核情報

2008. 8. 11

各紙米印協定批判──明言避ける高村外相
 ダナパラ元国連事務次長、長崎新聞でNPT崩壊警告

朝日・読売・日経・毎日各紙が社説で米印原子力協力協定はNPTを形骸化させるものだとの議論を展開しています。また、ダナパラ元国連事務次長は、長崎新聞のインタビューで、「米印原子力協定発効ならNPT崩壊へ」と警告を発しました。一方、8月5日、訪印中の高村外相は記者会見で、インドのシン首相に米印協定について明言しなかったと説明しています。

下に、各紙社説と記者会見記録の米印関連部分を貼り付けました。

参考:




米印核協力―不拡散体制が空洞化する 朝日社説 7月24日 同キャッシュ(社説タンク)←●元ページリンク切れの時はこちらをどうぞ

 協定は今後、日本など45カ国が加わる原子力供給国グループで論議される。全会一致で認められなければ、実際に機能しない仕組みだ。欧州の一部がすでに反対の姿勢を見せている。日本政府もあいまいな態度は捨て、明確な反対を表明してもらいたい。

原爆忌 核拡散を止めねばならない(8月6日付・読売社説)

核拡散防止条約(NPT)は、核兵器を保有しないとした国に核の平和利用を認めるものだ。NPTに入らず、核兵器を持ったインドに対し、平和利用を支援するのでは、NPTは、ますます形骸(けいがい)化してしまうだろう。

サミットの首脳宣言で、NPT体制の堅持・強化をいくら誓約しても、これでは説得力をもたないのではないか。

核拡散への監視を緩めるな(8/6) 日経社説

NPT体制のタガは緩むばかりなのに、米国はインドと原子力協定を締結、原子力燃料や技術を輸出しようとしている。国際原子力機関(IAEA)が承認した保障措置協定でインドの民生用原子炉が査察対象になっても、軍事施設は含まれない。事実上の核保有国と認め、特別扱いする動きに懸念せざるを得ない。

米国は北朝鮮に対しても、シリアへの核協力疑惑を半ば不問に付したまま、核施設の無能力化など6カ国協議を通じた目先の成果を急いでいる。米政権はテロ支援国家の指定解除にまで踏み切ろうとしている。

現状を是認して核拡散を食い止める思惑だろうが、適用除外を認めればNPT体制は根幹から揺らぐ。現に北朝鮮はインドの例を研究し、核不拡散の見返りに最低限の核兵器保有を米国に求めているという。これを認めれば、核の誘惑はイランなど世界に広がるばかりだ。

核兵器保有 インドの特別扱いは危険だ 毎日新聞社説2008年8月11日

日本はIAEAの保障措置協定には賛成したが、NSGに臨む態度は「白紙」だ。「北朝鮮情勢への影響を考慮する一方、インドの原発導入で地球温暖化対策が進む利点も考える必要がある」(外務省)という。

だが、ブッシュ政権の任期はあと5カ月。北朝鮮問題に全力を挙げるはずの米国が、他方ではインドの核兵器を認知させるべく奔走しているように見えるのは、いかにも据わりの悪い話である。

ここは、北朝鮮の核廃棄に集中すべきだ。「日本はインドの核兵器保有は認めたじゃないか」と北朝鮮が言い出せば、事態はさらに複雑になる。日本はインドの特別扱いに、明確に反対すべきである。

高村外務大臣記者会見 2008年8月5日

8月5日午前、当地を訪問中の高村大臣はシン首相表敬後にハイデラバードハウス(迎賓館)に於いて、会見を行ったところ、概要以下の通り。

・・・・

(問)今日の会談の中では、アメリカとインドの原子力協定についてどのような意見が交わされたのでしょうか。

(外務大臣)意見を交わしたというよりも、シン首相からその点について、いろいろ説明がありました。私(大臣)の方からは、インドが凄まじい経済発展をする中で、CO2排出が増えないようにする、あるいは削減するために原子力の平和利用、民生利用が必要であるということを理解している一方で、日本は唯一の被爆国として、核の不拡散、核軍縮といったものを通じて究極的に核の廃絶ということを目指している国である。その両面から、原子力供給国グループ(NSG)での議論に参加していくということを私(大臣)の方から申し上げました。

(問)NSGについて、シン首相の方から日本も同意して欲しい、という申し入れはありましたか。

(外務大臣)勿論、そういう話はありました。私(大臣)の方から、今、申し上げた二つの両面から積極的に議論に参加していくとの話をしたところです。

(問)特にYes、Noとのことではなくて、そういった説明をされたのですか。

(外務大臣)そういうことです。


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