核情報

2011.6.28

「革新的」エネルギー・環境戦略か、陳腐な焼き直しか

6月22日、福島第一原子力発電所の事故後のエネルギー戦略を見直し、革新的エネルギー・環境戦略を策定するための「エネルギー・環境会議」初会合が首相官邸で開かれました。また、2010年6月に発表されたエネルギー基本計画の見直し作業が7月上旬にも近く始まる予定であり、これまでのエネルギー政策を決めてきた経産省と批判派の間の勢力争いが舞台裏で展開されていると報道されています。これからの動きを見ていく上で参考になる各種会議・委員会の歴史や関係についてリンク方式で簡単に整理しました。

参考 2012年10月追加




  1. 3つの見直し作業
  2. 成長戦略関連会議概要
  3. 成長戦略策定会議・新成長戦略実現会議関連経緯
  4. エネルギー基本計画関連経緯 経産省
  5. 原子力委員会原子力政策大綱
  6. エネルギー・環境会議と原子力委員会原子力政策大綱およびエネルギー基本計画の見直しとの関係は?
  7. 原子力政策大綱とエネルギー基本計画の関係は
  8. 関連リンク集



3つの見直し作業

  1. 内閣府・国家戦略室・新戦略会実現会議「エネルギー・環境会議」:革新的エネルギー・環境戦略
  2. 経済産業省(資源エネルギー庁)・総合資源エネルギー調査会:エネルギー基本計画
  3. 内閣府・原子力委員会「新大綱策定会議」:原子力政策大綱

「エネルギー・環境会議」は、2010年6月18日に策定(閣議決定)された新成長戦略を実現するために設置された新戦略実現会議の分科会として開かれたものです。新成長戦略と同じ2010年6月18日に閣議決定された「エネルギー基本計画」は、少なくとも3年に1度は改定と定められているものですが、福島の影響で見直しを迫られています。この計画は、「エネルギー基本法」により、経済産業大臣が、「総合資源エネルギー調査会」(経産相の諮問機関)の助言を得て策定し閣議決定を求めるものとされています。策定は、調査会総合部会の中におかれた「基本計画委員会」が担当しました。新しいメンバーで「基本問題委員会(仮称)」が7月初めにも設立され、8月末までに論点整理をする予定と報じられています。(新しい委員長として就任が決まったという三村明夫・新日本製鉄会長は、総合エネルギー調査会会長・総合部会部会長。2010年6月8日にエネルギー計画を決めた「基本計画委員会第4回会合は、総合部会との合同委員会で、司会は三村総合部会長」一方、2005年に策定された原子力政策大綱の見直し作業が原子力委員会に設置された新大綱策定会議により2011年初頭から始まっていましたが、福島事故発生以後中断状態にあります。

「エネルギー・環境会議」設置を決めた新成長戦略実現会議第9回会議(地震後2回目の会議)(6月7日)での説明などからすると、次のようなスケジュールが想定されています。革新的エネルギー・環境戦略の策定に向けた中間的整理を年央(7月)に行い、これを受けて、原子力委員会や総合資源エネルギー調査会が検討を進める。新成長戦略実現会議が、これを検証して、年末に革新的エネルギー・環境戦略の基本方針を定める。これを受けて原子力委員会と総合資源エネルギー調査会が「原子力政策大綱」及び「エネルギー基本計画」の改定作業を進め、これらを新成長戦略実現会議が検証して、来年のどこかの時点で、革新的エネルギー・環境戦略を定める。

これらの作業に、経済産業省他これまでの政策にかかわってきた官僚組織が同じようにかかわり、各種委員会・会議がこれまでと同じようなメンバーで構成されていたのでは、新しい政策は出てこないでしょう。新成長戦略実現会議及びその分科会の「エネルギー・環境会議」が非公開で開かれている状況をまず変えなければならないでしょう。現在のように、単に議事録と資料をインターネットで公開という方式を変えなければなりません。

参考 民意を反映したエネルギー政策決定を要望 eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会) 2011年6月17日

成長戦略関連会議概要

成長戦略策定会議

成長戦略策定会議は、平成21年12月15日の閣議決定により政府一体となって成長戦略を策定するために設置されました。内閣総理大臣を議長とし、内閣官房長官、国家戦略担当大臣、経済産業大臣を副議長、全ての国務大臣を議員として、国家戦略室が、内閣府大臣政務官及び経済産業大臣政務官の補佐に下で会議の事務局を総括しています。また、同会議の下で副大臣級の成長戦略検討チーム会合を開催し、有識者や各府省へのヒアリングを実施しています。

また国家戦略室では、現場の生の声を聞くために、地域での意見交換、各界、分野の有識者との意見交換を行なっています。

*2010年6月18日 新成長戦略の閣議決定により任務を終える。

新成長戦略実現会議

 *上のページに毎回の会議の資料・議事録等がある

新成長戦略実現会議は、平成22年9月7日の閣議決定により、新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)の実現を推進・加速するため、に設置されました。

内閣総理大臣を議長とし、内閣官房長官、国家戦略担当大臣・内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、経済産業大臣を副議長、財務大臣、内閣総理大臣が指名する者、関係機関の長及び有識者を構成員として、内閣官房副長官及び内閣府副大臣が、内閣府大臣政務官及び経済産業大臣政務官の補佐の下で会議の事務局を総括しています。

エネルギー・環境会議 (新成長戦略実現会議の分科会)

エネルギー・環境会議の開催について 新成長戦略実現会議決定 2011年6月7日  (pdf)

1.「新成長戦略実現会議の開催について」(平成 22 年9月7日閣議決定)に基づき、エネルギーシステムの歪み・脆弱性を是正し、安全・安定供給・効率・環境の要請に応える短期・中期・長期からなる革新的エネルギー・環境戦略を政府一丸となって策定するため、エネルギー・環境会議(以下「会議」という。)を開催する。

2.会議の構成員は、次のとおりとする。ただし、議長は、必要があると認めるときは、関係大臣その他関係者の出席を求めることができる。

議長 国家戦略担当大臣

副議長 経済産業大臣、環境大臣

構成員 外務大臣、文部科学大臣、農林水産大臣、国土交通大臣及び内閣府特命

担当大臣(経済財政政策)、議長の指名する内閣官房副長官

事務局長 内閣府副大臣(国家戦略担当)

3.会議の庶務は、経済産業省及び環境省の協力を得て、内閣官房において処理する。

エネルギー・環境会議幹事会の開催について 2011年6月22日エネルギー・環境会議決定案 (pdf)

1.エネルギー・環境会議を補佐し、エネルギーシステムの歪み・脆弱性を是正し、安全・安定供給・効率・環境の要請に応える短期・中期・長期からなる革新的エネルギー・環境戦略を政府一丸となって策定するための検討、施策の進捗管理等を行うため、エネルギー・環境会議幹事会(副大臣級会合)(以下「幹事会」という。)を開催する。

2.幹事会の構成員は、次のとおりとする。ただし、座長は、必要があると認めるときは、関係府省の政務三役その他関係者の出席を求めることができる。

座長 内閣府副大臣(国家戦略担当)

副座長 経済産業副大臣、環境副大臣

構成員 座長が指名する内閣官房副長官、外務副大臣、文部科学副大臣、農林水産副

大臣、国土交通副大臣、内閣府副大臣(経済財政政策)

3.この会合を補佐するため、関係府省庁の政務三役又は事務レベルその他関係者による会議を随時開催する。

4.幹事会の庶務は、経済産業省及び環境省の協力を得て、内閣官房において処理する。

*以上の決定案で決定

*以下は新成長戦略実現会議第9回会議(6月7日)後の平野達男内閣副大臣記者会見 (pdf)から。言及している資料は「革新的エネルギー・環境戦略について」 (pdf)

(質問)14頁の「エネルギー・環境会議」の構成員は、このまま読むと9人と読めるが、今月中にも発足させるイメージでよいか。

(回答)今月中には第1回をやらないといけないと思う。後は、幹事会中心に頻繁に会議を重ねるという形になると思う。

(質問)幹事会の有識者については、大学教授以外に、民間企業、シンクタンクなども念頭に置いているのか。

(回答)具体的に誰ということまで念頭にないが、今挙げた方々は全て可能性がある。

(質問)「エネルギー・環境会議」のメンバーについては、あくまでも閣僚級ということで、党側からは入らないという認識でよいか。

(回答)今、取りあえずは党は入れていないが、いずれ党を入れることになると思う。今回は、これで出発ということで合意した。

(質問)[12ページ]「原子力行政・規制等のあり方に関する検討委員会」はどのようなものか。

(回答)今般の原子力の事故を踏まえ、これまでの原子力行政や原子力安全規制のあり方について、一から検証するための委員会が必要だということでは認識が一致しており、他の会議の状況を見ながらいずれ設置しようということで政府の中で合意している。これは新成長戦略実現会議とは独立した委員会となるので、いつ設置するかというところまで現段階では把握していない。

成長戦略策定会議・新成長戦略実現会議関連経緯

2009年12月15日
成長戦略策定会議の開催について 閣議決定 (2010年1月8日一部改正) (pdf)
2010年6月18日
「新成長戦略」ー「元気な日本」復活のシナリオー閣議決定 (pdf)
2010年9月7日
新成長戦略実現会議の開催について 閣議決定 (pdf)
 新成長戦略の実現を推進・加速するため、新成長戦略実現会議を開催することを決定
 第1回会議(2010年9月9日)から第7回会議(2011年年1月21日)まで開催。地震後中断
2011年5月17日
政策推進指針〜日本の再生に向けて〜 閣議決定 (pdf)
 「新成長戦略実現会議」を5月から再開し、同会議で「革新的エネルギー・環境戦略」を検討すると決定
2011年6月7日
エネルギー・環境会議の開催について 新成長戦略実現会議決定 (pdf)
 新成長戦略実現会議第9回会議(議題:革新的エネルギー・環境戦略について)で、革新的エネルギー・環境戦略を政府一丸となって策定するため、「エネルギー・環境会議」を新成長戦略実現会議のもとで開催することを決定
参考:
  • 第9回会議議事次第・資料
  • 議事録 (pdf)
  • 記者会見 (pdf)
  • 2011年6月22日
    エネルギー・環境会議第1回会議

    エネルギー基本計画関連経緯 経産省

    2002年6月7日
    エネルギー計画基本法が議員立法として成立。14日公布・施行
     12条3 経済産業大臣は、関係行政機関の長の意見を聴くとともに、総合資源エネルギー調査会の意見を聴いて、エネルギー基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
     12条5 ・・・少なくとも三年ごとに、エネルギー基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。
    2003年10月
    エネルギー基本計画策定 (PDF:87KB)
    2007年3月
    エネルギー基本計画第一次改定 (PDF:402KB)
    2010年6月18日
    エネルギー基本計画 閣議決定 (pdf)

    まず、2020 年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約 85%を目指す(現状:54 基稼働、設備利用率:(2008 年度)約 60%、(1998年度)約 84%)。さらに、2030 年までに、少なくとも 14 基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約 90%を目指していく。これらの実現により、水力等に加え、原子力を含むゼロ・エミッション電源比率を、2020 年までに 50%以上、2030 年までに約 70%とすることを目指す。

    p.27

     *2030年の発電量に占める原子力の割合を約50%にすることを意味する。

    (4) 核燃料サイクルの早期確立と高レベル放射性廃棄物の処分等に向けた取組の強化

    (ア)使用済燃料の再処理・貯蔵、プルサーマルの推進

    使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用する、核燃料サイクルは、限りあるウラン資源の有効利用と高レベル放射性廃棄物の減量化につながる、エネルギー安全保障上重要な取組であり、我が国の基本的方針である。・・・このため、六ヶ所再処理工場の円滑な竣工・操業開始に向けて、国、研究機関、事業者等の関係者が連携し、残された技術的課題の解決に一体となって取り組む。・・・

    (イ)高速増殖炉サイクルの技術開発

    高速増殖炉サイクル技術は、我が国の長期的なエネルギー安定供給等に大きく貢献するものであり、早期実用化に向けた研究開発を着実に進めることが重要である。2010 年5月に試運転が再開された高速増殖原型炉「もんじゅ」の成果等も反映しつつ、2025 年頃までの実証炉の実現、2050 年より前の商業炉の導入に向け、引き続き、経済産業省と文部科学省とが連携して研究開発を推進する。・・・

    p.31-32

    新成長戦略実現会議第9回会議でのエネルギー基本計画についての説明(図)はこちら (pdf)(14ページ)

    策定に当たった経済産業省総合資源エネルギー調査会総合部会基本計画委員会の委員会メンバー等はこちら

    問い合わせは、資源エネルギー庁長官官房総合政策課 E-MAIL: enechohp@meti.go.jp

    (総合エネルギー調査会概要はこちら:会長は三村明夫・新日本製鉄会長)

    基本計画委員会(及び総合部会全体)の議事録はこちら

    *2010年エネルギー基本計画を策定した基本計画委員会は2月8日から6月8日まで4回開催。第4回は、総合部会との合同会議。司会は、三村総合部会長。第4回の議事録はこちら (pdf)

    *新しい「基本問題委員会(仮称)」委員長に三村明夫・新日本製鉄会長が就任との報道(8月中にも中間報告?)

    原子力委員会原子力政策大綱

    原子力委員会は1956年以来ほぼ5年ごとに『原子力の研究、開発および利用に関する長期計画』(長計)を発表。2005年の最新版は、原子力政策大綱と呼ばれる。2010年末から、新しく原子力政策大綱を策定する会議が開かれている。

    会議構成メンバーはこちら (pdf)

     2010年12月から5回の会議を開催。福島第一原子力発電所における事故の状況等を踏まえ、審議を中断。定例会議で新しい政策について今後の原子力政策についてのヒヤリング実施中(資料及び議事録または音声)

    原子力委員会の5人の委員の紹介はこちら

    *原子力委員会の定員内職員(12名)の出身別は次の通り。文科省6名、経産省5名、民間企業1名。このほか10名弱の民間出身者がさまざまな肩書で勤務している。

    エネルギー・環境会議と原子力委員会原子力政策大綱およびエネルギー基本計画の見直しとの関係は?

    新成長戦略実現会議第9回会議における平野達男内閣副大臣の説明

    第1段階

     年央(7月ぐらい) 革新的エネルギー・環境戦略の策定に向け中間的整理

    第2段階 

     年央から年末 中間的整理を受け、政策課題に応じて原子力委員会・総合エネルギー調査会などで検討を本格化

     年末に革新的エネルギー・環境戦略の基本方針

    第3段階

     福島状況、事故調査、検証委員会の状況を踏まえながら原子力政策大綱、エネルギー基本計画、それぞれの改定の具体的作業を本格化

     来年のしかるべきタイミングで革新的エネルギー・環境戦略のとりまとめ

    4つ目の論点としては、成果をどのタイミングでいかに出すかということであります。

    全体のスケジュール感につきましては、まず年央、年末、来年の3段階で進めてはどうかという御提案でございます。

    詳細は、12ページ目を御覧いただきたいと思います。第1段階として、年央の7月ぐらいまでに、革新的エネルギー・環境戦略策定に向けた中間的な整理を打ち出してはどうか。

    加えて、省エネ、新エネの先行実施など、先行的に具体化するものをとりまとめてはどうかと思っております。ちなみに、革新的エネルギー・環境戦略の策定に向けた中間的な整理につきましては、各項目の課題の論点整理が中心になると思います。

    第2段階ですが、年央から年末に向けては中間的な整理を受け、政策課題に応じて、原子力委員会、総合エネルギー調査会などで検討を本格化し、年末に革新的エネルギー・環境戦略の基本的な方針を出します。

    第3段階では、福島の原子力発電所事故の収束に向けた状況、原子力に関しての事故調査、検証委員会の状況を踏まえながら、原子力政策大綱、エネルギー基本計画、それぞれ6の改定の具体作業をこの段階で本格化し、来年のしかるべきタイミングで革新的エネルギー・環境戦略をとりまとめることにしたいと思います。

    このような3段階で議論を始めてはどうかという御提案でございます。

    図の右側には、上から下に4つの矢印が伸びておりまして、それぞれ、福島の事故の収束に向けた状況、原子力に関しての事故調査・検証委員会、東京電力に関する経営・財務調査委員会、それから、今後立ち上げ予定の原子力行政・規制等のあり方に関する検討委員会(仮称)における検討のスケジュール感でございます。これらの成果次第で来年の革新的エネルギー・環境戦略の最終的なとりまとめの時期が動き得るということも、この図では併せてお示ししてございます。

    p.5-p.6

    革新的エネルギー・環境戦略策定に関するスケジュール

    新成長戦略実現会議第9回会議の資料1 より

    参考:


    *環境エネルギー政策研究所(ISEP)の飯田哲也所長は、総合資源エネルギー調査会や原子力委員会に今後のエネルギー政策を議論させてはならないと主張している。

    「会議」の役割は「戦略策定」であり、具体政策は「総合資源エネルギー調査会」「原子力委員会」等に委ねる仕組みとなっているが、現在のエネルギー政策体制そのものを見直さなければならず、真っ先に見直し対象となるべき「総合資源エネルギー調査会」「原子力委員会」に今後のエネルギー政策を議論する資格はない。

     出典:国民の国民による国民のための原子力・エネルギー政策へー「エネルギー・環境会議」への「12の提言」(2011年6月11日) (pdf)

    原子力政策大綱とエネルギー基本計画の関係は

    新大綱策定会議第4回会議(2011年2月21日)の近藤駿介原子力委員会委員長の説明だと、閣議決定された「エネルギー基本計画」と矛盾する内容の大綱は出せないかのように受け取れる。

    問題の近藤委員長の発言は、下の「エネルギーにおける原子力発電について(議論の中間整理)(案)」 (pdf)をめぐるやり取りでのもの。

    エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るために定められた、エネルギー基本計画(平成 22 年 6 月閣議決定)では、2030 年までに電源構成に占めるゼロ・エミッション電源の比率を、約 70%(2020 年には約 50%以上)にするとしている。その際の試算によれば、供給安定性・環境適合性・経済効率性に優れる原子力発電については 2020 年までに、9 基の原子力発電所の新増設、リプレースを行うと共に、設備利用率約 85%を目指すとされている。さらに 2030 年までに少なくとも 14 基以上の原子力発電所の新増設、リプレースを行うとともに、設備利用率約 90%を実現すると、2030 年には総発電電力量の約 5 割を供給することになるとされている。

    そこで我が国は、安全の確保を大前提として、2030 年以降も相当の期間にわたって原子力発電が基幹電源であり続けることも踏まえ、核不拡散や核セキュリティに関する国際約束を遵守し、原子力発電が安全性、信頼性、経済性に関して優れたエネルギー供給技術であることを、絶えず示していくべきである。そして、そのための取組を通じて、国際社会に対して、非核兵器国として、核不拡散の要請に十分に対応しつつ原子力の平和利用を推進するという、原子力の平和利用の在り方の模範を提供していくべきである。

    (p.2-p.3)

    阿南久全国消費者団体連絡会事務局長の発言 (pdf)

    2つ目です。基本的な考え方、目標に関するところですが、ここにはエネルギー基本計画が紹介されておりますが、これだけでは原子力委員会としての主体性の点でちょっと問題があるのではないかと思います。特にエネルギー基本計画では、2030年には、総発電電力量の約5割を供給すると言っていますが、余りにも非現実的ではないかと思います。

    国の電力について、これまで電力のベストミックスということで、火力、水力、原子力などのバランスのとれた電源構成を目指してきたということの関係でいっても、一つの電源に偏った方向性を出すのは今回初めてでありますので、もし何らかの理由でとまってしまった場合は大変なクライシスということも想定されますので、ここはもう少し冷静に書いたほうがいいと思います。東電の清水社長さんも参加されているということですが、私は、電力会社さんはいつ、電源のベストミックスではなくて原子力5割に方針転換したのかということについて伺いたいと思っております。

    p.8-p.9

    近藤委員長の応え

    それから、エネルギー基本計画につきましては前回補足説明をいただきました。その取扱いについては、大方のご意見は閣議決定されたものであり、レファレンスにすべき、あるいはそれを踏まえるべきということであったと私どもは受けとめました。ただし、阿南委員からはそこで使われているデータ等についてご意見があり、それについては私もそういうことは、たしかあれは3年ごとにですか、見直されるものですから、次回の改定に向けてそういうご意見をきちんとお伝えしていただくのがいいのかなという感想を持ったところでございます。

    なお、これは、今から申し上げるのは気が早すぎるんですけれども、私どもとしてはこの議論の成果を最終的には閣議で参考にすることを決定していただくものにしたいと思っておりますので、閣議で決定されたものについては、無理がなければ、レファレンスすることが適切かと思っているところではございますが、ご意見、承りましたので、その時までに考えてみたいと思います。

    p.9-p.10

    *閣議決定されたエネルギー基本計画に言及しなければ、「閣議で参考にすることを決定して」いただけないとしたら、言及して、「この計画はエネルギー安全保障の面からいっても好ましくない」というような批判をしたらますます閣議で参考にすることを決定していただけないものになるから、そのような批判はすべきでないと委員長が考えているのではないのかとの疑問がわいてくる。当然、そんな会議など開いても無駄だとの批判も出てくる。ただし、これは、「エネルギー基本計画」が2010年6月に閣議決定された後、新大綱策定会議が始まったということが背景にある。福島の事故を受けた状況で、両文書の見直しが同時並行的に行われ、話は複雑となる。

    関連リンク集


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