核情報

2012. 4. 24

直接処分を高く見せるデータ処理 原子力委員会事務局のクーデター?
2004年に政策変更コストを「勝手に足し算」、今回は再処理工場既投資分コストも「勝手に足し算」
再処理工場を凍結して、2−5年かけて別の枠組みで政策検討必要

4月19日、原子力委員会「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」で、事務局は、使用済み燃料の直接処分費用を実際よりも高く見せるデータを発表しました。このデータは、使用済み燃料の全量再処理、再処理・直接処分並存、全量直接処分の三つのシナリオにおける2010年から2030年の発電にかかる核燃料サイクルコスト部分についてモデル計算で比較したものですが、事務局は、直接処分に関し、すでに発生している使用済み燃料の処分費用や、既投資分、再処理工場の廃止措置分などの全額を20年間の核燃料サイクル・コストにすべて押しつける形の計算を示しました。前回の12日の会合で、鈴木座長は、六ヶ所再処理工場の「既投資分は、すべてのシナリオで共通なので計算に入れない」と明言していました。

4月12日の小委員会で、近藤委員長が、2004年の「政策変更コスト」の計算について「皆さん勝手に足し算しちゃった」と述べていましたが、今回も事務局による「勝手な足し算」が行われてしまいました。

この計算方式が意味をなさないことは、この方式に従えば、計算対象期間を、例えば、2012年5月1日から5日の5日間にした場合をモデル化すると、泊原発3号機の実際の発電にかかる核燃料サイクル・コスト部分に相当するものに、既発生使用済み燃料の処分コストや、六ヶ所再処理工場の既投資分、廃止費用などが全額加算されてしまうことを考えれば明らかです。一方、再処理路線のコストの方は、再処理建設・運転・廃止措置コストを入れたモデル・プラントの計算から算出したキロワット時当たりのコストに実際の発電量をかけたコストとなり、当然5日間の費用は限定的なものとなります。

以下、鈴木座長や近藤委員長の発言や事務局が4月19日の会合前日に委員に示したドラフト、19日実際に使われた資料の一部などを見ながら、この問題を検討します。

不適切計上でコスト膨張

不適切計上でコスト膨張

参考




  1. 事務局計算の概観
  2. 2011年11月の原子力委員会データに基づく全く別の計算方法だと?
  3. 事務局計算の基本的問題:1.鈴木座長の指示を無視した事務局
  4. 事務局計算の基本的問題:2.計算方式のまやかし
  5. 事務局計算の基本的問題:3.足してはいけない「政策変更コスト」の足し算を誘引
  6. 足し算はできないとの鈴木座長と近藤委員長の説明
  7. 鈴木座長や近藤委員長の発言に沿った資料を作成するなら?
  8. 再処理工場運転を凍結して、本格的議論を
  9. 4月19日の会合の際に配布された資料



事務局計算の概観

計算方法

事務局の計算データは、全発電全体に占める原発の比率が( I )2030年に35%(発電量6.8兆kWh)( II )同20%(5.6兆kWh)( III )2020年に0%(2.0兆kWh)という三つのケースについて、それぞれ、その間の発電に関わる核燃料サイクル・コストを、(1)全量再処理、(2)再処理・直接処分並存、(3)全量直接処分の三つのシナリオについて算出しよういうものである。

各原子力比率における設備容量

原子力比率 I
  • 総需要  : 約1兆kWh
  • 原子力比率:    35%
  • 設備利用率:   約80%
  • (1兆kWh×35%)/(365日×24時間×80%)=約50GW
原子力比率 II
  • 総需要  : 約1兆kWh
  • 原子力比率:    20%
  • 設備利用率:   約80%
  • (1兆kWh×20%)/(365日×24時間×80%)=約30GW
原子力比率 III
  • 総需要  : 約1兆kWh
  • 原子力比率:    0%

11ページ


経産省総合資源エネルギー調査会「基本問題委員会」やエネルギー環境会議「コスト等検証問題委員会」での議論に合わせるために、2011年11月に出力120万キロワットのモデルプラントという概念を使って出したキロワット時当たりの核燃料サイクル・コストをベースとして使っている。このモデル・プラントのコスト計算においては、(1)全量すぐ再処理、(2)一部使用済み燃料は長期貯蔵後再処理、(3)全量直接処分について、架空の発電所「モデルプラント」の核燃料サイクル・コスト計算を行っている。事務局は、シナリオ1,2に関しては、合計「約4.7兆円+α」に当たる部分がモデル・」プラントのキロワット時当たりコストの計算の際にすでに入っているから、シナリオ3ではこれを加えたと説明する。

参考

計算の考え方の説明

経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−算定の考え方−

共通事項
  • 各シナリオ毎の総費用(2010〜2030年)は下記の考え方で算出
    シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用=ベース値+シナリオを実現するために今後追加となる費用
  • ベース値
    サイクルコスト*(円/kWh)× 2010〜2030年の総発電電力量(kWh)
    *:本小委員会にて実施した試算を元に各シナリオ毎のサイクルコストを試算。
  • なお、立地自治体との条件の変更に伴い追加の可能性のある費用も算定

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2011年11月の原子力委員会データに基づく全く別の計算方法だと?

六ヶ所で処理される予定の3万2000トンが直接処分された場合と、再処理された場合とのコストを比べるもの。

プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル公共・国際問題教授は、核燃料サイクルコスト、事故リスクコストの試算について(見解)(pdf) 2011年11月10日原子力委員会の数字を元に簡単な計算をすると次のようになるという。(私信)

試算は、再処理シナリオよりも直接処分シナリオの方が、キロワット時当たり0.8円〜1.0円/kWh安いとしている。

六ヶ所再処理工場は、合計3万2000トンの使用済み燃料を再処理すると想定されている。

この使用済み燃料が原子炉で利用された際に発生したのは、「平均4万5000MWd/tの燃焼度、その熱の3分の1が電力に変換」と想定すると、再処理の方が総額で、約9〜12兆円ほど高くなる。プルサーマルを想定するとさらに高くなる。

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事務局計算の基本的問題:1.鈴木座長の指示を無視した事務局

要点 既投資分を足し算する資料を作成したこと

鈴木座長は既投資分を計算に入れないと委員会で説明し、委員の了承を得たのであるから、計算に入れるなと言うのは、委員会の指示でもある。ところが、会合前日の18日に事務局が委員に提示したドラフトでは、再処理工場及び既着工済MOX工場の建物・設備の未償却資産見合いの費用、廃止措置費用などが、既発生分の使用済み燃料の直接処分にかかる追加費用とともに示され、「合計約4.7兆円+α」となっている。これが、キロワット時当たり核燃料サイクル・コストに総発電kWhを掛けたものに加算され、ケース I では、6.8〜6.9兆円+4.7兆円=11.5〜11.6兆円が合計コストとして示されている。これが19日当日の配布資料では外された。

これについて朝日新聞は次のように報じている。

だが、委員への事前説明では、すべての項目を足して存廃コストを比較することに異論が相次ぎ、案段階で記されていたコスト総額の数字はこの日の資料から外された。

出典 六ケ所中止なら5兆円必要/原子力委 朝日新聞 2012年04月20日

合計という文字を消しても、足し算するよう提案した事務局

事務局は当日、下に示した18日のドラフトの「合計欄」がそのままあるかのごとく、次のように説明している。

ベース値というものを計算しまして、そのベース値に「シナリオを実現するために今後追加となる費用」というものを加えたものを総費用としてはどうかというご提案でございます。・・・

ベース値と「シナリオを実現するために今後追加となる費用」とは別に、立地自治体との条件の変更に伴い追加の可能性のある費用も算定してみたものでございます。・・・

[16ページの@は]

現在立てている再処理工場てすとかとかMOX工場の設備とかありまして、資産として計上されているわけですけども、それが将来、減価償却とともに、コストの回収を図らなければならないというのが前提となりますので、その見合いの費用としていくらになっているか、と言うのを書いておいたものでございます。・・・

このようなものを18ページにありますように、並べてみたものでございます。

ベース値というのが先ほど御説明した通りのものでございまして、これに追加となるであろう費用を2番の欄にとして書いてございます。

意味合いの違うものも入ってございますが、とりあえず三つ並べたという形で書いてございます。

最後に可能性のあるものと言うことで御説明しましたものを3という欄に書いてあります。

以上の引用部分は、2012年4月12日第12回原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会音声から再現 


要するに、委員や座長に言われて、合計という項目だけは消したが、「加えたものを総費用としてはどうかというご提案」をしている。事務局には、座長の約束を無視した提案をする権限があるらしい。

マスコミは当然のことながら、事務局の意図したとおり、これらを足して、「(直接処分)する場合は、2030年までにかかる総費用は約2兆円高く、約10兆〜12兆円になるとの試算……すべて直接処分する場合は、再処理工場や燃料加工工場の早期廃止により建設費に見合う使用ができないことなどで、約5兆円の追加費用がかかる計算になることがわかった」(読売)、比率「35%の場合、費用は「全量直接処分」が11.8兆〜11.9兆円と最も高く」(日経)、などと報じた。これは、マスコミが悪いわけではない。

4月18日に小委員会委員に提示されたドラフト 

原子力比率 I (2030年に35%)のケース *赤字強調は核情報による(項目の色付けはコストの見せ方例に合わせて調整)

経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−シナリオを実現するために今後追加となる費用−
再処理を中止し,直接処分に変更することによる不可避の追加費用

  シナリオ1,2シナリオ3
六ヶ所再処理
事業中止に伴う費用
@再処理工場及び既着工済MOX工場の建物・設備の未償却資産見合いの費用ベース値に含まれている 1.78 兆円
A廃止に必要な廃棄物処理設備等*の建設費及び既存施設も
含めた工場全体の廃止までの操業費
 *:現在未建設だが操業中と廃止中に使用する設備
同上0.42 兆円
B上記@及び2の建物・設備の廃止措置費用同上1.45 兆円
C発生済廃棄物(ガラス固化体及びTRU廃棄物)の輸送・処分費同上0.07 兆円
D回収済Puの貯蔵管理・処分関係費用同上α

既発生分の使用済燃料の直接処分とガラス固化体の費用差
(1.7万トン×(14,500万円/トンU-8,500万円/トンU)

1.02 兆円

合計

0 兆円約 4.7 兆円 + α

出典:日本原燃からの提供等に基づく

16ページ


経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−比率 I (総発電電力量6.8兆kWh)まとめ−

 
シナリオ1
(全量再処理)
シナリオ2
(再処理/処分併存)
シナリオ3
(全量直接処分)
  中間貯蔵分を再処理中間貯蔵分を直接処分 
ベース値9.7兆円9.7兆円9.1兆円6.8~6.9兆円
追加費用4.7 兆円
合計9.7兆円9.7兆円9.1兆円11.5~11.6 兆円
上記に加え立地自治体との条件の変更に伴い下記費用が発生する可能性がある。
 0.03兆円0.39兆円

18ページ

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事務局計算の基本的問題:2.計算方式のまやかし

要点 計算は意味をなさない

事務局が作成した計算方式は、座長の指示に背いたというだけでなく、全く意味をなさないフィクションであり、結果的に直接処分を高く見せる結果となっている。直接処分方針の場合だけ、既発生使用済み燃料、六ヶ所再処理施設建設・廃止コストなどを2010〜2030年の20年間の発電コストの核燃料サイクル・コスト分に集中的に加算している。(2020年原発ゼロとするケース III では、2010年から2020年)

まやかしの仕組み

  1. 計算するのは、2010年から2030年までの20年間の発電にかかる核燃料サイクル・コスト分のはず。
  2. シナリオ1,2では、再処理施設建設・廃止コストなどが、キロワット時当たりで算出されている。核燃料サイクル総費用は、これに、20年間の発電電力量をかけて計算。六ヶ所再処理施設建設・廃止コストなどが、すでに発生している使用済み燃料や2030年以後に発生する使用済み燃料のサイクル・コストに分散して組み入れられている。
  3. シナリオ3では、既発生使用済み燃料処分費用、再処理施設建設・廃止コストが、恣意的に決められた計算対象期間での発電の核燃料サイクル・コストに集中的に加算されている。

どのケースでも同じになる直接処分コストの追加コスト

下の方にコピーを載せた各ケースの「経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用−まとめ−

のシナリオ3の追加コストを見ると、三つとも要素・合計が同じであることが分かる。

2030年で区切ったのは、単に、他の電力源の発電コストも計算する他の委員会と対象期間を合わせるため。区切りは、2013年でも、2050年でもかまわない。2012年5月でもかまわないということだ。

泊3号の5月の5日間の核燃料サイクル・コストは、実際のコスト+「合計約4.7兆円+α」

試しに、計算対象期間を、2012年5月1日から5日に泊3号1基だけ運転という状態をモデル化して計算するとどうなるか。シナリオ3では、泊3号1基だけの5日間の発電の核燃料サイクル・コストに相当するものに、発生済みの使用済み燃料の処分費用や、六ヶ所の既投資分、廃止コストなどが全部かぶせられることになる。直接処分方式をとった場合、泊1基での5日間の核燃料サイクル・コストが「約4.7兆円+α」以上となると言うことだ。

一方、再処理路線のコストの方は、再処理建設・運転・廃止措置コストを入れたモデルプラントの計算から算出したキロワット時当たりの核燃料サイクル・コストに5日間の実際の発電量をかけたコストとなる。

つまり、比較のしようのない数字を載せているということ。

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事務局計算の基本的問題:3.足してはいけない「政策変更コスト」の足し算を誘引

政策変更コスト「代替火力」は足してはいけない

2005年の現大綱を議論していた2004年、政策変更をすると立地地域の信頼関係が壊れ、六ヶ所再処理工場のプールに貯蔵中の使用済み燃料が各地の原発に送り返される可能性もあり、「原子力発電所からの使用済燃料の搬出や中間貯蔵施設の立地が滞り、現在運転中の原子力発電所が順次停止せざるを得なくなる状況が続く可能性が高い」から火力発電で代替するしかなくなるとして、そのコストを政策変更コストとして直接処分コストに加算し、これによって直接処分の方が高くなるとの結論が出された。この足し算が間違いだったと4月12日近藤原子力委員会委員長が指摘している。どうしても足すならそのような事象が起きる確率を計算し、それを掛けるという方式をとる必要があると近藤委員は説明した。

参考

政策変更コスト「使用済み燃料返送コスト」も足してはいけない

事務局計算では、この火力代替の前提になる「六ヶ所再処理工場から国内各発電所に返送する」場合を想定した費用0.05兆円などが「経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用−立地自治体との条件の変更に伴い追加の可能性のある費用

として算出されている。代替火力のコストを単純に足していけないのなら、これも足してはいけない。確率計算などして処理しなければならない類のものだと明記していなければ当然足したくなってしまう。事実、これも単純に足してしまった記事があった。

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足し算はできないとの鈴木座長と近藤委員長の説明

以下の引用部分は、2012年4月12日第12回原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会音声から再現

鈴木座長 19日に示す計算では過去の投資は入れない 

シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用と書いてあるのは、いまから、例えば2030年までにかかる費用を、すべて、すべてのシナリオで計算します。したがって、過去に投資したものについては、これは、1,2,3共通なので含めません。1,2,3のそれぞれで、何が出てくるかというとき、今度はさっきの廃棄物と同じなんですよ。2030年で、ブチッと切るんだけども、2030年までに出てきている使用済み燃料の再処理は、全部いずれ再処理しますと、言う前提で、将来に再処理するコストも、全量再処理には入れる。ということで計算します。要するに、2030年でブチッときれるんだけど、2030年までに発生している使用済み燃料の再処理費用、あるいは、ガラス固化体の処分費用、それから直接処分の場合も、使用済み燃料の直接処分について、それまでに発生した使用済み燃料の直接処分の費用は入れると。それで、1,2,3で比べます。

鈴木座長 政策変更コストは、起きるんだと言う形では出せないだろう

それが必ず起きると言うことであれば 計算しますが、蓋然性であると言うことであれば、例えば、最悪シナリオとして、これぐらいコストがかかるかもしれませんと言うことになりますが、その辺は我々の中で、シナリオとしてこれは必ず起きるという風に書けるかどうか、ちゃんと検証しながら。

ただご指摘の点は、前回の政策大綱の時にもありましたので、最悪の場合に発電所が止まって火力発電所に置き換えたときに,これぐらいかかると言うのはあり得るシナリオとしては計算はできると思うのですが、それが政策変更コストというとこれが起きるんだという形では、たぶん今回は出せないだろうと、と言うことを今日はまず御議論していただきたいと。

近藤委員長 2004年にも「皆さん勝手に足し算しちゃった」が、どうしても足すなら確率計算で

これは、前の時も私も何回も申し上げたんだけど、皆さん勝手に足し算しちゃったんですね。政策変更コストというのは、金銭換算して難しさのマグニチュードを表現しただけのものなんですね。そこの区別が大事なんで。

極端なことを言うとそれぞれの変更がアプルーブされるプロバビリティーを掛けて、そっちは累計して・・

足し算がいいということであれば、プロバビリティーを掛けなければいけない。そう言う性格のものであると言うこと。・・

総費用という言葉を使うときに、どうしても、それを含めて総費用を出したいというのであれば、まさにプロバビリティーを入れた格好で、総費用の式を作って計算するしかない。

近藤委員長 政府には説明責任があるが、その説明が全く功を奏さないと想定して計算するのは問題

[この部分は聞き取りにくいので趣旨のみ]

近藤委員長が指摘するとおり、政策を政府が変えた場合に、それに応じて政策遂行のための措置を講じるわけであり、それがすべて上手くいかないと想定するのなら、そのような無能な政府のために政策議論をすること自体が無意味となる。事業者も原子力村全体も、次々原発が運転停止になるの指を咥えて見ているということか。そして、そのような無能な政府や原子力村が、ガラス固化体の最終処分場の建設に成功するとは想定できないし、第二再処理工場建設、高速増殖炉開発などに成功するとも、当然想定できないことになる。

足したくてたまらない事務局が足し算しなかったコスト

不確実な部分を計算に入れたい事務局なのに、次のようなものはなぜ入ってない?

  • 再処理工場の運転開始がガラス固化などの技術的問題によって遅れ続ける場合に生じる計画遅延コスト(1000億X年数)(日本原燃の数字)
  • 技術的には運転可能になったとしても、3.11後さらに困難となったプルサーマル実施の不確実性のために、余剰プルトニウムを持たないとの原則から、再処理工場の運転ができなくなる場合に発生する計画遅延コスト(1000億X年数)
  • その場合に生じた長期遅延より各地の原発がのプールが満杯になってしまう可能性により生じうる代替火力コスト
  • 全量再処理を前提としていれば、中間貯蔵など必要ないではないかとの議論が強くなり、中間貯蔵所建設が極めて困難になり、各地の原発がのプールが満杯になってしまう可能性により生じうる代替火力コスト
  • 高速増殖炉計画が将来完全に破綻した場合に生じる未回収コスト(電力料金であれ、税金であれ、いずれにしても国民が払う)
  • 高速増殖炉での利用を想定していた使用済みMOX燃料の処分のために新たに直接処分用処分地を建設する際に生じうるコスト

など

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鈴木座長や近藤委員長の発言に沿った資料を作成するなら?

4月12日の鈴木座長の説明から期待された今後生じるコストの見せ方例を下に示す

例として示してあるだけで、網羅的なものを意図してはいない。モデルプラント的発想を入れながら複雑な計算をすることが必要と主張しているわけでもない。他の電源との比較と、核燃料サイクル・シナリオ同士の比較とを、恣意的に定めた計算対象期間に関して同時に行うことが簡単にできると主張しているのでもない。

経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−今後生じるコスト−

 
シナリオ1
(全量再処理)
シナリオ2
(再処理/処分併存)
シナリオ3
(全量直接処分)
  中間貯蔵分を再処理中間貯蔵分を直接処分 
既投資分
(サンクコスト)
六ヶ所工場(及び MOX 工場)の既投資分は、共通なので計算に入れない(鈴木座長)。
今後生じるコスト1 共通に発生
准サンクコスト
六ヶ所再処理工場廃止措置関連費用2005年にホット試験を開始してしまったため、放射能で汚れてしまっており、時期は別として、廃止措置が必要となった。共通に発生。積立金が3万2000トンの処理費用関連費用として徴収されているので、制度上の措置で対応。
再処理ですでに発生している各種廃棄物の処分英仏で発生したガラス固化体など、すでに存在するものに関するコスト。積立金制度で手当。
*上の3項目は、政策変更によって、変化しない。共通に既発生・発生確実なコストにどう対処するかという制度的問題なのでシナリオの計算入れるべきではない。
今後生じるコスト2
計算要
2010年末現在1.7万t存在の使用済み核燃料の処理・処分事務局計算では、この部分の費用を、シナリオ1,2では既発電コストの一部として扱い、シナリオ3では、2010年-2030年の発電コストに係る核燃料サイクル・コストに全部かぶせている。これが間違いであることは明らか。算出方式はモデルの作り方次第。なお、シナリオ3で、積立金の活用方法は、政策次第。
上記を除いたフロントエンド及びバックエンド合計再処理工場の運転費他。2011年11月の核燃料サイクル試算は、サンクコスト・准サンクコストを入れた計算なので、上記を除いて計算し直す方法は?直接処分方式のモデルプラント計算が基本的に使える。抜けている部分は入れる必要があるが、その方法は?
政策変更コスト使用済み燃料返還コスト、代替火力コストなど。計算には入れない。
理由: 可能性があると言うだけのものであり、絶対に起きることではないので、単純に足し算するようなものではない。どうしても足すなら、確率計算をしなければならない。(近藤委員長・鈴木座長)

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再処理工場運転を凍結して、本格的議論を

時間がなかったことが問題?

ならば再処理工場を凍結して別の枠組みで議論を

事務局も時間がなくて精一杯のことをやった結果が、こんなひどい計算だと主張するのなら、時間をかけて検討のできる仕組みを保証するしかない。六ヶ所再処理工場を凍結することが前提となる。そもそも、5月に政策選択肢を出して、8月に決定という時間枠に必然性はない。8月に原子力政策を決定しても、再稼働のスケジュールも予測できない状況にある。使用済み燃料政策は、再処理とプルサーマルを凍結して、別の枠組みで時間をかけて議論すべき問題である。再処理工場の運転開始は、これまで何度も遅れてきた。再処理推進を決めたところで、ガラス固化技術の状況から言って、後どのくらい遅れるかも分からない。4月19日の会合で、日本原燃は、竣工がいつになるかは明言できないという。しかし、このままずるずるといくことはないと主張する。これは、希望的観測の表明でしかない。2〜5年かけて議論すべきだというのは決して、ラジカルな主張と言うわけではないだろう。

積立制度は再処理を前提にしているから、再処理政策が変えられない?

「制度があるから政策を変えられないということではない」 経産省資源エネルギー庁放射性廃棄物対策室生川課長

再処理事業、それに伴う廃棄物の処理等に関しましては、再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律(PDF形式:49KB)が平成17年に施行されておりますけれども、法律があること自体が今後の議論の制約であってはならないと思うんです。

発電の時点で積立てておく。その上で、電力事業者が再処理サービスを受けることに対しに、積み立ててある資金を使って支払いをする。この仕組みの中で、再処理事業を中止と政策的に判断した場合、その役務を受けられなくなると、その時点でいかなる手当が必要となるかは今後議論が必要。・・・

いずれにしても、制度が変われば、法律としてちゃんと見直さなければならなくなる。どうするかというのは、これからの議論だと思いますけれども、ただ、今の積立金の中には、再処理工場の廃止措置費用も案分して入っているので、そう言うのも含めてどういう扱いになるは、政策が決まった後に議論しなきゃいけないことだと思います。

制度があるから政策が変えられないと言うことではありませんので、政策が変わればそれに合わせて経過措置などを考えていくというのが我々の仕事と考えていますから。積立金制度があるから政策が変えられないと言うことではない。

出典

つまり、直接処分用に再処理等の積立金を回すことは可能ということだ。

参考 

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4月19日の会合の際に配布された資料

ステップ3の評価:2030年まで(原子力比率 I のケース)[6.8兆kWh]

経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−ベース値−

● 本小委員会で実施した試算を元に、各シナリオ毎のサイクルコストを試算。(単位:円/kWh)
 
シナリオ1
(全量再処理)
シナリオ2
(再処理/処分併存)
シナリオ3
(全量直接処分)
単位:円/kWh, 割引率3% 中間貯蔵分を再処理中間貯蔵分を直接処分 
ウラン燃料0.770.770.780.81
MOX燃料※0.070.070.06---
(フロントエンド計)(0.85)(0.85)(0.84)(0.81)
再処理等0.510.510.39---
中間貯蔵0.040.040.040.09
高レベル廃棄物処分0.040.040.03---
直接処分  0.040.10~0.11
(バックエンド計)(0.58)(0.58)(0.50)(0.19~0.21)
合計1.431.431.341.00~1.02
× 6.8兆kWh (2010~2030年の総発電電力量)
ベース値9.7兆円9.7兆円9.1兆円6.8~6.9兆円

※ 海外からの返還Puの利用費用及び返還放射性廃棄物処分費用は全シナリオとも含めていない。
ただし、海外Pu利用は全てのシナリオで同等に扱っているので、各シナリオで費用は差は無い。

15ページ


経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−シナリオを実現するために今後追加となる費用−

  シナリオ1,2シナリオ3
六ヶ所再処理
事業中止に伴う費用
@再処理工場及び既着工済MOX工場の建物・設備の未償却資産見合いの費用1.78 兆円
A廃止に必要な廃棄物処理設備等*の建設費及び既存施設も
含めた工場全体の廃止までの操業費
 *:現在未建設だが操業中と廃止中に使用する設備
ベース値に含む0.27 兆円
B上記@及び2の建物・設備の廃止措置費用同上1.51 兆円
C発生済廃棄物(ガラス固化体及びTRU廃棄物)の輸送・処分費同上0.07 兆円
D回収済Puの貯蔵管理・処分関係費用同上α

既発生分の使用済燃料の直接処分とガラス固化体の費用差
(1.7万トン×(14,500万円/トンU-8,500万円/トンU)

1.02 兆円

出典:日本原燃からの提供等に基づく

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経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−立地自治体との条件の変更に伴い追加の可能性のある費用−

  1. 六ヶ所再処理工場から国内各発電所に返送する可能性 0.05兆円
    • ◆ 上記に伴う使用済燃料輸送費用
  2. 海外からの返還廃棄物の受入れが滞って行き場を失う可能性 0.25兆円
    • ◆ 既存の海外返還廃棄物貯蔵施設(「高レベル放射性廃棄物
    • ◆ 貯蔵管理センター)の未償却資産見合いの費用
    • ◆ 海外返還廃棄物の移送費用
    • ◆ 新規海外返還廃棄物貯蔵施設と将来の廃止費用
      ※上記に加え、今後予定される海外返還予定廃棄物の返還時期延期による貯蔵費用の追加も発生し得る
  3. 六ヶ所低レベル放射性廃棄物処分施設の受入れが延滞する可能性 0.06兆円
    • ◆ 新規低レベル放射性廃棄物処分施設のうち港湾、敷地費用
  4. むつRFS建設計画中止の可能性(搬入予定の燃料が再処理されない場合) 0.03兆円
    • ◆ 現在までの建設投資額(キャスク除く)

17ページ


経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−比率 I (総発電電力量6.8兆kWh)まとめ−

 
シナリオ1
(全量再処理)
シナリオ2
(再処理/処分併存)
シナリオ3
(全量直接処分)
   中間貯蔵分を再処理中間貯蔵分を直接処分 
1ベース値9.7兆円9.7兆円9.1兆円6.8~6.9兆円
2未償却資産の 見合い費用1.78兆円
廃止に必要な設備・ 廃止措置費用等ベース値に含むベース値に含むベース値に含む1.85兆円
直接処分とガラス固 化体の処分費用差1.02兆円
上記に加え立地自治体との条件の変更に伴い下記費用が発生する可能性がある。
3 0.03兆円0.39兆円

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出典


ステップ3の評価:2030年まで(原子力比率 II のケース)[総発電量5.6兆kWh](改訂版)

経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−比率 II (総発電電力量5.6兆kWh)まとめ−

 
シナリオ1
(全量再処理)
シナリオ2
(再処理/処分併存)
シナリオ3
(全量直接処分)
   中間貯蔵分を再処理中間貯蔵分を直接処分 
1ベース値8.3兆円8.3兆円8.1兆円5.6~5.7 兆円
2未償却資産の 見合い費用1.78兆円
廃止に必要な設備・ 廃止措置費用等ベース値に含むベース値に含むベース値に含む1.85兆円
直接処分とガラス固 化体の処分費用差1.02兆円
上記に加え立地自治体との条件の変更に伴い下記費用が発生する可能性がある。
3 0.03兆円0.39兆円

18ページ

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ステップ3の評価:2030年まで(原子力比率 III のケース)[総発電電力量2.0兆kWh]

経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用
−比率 III (総発電電力量2.0兆kWh)まとめ−

 
シナリオ3
(全量直接処分)
1ベース値2.0~2.1 兆円
2未償却資産の 見合い費用1.78兆円
廃止に必要な設備・ 廃止措置費用等1.85兆円
直接処分とガラス固 化体の処分費用差1.02兆円
上記に加え立地自治体との条件の変更に伴い下記費用が発生する可能性がある。
3 0.39兆円

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