日本原燃は、2022年12月26日、六ヶ所再処理工場の完工目標を2022年上期から「2024年度上期のできるだけ早期」に延期することを発表しました。27回目の延期で、当初計画(1997年)から27年遅れとなります。日本の2021年末現在の分離済みプルトニウム保有量は45.8トンとなっていますが、その消費計画は難航しています。工場には、年間約8トン(核兵器約1000発分)のプルトニウム分離能力があります。その消費のめどは?
再処理は、元々は、もんじゅのような高速増殖炉で利用するためのものとして構想されました。高速増殖炉計画がとん挫した今、日本は、分離されたプルトニウムをウランと混ぜ「混合酸化物(MOX)燃料」にして普通の原子炉(軽水炉)で使用するとしています。「プルサーマル(プルトニウムを熱中性子炉[サーマル・リアクター=軽水炉]で燃やすという意味の和製英語)」計画と呼ばれるものです。しかし、これも遅々として進んでいません。
以下に再掲するのは、再処理・プルサーマル計画の歴史と現状をまとめたパワーポイント資料(2022年11月30日発表用)です。完成目標の遅延を、再処理計画の見直しの機会ととらえて、国会内外で本格的な議論をする際に、ご活用いただければ幸いです。
参考:
- 岸田政権の下で続く核燃料サイクルの虚構 遅々としたプルトニム消費──六ヶ所再処理工場完工予定、26回目の延期 核情報 2022.12.22
- 日本原燃、六ケ所再処理工場の完成2年先送り ロイター通信 2022年12月26日
- 臨時会見社長挨拶概要 日本原燃 2022年12月26日
- 日本原燃株式会社 再処理事業所 規制法令及び通達に係る文書 原子力規制委員会 (*2022年12月26日に日本原燃が規制委に提出した文書類など)
『プルサーマルについて』(2022年11月30日(12月19日改定版)於原子力技術史研会)の構成
概要
- 第1部 プルサーマル序章
- 第2部 六ヶ所再処理工場運転開始正当化のためのプルサーマル
- 第3部 余剰プルトニウムは量的概念ではない──核兵器国が核兵器用と言えば、軍事用余剰ではないのと同じ?
- 第4部 再処理継続正当化論──本音と新たな謳い文句
- 第5部 国際的影響と解決への協力?
第1部 プルサーマル序章 ウランが足りない 高速増殖炉の夢と挫折
- 六ヶ所再処理工場・MOX燃料工場現状まとめ
なぜ再処理か - 1970年代の予測:ウラン枯渇?高速増殖炉が支配的に
- 日本における高速増殖炉の夢 原子力委員会長期計画
- 長期計画に現れた再処理計画
- 遠ざかり続ける高速増殖炉の夢 高速増殖炉の実現時期予測
第2部 六ヶ所再処理工場運転開始正当化のためのプルサーマル
- 先導していた米国の撤退、不退転の決意の日本
- プルトニウムをどうする?
- 対応策はプルサーマル?
- プルサーマルの効果? 六ヶ所再処理工場が運転開始となれば急上昇
- プルサーマル実績 2020年末までの消費量 4.5トン:MOX燃料搬入開始 1999年
- 現在MOX装荷炉4基 年間消費想定約2トン分
- 名義変更でプルサーマル促進? 四電・九電の仏保管分底をつく
- 英は工場なし=燃料製造不可 (仏はMOX工場所有)そこで名義書き換え案!
- 各社のプルトニウム所有量(2021年12月末時点)
- フランスのMOX燃料製造能力低下(原料均一性問題)日本保有のプルトニウム「消費」への影響
- スワップ言及の2021年利用「計画」まとめ
- 2022年利用「計画」まとめ
- MOX 燃料輸送・装荷・保管まとめ 抜粋
- プルサーマル実績まとめ vs. 目標
第3部 余剰プルトニウムは量的概念ではない──核兵器国が核兵器用と言えば、軍事用余剰ではないのと同じ?
- 2013年原子力委員会決定と2018年改訂「余剰プルトニウムを持たないとの原則」明確化?
- 「利用計画」の虚構 MOX工場の運転開始までは六ヶ所のプルトニウムは使えないと言って来ただけ
- お手本のフランスでも増え続けているプルトニウム(不良MOXなど)
- 六ヶ所MOX工場建設状況
- 六ヶ所再処理工場・MOX燃料工場運転「計画」
第4部 再処理継続正当化論──本音と新たな謳い文句
- なぜ再処理が必要? 本音:プールが満杯だから!
- なぜプルサーマルが必要? 六ヶ所再処理工場運転開始のために利用計画が必要だから
- 3.11を経て、「再処理永久化」法案制定
- 金を払えば日本のプルトニウムを処分してやってもいい 英国(日本のプルトニウム22トン保管)
- 再処理正当化論 新たな謳い文句の単純バージョン 処分場縮小
- 発熱量の大きな使用済みMOX燃料 処分場の必要容量を決めるのは発熱量
- 使用済みMOX燃料も再処理するから大丈夫
- 原子力立国計画( 2006年8月)に見る第二再処理工場
- 第二再処理工場(2048年運転開始)の費用はどこから? 55基プラス13基の運転が前提だった 2006年説明
- 新たな謳い文句(処分場縮小)はプルサーマルでは完結しない 前提:第二再処理工場+高速炉
- 再処理継続正当化論 新たな謳い文句の高等(?)バージョン 減容+有害度低減
- 2016年12月もんじゅ廃炉決定 増やす夢から減らす夢へ もんじゅがだめならアストリッドがあるさ、アストリッドがだめならVTRがあるさ
- 減容・有害度低減の夢
- 取り出したプルトニウムや超ウラン元素は消える?
- 夢の現実
- 米国科学アカデミー(NAS)報告書1996年
- 誇大広告と更田原子力規制委員長代理(当時)
- 再処理による「減容・有害度低減」の夢に否定的な日本の地層処分問題専門家
第5部 国際的影響と解決への協力?
- 自民党総裁選での岸田文雄候補の問題発言 総裁選報道で無視の不思議
- 再処理中止要請:オバマ政権高官の働きかけ 知らないと菅官房長官・岸田外務大臣
- 国際的背景 伸び続ける世界のプルトニウム量
- 現存のプルトニウムの処分のための国際協力を 直接処分方法の例
- 米国ニューメキシコの「廃棄物隔離パイロット・プラント(WIPP)」 汚染プルトニウムを処分中
- 例外的ケース:原発停止政策のドイツのプルトニウム緊急処分 MOX利用後、使用済みMOX燃料乾式貯蔵