核情報

2018. 9.30

使用済みMOX燃料用再処理工場はできる?
──国会は世耕経産大臣に根拠を示すよう要求を

9月2~3日、共同通信配信の「MOX燃料の再処理断念 電力10社、核燃サイクル崩壊」「MOX燃料、再処理せず 電力10社が費用計上中止」との記事が各紙に掲載されました。これに対し、世耕弘成経済産業大臣は9月4日、次のようにツイートしています。「要約すると、共同『処理費用社内積立無くなった。再処理やめたのだ』経『違う。法改正で機構積立にした。その方が経営状態に拘わらず安定的に積立出来るから。政策変更していない』記事『社内積立無くなった→ MOX再処理やめた』いかに誤報かわかっていただけるでしょうか。」

再処理で取出したプルトニウムをウランと混ぜて混合酸化物(MOX)燃料として普通の原発で燃やすいわゆるプルサーマルの後に出てくる使用済みMOX燃料を再処理する工場ができるかどうかという話です。世耕大臣の主張が正しいか検討してみましょう。

  1. 第二再処理工場用が43年までに3.2万トン発生?
  2. 2段階で変更された制度で費用は積み立てられる?
  3. 国会及びマスコミは第二再処理工場について議論を

参考

第二再処理工場用が43年までに3.2万トン発生?

「MOXの使用済燃料を再処理するためには新しい再処理工場を造らなくてはいけない…高速炉を動かさない限りは、処理したMOX燃料は使えない」と田中俊一原子力規制委員会委員長(当時)が2014年11月19日の記者会見で述べています。六ヶ所に続く第二再処理工場が建設され、多数の高速炉が稼働する状況にならないと、発熱量が大きな使用済みMOX燃料が地下処分場に「直接処分」されることになります。処分場の容積は廃棄物の発熱量に左右されるため、再処理推進派の主張する再処理による廃棄物「減容」効果がなくなってしまいます。

 費用試算の対象となる使用済燃料の発生年度展開
費用試算の対象となる使用済燃料の発生年度展開

出典:電気事業連合会『六ヶ所再処理工場の処理量を超える使用済燃料に係る再処理等費用について』(2006年総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会・原子力発電投資環境整備小委員会第3回(2006年11月30日)提出資料, pdf)9ページ

2006年11月30日提出の電気事業連合会資料によると、第二再処理工場計画は「2005年度から2043年度までに発生する使用済燃料約3.2万トン(現在運転中の55基に2006年度電力供給計画における『原子力発電所開発計画』に記載の13基を追加したプラントで発生する使用済燃料を想定」したものです。運転開始は48年です(上図参照)。2006年8月8日に総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会原子力部会が出した報告書「原子力立国計画」では、同工場は45年頃に完成し、六ヶ所の容量を超える使用済みの普通の燃料及びMOX燃料に加えて、使用済み高速増殖炉燃料も再処理することになっています。
(次を参照:第2再処理工場の役割を図で示すと?

2段階で変更された制度で費用は積み立てられる?

2005年に導入された制度では、電力会社内部で積み立てていた再処理費用が外部の資金管理法人に移されました。しかし、第二再処理工場は対象外。さらに、方針が未定のため、電力会社内部での引当・積立の規定もありませんでしたが、その後、07年3月から電力会社内部で積み立てることが決まります。費用は六ヶ所再処理工場と同程度と仮定して計算。約12兆円を43年までに積み立てることになりました。

2016年に使用済燃料再処理機構が設立された際、各社内部の第二工場用引当金も機構に移行となります。設立時点以後発生の第二工場向けの分についても、六ヶ所向けと同様、発電時に機構に毎年拠出されることになりました。これで第二工場用積み立ては機構内で行われる格好になったわけです。両工場向けの燃料は区別なく、重量当たり同額が拠出される仕組みです。

国会及びマスコミは第二再処理工場について議論を

ここで世耕大臣のツイートについて振り返ってみましょう。大臣の記事要約より正確なのは、「第二再処理工場用の社内積立がなく、使用済みMOX燃料の再処理ができない、やる気がない」でしょう。前半について「法改正で機構積立にした」との反論はその通りです。しかし、それで第二工場の資金がたまるか否かの方が重要な問題です。

ここで上の図を見直してみましょう。ピンク色の部分が第二工場行きです。福島事故後、六ヶ所行きの部分(黄色)ですらわずかしか発生していない状態で、第二工場向けの資金は六ヶ所向けと別に積み立てられているのか? これまでの第二工場用積み立て額は? 今後の見込みは? 使用済みMOX燃料(及び高速増殖炉燃料)を扱う工場の実際の費用は?

六ヶ所村の再処理工場とMOX燃料製造工場の完成予定はそれぞれ2021年と22年。炉心全体でMOX燃料を使う大間原発の運転開始予定は26年。国会やマスコミは、機構内の積み立ての仕組みについて早急に具体的情報を入手して、国民の前に明らかにすべきです。世耕大臣には、共同通信の「誤報」を非難する前に、現在の仕組みで45~48年頃完成予定の工場の資金が「安定的に積立出来る」と断言する根拠を示す責任があります。


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