核情報

2016. 2. 9

幽霊船2隻パナマ運河を通過──東海村331kgのプルトニウム回収隠密行動と増産計画

茨城県東海村の「高速炉臨界装置(FCA)」に警備体制の不十分な形で置かれている331kgのプルトニウムを米国に輸送すると見られる2隻の英国籍の船が2月5日から6日にかけ、パナマ運河を通過しました。早ければ2月末にも日本に到着と見られています。パナマ運河に設けられたウエブカメラが恐らくは通過に合わせてすべて「故障」したため姿が見られませんでしたが、逆に、1月19日に英国のバロー港を出てから切られていた船舶自動識別装置(AIS)がオンに。このAIS情報により2隻の通過が確認されました。

参考

このプルトニウムは、日本のプルトニウムお断り─米サウスカロライナ州地方紙が怒る「不条理劇」核情報 2016. 1.12で紹介したとおり、2014年の核セキュリティー・サミットで米国への輸送を発表したものです。3月31日から4月1日にワシントンDCで開かれる核セキュリティー・サミットで輸送実施中との発表がされるのでしょうか。

このような「隠密行動」はプルトニウムの危険性を再確認するものとなります。「隠密行動」が取られる一方、すでに50トン近くのプルトニウムを保有しながらさらに年間8トンもの分離能力を持つ六ヶ所再処理工場の運転を早期開始しようとする日本の政策の矛盾が、サミットでの発表により国際的に注目されることになるでしょう。

NGOの追跡

英国のセラフィールド核施設の監視を続ける地元団体「放射能の環境に反対するカンブリア人(CORE)」のマーティン・フォーウッドは、パシフィック・ニュークリア・トランスポート(PNTL)社のパシフィック・ヘロンとパシフィック・イグリットが1月19日に同施設に近いバロー港を出た段階で、パナマに向かったと推測。プルトニウムを積んでいない状態ならパナマ運河を通過できるから、ここを通って日本へ。プルトニウムを積んだ状態でパナマ運河通過は許されないから、そのあとは、今度はアフリカの喜望峰を回って米国サウス・カロライナ州のサバンナ・リバー核施設に向かう。こう考えたのです。



パナマを通過する「幽霊船イグレット」表示時刻はUTC
AIS情報提供MarineTrafficによる

それで、フォーウッドとサバンナリバー核施設(SRS)の監視グループ「SRSウォッチ」のトム・クレメンツは、速度から計算して1月末からパナマ運河の監視が必要と判断。二人でパナマ運河のウエブカメラの映像の監視を始めました。日本では核情報の技術スタッフもパナマの状況を注視。最終的には上述のとおり、カメラのスイッチは切られ、AIS情報によってパナマ運河通過が確認されました。この件に関する英国のメイル・オンライン紙の記事「英国幽霊船」とい言葉を使ってこの状況を皮肉っています。

核セキュリティー・サミットに合わせて再処理永久化法案?

政府は、2月5日、電気料金自由化の中でたとえ電力会社が潰れても確実に再処理を進めることを目的する法案を国会に提出しました。クレメンツは2月6日のプレスリリースで、日本がすでに約48トンものプルトニウムを保有し、国内だけでも約11トンあることに触れ、次のように述べています。

「近く開かれる核セキュリティー・サミットにおいて、関係者らはこのプルトニウムの撤去を核不拡散の成功と宣言するかもしれないが、日本が保有するプルトニウム、そしてその保有量を新しい再処理工場の運転によって増やそうとする取り組みの方が、ずっと大きな核拡散リスクであるという事実は変わらない。日本における核兵器利用可能なプルトニウムの本当のリスクに焦点を当てるには、サミットは日本に対し、使用済み燃料を再処理する計画を中止し、プルトニウムの更なる蓄積を止めるようにという要求を出さなければならない。」


幽霊船2隻は3月初めに東海に現れるか?



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