核情報

2012. 4. 26

「勝手な足し算」を繰り返す原子力委員会事務局 利害の衝突・利益相反が原因?

4月19日の原子力委員会「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」で、事務局が座長の指示を無視して、既投資分を加算したデータを使い、使用済み燃料の直接処分費用を実際よりも高く見せたことを、24日の共同通信記事が取りあげ、議論を呼んでいます。12日には、近藤委員長が、2004年に行われた現大綱の策定会議で、事務局の「皆さん勝手に足し算しちゃった」と述べていました。業界代表が入っている事務局構成に問題があるのかもしれません。

参考




  1. 原子力委員会事務局は、再処理推進派政府機関・民間組織の詰め所?
  2. この状況について、近藤委員長は?



原子力委員会事務局は、再処理推進派政府機関・民間組織の詰め所?

原子力委員会の事務局は、高速増殖炉・再処理路線を推進してきた文科省・経産相及び政府研究機関の出身者の他、電力会社・メーカー出身者から構成されている。

2011年6月1日現在、原子力委員会(原子力政策担当室)職員数及び出身組織別人数は以下の通り。

定員内職員(12名)

 文科省6名、経産省5名、民間企業1名。

定員外職員 13名(民間企業からの出向者は7名)

この状況について、近藤委員長は?

2004年3月4日第5回「長計についてご意見を聴く会」で発言したマイケル・シュナイダーは、後日と近藤委員長に、このような状況は利害の衝突に当たるのではないかと公開書簡をだした。以下は、その翻訳。

マイケル・シュナイダーからの公開質問状 2004年3月12日

拝啓

原子力長期計画の見直しにあたって、日本原子力委員会に意見を述べるためにお招き頂いたことを改めて感謝いたします。

しかしながら、次の点についての私の強い懸念をお伝えすることをどうかお許しください。原子力委員会は最近の発表で、平和的な原子力の研究と利用のために民主的運営の重大さを次のように強調しています。「原子力委員会は、この基本方針を想起しながら我々の責務を果たしていく。」その文書はまた「原子力委員会は、(中略)原子力基本法の目的を達成する可能性が全体としては損なわれることのないように、最新の知見と情勢を踏まえて、政策評価と見直しを不断に行ってまいります1」とも述べています。

そのような背景のもと、委員会は、私のような外部の独立した専門家からの意見聴取も含めた広聴を催されています。しかしながら、私は、原子力委員会の事務局は少なくともその一部が、原子力業界の私企業に雇用されていながら委員会からも給与を得ている公務員によって運営されていることを知りました。委員会の事務局の一員に、このような状況は「利害関係の衝突」に当たるのではないかと尋ねたところ、「恐らくそうだろう」との答えを得ました。

原子力委員会の事務局員が委員会と原子力産業界から同時に給与を受け取っているとすれば、これは「利害関係の衝突」の非常に深刻な事例であると考えます。このような状況は、国民の利益を代表する民主的な行動規範であるべき、独立機関としての委員会の信用を確実に大きく損なうものでありましょう。

この由々しき問題についてお考えをお聞かせいただければ幸甚です。

お読みいただき有り難うございました。

敬具

マイケル・シュナイダー



*1 Atomic Energy Commission of Japan, New Year Policy Statement, January 6, 2004
 日本原子力委員会, 年頭に当たっての所信, 2004年1月6日

近藤委員長の回答 2004年3月19日

シュナイダー様

2004年3月4日の第5回の長計についてご意見を聴く会での貴殿の御講演に感謝しております。

3月4日付の書簡の利害関係の衝突について、以下の点を明らかにしたく存じます。

(1) 日本原子力委員会の任務は、原子力基本法の基本方針と目的に則り、原子力の研究、開発及び利用の長期計画を審議し、長期計画に基づく関係者の活動を精査し、必要があれば助言することである。委員は国会の承認のもとに内閣総理大臣に任命された国家公務員であり、任務を公平に達成する努力をするものである。

(2) 委員会と委員は、委員長の監督の下に委員会事務局から様々な事務的な助けを受けるが、委員会は全ての決定は広範な判断のもとに行う。事務局員は国家に雇用されており、国家公務員法の義務のもとで働く。

貴殿の書簡は我々への公開書状であることが示されていたので、貴殿の書簡とこの返信を当委員会のウェブページに掲載するように事務局に依頼する所存であります。そのような扱いが好ましくない場合には、できるだけ早くお知らせいただきたい。

当委員会への御尽力に重ねて感謝いたします。

敬具

委員長 近藤駿介

出典

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