核情報

2005.12.12〜

MOX・プルサーマルの基礎知識

  1. MOXとは?
  2. MOX計画が最初にでてきたのはいつ?
  3. 日本におけるプルサーマルの実例は?
  4. プルサーマルがプルトニウム利用の中心的な存在として登場したのはいつ?
  5. 1997年に登場した計画の中身は?
  6. プルサーマル計画の進捗状況は?
  7. なぜプルサーマルが必要なのか
  8. 余剰プルトニウムを持たない国際公約とは?
  9. 「余剰プルトニウムを持たない」方針は、1997年に突然でてきたのか。
  10. 「余剰プルトニウム」という表現はなぜ消えてしまったのか。
  11. 2003年原子力委員会決定は、余剰プルトニウムについてなんと言っているのか。
  12. プルサーマルは資源節約のためではないのか?
  13. MOX燃料はなぜ高くつくのか
  14. プルサーマルに使われるプルトニウムはどこからくるのか。
  15. 国のプルトニウム需給計画について福島県知事はなんと言っているか。
  16. 過去のプルトニウム需給予測はどうなっていたのか。
  17. 2000年長期計画の回収・利用の表にある全炉心MOX燃料装荷の大間原子力発電所とは?
  18. 関連リンク


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MOXとは?

日本語では、混合酸化物(Mixed-OXides)といい、再処理で得られた酸化プルトニウムと酸化ウランを混ぜたもののこと。これで作った燃料を、混合酸化物燃料(Mixed-OXide Fuel)あるいはMOX燃料という。

酸化ウランの方は、天然ウラン、回収ウラン(再処理の際に回収されるもの)、劣化ウラン(ウラン濃縮過程で副産物としてでてくるものでウラン235の含有率が低くなっている)などが使われる。

この燃料を普通の原子炉(軽水炉)に入れて使うのがプルサーマル。プルサーマルは、プルトニウムを熱(サーマル)中性子炉(普通の原子炉)で使うという意味の和製英語。

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MOX計画が最初にでてきたのはいつ?

プルトニウム利用計画の本命である高速増殖炉が実用化されるまで、脇役としてつなぎ的にプルサーマルを実施しようと言う計画は、古くからあった。

たとえば1967年の「原子力の研究、開発および利用に関する長期計画」(長計)には、つぎのようにある。

プルトニウムの需給は,昭和40年代には,研究用の需要が生成量を上まわるが,昭和50年代には,逆に生成量が研究用の需要を上まわると予想される。

 このため,昭和40年代には不足分を輸入し,昭和50年代には過剰分を熱中性子炉用燃料として利用することとする。

また、1972年長計には次のようにある。

(2) 使用済燃料から回収されるプルトニウム及びウランは,国産エネルギー資源として扱うことができ,この利用によりウラン資源の有効利用が図れるとともに,原子力発電に関する対外依存度を低くすることができるので,以下の方針に沿ってこれらを積極的に利用していくものとする。

  [1] 使用済燃料は再処理することとし,プルトニウム利用の主体性を確実なものとする等の観点から,原則として再処理は国内で行う。

  [2] 再処理によって得られるプルトニウムについては,消費した以上のプルトニウムを生成することができ将来の原子力発電の主流となると考えられる高速増殖炉で利用することを基本的な方針とし,2010年頃の実用化を目標に高速増殖炉の開発を進める。

  [3] しかしながら,高速増殖炉の実用化までの間及びそれ以降においてもその導入量によっては,相当量のプルトニウムの蓄積が予想される。このため,資源の有効利用,プルトニウム貯蔵に係る経済的負担の軽減,核不拡散上の配慮等の観点から,プルトニウムを熱中性子炉の燃料として利用する。熱中性子炉としては,プルトニウムはもちろん減損ウラン及び劣化ウランをも燃料として有効かつ容易に利用できる新型転換炉を発電体系に組み入れることができるよう開発を進め,さらに,発電用原子炉として広く利用されている軽水炉によるプルトニウム利用を図る。この両者については,いずれもできる限り早期に実用規模での技術的実証を行うとともに経済的見通しを得ることが必要であり,1990年代中頃までには,その実証を終了し実用化を目指す。

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日本におけるプルサーマルの実例は?

1980年代末から沸騰水型と加圧水型、それぞれ1基ずつMOX燃料集合体の使用実験が行われている。

・日本原子力発電敦賀1号機(BWR:35.7万kW)1986年6月から1990年2月まで 2体

・関西電力美浜1号機(PWR:34万kW)1988年3月から1991年12月まで 4体

1987年の原子力白書では、これら2基に続いて、80万kW級以上の原子炉2基で実用規模の実証計画を行うことになっていたが、どういうわけかこれをはしょって100万kW級の原子炉での実用が開始されようとしている。

(1)軽水炉によるプルトニウム利用

 軽水炉によるプルトニウム利用(プルサーマル)については,軽水炉用プルトニウムーウラン混合酸化物燃料(MOX燃料)の特性確認並びに加工及び取扱い経験の蓄積を目的とした少数体規模での実証計画,実用規模のMOX燃料を装荷した際の炉心特性,運転特性等の確認並びに実用規模の軽水炉用MOX燃料の加工及び取扱い経験の蓄積を目的とした実用規模での実証計画{PWR及びBWRそれぞれ1基(電気出力80万キロワット級以上)に最終装荷規模1/4炉心程度}を経て本格利用(最終装荷規模約1/3炉心として,100万キロワット級の発電用原子炉10基程度)に移行することとしている。現在は,少数体規模での実証計画が進められており,日本原子力発電(株)敦賀1号機(沸騰水型軽水炉:BWR)に昭和61年5〜6月MOX燃料体2体を装荷した他,関西電力(株)美浜1号機(加圧水型軽水炉:PWR)にMOX燃料体4体を地元の理解を得た上で装荷することとしている。

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プルサーマルがプルトニウム利用の中心的な存在として登場したのはいつ?

1997年。

プルサーマルがプルトニウム利用の中心的役割を担うものとして登場したのは、本命の高速増殖炉での利用計画が上手く行きそうにないのが明らかになってからのことである。とくに、1995年12月に、前年に臨界に達したばかりの高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」がナトリウム漏れ事故を起こして運転停止となったのが決定的要因として働いた。再処理だけが先行して、余剰プルトニウムが大量に発生しそうだということで、1997年、政府は、プルサーマル推進計画を発表した。MOX燃料を炉心の3分の1ほど装荷してプルトニウムを燃やそうというわけである。

1997年1月31日、「当面の核燃料サイクルの具体的な施策について」(原子力委員会決定)が発表され、その趣旨が同年2月4日の閣議了解「当面の核燃料サイクルの推進について」で確認された。この決定を受けて、電力会社側は、同月2010年までに16−18基でMOX利用を実施するとの計画をまとめた

*参考:原子力産業会議副会長宅間正夫氏の説明

プルサーマル計画を中心にした核燃料サイクルを政府が推進しようと決めたのは1997年のことです。1月に原子力委員会が核燃料サイクルについて具体的施策を決定したのに続いて、政府は「プルサーマル計画を中心とする核燃料サイクルを推進する」と閣議了解を行いました。

 それ以前はどちらかといえば、再処理で推進されたプルトニウムは高速増殖炉など新型炉を「主」、軽水炉でのプルサーマルを「従」としてその用途を宣伝していたように思います。

 電力会社としてはプルサーマルを技術の面でも広報の面でも実用化準備はしていましたが、政府としては高速増殖炉計画が遅れいてること、新型転換炉(ATR)からの撤退を決めたことなどにより、プルトニウム利用は当面は軽水炉でのMOX燃料利用が中心になるとの判断をしたのだと思います。

 この政府の方針を受けて電気事業者(電気事業連合会)も1997年2月に全電力会社のプルサーマル計画を公表しました。

「徹底Q&A 知ってナットク原子力―100億人のエネルギー サイクルの理由」(宅間 正夫・藤森 礼一郎 電気新聞ブックス 2005年)

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1997年に登場した計画の中身は?

政府のプルサーマル推進政策を受けて電力会社側が発表したもので、2000年までに4基(関西電力2基、東京電力2基)、2000年初頭に5基(東京/中部/九州電力で各1基、原電で2基)、2010年までに7〜9基(東京電力0〜1基、関西電力1〜2基、北海道/東北/北陸/中国/四国電力および電源開発で各1基)プルサーマルを導入するというもの(合計16〜18基)。

「今後の原子燃料サイクルの推進について」 電事連 1997年2月21日


参考図:日本のプルサーマル計画

これで、年間7−11トンほどのプルトニウムを消費しよういうわけである。(政府は、燃えやすい分裂性のプルトニウムの量だけを対象とした5トン−8トンという数字を使う。)

*2009年6月、電事連は、計画を変更。「遅くともMOX燃料加工工場が操業開始する2015年度までに、全国の16〜18基の原子炉でプルサーマルの導入」と発表。

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プルサーマル計画の進捗状況は?

1997年の計画だと、現在までに10基ほどで実施されていなければならないが、実際には、一基も実現していない。(2005年末時点)

先行していた関西電力と東京電力のMOX利用計画は、MOX燃料を作った英国燃料会社(BNFL)のデータ捏造事件やJCO臨界事故(1999年)、東京電力の原発でのトラブル隠しの発覚(2002年)などによって白紙に戻された。

表1: 「先行」プルサーマル計画の推移

関電高浜3,4号機 東電福島第一3号機 東電柏崎刈羽3号機
炉型 加圧水型 沸騰水型 沸騰水型
電気出力 87万kw 78万kw 110万kw
立地点 福井県高浜町 福島県双葉町 新潟県柏崎市
事前了解願い 98年2月23日 98年8月18日 99年2月24日
事前了解 98年5月8日一次了解 98年11月2日
県・村99年3月31日
柏崎市4月1日
設置変更許可申請 98年5月11日 98年11月4日 99年4月1日
設置変更許可 98年12月16日 99年7月2日 00年3月24日
事前了解 99年5月26日高浜町
99年6月17日福井県
―― ――
99年事故・改竄 99年9月14日高浜3号機用mox燃料データ改竄判明
99年9月30日jco臨界事故
99年12月16日高浜4号機用mox燃料データ改竄判明
延期発表 99年12月16日
(02年9月データ改竄のmox燃料は英国に返送完了)
00年1月7日
(mox燃料は発電所内に貯蔵)
99年11月18日
(2001年実施と)
(mox燃料は発電所内に貯蔵)
その後の状況 04年3月20日
自治体、再開了承
04年3月26日
関電、mox燃料調達基本契約締結
04年8月9日
美浜原発死傷事故
04年8月12日
関電、再度延期発表
01年2月8日
東電、発電所建設計画凍結発表(福島県誘致の火力発電所含む)

01年2月26日
知事、「当面mox燃料の装荷はあり得ない」と発言。
01年3月29日
東電、5月の実施を断念。
02年8月29日
東電自主点検データ改竄問題判明。
02年9月24日
知事、事前了解の白紙撤回を表明
01年5月27日
刈羽村住民投票:過半数が反対
01年6月1日
村・県・柏崎市見送り要請
東電これを了承
02年8月29日
東電自主点検データ改竄問題判明。
02年9月12日
知事・村長・市長会合を開き、事前了解取り消し決定。

現在、2010年のMOX利用に向けて具体的な計画がでているのは、九州電力玄海原発3号機と四国電力伊方原発3号機、中国電力島根2号機、中部電力浜岡4号機だけである。そのうち国の設置変更許可がでているのは、玄海原発3号機のみである。

表2: 最近のプルサーマル計画の現状

九電玄海3号機 四電伊方3号機 中国島根2号機 中部浜岡4号機
炉型 加圧水型 加圧水型 沸騰水型 沸騰水型
電気出力 118万kw 89万kw 82万kw 113.7万kw
立地点 佐賀県玄海町 愛媛県伊方町 島根県松江市 静岡県御前崎市
地元事前了解願い 04年5月28日 04年5月10日 05年9月12日
(協定上事前了解の後、国の審査となる。)
05年9月13日
(事前了解規定はなく、計画を伝え、全戸訪問・地区説明会の意向表明。)
事前了解 ―― 04年11月1日
(一次事前了解)
――
設置変更許可申請 04年5月28日 04年11月1日
保安院妥当と判断
下記2委員会にダブルチェック要請
05年2月10日
05年7月27日
原子力安全委員会の安全確保可能の判断 05年8月29日
原子力委員会妥当と答申 05年8月30日
設置変更許可 05年9月7日
事前了解 ―― ――
燃料製造
燃料装荷

参考:島根県によるまとめ(pdf)

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なぜプルサーマルが必要なのか

各地の原発で使用済み燃料貯蔵施設が満杯になってきており、これを六ヶ所村再処理工場に運び出すため。

この奇妙な状態を、新潟県刈羽村でプルサーマル実施に関する住民投票が行われた際に国が村内全戸に配布した平沼赳夫経済産業相の署名入りビラが次のように説明している。

プルサーマルは、原子力発電を末永く続けていくために必要です。

 我が国は、燃料として使う以外にはプルトニウムを保有しないことを国際的に明らかにしています。我が国のプルトニウム利用は、当面原子力発電所における燃料としての利用がほとんどとなるため、プルサーマル計画が進まず、原子力発電所における利用が進まないとなると、使い終わった使用済燃料のリサイクルが困難になります。

 リサイクルをしないなら、使用済燃料を原子力発電所からリサイクル施設(青森県六ヶ所村)に運び出すわけにはいきません。原子力発電所の中に使用済燃料が溜まり続ける場合、使用済燃料の貯蔵施設が満杯になって、新しい燃料と取替えることができなくなるため、やがては運転を停止しなければならなくなります。柏崎刈羽原子力発電所もリサイクルの一環を担っているのです。

 我が国の電力の3分の1以上を発電する原子力発電所が停止するようなことになれば、電力不足のような問題が発生します。

この「風が吹けば桶屋が儲かる」式因果関係を整理すると次のようになる。

  1. 主に海外再処理で発生したプルトニウムが有り余っている。
  2. 日本は余剰プルトニウムを持たないとの国際公約をしている。
  3. 各地の原発で使用済み燃料貯蔵施設が満杯になって来ている。2004年3月末現在で、全国の貯蔵量の合計は約1万1000トン。容量は約1万7000トン。数年で満杯になるところが次々とでてくる
  4. あふれ出た使用済み燃料を送り込む場所は現在のところ六ヶ所村再処理工場の受け入れ貯蔵プール(容量3000トン)しかない。
  5. このプールの容量は後半分しか残っていない。(05年12月まで搬入量1524トン)。
  6. このプールに余裕を持たせるには再処理工場に送り込んで処理するしかない。つまり、早く再処理を開始しなければならない。
  7. 再処理工場を運転すると余剰プルトニウムの量がさらに増える。
  8. 国際公約から言って、プルトニウムを消化しないと、再処理工場が運転できず、そうすると、再処理工場の受け入れ貯蔵プールが使えず、各地の原発の燃料貯蔵施設が満杯となって、原発からでてくる使用済み燃料の行き場がなくなり、原発が止まるから、プルサーマルを認めて欲しい。

つまり、無計画に海外委託の再処理を進め、プルトニウムを大量にため込んでしまい、それにも関わらずさらに大量のプルトニウムを生み出すための六ヶ所再処理工場を運転するためにプルサーマルが必要だという狐につままれたような話だ。何かが有り余っていることが問題ならば、少なくとも、一時的に、それを現状以上作らないようにするのが普通の解決方法だろう。

実は、六ヶ所工場を動かしても最大で年間800トンの使用済み燃料しか処理できない。全国で毎年発生する使用済み燃料の量は約1000トン。いずれにしても、余った部分を貯蔵するためには、原発サイト内かサイト外に「中間貯蔵」設備を設けるしかない。

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余剰プルトニウムを持たない国際公約とは?

日本政府は、1997年12月、「余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持している」ことを国際原子力(IAEA)に送った文書の中で説明している。

日本政府は、1997年に合意された「国際プルトニウム指針(説明)」(仮訳)(英文pdf)に従って、同年12月5日、「国際原子力機関(IAEA)」に保有プルトニウム量を報告した際、同時に「我が国のプルトニウム利用計画について」(INFCIRC/549/Add.1(pdf))を提出し、その中で、「 我が国は、原子力基本法に基づき、厳に平和目的に限り原子力開発利用を推進してきており、核燃料サイクルを推進するに当たっては、核拡散に係る国際的な疑念を生じないよう核物質管理に厳重を期すことはもとより、我が国において計画遂行に必要な量以上のプルトニウム、すなわち、余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持しつつ、プルトニウム利用計画の透明性の確保に努めている。 」と宣言している。

なお「国際プルトニウム指針」は次のように定めている。

プルトニウム管理に関する政策

13.〔……〕国政府は、核燃料サイクルに関する国家決定に合致し、平和的使用又は安全かつ永久的処分を保証する方法でプルトニウムを管理することをコミットする。その方策の策定に当たっては、核拡散、特にプルトニウムが燃料として照射される前あるいは永続的に処分される前の貯蔵期間中の核拡散の危険を回避する必要性、環境、作業者、公衆を保護する必要性、核物質の資源価値、費用・利益、所用予算、合理的作業在庫の需要を含み、可能な限り早期に受給をバランスさせることの重要性を考慮する

だが、プルトニウム利用はまったく進んでおらず、増える一方である。主として海外委託の結果、日本の保有する分離済みプルトニウムの量は、宣言当時24.1 トンだったものが、2004年末現在で43.1 トンに達している。海外での保管分が37.4トン、国内保管分が5.7トンである。

参考

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「余剰プルトニウムを持たない」方針は、1997年に突然でてきたのか。

1990年代初めからあった。

ただし、表現が少しずつ変わっている。

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「余剰プルトニウム」という表現はなぜ消えてしまったのか。

「余剰プルトニウムをどうするのだ」という批判を避けるため、余剰プルトニウムを増やさないようにするのではなく、「余剰プルトニウム」という表現を消してしまったらしい。

たとえば、初代外務省原子力課長金子熊夫氏の主催する原子力産業関係者らを中心とする「エネルギー環境Eメール会議」(EEE会議)は、「我が国の核燃料サイクル政策に関する提言」(2004年6月11日 EEE会議有志会員一同)の中で余剰プルトニウムについて次のように述べている。

再処理工場の稼動は、上記第3項に述べたように種々の理由によって決められるのであって、プルトニウムの需要量のみによって決定されるものではない。また、在庫のプルトニウムはいずれ燃料として燃やされるので、使用目的は明確であり、所謂「余剰プルトニウム」には該当しないと見るべきである。そもそも「余剰プルトニウム(excess plutonium)」とは国際原子力機関(IAEA)憲章(第12条A.5)に記載されている概念で、核燃料サイクル活動上必要性のないプルトニウムを意味し、これを核拡散防止の観点より適正に管理する目的で定められたものである。従来、我が国は「余剰プルトニウムは持たない」との方針を内外に明らかにしているが、この意味するところは必ずしも明確でない。何れにしても、原子力委員会は、無用の混乱を避けるため「余剰プルトニウム」とは何を指すのか明確にするべきであるが、その意味からも、第3項で述べたとおり、昨年8月の原子力委員会決定を見直すことを提案する。

つまり、日本はプルトニウムを燃料にする方針をとっているから、いくらため込んでもそれは「余剰プルトニウム」ではあり得ないという論理である。

どういうわけか、この提案には、原子力産業関係者と並んで、「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)」日本支部事務総長の横路謙次郎広島大学名誉教授も名を連ねている。IPPNWは、1992年に出した報告書『プルトニウム―核時代の危険物質をいかに扱うべきか 』(1993年 ダイヤモンド社刊)でプルトニウムを「核時代の恐怖の黄金」と呼び、「プルトニウムは、資源としてではなく、危険な廃棄物として扱うべきである」としている。

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2003年原子力委員会決定は、余剰プルトニウムについてなんと言っているのか。

プルトニウム利用に対する国内的、国際的懸念にも配慮し、プルトニウム利用についての一層の透明性を図るため、「利用目的のないプルトニウムを持たない、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則」に立ち、各電力会社がプルトニウムの分離前に詳細な利用計画を公表することを規定している。つまり、プルサーマル計画が遅れ、各電力会社がこのような計画の立てようのない現状では六ヶ所再処理工場で使用済み燃料を使ったプルトニウム分離試験を2006年2月に実施することはできないということである。

我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」(原子力委員会決定2003年8月5日 pdf, 5.7KB)は

プルトニウムの利用目的を明確に示すことにより、より一層の透明性の向上を図る」ため、「電気事業者はプルトニウム利用計画を毎年度プルトニウムの分離前に公表」し「原子力委員会は、その利用目的の妥当性について確認」し「電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的(利用量、利用場所、利用開始時期、利用に要する期間のめど)を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表する

としている。


またこの決定の運用について説明した文書では、

などを公開するように、以下の参考引用部分のように細かく規定している。

プルサーマル計画が進まず、ヨーロッパに保管されているプルトニウムの利用計画も具体化できていない状況において、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験で分離されるプルトニウムのこのような詳細な利用計画が各電力会社に公表できるはずがない。つまり、アクティブ試験を2006年2月に開始するとの日本原燃の計画は実施してはならないというのが、2003年8月の原子力委員会決定の意味である。

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プルサーマルは資源節約のためではないのか?

政府は、プルサーマルで、ウランの10-20%程度が節約できるとしている。(参考pdf)たいした節約効果ではないし、上述のビラからすると、これは大した重要性を持たないらしい。

本当に資源を節約したいのであれば、プルトニウム利用の本命の高速増殖炉の商業的導入実現までプルトニウムを使わないでおいておいた方がいい。05年10月11日に原子力委員会決定され、同年10月14日に閣議決定された原子力政策大綱では、2050年頃に商業ベースでの導入となっているが、本当にそんな時がくるのか、それがいいことなのかは、また、別の問題。(1982年の長計では、高速増殖炉は、約30年後の2010年頃に実用化となっていた。その2010年が近づいてきた今、実用化はさらに45年先になっている。)

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MOX燃料はなぜ高くつくのか

取り出したプルトニウムをただで提供したとしても、ウランを買ってきて燃料を作った方が安くつく。プルトニウムの放射能の高さのために、加工費が非常に高いからである。MOX利用が経済性を持つようになるのは、ウランの価格が現在の40倍以上になった時だと、メリーランド大学のスティーブ・フェター教授は指摘する。原発推進国の多くが再処理をしないで使用済み燃料をそのまま地層処分することに決めている事実がプルトニウム利用の非経済性を物語っている。

詳しくは─燃料コスト比較

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プルサーマルに使われるプルトニウムはどこからくるのか。

最初は、英仏に保管されているプルトニウムが使われることになっている。原子力委員会は、「プルサーマルの実施規模の拡大に合わせて、当初は海外再処理により回収されるプルトニウムが利用されるが、その後は国内再処理工場で回収されるプルトニウムが利用される予定」と説明している。プルサーマル計画が進んでいない現状で青森県の六ヶ所村の再処理工場の運転が始まれば、そこで分離されたプルトニウムはたまり続けることになる。たとえプルサーマルが現在の計画通り進んだとしても、六ヶ所の出番がくるのは何年も先のことである。いま急いで六ヶ所再処理工場の運転を始める理由はない。

2000年長期計画の資料(pdf)には次のようにある。(ここで示されている量は、燃えやすい核分裂性のプルトニウム(プルトニウム239および241)だけの量(プルトニウム全量の60−70%)を表すので注意。)

2010年過ぎまでのプルトニウムの回収と利用

【回収】

  1. これまでの海外再処理委託契約に基づいて回収されるプルトウムは、累計約30トンと見積られる。
  2. 国内再処理工場においては、六ヶ所再処理工場が本格操業した段階で年間約5トン弱のプルトニウムを回収することが予定されている。

【利用】

  1. もんじゅが運転再開した後は、研究開発用に年間数百キログラムのプルトニウム需要が見込まれる。
  2. 電気事業者は、2010年までにプルサーマルを16〜18基の規模まで順次拡大しつつ実施していくことを計画している。プルサーマルには、既に具体化している計画では一基当たり年間約0.3-0.4トンのプルトニウムの利用が見込まれる。
  3. 全炉心MOX燃料装荷の大間原子力発電所では年間約1.1トンの利用が見込まれる。
  4. プルサーマルの実施規模の拡大に合わせて、当初は海外再処理により回収されるプルトニウムが利用されるが、その後は国内再処理工場で回収されるプルトニウムが利用される予定。

(出典)第二分科会報告書より作成

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国のプルトニウム需給計画について福島県知事はなんと言っているか。

上の想定は、2005年の原子力政策大綱でも繰り返されているが、「原子力政策大綱(案)に対する意見」(pdf)の中で佐藤栄佐久福島県知事は次のように批判している。

II−5 核不拡散性について

既にわが国は40トンものプルトニウムを保有し、その処理の目途もたっていないのに、なぜ新たなプルトニウムを生む再処理施設を急いで稼動させるのか。「事業者にプルトニウム利用計画の公表を求めるので、利用目的のないプルトニウムが分離されることはない」としているが、国として定量的な処理見通しを示すべきではないか。

《参考》

プルサーマルを17基で実施するとしても年間使用量は0.3トン×17基=5.1トンで、六ヶ所再処理工場から生じる分を消費するだけで精一杯である。大間フルMOX炉が稼動すれば、年間1.1トン使用量が増加するが、40トン消費するのには数十年かかるのではないか。

【対象箇所】

○ 25ページ12〜15行目

2003年8月には、原子力委員会は、プルトニウム利用の一層の透明性確保のための「プルトニウム利用の基本的考え方」を決定した。今後の六ヶ所再処理工場の稼働に伴って、事業者等がプルトニウム利用計画をこれに沿って適切に公表することを期待する。

○ 36ページ9〜13行目

事業者には、これらの国の取組を踏まえて、六ヶ所再処理工場及びその関連施設の建設・運転を安全性、信頼性の確保と経済性の向上に配慮し、事業リスクの管理に万全を期して着実に実施することにより、責任を持って核燃料サイクル事業を推進することを期待する。

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過去のプルトニウム需給予測はどうなっていたのか。

大幅にはずれてきた。

たとえば、1991年に原子力委員会核燃料リサイクル専門部会が出した報告書「我が国における核燃料リサイクルについて」にある需給見通しでは、2010年までに累積供給量85トン、累積需要量82−93トンでちょうどバランスがとれると言うことになっていた。供給側も予測がはずれたが、需要はさらにはずれて、2004年現在のプルトニウム保有量は43.1トンとなっている。参考(pdf)

1991年の需給見通し:2010年まで

供給
 東海再処理施設5トン
 六ヶ所再処理工場50トン
 海外再処理施設30トン
 85トン
需要
 高速増殖炉実験炉「常陽」、原型炉「もんじゅ」12−13トン
 高速増殖炉実証炉と実用炉10−20トン
 新型転換炉原型炉と実証炉10トン弱
 軽水炉利用50トン
 82−93トン
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2000年長期計画の回収・利用の表にある全炉心MOX燃料装荷の大間原子力発電所とは?

電源開発(J−Power)が青森県大間町に計画している改良型沸騰水型軽水炉(全炉心MOX ABWR 電気出力138万3000kW)のこと。MOX燃料を全炉心で使う世界でも初めての大規模原発。年間1.1トン(核分裂性プルトニウム)の消費が期待されている。

1994年6月に策定された長計では、日本が独自で開発してきた新型転換炉の原型炉「ふげん」(重水減速沸騰軽水冷却型 電気出力16万5000kW 1978年初臨界 2003年運転停止 福井県敦賀市)に続く実証炉を大間に建設することが確認されていた。2000年代初頭の運転開始をめどに準備が進められていたが、原子力委員会は、1995年7月11日の電気事業連合会(電事連)の見直し要請を受け、1995年8月25日、実証炉計画の放棄を決定。電事連は、経済性の悪化を見直し要請の主要理由として挙げた。電事連の要請通りの全炉心MOX ABWRを地元との関係に配慮して、大間町でを建設することとなった。

参考図:1995年8月の政策変更後の需給見通し

大間計画の推移・予定:

2004年3月原子炉設置許可を経済産業省に申請
2005年6月経済産業省一次審査を終え、原子力安全委員会および原子力委員会に諮問
2005年10月19日大間町で第二次公開ヒアリング
原子炉設置許可を得て−
2006年8月着工
2012年3月運転開始

(ただし、敷地の地権者の一人と係争中で計画の行方は不透明。)

*MOX燃料調達先や使用済み燃料搬出先は未定

電源開発による大間原発の説明

参考図:「ふげん」主要諸元

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