選んでも果たせるはずである。核拡散リスクや非経済性、危険性、もんじゅ計画の破綻などを無視して、電力会社を再処理政策に永遠に縛り付け、そのむだな資金を電力消費者から取り立てようとしているのは、政府官僚であり、このワーキングループである。政治家はどうするのか。その決定は「発生者負担」責任ではなく、政治家の責任においてなされるべきものである。

直接処分はやったことがない? 電事連

廣江譲電気事業連合会副会長(関西電力執行役員)はワーキングループ第2回会合(2015年8月7日)でまた、「直接処分というのはまだ日本では一度もやっておりませんし、海外でも実際にやったことはありませんので、そのあたりも確たるものではないということでございます」と直接処分より再処理が良いと述べている。これは議論の混乱かまやかしである。

選択肢は、図にあるように次の二つ。

  1. 使用済み燃料再処理 ⇒ 高レベル廃棄物中間貯蔵 ⇒ 最終処分場
  2. 使用済み燃料中間貯蔵 ⇒ 最終処分場(直接処分)

直接処分をやった国はないというのは正しいが、高レベル廃棄物の最終処分も「海外でも実際にやった国」はない。やった国がないから信用できないという論法なら、原子力の開始・継続が間違いという結論になる。ほとんどの国は中間貯蔵・直接処分の道を考えているし、また、最終処分実施に一番近いところにあるのは、いまのところ、直接処分方式を採用しているスウェーデンとフィンランドである。

参考

ガバナンスの強化? 経産省

経産省は、ワーキングループ第4回会合(2015年10月22日)で「確実な実施体制の担保のための認可法人の設立」と、実際の再処理における「適切かつ効率的な実施のためのガバナンスの確保」に関し、次のように説明している。「この原子力事業者自身、仮にこの委託される民間事業者が日本原燃であるということを想定いたしますと、当然出資者としての関係もありますので、きちんとこの新法人への協力をするということとあわせ、原燃自体に対する監督をそれはそれできちんとやっていただくということで、複層的なガバナンスが機能するような仕組みとなるのではないかということです。」

日本原燃(第2回)は、かつては出資者である電力会社側の「再処理に経験の少ない出向者・・・意思決定をしてきた」ことで色々問題があったが、現在ではプロパー率が86%となり状況は良くなったと述べている。電事連(第2回)や山名委員(第1回)も同様の趣旨の発言をしている。電力会社側の干渉が問題だったが現在はそれがなくなって日本原燃の状況は良くなったと言いながら、電力会社側の監督強化が必要だと言う。それに、新法人は日本原燃に再処理を委託するという関係だが、日本原燃の出資者でもない新法人がどうすれば日本原燃のガバナンス強化に関与できるのか明確でないとの指摘が第5回会合でもあった。この指摘は最終的な中間報告案には反映されていない。

核不拡散上も重要な再処理?

経産省は、原子力規制委員会(2015年10月14日)で、資料の中にある「核不拡散上も重要な再処理等が適切な体制の下で確実に実施される仕組みとすべき」という表現の意味について聞かれ、次のように述べている。

再処理事業から発生するプルトニウムを適切に管理していかなければいけない。我が国全体として、余剰プルトニウムは持たないという大原則の下で、この再処理事業を行っていくことにしているわけでありますが、プルトニウムが発生する量、それからプルトニウムを燃やす量と言いますか、MOX燃料としてそれを発電に使うという使用の量との関係が、バランスが損なわれることがないようにしっかりとしていかなければいけない、そうしたところに大きな問題意識を持ちながら、核不拡散上重要な再処理事業について、しっかりと適切な管理をしていく

出典:第34回原子力規制委員会(2015年10月14日)議事録(pdf)資料議事録(pdf)

国が影響力を持ちうる認可法人が実施主体となるので核不拡散に考慮しつつ再処理を進めると国際的に説明しようということなのだろうか。だが、認可法人が再処理量を調整する仕組みはまったく見えない。約50トンものプルトニウムを抱えてしまっている日本が不拡散のためになすべき決定は、少なくともこの量が大幅に減るまで再処理開始は延期するということである。国の政策として再処理延期を明らかにすることが先決だろう。

参考

第2部 背景説明

積立金システム

原環センター積立制度とは?

「原子力環境整備促進・資金管理センター(原環センター)に再処理用の資金を積みたてることを定めた法律が2005年5月11日に成立し10月1日施行。法律の内容は以下の通り。

これまでは電力会社内部で積み立てていたものを外部積立とする

 既に内部で積み立てられている分については、15年以内に外部積立に移す

これまでは、発生する使用済燃料すべてについて準備金を積み立てていたが、新制度では、六ヶ所再処理工場で再処理される分についてのみ積み立てる。

 合計12.6兆円が積立対象:六ヶ所工場再処理分と返還廃棄物

中間貯蔵の後第二再処理工場か直接処分に向かうものについては、当面、準備金の積立を行わない。

既発電分に関する未回収部分(再処理工場廃止処分コストなど)に関する追加対象については、15年に渡って分割回収する。自由化で特定規模電気事業者(PPS=Power Producer & Supplier)から電力を購入するようになる消費者からも回収する。電力会社(一般事業者)の送電線を使って特定規模電気事業者の電力を運ぶ「託送」制度を利用し、送電線使用料に上乗せして回収する仕組み。

出典 2005年に定められたバックエンド事業制度・措置は? 核情報

参考

原環センターの役割は?

原環センターは再処理資金と高レベル廃棄物資金の両方を管理している。

再処理用の資金は、電力会社が原環センターに積み立て、必要に応じてそこから払い戻しを受けたものを日本原燃に払う仕組み。高レベル廃棄物資金は、電力会社が原子力発電環境整備機構」(原環機構=NUMO)に拠出し、NUMOがこの資金を原環センターに積み立て、必要に応じて払い戻しを受ける仕組み。

積立金と拠出金の違い(再処理とNUMO)を図で示すと?

再処理積立金制度(上)と高レベル廃棄物処分用拠出金制度(下)

 核燃料サイクル事業の体制・資金の流れ(使用済燃料の再処理等資金の積立て)


 (参考)最終処分事業の体制・資金の流れ

中間報告案で提唱されているのは、NUMOの場合のように拠出金を新法人に払いこませて帰属させること。

 <参考 5>資金の流れのイメージ

出典:資料5 競争環境下の核燃料サイクル事業の課題(事務局資料)(PDF形式:738KB) 5〜6ページ

原環センターの説明を見ると

資金管理については、2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づく国の指定を受け、高レベル放射性廃棄物処分の実施主体である原子力発電環境整備機構が積み立てた最終処分積立金を管理、運用する資金管理業務を開始しました。また、2005年からは、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」に基づく資金管理法人として、電気事業者が積み立てる再処理等積立金の資金管理業務を行っています。

出典:原子力環境整備促進・資金管理センター
御挨拶

1)再処理等積立金

核燃料サイクル政策の根幹をなし、極めて巨額な費用と長い期間を要する再処理等事業を適正に実施するために必要な資金を、安全性・透明性が担保される形であらかじめ確保するため、特定実用発電用原子炉設置者が外部の資金管理法人に積立金を積み立てることが重要とされています。

 このため、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」(以下「法」と言う。)が平成17年5月に成立し、同月付けで公布されました。

 法の施行を受け、当センターでは法第10条第1項の規定に基づき、経済産業大臣に対し再処理等積立金の管理等を行う資金管理法人の指定の申請を行い、平成17年10月に指定を受け、新たに、再処理等資金管理業務を開始しました。

出典:資金管理業務について
再処理等積立金

参考

2)最終処分積立金

高レベル放射性廃棄物の最終処分を計画的かつ確実に実施するための最終処分費用の拠出制度、最終処分を実施する主体の設立、拠出金の管理を行う法人の指定等について規定した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(以下「法」という。)」が平成12年5月に成立し、同年6月に公布されました。

 法の施行を受けて、平成12年10月には最終処分の実施主体である「原子力発電環境整備機構」(原環機構)が設立されました。一方、当センターは、同年11月に法第58条第2項の規定による「指定法人」の指定を受け、最終処分積立金の管理等を行う最終処分資金管理業務を開始しました。さらに、法の改正に伴い、平成20年7月からは、今までの最終処分積立金(第一種最終処分積立金)に加え、新たにTRU廃棄物(地層処分対象)に係わる積立金(第二種最終処分積立金)の受入れ並びに資金管理を開始しました。

出典:資金管理業務について
最終処分積立金

参考

認可法人

認可法人案が出てきた経緯は?

1)2014年総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会原子力小委員会 第5回(8月21日)において、経産省畠山原子力政策課長がバックエンドを扱っている組織としてNUMOがあり、これは認可法人だと次のように説明。

日本原燃は株式会社でやっておりますけれども、NUMOは法律に基づいて設立された認可法人・・・これはNUMOという認可法人が実施主体となっておりまして、必要な資金につきましては電力会社が自ら積み立てをするのではなく、決まった額をNUMOに予め支払いを・・・経理的基礎の確立と解散に対する歯止めが必要であるとされております

委員諸氏が次のように発言

増田 形態的にはNUMOのようなものに近づけていくべき

山名 NUMO的にするのは一つの手であって、あり得る話だと思います

遠藤 新しいNUMO方式に切りかえていくことに賛成

圓尾 NUMOが良いとも思いませんけれども、ああいった形で資金を拠出して事業体を作る、それから法的に潰れないような仕組みを確保しておくことが大事ではないか

出典:2014年総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会原子力小委員会 第5回(8月21日)議事録 (pdf)

2)2014年12月の同委の中間整理において、核燃料サイクル事業に関し、電力「事業者が拠出金の形で発電時に資金を支払うことで、安定的に事業実施が確保されるスキームを構築すべき」と述べ、認可法人形式に言及。

3)2015年6月16日、第189回通常国会における衆議院経済産業委員会の「電気事業法等の一部を改正する等の法律案」に対する附帯決議(pdf)

核燃料サイクル事業については・・・実施主体である認可法人に対して拠出金の形で資金が支払われる最終処分の仕組みを参考として遅滞なく検討

として、認可法人に言及

4)8月31日のワーキングループ第3回会合において、経産省が資料3「新たな事業環境下で生じる実施面での諸課題への対応について」(pdf)6ページで「実施主体については、民間主導で設立される一方で、国が必要な関与を行うことができる『認可法人』とすることを念頭に検討を進めるべきではないか」として認可法人を含む各種法人の特徴を以下のように紹介

4.再処理等の実施責任を果たすために実施主体が備えるべき性格@
  • 使用済燃料の再処理等は民間を主体として事業を実施すべきであり、国を主体に事業を行うことは不適切。
  • しかしながら、競争環境下で、使用済燃料の再処理等が滞ること無く、その実施責任が全うされるようにするためには、実施主体が確実に存在し続け(=経営判断によって自由に解散ができない)、資金を確実に徴収できる法人であることが必要。
  • その際、核不拡散上も重要な再処理等が適切な体制の下で確実に実施される仕組みとすべき。
  • このため、実施主体については、民間主導で設立される一方で、国が必要な関与を行うことができる「認可法人」とすることを念頭に検討を進めるべきではないか。
主な法人形態の比較
法人の類型法人の性格運営等への国の関与事業の確実な実施
@独立行政法人
×
  • 各府省の行政活動から政策の実施部門のうち一定の事務等を分離し、実施する法人
  • 独法通則法等により、設立に際し、一定の要件を規定可能。
  • 法律の規定によらなければ解散不可。
  • 資金の強制徴収権限の付与は可能。
  • A特殊法人
    ×
  • 国が必要な事業を行うために自らが強制的に設立する法人
  • 個別法により、設立に際し、一定の要件を規定可能。
  • 法律の規定によらなければ解散不可。
  • 資金の強制徴収権限の付与は可能。
  • B認可法人
  • 民間の発起人が、自主的に主務大臣に設立の認可を受けて設立する法人
  • 個別法により、設立に際し、一定の要件を規定可能。
  • 法律の規定によらなければ解散不可。
  • 資金の強制徴収権限の付与は可能。
  • C指定法人
  • 法令等に基づき国の指定を受けて、法令等で定められた特定の事務・事業を実施する民間の法人
  • 個別法により、特定の業務に関しての一定の要件を規定可能であるが、法人全体に対して一定の要件を規定することは不可。
  • △~×
  • 事業の休廃止について、主務大臣の許可の制定が可能。ただし、事業を適正に実施できない等の場合、指定取り消しもあり得る。
  • 資金の強制徴収権限の付与は不可。
  • D株式会社等
  • 会社法に基づく株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社
  • (国が出資の形で運営に関与する例もあり得る。(=特殊法人の一部))
    ×
    6

    第2再処理工場

    第2再処理工場の積立とは?

    六ヶ所再処理工場で再処理される以外の使用済燃料に関する費用を、具体的な再処理計画が固まるまでの暫定的措置として、企業会計上、毎年度引当金として積み立て、収支を平準化する制度(使用済燃料再処理等準備引当金)を創設(07年3月)、06年度決算から適用。

    出典:資源エネルギー庁電力・ガス事業部「原子力発電について」(2008年10月9日, pdf) 12ページ

    第2再処理工場の引当計画の詳細は?

    2007年3月(2006年度分)から実施

    具体的計画がないので六ヶ所工場をベースに計算

    六ヶ所と同じ約12兆円を2043年度までに積み立てる
    事業は2048年度から 試運転含め42年間

    対象は2005〜43年に発生する3万2000トンの使用済み燃料

    六ヶ所の費用計算は以下の通り

     建設・操業・解体 約11兆円 + 高レベル廃棄物輸送及びTRU廃棄物処分:合計1兆7200億円

    @処理開始時期

    2048年度:原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律(以下、積立金法)上の届出における六ヶ所再処理工場の操業終了[2047年度末]と同時に処理開始

    A処理期間

    42年間:アクティブ試験開始[2048年度]〜操業停止[2089年度](2090年度〜廃止措置)

    B処理量

    約3.2万トン:コスト小委における六ヶ所再処理工場と同量(800トン/年)

     費用試算の対象となる使用済燃料の発生年度展開

    六ヶ所再処理工場の処理量を超える使用済燃料に係る再処理等費用について(電気事業連合会) 9ページ

    出典:2006年総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会原子力発電投資環境整備小委員会第3回(2006年11月30日)議事録配付資料資料2六ヶ所再処理工場の処理量を超える使用済燃料に係る再処理等費用について(電気事業連合会)(pdf)(同4〜5ページの図及び表も参照)

    経産省の第2再処理工場の役割についての説明は?

    [3]高速増殖炉サイクルの早期実用化

    i) 高速増殖炉サイクル実用化に向けた移行シナリオの早期策定

    高速増殖炉サイクルの実用化に向け、移行シナリオを早期に策定し、実証・実用化段階への円滑な移行のための研究開発側と導入者側の協議を速やかに開始する。

     「もんじゅ」の運転を早期再開し、ナトリウム取扱技術の確立等を図るとともに、マイナーアクチニドの混合抽出など必要な技術開発を進める。

     また、実証炉及び関連サイクル実証施設の2025年頃までの実現を目指すこととし、商業炉を2050年よりも前を目指して開発する。

     第二再処理工場は、六ヶ所再処理工場の操業終了時頃(2045年頃)の操業開始を目指して、必要な技術開発を進める

    出典:経済産業省『新・国家エネルギー戦略』(2006年5月31日)
    (『新・国家エネルギー戦略』──実現の可能性の乏しい「原子力立国計画」 核情報)

    *参考 新・国家エネルギー戦略要約版(PDF形式:1,486KB)

    第2再処理工場の役割を図で示すと?

    6)2050年前の商業ベースでのFBRの導入に間に合うように、炉及び核燃料サイクル関係施設の実証プロセスを完了する。

    7)六ヶ所再処理工場の操業終了時頃(2045年頃)に第二再処理工場の操業を開始し、回収されるプルトニウムはFBRで再利用する。

    8)2050年より前に商業ベースでのFBRの導入を開始し、以降、運転を終える既設の軽水炉は順次FBRにリプレースする。

     図3.3.1 「基本シナリオ」のイメージ

    出典:総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会報告書「原子力立国計画」 (pdf)2006年8月8日 67-68ページ

    第189回国会衆議院 電気事業法等の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議

    抜粋

     政府は、電力・ガス・熱供給システムの改革を着実に推進するため、本法の施行に当たり、以下の点に留意すべきである。・・・

    七 原子力事業者において今後国内において増加する原子力発電所の廃炉の円滑な実施や新規制基準への対応、使用済核燃料の処理、地球温暖化対策及び電力安定供給への貢献等の課題への適切な対処が可能となるよう、事業環境の整備に向けて、平成二十八年を目途に電力の小売全面自由化の実施が予定されていることを踏まえ、必要な措置について速やかに検討し、遅滞なく実施するものとすること。また、原子力政策を含むエネルギー政策が国民の理解なくしては成り立ち得ないことに鑑み、その制度的な選択肢や負担の在り方等も含め、十分な国民への説明と議論、理解のもと慎重かつ丁寧に行われるようにすること。

    八 原子力事業者が共同で実施してきた再処理等の核燃料サイクル事業や原子力損害賠償制度については、小売全面自由化により競争が進展し、また、原子力依存度が低減していく中においても、安定的・効率的な事業実施が確保される必要があることから、国と事業者の責任負担の在り方を含め、遅滞なく検討を行うこと。特に、核燃料サイクル事業については、民間企業の活力の発揮を前提としつつ、実施主体である認可法人に対して拠出金の形で資金が支払われる最終処分の仕組みを参考として遅滞なく検討を行い、電力市場における小売全面自由化が平成二十八年を目途に開始されることを踏まえて、措置を講じること。

    第3部 原子力事業環境整備検討専門ワーキンググループ中間報告

    経緯及び構成

    経緯(略年表)

    2014年
     4月
    エネルギー基本計画策定
     6月
    総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会政策提言取りまとめ開始
     12月
    同委中間整理
    2015年
     6月16日
    電気事業法等の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議 (PDF)
     6月26日
    原子力小委原子力事業環境整備検討専門ワーキンググループ(WG)設置
    開催状況
     7月14日
    第1回
     8月7日
    第2回
     8月31日
    第3回
     10月22日
    第4回
     11月30日
    第5回
    12月14日
    中間報告「新たな環境下における使用済燃料の再処理等について(案)」に対する意見募集開始(2016年1月5日まで)

    構成

    9人

    座長:一橋大学大学院山内弘隆教授

    委員名簿(pdf)

    座長
    • 山内 弘隆 一橋大学大学院 商学研究科 教授
    委員
    • 秋池 玲子 ボストンコンサルティンググループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
    • 遠藤 典子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
    • 大橋 弘 東京大学大学院 経済学研究科 教授
    • 城山 英明 東京大学公共政策大学院・大学院法学政治学研究科 教授
    • 辰巳 菊子 公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 常任顧問
    • 永田 高士 公認会計士
    • 増田 寛也 (株)野村総合研究所 顧問/東京大学大学院客員教授
    • 圓尾 雅則 SMBC日興証券株式会社 マネージング・ディレクター
    • 山名 元 原子力損害賠償・廃炉等支援機構 副理事長
      (敬称略・五十音順)

    中間報告抜粋

    検討の理由

    平成28年4月に開始される電力市場における小売の参入全面自由化をはじめとする電力システム改革の進展に伴い、これまで原子力事業の前提とされてきた、地域独占・総括原価方式の料金規制による投資回収保証が失われる。また、平成26年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」において、原発依存度を可能な限り低減させるとの政府の方針が決定されている。こうした原子力事業をめぐる事業環境に大きな変化が生ずる中で、原子力事業者が共同で支え合う構造にある再処理等の実施に影響を与える可能性が生じている

    経緯

    平成26年6月に総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会の下に設置された原子力小委員会においては、こうした環境変化を踏まえた使用済燃料の再処理等に係る課題への対応策についても議論がなされ、平成26年12月に行われた「中間整理」において、「事業者が共同実施してきた核燃料サイクル事業について、今後、自由化により事業者間の競争が進み、また原発依存度が低減していく中においても、安定的・効率的な事業実施が確保されるよう、各事業者からの資金拠出の在り方等を検証し、この検討を踏まえて、必要な措置を講じていくことが重要」との方向性が示された。また、第189回通常国会における衆議院経済産業委員会の「電気事業法等の一部を改正する等の法律案」に対する附帯決議においては「核燃料サイクル事業については(中略)実施主体である認可法人に対して拠出金の形で資金が支払われる最終処分の仕組みを参考として遅滞なく検討」を行うこととされた

    現状の問題点整理

    原子力事業者は「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」に基づき、発電量に応じて、使用済燃料の再処理等の実施に必要な費用の一部を電気料金で回収しこれを積み立て、必要に応じて積立金を取り崩し、現業を行う日本原燃等に対して支払いを行っている

    現行の積立金制度においては、一部の使用済燃料が積立の対象とされていないが、新たな事業環境の下においても、使用済燃料の再処理等が滞ることのないよう、必要な資金を将来にわたり安定的に確保し、適切かつ効率的に事業を実施する体制を整えるという今般の措置の目的に鑑み、拠出金制度においては、現行の積立金制度の対象となっていない使用済燃料も含め、全ての使用済燃料を対象とする。(※)また、再処理工場での工程と不可分な関連事業(MOX加工事業、廃棄物処分等)の実施に要する費用についても、制度の趣旨に鑑みて拠出金制度の対象とする。これにより、万一、原子力事業者が破綻した場合にも関連事業を含めた事業全体について確実に資金を確保する。

    ※現行制度下においては、現時点で各原子力事業者が六ヶ所再処理工場において再処理を計画している使用済燃料が積立の対象となっている。


     <参考 6>拠出金制度の対象イメージ


    現行の積立金制度では、積み立てた資金は各原子力事業者に帰属しており、日本原燃株式会社(以下、「日本原燃」という。)に対する法律上の支払義務も課されていない。

    再処理等の事業は、実態上、競争環境に置かれておらず、特殊な環境下で事業が実施されており、事業全体が効率的な運営がなされているか、課題に適切に対処しているかといった観点からのガバナンスが働きにくい

    解決策 認可法人に拠出

    再処理等に必要な資金を確実に確保するため、この積立金制度を改め、原子力事業者に対して毎年度、発電量に応じて再処理等の実施に必要な費用を再処理等の実施に責任を負う主体(以下、「新法人」という。詳細は 4.参照)に拠出する

    新法人は、独自の判断によって解散ができない法人であることに加え、例えば、拠出金を強制的に徴収する権限を付与するなど、資金を確実に確保するために必要な措置を講じることが必要である。こうしたことを踏まえ、新法人は、民間主導で設立される一方で、国が必要な関与を行うことができる(解散を制限することができる)「認可法人」として設立することが適当・・・

    新法人に、再処理を含む原子力事業や関連する技術、経営・金融、プロジェクト・マネージメントの専門家等の外部有識者を構成員とする運営委員会(仮称)を意思決定機関として設置し、拠出金額の決定や実施計画等の重要な事項の意思決定、実際の事業実施を委託する際の管理・監督等に関与する仕組みとする

     <参考 8>新法人に係るガバナンスの在り方のイメージ

    (11ページ)

    日本原燃のガバナンス強化方法

    B原子力事業者のコミットメント、日本原燃に関するガバナンスの確保原子力事業者は、使用済燃料の発生者、日本原燃の出資者として、原子力事業者の共同事業である日本原燃の事業が着実に実施できるよう経営に関与するとともに、技術・人材などの必要な支援・協力を行うことで、むしろ、その運営にこれまでにも増してコミットするべきである。

    その上で、新法人が日本原燃に業務の委託を行うに当たっては、技術的課題等への対応を含め、適切に事業が実施されているかに留意しつつ、例えば、日本原燃に効率化を行うインセンティブが働くような契約形態とするなど運用面で工夫を行う必要がある。

    第4部 ワーキンググループ(WG)発言から

    直接処分はやったことがない 第2回 2015年8月7日

    廣江譲電気事業連合会副会長(関西電力執行役員)

    一つは、よく言われておりますのは、コストでございまして、今回のエネルギーミックスの議論では、たしか数字は出ていなかったと思いますが、前回のときには直接処分で行ったほうが30銭か40銭、実は再処理処分に比べてコストが安いという数字があったと思います。ただ全体の、電気料金全体をお考えいただきますと20円強、頂戴しているわけでございますので、その中での50銭程度の差というのは、それほど火力燃料費等々と比べましても大きな差ではない。さらに申しますと、直接処分というのはまだ日本では一度もやっておりませんし、海外でも実際にやったことはありませんので、そのあたりも確たるものではないということでございます。

     これは今後とも確証していかないといけないと思いますが、トータルで考えればやはりメリット、デメリットの比較衡量から申しますと、再処理という方法が現在はすぐれているのではないかと、このように考える次第でございます。

    2016年3月竣工はまだあきらめず 第2回 2015年8月7日

    酒井日本原燃株式会社代表取締役副社長

    来年3月竣工ということにつきましては、非常に安全審査の状況を見ますと、だんだん難しいという感じ、非常に厳しくなっているという感じはしておりますけれども、今のところ、まだあきらめずに、とにかく安全審査の早期に合格をもらうというところに傾注いたしております

    (注:2015年11月16日、日本原燃は再処理工場の竣工(完工)時期を、これまでの「2016年3月」から「2018年度上期」へ変更すると発表。)

    電力会社は口を出すべきか否か?

    酒井日本原燃株式会社代表取締役副社長 第2回 2015年8月7日

    2007年11月、ガラス固化試験の開始、その後の流下性低下等のトラブルというふうに書いております。このトラブルで相当の苦労をしたというのは、皆さんご承知のとおりだと思います。2008年2月には、ガラス固化以外の工程の試験は終了して、国の使用前も完了し・・・1988年当時、旧動燃、それからAREVA社がガラスの溶融の技術を有しておりましたが、どちらも当時、未完な状態でございました。国産化の流れの中で、旧動燃の技術を採用したわけでございますけれども、問題はその次でございまして、十分な技術検証を行わないまま、実機導入をした・・・再処理に経験の少ない出向者が、こういうところの意思決定をしてきたということもございます。・・・出向される方は大体3年で交代・・・現在では、プロパー率は86%になっております。2015年断面で管理職に占めるプロパー比率は70%、それで、再処理事業部のプロパー管理職のうち、9割が試運転を経験しております・・・

    山名委員 第1回 2015年7月14日 

    これは日本原燃の問題というよりは、その装置を入れるときに判断した電力事業者や政策的に決めたサイド側にむしろ問題があったと見るべきで、日本原燃は逆にそういうトラブルを乗り越える中でプロパーも85%にふえていますから、結局実力を今まで蓄積してきた状態になっている。

    廣江譲電気事業連合会副会長 第2回 2015年8月7日

    平成5年のところをご覧いただきますと、まず全体で申せば、紫色に塗っておりますプロパー社員、全体で50%、課長以上に至りましてはその右手にございますように11%に・・・平成27年の、もう一度右手のグラフをご覧いただきますと、全体では現在86%がプロパーということになりましたし、課長以上をとりましても70%を占めるに至っているということでございまして、左手の方に戻っていただきまして、こういった状況を受けまして、現在は、日本原燃のニーズを踏まえて、電力の知見が活用可能なポストに限定するなど、状況はかなり改善していると考えているところでございます。・・・

    中間報告案

    原子力事業者が担うべき責任・役割 使用済燃料を発生させた主体として、発生者負担の原則に沿って、使用済燃料の再処理等が適切かつ効率的に実施されるよう、引き続き責任を果たすことを大前提として、再処理等に必要となる費用を拠出金として負担し、機微な扱いを要する物質等を適正に管理する。12また、既に蓄積された技術・人材を散逸させず最大限に活用する観点から現業を担う日本原燃の経営に関与するとともに、技術・人材等の面での必要な支援・協力を行うことで、その事業運営にこれまでにも増してコミットすべき。加えて、新法人に対しても必要な支援・協力を行う。

    *電力会社日本原燃の経営に口を出しすぎたのが日本原燃の失敗の原因だったが、これまでにも増して口を出すべき?

    第5部 関連資料

    容積・毒性の低減について専門家は?

    再処理推進派が利点として主張する放射性廃棄物の寿命(つまりは毒性)の劇的な低減に関して言うと、これは、プルトニウムをMOX燃料に入れて軽水炉内を1回通しただけでは達成できない。だが、軽水炉のMOX燃料としてプルトニウムの使用を繰り返すのは、次第に難しくなる。MOX燃料の中で増えていく長寿命のプルトニウム同位体の一部と、プルトニウムから生じるもっと重い超ウラン元素は、軽水炉の遅い中性子では効率的に分裂させることができないからである。

    このことは、高コストの高速中性子炉を正当化する新たな議論となるが、スウェーデンの使用済み燃料処分場からの漏れについてのシミュレーションの結果、プルトニウムやその他の長寿命超ウラン元素は地下に埋めた使用済み燃料の長期的毒性の支配的な部分ではないことが判明している。これは、超ウラン元素は深い所の地下水の中では比較的溶けにくく、地表まで移動しないためである。その結果、地表の住民の被曝線量において中心的な役割を果たさないのである。

    フランスの「原子力安全局(ASN)」は、2013年、フランスの処分場に関して同じような結論に達している。

    「マイナー・アクチニド[プルトニウム以外の超ウラン元素]の核変換(トランスミューテーション)は、深地層処分の放射能面での影響を大きく変えることはない。なぜなら、影響は主として核分裂生成物及び放射化生成物によるものだからである・・・従って、ASNはアクチニド[プルトニウムその他の超ウラン元素]の核変換によって得られると予測される安全性、放射線防護及び廃棄物管理面での利点はわずかだと考える。」28

    日本の経済産業省の放射性廃棄物管理問題に関する中心的アドバイザー(栃山修・経済産業省地層処分技術ワーキンググループ委員長)も同じ結論を述べている。「資源活用[つまりは使用済み燃料内のウラン及びプルトニウムからエネルギーをさらに取り出すこと]が目的でないなら再処理せず[使用済み燃料を]直接処分した方がいい」

    出典:核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)『原子力計画におけるプルトニウムの分離──世界の民生用再処理の現状、問題点と今後の展望』(英文、pdf)
    第10章、11章「核変換、経済性」日本語版(pdf)


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