核情報
2008. 8. 2IAEA理事会でインド保障措置協定を支持した日本
NPT・CTBT加盟の呼びかけはアリバイ確保か――8月21-22日の会合で問われる真価
8月1日、「国際原子力機関(IAEA)」理事会は、「核不拡散条約(NPT)」に入らず核実験を行い、核開発を続けるインドと米国の間の原子力協力協定を可能にするためのインド・IAEA保障措置協定を全会一致で承認しました。日本は同協定を支持しながら、インドにNPTと「包括的核実験禁止条約(CTBT)」への参加を呼びかけました。
協定が無条件で認められてしまった後、日本が呼びかけたといういうだけで、インドがNPTとCTBTに加盟するはずがありません。日本の呼びかけが単なるアリバイ確保的なものだったかどうかは、8月21-22日に予定されているという「原子力供給国グループ(NSG)」の会合での日本の行動で明らかとなります。
米印原子力協力協定の発効のためには、自国の原子力活動にかかわる核物質すべてを対象とする包括的保障措置協定をIAEAと結んでいない国への原子力関連輸出を認めていないNSGで規則を改定し、インドの例外扱いを決めることが必要です。日本も含む45ヶ国からなるNSGは、コンセンサスで物事を決定します。
日本はここでまた無条件での規則改正を認めながら、インドにNPTとCTBTへの参加を呼びかけるという見せかけの「核不拡散・核軍縮政策」を示すことになるのでしょうか。
『インディアン・エクスプレス』紙の8月2日の記事「協定、IAEAを通過し、NSGの若干の悪天候に備える」が、IAEAでの各国のステートメントを紹介しながら、NSG参加国の色分けをしていますが、そこで日本は米印原子力協力協定賛成派になっています。以下この記事による色分けを紹介し、各国のステートメント抜粋を訳出します。同紙によると5時間による議論の中で19のNSG参加国が発言したとこのことです。
- 米印原子力協力協定発効に向けた動き
- 『インディアン・エクスプレス』紙によるNSG参加国の色分け
- NSG参加国以外で反対を唱えたのは
- 各国の発言抜粋
- IAEA 2007-2008年の理事国35ヶ国
- 「原子力供給国グループ(NSG)」45ヶ国参加国
●参考
- 保障措置協定はインドを核不拡散体制に引き入れると主張するIAEAエルバラダイ事務局長の発言(理事会の冒頭演説・ビデオ、記者会見スピーチ・録音など) IAEA
- インド内閣信任決議可決で米印原子力協力にはずみか--名ばかりの保障措置協定 核情報
- インドとの原子力協力、米国だけ「置いてきぼり」の可能性 核情報
『インディアン・エクスプレス』紙によるNSG参加国の色分け
協定賛成
- 12ヶ国
米国、英国、フランス、ロシア、ブラジル、南アフリカ、日本、オーストラリア、カナダ、ドイツ、フィンランド、韓国(IAEA理事国ではないが特に支持発言) - 主張 「核不拡散にとって良い」
*日本は、インドがNPTとCTBTに署名する必要には触れた。
協定反対 (NSGでは例外措置に条件をつけろという主張となるか)
- 7ヶ国
スイス、オーストリア、オランダ、ノルウェー、中国、ニュージーランド、アイルランド - 主張 「NPTを弱体化する、インドは、CTBTに署名すべき。インドだけの例外措置は正当化できない。
NSG参加国以外で反対を唱えたのは
- パキスタン「我々にも例外措置が必要。協定は地域に戦略的不均衡をもたらす。」
(採択後に発言をすることによってIAEA理事会での投票要求を避けた。) - イラン 理事国でないが発言を許される。
米国の「ダブルスタンダード」について「深刻な懸念」を表明。イスラエルの「秘密計画」を正当化する「前例」となるだけだと。 - エジプト・マレーシア 理事国でないが発言を許される。
優遇措置、NPTに署名した非核兵器国にとって不公平。
各国の発言抜粋
- スイス
今日提示された提案に満足していない。これは標準的なテキストではない・・・これを受け入れることは、さまざまな例外を認める道をたどることになり、世界的核不拡散のゴールを我々の手の届かない所に追いやることになる・・・もし採択されれば、我々は、我々みんなが知っている核不拡散条約はその終焉を迎えたと認めなければならなくなり、その後を継ぐものについて考えなければならなくなる。 - オーストリア(オランダ及びノルウェーも代表して)
我々は、アネックスに[核]施設がリストアップされていないことを残念に思う・・・これは、抜け殻であって、協定ではない。我々は、最終的に事務局長の勧告に信頼を置くものだが、実施に関する問題は、いつでも理事会において検討できるという言う点をはっきりさせておきたい・・・これは、NSGの下でも[米印協定を]支持するということでは決してない。 - アイルランド
この決定は、米印[核]合意の一連のものの一つである。アイルランドは、核不拡散体制の見地を維持する考えでNSGに臨む。ここで[IAEA理事会]の確立された慣行は、コンセンサスで決めるというものである・・・投票があれば、棄権していたであろう。 - ニュージーランド (理事国ではない)
我々は、もっと明確さが欲しい。NSGのメンバーとして、最新の注意を払い続ける。
IAEA 2007-2008年の理事国35ヶ国
(*をつけたのはNSG参加国)
アルバニア、アルジェリア、アルゼンチン*、オーストラリア*、オーストリア*、ボリビア、ブラジル*、カナダ*、チリ、中国*、クロアチア*、エクアドル、エチオピア、フィンランド*、フランス*、ドイツ*、ガーナ、インド、イラク、アイルランド*、イタリア*、日本*、リトアニア*、メキシコ、モロッコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、ロシア*、サウジ・アラビア、南アフリカ*、スイス*、タイ、英国*、米国*
「原子力供給国グループ(NSG)」45ヶ国参加国
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国