核情報

2016. 3. 1

田中原子力規制委員会委員長、乾式貯蔵の方がより安全と九州電力に

2月3日の原子力規制委員会臨時会議で田中俊一委員長が「もうリラッキングなんていう考え方はやめるべきで、ドライキャスクに保管していく方がより安全だという、これは世界的にもそういうのが普通」との考えを九州電力の瓜生道明社長に改めて伝えました。2014年10月にも田中委員長と更田豊志委員長代理は同様の考えを伝えていました。昨年11月に九州電力が敷地内乾式貯蔵を検討していることを明らかにしたことについて、これを評価した格好です。

2016年2月3日の田中委員長の発言

○田中委員長

……

 実は、玄海がリラッキングの要求が一応出ていますけれども、私は基本的に、もうリラッキングなんていう考え方はやめるべきで、ドライキャスクに保管していく方がより安全だという、これは世界的にもそういうのが普通になっているんですね、どの国でも。そこのところを九電さんが地元に言い出したら、地元から何かいろいろあって、反発を食らったみたいですけれども、これに限らず、事業者として、地元の理解を得るのはなかなか大変だというのもよく分かりますけれども、こっちの方が安全なんだとか、こっちの方がいいんだということがあれば、やっぱり粘り強く自信を持って取り組んでいただくということも、我々に対してだけじゃなくて、地元に対しても大事な信頼確保、信頼醸成につながっていくんだというふうに、私は、やや個人的意見かもしれませんけども、やっぱりそこで単に一方的に頭を下げればいいというものではないというところを、やっぱりそこは共生しながらやっていくという中で信頼醸成につなげていただくようお願いしたいと思います。どうなるのか、ちょっと私は大きな関心を持って見ておりますので、よろしくお願いします。

出典 2015年度第54回原子力規制委員会臨時会議議事録(pdf) 2016年2月3日(水)

参考

 九州電力が、使用済み核燃料を保管する乾式貯蔵施設を玄海原発(東松浦郡玄海町)と川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の、それぞれの敷地内に建設を検討していることが分かった。九電が乾式貯蔵施設建設の検討で、設置場所を「原発敷地内」と明らかにしたのは初めて。今後、佐賀県や玄海町など関係自治体と調整をしながら、具体的な計画策定を進めるとみられる。

 佐賀県東松浦郡玄海町の岸本英雄町長は4日の定例会見で、九州電力が玄海原発の敷地内に使用済み核燃料を金属製容器で保管する「乾式貯蔵施設」建設を検討していることについて、「われわれに報告がないまま国に報告するのは何事かと伝えた」と九電に抗議したことを明らかにした。・・・

(町長は報告の順序に抗議しているだけで、下の核情報の記事にあるように乾式貯蔵には反対していない。)

○更田委員長代理

……

 2つ目はちょっと具体的なのですが、今、どの炉も、使用済燃料プールに貯蔵している燃料がどんどん増えてきている。やはりこれ、実態としては、PWRの場合は使用済燃料プールが比較的低い位置にあるとは言うものの、ああいった形で使用済燃料プールの貯蔵量を増やしていくよりは、乾式のキャスクに入れて、それこそ、その辺に転がしておくというと言葉は悪いですけれども、その方がまだ更に安全性は高いのではないか。今、使用済燃料プールの持って行き先そのものがなかなか難しい状態にありますので、地震であるとか、火山活動であるとかといった自然現象を考えた上では、キャスクの調達も時間のかかる話ではありますので、そういった乾式キャスクに入れて使用済燃料を保管していくということに関して、意図なり、計画なりがあれば教えていただきたいのですが。

○瓜生九州電力株式会社代表取締役社長

……

 それから、2つ目の乾式キャスクについては、当然、我々も、実は具体的な計画はありませんけれども、今後は乾式キャスクについても考慮すべきだという思いはございます。

○田中委員長

 私からも、使用済燃料の扱いについては、ちょっとお願いベースになるのかもしれませんけれども、結局、福島第一原子力発電所で国民に重大な不安を与えたし、実際のリスクにもなったのが使用済燃料だったと思います。幸いにして、今、4号機にあった千数百体はほぼ下に下ろすことができたわけですけれども、一時は大変なパニック状態になりました。一方で、福島第一原子力発電所は御承知のように、乾式キャスクにもかなりの量が入っていて、津波をもろにかぶって、建物は壊れたけれども、中の燃料も容器も健全であったと、これも事実なのです。それは当然、ああいう乾式の輸送容器であれば、落下試験とか、火災試験とか、いろいろなことに耐えられるように、非常に頑丈にできているわけです。

 だから、我が国ではなかなか進んでいないのですが、国際的に見ても、一定程度冷却が進んだものはプールから出して、乾式容器に入れてサイト内に貯蔵する方が、安全上も、これからセキュリティの問題もありまして、そういうことが一般化しています、ヨーロッパとかを見ますと。そういう点で日本は少し遅れていますので、九州電力も原子力発電所を相当長く運転して、相当の使用済燃料がたまってきておりますので、それは積極的に、安全確保とセキュリティの面から、是非取り組んでいただきたいというのが私からのお願いです。

○瓜生九州電力株式会社代表取締役社長

 おっしゃる意味は非常によくわかりますので、今、我々も乾式の、まだキャスクをどこに置くとかまでいきませんけれども、そういった粗々の思いはございますので、ここでは具体的には申し上げられませんけれども、そういう方向性も考えております。

 ただ、1つだけ申し上げますのは、今、玄海原子力発電所の炉については、SF(使用済燃料)の使用済燃料プールを少し整理して、もうちょっと増やしたいというお願いも、実は申請もさせていただいたところで、今後、炉を廃炉にするとかになったとき、SFをこちらで受け入れる必要があるので、その後、緊急避難的に、一時、SFを受けるスペースも増やしていただければという思いもございます。

○田中委員長

 今、我が国の状況では、そう簡単にスペントフューエルがどこかに行くというような状況は、すぐには期待できないということですし、元々、その辺については我々の規制も、貯蔵キャスクというものについての考え方をもう少し議論する必要があろうと思ってはいます。ただ、こちらの方はどうしても長期になると思います、これは。客観的に考えると。

 ですから、是非そういった点は、いずれそういう時期が来るかもしれませんけれども、規制という段階ではありませんけれども、是非福島第一原子力発電所の事故の教訓も踏まえ、PWRとBWRとは場所が違うということはありますけれども、是非、そういう方向で、社長のイニシアチブでやっていただければありがたいと思います。

出典 2014年10月29日 原子力規制委員会第35回臨時会議議事録(pdf)


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