核情報

2007.9.5

ダナパラ元国連事務次長、米印協定の危険性警告

ジャヤンタ・ダナパラ元軍縮問題担当国連事務次長が「印米民生用原子力合意は、原子力供給国グループ(NSG)と米国議会が承認すれば、世界的原子力輸出規制の終焉を実質的に保証することになるだろう」と警告しています。ダナパラ元駐米スリランカ大使は、1995年の核拡散防止条約(NPT)再検討・延長会議で議長を務めた人物です。この警告は、ウイリアム・ポター・モンテレー国際問題研究所ジェイムズ・マーティン不拡散問題センター所長と連名でインドの『ヒンドゥー』紙(9月1日)に発表した『不拡散健忘症の危険』(英文)で発したものです。

以下抜粋して二人の主張を紹介します。

印米民生用原子力合意は、「原子力供給国グループ(NSG)」と米国議会が承認すれば、世界的原子力輸出規制の終焉を実質的に保証することになるだろう。・・・

合意についての検討の次の主要なラウンドは、45ヶ国の加盟する「原子力供給国グループ(NSG)」で今秋起きることになりそうだ。NSGは、ブッシュ大統領が、つい3年前に、輸出規制を──とりわけ機微な核燃料サイクル分野において──強化するように訴えかけたグループである。ところが、現在では、ワシントンは、別の政策を持っている。それは、ロシアが長年求めてきたもの(米国が反対してきたもの)によく似たものだ。すなわち、自国の全ての核関連施設に対する保障措置を受け入れていない国々への核物質・技術の提供を禁止する輸出ガイドラインにおいて、インドに関する例外を設けようというものだ。米国のこの政策変更の結果、ロシアは既にインドとの間でさまざまな新しい原子力貿易合意の動きを始めている。貿易開始のためにはNSGがそのガイドラインをコンセンサスで修正する必要があるのだが、それを待たないでの動きである。中国は、既に同様の例外をパキスタンに適用する意思を表明している。オーストラリア、ベラルーシ、フランス、南アフリカその他の国々がNSGでのインドの前例を挙げて、商業的あるいは政治的に都合の良い時には、どこの国に対してであれ核関連品目を輸出する根拠にするだろうことは想像に難くない。

NSGにおけるインドに関する現在の議論で恐らく最も異常で不気味なのは、通常国際的不拡散コミュニティーのリーダーとされてきた国々の間でも、いかに経済的考慮が核拡散に関連した考慮に優っているように見えるかという点だ。・・・

NPTを無期限延長した歴史的な1995年NPT再検討・延長会議において、NPT締約国は──NSGの全ての加盟国を含め──「包括的=フルスコープ」保障措置を受け入れていない国々への原子力協力を慎むという政治的約束をした。それにもかかわらず、これらの国々のほとんどは、これらの義務について知らないか、あるいは、これらを無視しする選択をしている。・・・

・・・幾つかの首都でインドとの原子力貿易についての決定が不拡散問題についての専門知識を持たないか、その責任を負っておらず、また、その拡散への影響を意に介さない人々によってなされているのには当惑させられる。・・・

輸出管理は、現在も核兵器の蔓延を抑制する不完全ではあるが有用な道具である。この点において、NSGは、フローレンス・ナイチンゲールの指導原理──病院は他に何をしようとも、病気を蔓延させてはならない──に従うべきである。そうしなければ、拡散の問題が山積している時代において、NSGは、もっとも重要な多国間拡散防止機構の一つの有効性を意図的に、あるいは、不注意で台無しにする政策を採択してしまう可能性がある。

日本政府は、この警告に耳を傾けるでしょうか。


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