核情報

2014.12.26

福島第一4号機使用済み燃料取り出し完了
──計画の狂いは規制委のせい?

福島第一原子力発電所4号機の使用済み燃料1331体の貯蔵プールからの取り出しが2014年11月5日終了し、残っていた新燃料の取り出しも12月22日に終了しました。事故当時取り出したばかりで発熱量の大きな使用済み燃料も入っていて大きな問題となった4号機が片付いて一安心ですが、次の3号機の取り出し作業に必要な空冷式金属製乾式貯蔵容器の調達の遅れが原子力規制委員会の許可手続きのせいであるかの説明を東電がして更田豊志委員をいらだたせています。

参考記事


移送燃料の種類(使用済:1331体/1331体、新燃料:202体/202体)
(東電ウェブサイトより)

不適合品のため移動計画を変更

福島第一原発には、次の三つの種類の使用済み燃料(及び新燃料)貯蔵施設がありました(括弧内は事故当時の保管量)。

  • @原子炉建屋の高い所にあるプール(事故を起こした4基合計約3000体、うち約1500体が4号機)
  • A共用プール(約6400体:余裕は約400体分)
  • B乾式貯蔵施設(空冷式金属容器9基に約400体)

計画はこうです。@の使用済み燃料(及び新燃料)を順次受け入れるために、Aに収容されている使用済み燃料の約半分を金属容器(キャスク)に入れて、高台に新しく設けた仮保管エリアに置く。Bにあった貯蔵専用キャスク9基はそのまま同エリアに。この9基とBに元々追加で収容するはずだった貯蔵専用キャスク11基合わせて20基、それに、青森県むつ市の中間貯蔵施設(RSF)に入れるはずだった輸送・貯蔵兼用キャスクのうち30基、全部で50基を使用。兼用容器の内分けはキャスクA22基、キャスクB8基。同エリアにはさらに15基分のスペース。最終的には、5及び6号機の燃料も共用プールに移す。(これまで、貯蔵専用11基とキャスクB8基で約1000体を共用プールから仮保管エリアに移動。この19基とBにあった9基、合計28基が並んでいる)。

ところが、キャスクAは「材料規格不適合品であり、使用を断念」「使用材料の課題及び溶接継手形状の課題を抱えているため製造を中断」したため(東電)、4号機の新燃料を受け入れるスペースを共用プールで確保することができず、新燃料180体が共用プールではなく6号機のプールに移されることになりました。

この変更理由を東電は6月18日の記者会見で「一部のキャスクに係る許認可手続きの長期化により」と説明しました。翌19日の東電との面談のまとめにおいて規制委は「許認可手続きの長期化ではなく、使用材料や溶接継手形状といった課題について事業者において検討が行われていることが原因と承知しているため、今後とも適切な説明をすること」と述べています。国内製造能力を持たないキャスクAの納入会社が外国の製造会社に発注するという状況で日本の規制基準を考慮し損ねたことが原因なのに規制委の怠慢が原因であるかのような説明をされては困るということでしょう。記者会見に関する記事には、次のようにあります。「容器の安全性に関する原子力規制庁の認可取得に時間がかかっており、共用プールから燃料を動かせない状況で、東電は『認可取得までの想定が甘かった』としている」(「福島民友」6月18日)。

3号機用の調達も遅れる

また、3号機の使用済み燃料のスペースを共用プールを作る目的でキャスクBを9基追加製造して使うこととしました。これは、上記8基と同じ仕様で、元々むつ市のRSFに使用済み燃料を輸送・貯蔵するためのものです。RSFでの使用を前提とすると、基準地震動などに関して行われるRSFの審査を待たなければならなくなります。それで、「新規制基準等の審査の関係がございまして、製造中検査については現在できない状態」なので、ひとまず3基についてのみ、福島原発での貯蔵用として審査をするよう要請した(10月31日特定原子力施設監視・評価検討会での説明)」と東電は言います。

これに対し規制委の更田委員は、製造中検査が現在できない状態といっても、「福島第一原子力発電所専用にしてしまったら、それは関係なくなるんじゃないですか……RFSの審査を待つというような馬鹿な真似はやらないでいただきたいし、私たちとしても、規制上、その規制がリスクを下げることの障害には絶対にならないというのは、これはもう規制委員会の発足意義でありますから。あたかも、検査を待たなきゃならないと言われると困ってしまうわけで、将来、RFSを持ってきたいという意図があるんだったら別ですけれども、まずは、とにかく福島第一原子力発電所で必要なキャスクを調達するということに全精力を注いでいただきたいと思います」。

安全性のため乾式貯蔵への移行を提唱する規制委

田中俊一委員長は就任直後から乾式貯蔵への早期移行の必要を唱えています。10月29日の規制委臨時会議では更田委員が九州電力に対し、次のように述べています。加圧水型(PWR)の場合は「使用済燃料プールが比較的低い位置にあるとは言うものの、ああいった形で使用済燃料プールの貯蔵量を増やしていくよりは、乾式のキャスクに入れて、それこそ、その辺に転がしておくというと言葉は悪いですけれども、その方がまだ更に安全性は高いのではないか」。続けて田中委員長も福島の教訓を強調します。「4号機にあった千数百体はほぼ下に下ろすことができた(が)一時は大変なパニック状態」。乾式キャスクは「建物は壊れたけれども、中の燃料も容器も健全であった」「落下試験とか、火災試験とか、いろいろなことに耐えられるように、非常に頑丈にできている」「国際的に見ても、一定程度冷却が進んだものはプールから出して、乾式容器に入れてサイト内に貯蔵する方が……一般化」「積極的に、安全確保とセキュリティの面から、是非取り組んでいただきたい」「規制という段階では」ないが「是非福島第一原子力発電所の事故の教訓も踏まえ……社長のイニシアチブでやっていただければありがたいと思います」。

参考

◆以下、原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会 第28回会合(2014年10月31日)議事録(pdf)より抜粋

○更田委員 本件は以上とさせてください。

それで、議題としては最後ですけれども、使用済燃料プールからの燃料取り出し、先ほどお話ししました乾式キャスクの調達計画について、なかなか調達の失敗等がありまして、思うようにキャスクがそろってないところがあるんですけれども、これについて、調達計画を示してもらって、できるだけの努力が払われているかどうかということを確認したいと思います。必ずしも今日、結論を出さなければというものでもありません。

それでは説明をお願いします。

○徳森(東電) それでは、東京電力の徳森と申します。

資料6 (pdf)について、御説明いたします。

めくっていただいて1ページが全体概要でございますが、1号機から4号機の原子炉建屋使用済燃料プールには約3,000体の燃料がございまして、うち半分が4号機でございます。

大きい流れとしては、この原子炉建屋使用済燃料プールにある燃料を共用プールに持ってく。これが一つの作業でございます。

それから、もう一つが、共用プールも震災時点でかなり満杯に近い状態でございましたので、震災後、新たにキャスク仮保管設備というのをつくりましたが、共用プールの空容量を確保するために、共用プールに震災前からある貯蔵中の使用済燃料を乾式キャスクに充填して、こちらの新しくつくりましたキャスク、仮保管設備に持っていく。こういった流れが二つ目の流れでございまして、本日は、この乾式キャスクについての御説明でございます。

めくっていただきまして2ページでございますけれども、上半分のほうに表の大まかなスケジュールの中の各号機からの状況がございます。

4号機につきましては、SFP使用済燃料が1331体、震災時にございましたが、1320体の搬出、4号機から共用プールへの移送が終了してございます。残りにつきましては11体でございまして、これについては、昨日より、この一連のキャスク充填作業を開始してございまして、残り11体を1回の輸送で共用プールに持っていくということで、使用済燃料についての搬出については終了を目指しているというところでございます。

それから、SFP新燃料につきましては、204体のうち24体は搬出が終わってございますが、180体につきましては、先ほどもお話がございましたが、共用プールではなく、6号機のほうに移送するという計画にしてございまして、現在、6号機のほうで準備作業中でござい54まして、11月中旬ごろから、4号機から6号機への移送に着手したいということで準備中でございます。

その下が、共用プールの空き容量のイメージ図でございます。

震災時点では、400体余りございましたが、4号機からの1500体を受け入れるために、まず、1000体余りを共用プールの使用済燃料を搬出する。

そのために、下にございますが、震災前から使用しているキャスク、同じタイプのものを11基と、それから輸送貯蔵兼用キャスク8基と、合計19基で1000体の空き容量をつくったということでございます。

震災前からある9基と合わせて28基が、今、キャスク仮保管設備で保管中ということでございます。

それで、4号機の1000体といった空きをつくりましても、また受け入れますと73体程度の空き容量になりますので、後続号機の3号機の受け入れのためには、3号機に566体の燃料がございますので、9基の乾式キャスクを用いて600体余りの搬出をしてまいりたいというような計画でございます。

こちらについては9基でございますが、3基については福島第一原子力発電所専用キャスクと書いてございます。

これについては、御説明が必要かと思いますが、先ほど申した8基については、福島第一原子力発電所での貯蔵について、実施計画で御認可いただいておりますが、あわせてサイト外リサイクル施設への貯蔵も可能なライセンスを持ったキャスクになってございますが、現在、燃料サイクル化施設関連のほうでは、新規制基準等の審査の関係がございまして、製造中検査については現在できない状態ということになってございますので、この8基のキャスクと全く同じ構造設計のキャスクを福島第一原子力発電所としてまず使うということで、今、実施計画の変更申請をお願いしておりまして、御審査いただいているところというところでございます。

こういった、この福島第一原子力発電所の3基を含めて9基で、3号機については受け入れをしていきたいと思ってございます。その後続の1・2号機につきましても、また、燃料受け入れに当たりましては共用プールからおよそ1000体程度の搬出が必要ということでございまして、これについても14基の輸送貯蔵兼用キャスク、これで空き容量を確保してまいりたいというふうに考えてございます。

このように、今後もキャスクについては必要となってまいりますので、できるだけ前広55に手を打って、燃料取り出しの受け入れに支障がないような形で、着実にキャスクのほうも調達してまいりたいというふうに考えてございます。

御説明のほうは、簡単ですが以上になります。

○更田委員 これは、もうとにかく調達をきちんと急いでください。過去の事例で、繰り返し申し上げてもあれですけど、某国からのキャスクの調達に、規格上のミスと聞いていますけれども、調達に失敗した経緯があって、ですので、とにかく今後は確実な調達をと。

今、説明の中に「検査ができない」というのがありましたけど、これはもう一回、どういったことなのか説明してもらえます。

○徳森(東電) 検査というのは、サイクル関連施設のほうでの貯蔵もライセンスをあわせ持っているということで、そういったサイクル関係施設での貯蔵時の地震動であるとか、そういったことの御審査があって、仮に構造設計等が変わる可能性があるというようなことで、現在、製造中の検査については中断しているというふうに聞いてございます。

○更田委員 それを福島第一原子力発電所に流用、流用というと言葉は悪いけど、福島第一原子力発電所のほうへ使いたいという話は聞いているんですけれども、福島第一原子力発電所専用にしてしまったら、それは関係なくなるんじゃないですか、中間貯蔵のほうは。

○徳森(東電) そういう意味では、この3基の福島第一原子力発電所というところでは、8基と同じように福島での貯蔵時の耐震性については御評価いただいておりますので、そういった形で、今回、変更の申請をさせていただいております。

○更田委員 東京電力としては、将来、中間貯蔵のほうへ輸送したいという意図があるんですか。

○松本(東電) そこは、既に専用のキャスクも使っておりますので、全体として何らかの一定の意図があってということではございませんで、とりあえずは、まずは福島の発電所の中の仮保管設備における、貯蔵できるキャスクということを目指してございます。

どうしてもということではございません。ただ、そもそもが、RFS用だったものをここでも使えるようにということにしたという経緯があります。

○更田委員 そもそもはRFS用だったというのはそうなんでしょうけど、だったら、そうするとRFSは、今、新規制基準のために、基準地震動だろうなという議論をまだ経てないから、それを待たなきゃならなくなっちゃいますけど、そんなことは待っていられるはずがないので。

ですから、RFSって使えなくたっていいじゃないかと、もう福島第一原子力発電所用なんだという申請にしてもらうということは不可能なんですか。

○徳森(東電) 今回の3基については、そういった申請でございまして、状況を踏まえて、その後続号機についても、必要があれば、福島第一原子力発電所専用ということでお願いしたいとは思っておりますが、今の時点では3基分だけ待つということです。

○更田委員 RFSの審査を待つというような馬鹿な真似はやらないでいただきたいし、私たちとしても、規制上、その規制がリスクを下げることの障害には絶対にならないというのは、これはもう規制委員会の発足意義でありますから。

あたかも、検査を待たなきゃならないと言われると困ってしまうわけで、将来、RFSを持ってきたいという意図があるんだったら別ですけれども、まずは、とにかく福島第一原子力発電所で必要なキャスクを調達するということに全精力を注いでいただきたいと思います。

○徳森(東電) かしこまりました。


核情報ホーム | 連絡先 | ©2011 Kakujoho