核情報

2015. 3. 4

日本学術会議提言案、再処理推進の口実に?
使用済み燃料の保管場所確保を再稼働の条件にと要求

内閣総理大臣の所轄の「特別の機関」である「日本学術会議」の高レベル放射性廃棄物に関する委員会が2月17日の会合で、12項目の提言案を発表しました。提言案は、再処理で生じるガラス固化体と使用済み燃料を50年間程度、空冷式の乾式貯蔵技術を使って地上で「暫定的に」保管することを提案しています。その間に核のゴミについての国民的議論を行なうと同時に、地層についての研究や技術開発を進めるべきだとの考えです。そして、使用済み燃料の「暫定保管」施設は、負担の公平性の観点から各電力会社の配電地域内の原発立地点以外の場所に少なくとも1カ所設けることとし、これが確保されるまで再稼働を許可すべきではないとしています。つまり、これから発生する使用済み燃料のために原発から遠く離れたところに「原発敷地外乾式貯蔵施設」を作るまで原発の再稼働をしないようにという提案です。

実際の政策に与えうる影響を考えると、提言案は次の両面で現実の無視という問題を抱えています。1)敷地外貯蔵建設用地の選定にかかる時間と再稼働決定に残された時間の関係を考慮した場合の提言の影響、2)核兵器利用可能物質プルトニウムを取り出す再処理工場の運転を早期に開始しようとの日本の政策に提言が与えうる影響。

現実1)提言案は安易な再稼働計画に釘を刺すものではありますが、敷地外貯蔵施設用地の選定までには時間がかかりすぎるからそれまで再稼働の結論を待っていることなどできないと反論されて、実質的には再稼働の是非の議論には影響を与えない可能性があります。

現実2)核兵器6000発分ほどに達する47トンものプルトニウムを保有する日本が青森県六ヶ所村の再処理工場の運転を開始してさらにプルトニウムを取り出そうとしています。同工場の運転開始政策を正当化する最大の根拠とされているのは、「原発のプールが満杯に近くなっており、使用済み燃料の置き場がなくなってきているから、原発の運転を続けるには六ヶ所再処理工場を動かすしかない」というものです。工場の運転は使用済み燃料の送り出し先の確保という役割を担うというわけです。しかし、原発を運転するとしても、米国やドイツのなどで実施されている使用済み燃料の敷地内乾式貯蔵を促進すれば置き場の問題だけから再処理をする必要はありません。ところが、提言案は、敷地内乾式貯蔵に反対のように読めます。

つまり、提言案は結果的に、敷地内貯蔵の導入を遅らせ、「原発の運転を継続するには再処理以外に道はない」とする再処理推進派の口実に使われてしまう一方、再稼働を巡る状況には直接的影響を与えないということになりかねません。

3月中にも正式の提言がまとめられるということです。日本学術会議の提言は拘束力を持つものではありませんが、「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること」を主要任務の一つとし、国の予算で運営される同会議の提言がどうなるか、提言発表後にどのような議論が国内で展開されるかは国際的な関心事でもあります。ここで忘れてならないのは、2014年3月の「核セキュリティー・サミット」で、安倍首相自身がオバマ大統領と共にプルトニウムの最小化を各国に呼びかけているという事実です。

以下、提言案が出てきた経緯を簡単にまとめた後、提言(案)が日本の再処理政策やその代案となる原発敷地内乾式貯蔵に与えうる影響に焦点を当てて提言案についての疑問点をいくつか挙げ、最後に関連文書を紹介します。提言案の要旨はこちら

参考

目次

経緯

今回の提言案は、2010年9月7日の原子力委員会が日本学術会議に提出した審議依頼に対する2012年の『回答』を発展させる形で出されたものです。依頼は、高レベル廃棄物処分場の建設の前段階となる「文献調査開始に必要な自治体による応募が行われない状況が、依然として続いて」いる状況に鑑み、「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについての国民に対する説明や情報提供のあり方について」審議することを求めるもので、その提言には、「地層処分施設建設地の選定へ向け、その設置可能性を調査する地域を全国公募する際、及び応募の検討を開始した地域ないし国が調査の申し入れを行った地域に対する説明や情報提供のあり方、さらにその活動を実施する上での平成22年度中にとりまとめられる予定のNUMO[=実施主体である原子力発電環境整備機構]による技術報告の役割についての意見」が含まれることを期待していました。『回答』はこの依頼の範囲を超えたものとなりました。

『回答』は「原子力発電をめぐる大局的政策についての合意形成に十分取組まないまま高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定という個別的課題について合意形成を求めるのは、手続き的に逆転しており手順として適切でない、という判断に立脚し」、次のように述べています。

使用済み核燃料の「全量再処理」という従来の方針に対する見直しを進めており、その結果もまた、高レベル放射性廃棄物の処分政策に少なからぬ変化を要請するとも考えられる。これらの問題に的確に対処するためには、従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要である。

……

そもそも(特に高レベル放射性廃棄物の最終)処分場の実現性を検討するにあたっては、長期に安定した地層が日本に存在するかどうかについて、科学的根拠の厳密な検証が必要である

この判断に基づいて、「将来の時点での様々な選択を可能とするために、保管終了後の扱いをあらかじめ確定せずに数十年から数百年にわたる保管を念頭に置く暫定保管」の選択を提言しました。

『回答』提出の後、日本学術会議は「フォローアップ検討委員会」を設け、審議を継続してきました。

経緯要約

2010年9月7日
原子力委員会から日本学術会議に審議依頼
 ⇒ 課題別委員会「高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会」設置
2011年3月11日
福島第一原発事故発生
2012年9月11日
日本学術会議『回答』「高レベル放射性廃棄物の処分について
 *2012年11月
「高レベル放射性廃棄物の地層処分について」─地質環境の長期的安定性の観点から(学術会議の報告を受けて)─ 地質学会6名の連名(『回答』が最終処分としての地層処分が日本では不可能と断定したものと誤解されることを恐れて出されたもの)
 *2012年12月8日
原子力委員会見解 今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組について(見解、pdf)
2013年5月
「高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会」
2013年12月
同委員会の下に「暫定保管に関する技術的検討分科会」と「暫定保管と社会的合意形成に関する分科会」を設置
2014年9月
二つの分科会の報告
2014年10月〜
「高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会」審議継続 
2015年2月17日
提言案『高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策について−暫定保管を中心に』発表

疑問点

使用済み燃料の置き場の問題が再処理の正当化のために使われていることを考慮したか?

日本原燃と政府は核兵器の材料になるプルトニウムをすでに47トンも保有しています。「国際原子力機関(IAEA)」の計算方式で核兵器6000発分近くです。それにも関わらず、さらに需要もないプルトニウムを取り出す六ヶ所再処理工場の運転を来年にも開始しようとしています。この計画を正当化するために、「原発のプールが満杯に近く、使用済み燃料は置き場がなくなってきているから原発の運転を続けるには六ヶ所再処理工場を動かすしかない」との主張が10年以上にわたってされています。これに対する反論として、「再処理工場を運転せず、米国やドイツのなどのように使用済み燃料は敷地内外で乾式貯蔵するべき」との主張があります。

日本の乾式貯蔵施設は次の3つのみです。

  1. 福島第一原子力発電所 収納可能基数20基
    運用開始 1995年
    事故時9基収納(使用済み燃料約70トン)津波で建物は破壊。キャスク(金属製貯蔵容器)は無事
      現在この9基は、仮保管施設に移動。詳細は福島燃料プール危機の教訓参照
  2. 東海第二原子力発電所 収納可能基数24基(使用済み燃料約250トン分)
    運用開始 2001年
    現在17基収納(うち2基は空)
  3. リサイクル燃料貯蔵株式会社(RFS)原発敷地外乾式蔵施設(青森県むつ市)
    原子力規制委員会が審査中(青森県は再処理工場運転開始を使用の条件に挙げる)
    RFS社:2005年東京電力と日本原子力発電が共同で設立
    貯蔵容量(3,000トン:六ヶ所再処理工場の受け入れプールと同量)
    さらに2000トンの第2棟を追加の予定

再稼働(や再処理)の現実との関係は?

原発の再稼働は、今年夏・秋頃に始まるかどうかという段階です。提言案は、これから敷地外の「暫定保管」場所を確保するまで再稼働すべきでないと唱える一方、再処理は容認、敷地内乾式貯蔵施設の導入に反対であるかに読めます。提言案は、拙速な再稼働許可に反対する内容ですが、現実的には再稼働の決定には影響を与えず、敷地内乾式貯蔵は遅らせ、再処理工場運転の口実を提供するという結果を招く恐れがあるのではないでしょうか。

六ヶ所再処理工場運転計画を「白紙に戻す」くらいの覚悟は?

『回答』は、全量再処理の見直しが処分政策に変更をも迫る可能性に言及した後「これらの問題に的確に対処するためには、従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要である」と述べていました。2014年5月8日の会合で「ウラン資源の問題は懸念には及ばない」と、資源面から言えば再処理は必要ないとの議論をしながら、差し迫った再処理工場運転開始計画について、少なくとも「暫定的に」計画を中止するという程度の選択肢が提言に入っていないのはなぜでしょうか。

使用済み燃料「総量管理」政策ではプルトニウムは直接処分?

使用済み燃料の発生の量が無制限に増える状態では処分場が受け入れられにくいから、発生する総量を定めるという「総量管理」政策によって、原子力発電が制限された場合、47トンも溜まってしまったプルトニウムのMOX利用はできなくなり、何らかの形の直接処分の可能性を考える必要が出てくるのではないでしょうか。「総量管理」政策をとりながら、六ヶ所再処理工場の運転を開始してプルトニウムの量をさらに増やし続ける場合はなおさらです。この問題は検討されたのでしょうか?

提言案は敷地内乾式貯蔵には反対?

地域間の公平性の観点を重視する提言案は、原発敷地内の乾式貯蔵の導入の可能性を否定しているかに読めます。ところが、2014年技術検討委員会報告では敷地内乾式貯蔵をあり得る選択肢として上げています。

同報告は「原子力発電所に立地、保管容量は数百トンから数千トン程度、保管期間は50年から100年程度というシナリオ」について次のように述べています。

 このシナリオの場合には技術的課題はほとんどない。主要な課題は、保管後の搬出先を決めずに貯蔵施設を立地することが地元に受け入れられるかどうかであろう。発電所の運転終了後も保管を続ける場合があり得るが、その場合も地元の了解が必要になる。

  1. この後、敷地外「暫定保管」について議論する中で、敷地内保管に言及し損ねたが反対ではない
  2. 敷地内乾式貯蔵には原則反対

どちらでしょうか。

地元は敷地内乾式貯蔵に反対か?

「地元に受け入れられるかどうか」という問題を提起した際、次のようなことを考慮したのでしょうか。

参考

ガラス固化体と使用済み燃料を明確に分けて議論すべきではないか?

提言案では、高レベル廃棄物を再処理で生じる高レベル廃液をガラス固化したものあるいは使用済み燃料と定義しています。日本は、全量再処理の政策を取っており、処分場に送られるのはガラス固化体と想定していますが、たとえこの政策を変更して使用済み燃料をそのまま「直接処分」する場合にも当てはまる提言にしようということです。これは妥当な判断ですが、この二つを明確に分けて議論していないために、提言の趣旨を理解しがたい部分が多々あります。

  • 各地の原発と六ヶ所再処理工場の受け入れプール(容量約3000トンがほぼ満杯)に合計約1万7000トンの使用済み燃料が保管されています。
  • 一方、ヨーロッパでの再処理の結果生じたガラス固化体が六ヶ所再処理工場に隣接する施設で保管されています(2015年2月現在英仏合計1574本貯蔵中。フランス分1310本の返還は2007年3月終了。英国分約900本の返還が継続中。264本返還済み)。この他六ヶ所再処理工場の試運転で生じたガラス固化体が346本あり、本格運転が始まれば増えていきます。また茨城県東海村の日本原子力研究開発機構の再処理施設に同施設で発生したガラス固化体が247本あります。

参考

「暫定保管」の対象は使用済み燃料?

各電力会社の配電地域ごとに「暫定保管」施設を設けるというのは、六ヶ所村に保管中のガラス固化体を運び込むということではないようです。報告案は、これから発生する高レベル廃棄物に関して、「現時点で可能なのは『最終処分場の建設』ではなくて、「暫定保管施設の建設であるという日本学術会議の提言にもとづけば、事業者が使用済燃料の暫定保管施設を確保することを、原発の操業の前提条件とすべきである」と述べています。

ガラス固化体はどうするのか?

  1. ガラス固化体については六ヶ所村での貯蔵を継続する
  2. 各電力会社の配電地域ごとの使用済み燃料「暫定保管」施設とは別に、ガラス固化体用「暫定保管」施設をどこかに作る
  3. ガラス固化体も各電力会社の使用済み燃料「暫定保管」施設に持ち込む

このうちのどれでしょう。あるいは別の案でしょうか。

現状の使用済み燃料「中間貯蔵」政策とどう違うのか?

元々、六ヶ所再処理工場が計画通り運転されても、第2再処理工場を作るまではむつ市の施設のような使用済み燃料敷地外貯蔵施設を数カ所作るというのが政府の考え方でした。提言をしなくても、ほぼ同じようなことを目指していたができていないというのが現実です。違いは意味づけの仕方だけでしょうか。

使用済み燃料「中間貯蔵」と「暫定保管」はそれほど違うのか?

政府のいう使用済み燃料「中間貯蔵」

第2再処理工場ができるまで保管(法的には、敷地外貯蔵を業とするものが行う貯蔵。2005年原子力政策大綱参考資料は、「中間貯蔵」を次のように定義。「原子力発電所で使い終わった燃料(使用済燃料)を、再処理するまでの間、当該発電所以外の使用済燃料貯蔵施設において貯蔵すること。1999年6月原子炉等規制法の改正により中間貯蔵に関する事業、規制等が定められた。」)

実質的には、敷地内乾式貯蔵も同じ役目を果たす。

六ヶ所再処理工場の運転開始に反対する文脈での「中間貯蔵」

直接処分まで、あるいは、将来再処理が経済的面及び核拡散の観点から有用だと判断されるまで原発敷地内外で貯蔵。

提言案の「暫定保管」

処分方法についての決定がなされるまでの保管。

 保管対象:ガラス固化体または使用済み燃料

 しかし、「最初の30年を目途に地層処分のための合意形成と適地選定を行い、その後20年を目途に処分場の建設を行う」との提案

提言案は第2再処理工場の否定?

提言案は、暫定保管された使用済み燃料は直接処分するとの提案に聞こえます。少なくとも、暫定保管期間の50年間は第2再処理工場には送らないという話のようです。

第2再処理工場を作るという案を明確に否定するということなのか?

六ヶ所再処理工場の運転を中止するという案を出さないこととの整合性は?

プルサーマルで使われた使用済みMOX燃料は現在発生しているものも含め、直接処分に向かうのでしょうか。だとすると、発熱量の高い使用済みMOX燃料は大きな処分場面積を必要とし、現在の再処理で高レベル廃棄物を「減容」して処分場の面積を小さくしようという話は、元の木阿弥ということでしょうか。

暫定保管に回るのは、これから発生する使用済み燃料?

これから発生する使用済み燃料を施設外暫定保管施設で保管というのは、それに相当する量で、古いものからそちらに送るということでしょうか。それとも、これから発生するものを送るのでしょうか。

六ヶ所再処理工場に送るものとの関係は?

「暫定保管施設」はどのくらいの期間で建設できるとの想定か?

「暫定保管」施設の建設にはどのくらい時間がかかると想定しているのでしょうか。提言案が決まる直前の2015年1月26日の会合で次のような議論がありました。「暫定保管施設の立地にすら30年以上の議論を要するのではないか。本当に30年の間に高レベル放射性廃棄物の処分にこぎつけられる状況にあるのか」いや、「先送りは許されないのではないか」。「保管施設はすでに国内に存在している。青森県六ヶ所村に施設が現にある。したがって、保管施設の立地に30年以上を要するとは思えない」。

最後の発言に登場する六ヶ所村の施設はガラス固化体貯蔵施設。むつ市にあるのが敷地外使用済み燃料保管施設、福島第一原発と東海第二原発にあるのが敷地内使用済み燃料保管施設。発言はどちらのことかは不明ですが、むつ市の施設以外に同様の敷地外貯蔵施設が日本のどこにもできていないことを考慮して、最終的に何年で各電力会社の敷地外「暫定保管」施設が確保できるということになったのでしょうか。そもそも、この日、議事要旨にはない議論が続いたのでしょうか。

原発敷地外「暫定保管」開始の開始時期と地層処分開始時期の関係は?

再稼働との関係を抜きにしても、暫定保管開始から50年の間に地層処分の開始という計画ですから、「暫定保管」開始時期が重要な意味を持ちます。提言案には、「暫定保管の開始は施設の建設を終えた時点からとする」とあります。

原発敷地外「暫定保管」施設の建設が終わるのが5年先とすると、暫定保管期間の終わり、つまり地層処分開始はその50年後?

10年先とすると、それから50年?

20年先とすると、それから50年?

30年先とすると?

あるいは、「暫定保管」開始で計算されるのはガラス固化体「暫定保管」?

「暫定保管」50年という計算は、ガラス固化体の「暫定保管」の開始から数えるということでしょうか。その場合、この「暫定保管」の開始時期は?

  1. 六ヶ所村に保管されている現状を、今年から暫定保管元年として数える
  2. 六ヶ所のガラス固化体は貯蔵開始から約50年後までに運び出すことになっているが、その年を「暫定保管」元年とする
  3. 近い将来別の場所に移すこととし、その場所での保管開始を「暫定保管」元年とする。
  4. 遡って「暫定保管」元年を定める

新しい再処理技術を使う「核変換」技術への期待と古い技術の六ヶ所再処理工場容認の矛盾は?

提言案は、「暫定保管」によって生じる「時間的猶予を利用して、容器の耐久性の向上や放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の核反応による半減期の短縮技術(核変換技術)といった、放射性廃棄物処分の安全性における確実性を向上させる研究開発を進め、処分方式に反映させることができる可能性がある」と述べています。核変換技術は、六ヶ所再処理工場とは違う再処理技術を使ってプルトニウムと他の超ウラン元素を一緒に取り出して燃やそうというものです。すでに発生している使用済み燃料を六ヶ所工場で再処理してしまっては将来この技術を活用することができなくなります。核変換技術に期待するということと、プルトニウムの需要もないのに六ヶ所工場を運転することを容認することとの間の矛盾についてはどう考えられているのでしょうか。

また、核変換技術の研究のためにもんじゅを使うべきだと同技術への期待がもんじゅ延命の正当化の根拠とされているという現状では、提言案は、結果的にこの延命論の後押しになる可能性があります。これについては検討されたのでしょうか。

期待を寄せる核変換技術についてどれほどの議論をしたのか?

『回答』作成の過程では、核変換技術についての検討は、2012年1月24日の会合に核変換の研究をしている人物を招いて話を聞いた時以外はされた様子がありません。この会合の議事要旨の問題部分は非常に簡単なもので資料も紹介されておらず、どんな議論がされたのか詳細は不明です。

一方、技術分科会報告には、新しい技術の再処理による超ウラン元素「TRUの分離・回収や核変換の工程が加わることによってかえってリスクが高まる可能性もある」と過度の期待を戒める記述があります。

また2014年12月8日の会合では「暫定保管の期間に何をするか」「あまり審議してきていないが、各位いかがか」という質問に対し次のような発言があります

「核変換の技術はまだ理論的検討や実験の段階で、実証的な技術開発の段階にはない。そうした技術のメドが経つのを待って、というのは現状では期待できないと思う」

「核変換をすれば本当に社会の懸念に応えきれるのかには疑念が残る。むしろ受け入れ可能なリスクについての議論をすることが必要なのだ。核変換に踏み込みすぎた議論を持ち出すことには注意が必要だ」

この議論の結果がなぜ「放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の核反応による半減期の短縮技術(核変換技術)といった、放射性廃棄物処分の安全性における確実性を向上させる研究開発を進め、処分方式に反映させることができる可能性がある」となってしまい、また設置を提唱している専門委員会の課題の一つとして、「放射性廃棄物の放射線量を少なくする滅容化技術などの推移をフォローアップすること」が挙げられているのでしょうか。

提言案は「総量管理」が重要というが、「量」が問題か「質」が問題か

提言案は2012年の『回答』に続き「総量管理」を提唱し、次のように述べています。

総量管理とは、高レベル放射性廃棄物の総量に関心を向け、それを望ましい水準に保つように操作することであるが、その合意としては、「総量の上限の確定」と「総量の増分の抑制」とがある。「総量の上限の確定とは、総量に上限を設定することであり、社会が脱原子力発電を選択する場合には、その脱原子力発電のテンポに応じて上限が定まってくる。「総量の増分の抑制」とは、総量の増加を厳格に抑制することであり、単位発電量あたりの廃棄物の分量を可能な限り少ない量に抑え込むことである。総量管理はエネルギ一政策にもかかわり、暫定保管期間に議論されるべき重要なテーマである。

「量」の程度が処分地を受け入れるか否かの判断に影響を与えるかどうかは詳細には検討されていないのではないでしょうか。受け入れの決定には量はあまり関係なく、否定的な態度を決めるのは放射能という概念、つまり「質」であるのかもしれません。これは、核変換技術による「減容」の重要性の強調についても言えることです。

影響を与え得るのは「量」ではなく脱原発の決定ではないか?

反原発運動は、「総量管理」は脱原発を決めてこれ以上廃棄物=使用済み燃料を増やさないことあるいは、原子力利用を制限することと捉え、『回答』を評価したようです。

確かに、脱原発を決めれば、もうこれ以上使用済み燃料を発生させないが、すでに発生してしまっている分については何らかの処分が必要だから協力して欲しいという議論に説得力が出てくる可能性はあります。

これに関し、2014年4月14日の技術的検討分科会では経産省の担当者から次のような発言がありました。

 総量管理の考え方に対しては、スウェーデンの例を挙げているが、脱原子力の方針の決定が最終処分事業前進の直接的な理由ではなかったとの見解が同国の専門家から示されている。廃棄物の問題は、海外においてもそれ自体を1つの重要な問題として扱って取り組んできているということだと理解している。

しかし、言及されていると思われる「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会放射性廃棄物ワーキンググループ第6回会合(2013年11月20日)議事録を見ると、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)インターナショナル社長マグヌス・ホルムクヴィスト氏は、1984年の国民投票で2010年までに脱原発と決めたことについて「ある程度ポジティブな効果があったと思います。・・・SKBにとっては、この国民投票があったおかげで、そして長きにわたって新しい原発も建たなければリプレースメントもなかったということで、その分、はっきりとプログラムを書くことができたと思います。既存の原発を対象にして。それは確かだと思います」と述べています。

「総量の増分の抑制」の影響は?

「総量の増分の抑制」とは「単位発電量あたりの廃棄物の分量を可能な限り少ない量に抑え込むこと」だといいます。これは、燃料に含まれるウラン235の割合を高め、原子炉内で長期間燃やすことを意味します。このような形で燃焼度を上げることが長期乾式貯蔵や再処理の経済性に与える影響は議論されたのでしょうか。

地上または地下に「数十年から数百年」が「地上に50年」に変わった過程は?

2012年の『回答』では、暫定保管について「数十年から数百年」「深地層処分と同程度の深さの地中」や「地上」に保管する可能性について「今後十分に検討する必要」があるとしていました。フォローアップ検討委員会の技術分科会の報告書(2014年)では、「保管期間を数十年から数百年とするなど技術的条件に大きな幅があり、保管の具体的技術的方法については検討を行っていなかった」ので検討を行った結果、地上で50年程度が良いとの結論を得たとなっています。議事要旨を見る限りではこの問題について技術的研究を進めた結果ということではなく、すでにあった知見を簡単に検討した結果のように思えます。また、社会分科会の方も、暫定保管の期間について、「現在世代責任の原則」及び「科学の限界の自覚」の観点から、より具体的に考える必要がある、と考えた結果、暫定保管の期間は、「一世代に相当する30年を一つの期間」とすべきである」としています。この二つの分科会の考えを合わせて、今回の提言案で50年という数字が出てきたということです。この程度の話が、2012年の『回答』用にできなかったのはなぜでしょうか。

学術会議のウエブサイトの議事要旨に発言者の名前がなく、使われた資料も載せていないのはなぜか?

2012年3月23日の回から議事要旨が詳しくなりますが、これは、たまたま関係者の中に詳しい要旨を作ることを重要と考える人が加わったためでしょうか、それとも方針として決定されたからでしょうか(学術会議の他の会合の記録を見ると簡単な要約しかないのが普通のようです)。

詳しくなった議事要旨にも発言者の名前がなく、質疑の部分で報告者の答えかどうかも分からない部分が多々あります。また配布資料も出ていません。今回の提言案(pdf)は核情報で入手し、事務局の許可を得て載せています。

三枝利有特任連携会員による乾式貯蔵の報告用のパワポ形式の文書も同様)

原子力委員会、原子力規制委員会、経済産業省の関連委員会等の例にならい、会合直後には配布資料を載せ、その後できるだけ早く少なくとも発言者の名前の入った詳しい議事要旨あるいは議事録を載せるべきではないでしょうか。

疑問のまとめ──再処理肯定と核拡散問題の視点の欠如

政策を白紙に戻す覚悟を求めた回答

内閣府の特別の機関である日本学術会議は、同じく内閣府に設置された原子力利用政策に関する企画・審議・決定を所轄事項とする原子力委員会から、2010年9月に「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについての国民に対する説明や情報提供のあり方について」審議するようにとの要請を受けた。2011年の福島事故を経て2012年9月に出された「回答」は、使用済み燃料の「全量再処理」方針の見直しがされている現状に触れ、「従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要」だと指摘した。

高速増殖炉で使う初期装荷燃料に必要なプルトニウムを分離するために始められた再処理計画により日本は核兵器数千発分に相当する量の分離済みプルトニウムを溜め込んでしまっている。そのプルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料として無理矢理軽水炉で消費する計画も上手く行っていない。そこに起きた福島第一原発の事故によって原子力の将来が不確かとなり、分離済みプルトニウム消費計画がさらに難しくなった状態で出された回答である。

現状肯定と将来の技術開発への期待

しかし、高レベル廃棄物(ガラス固化体あるいは使用済み燃料)を数十年から数百年、地上または地下で「暫定保管」してその間に地層処分について研究・議論すべしという「回答」は実際には、六ヶ所再処理工場の運転自体については所与のものとして受け入れる内容となっていた。ここでは、再処理は核拡散にからむ国際問題だという観点が完全に欠落している。その無頓着ぶりは、原発は2030年代末までに廃止することを目指しながら再処理政策を継続するとした民主党の非論理的結論と似たところがある。「従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟」は何処へ行ったのだろうかとの疑問を「回答」は抱かせた。また、「回答」には直接処分される可能性の高い発熱量の大きな使用済みMOX燃料が処分場に与える悪影響についての分析はなかった。

その一方で、「回答」は新しい再処理技術を使ってプルトニウム以外の超ウラン元素を取り出してこれを燃やしてしまう核変換技術に大きな期待を寄せていた。しかし、核変換技術によって処分場に送られる廃棄物の量を減らすことが重要だと考えるのならば、古い技術を使った六ヶ所再処理工場の運転をしてしまってはならないはずである。プルトニウム以外の超ウラン元素が処分場に送られるガラス固化体の方に入ってしまうからである。従って、六ヶ所再処理工場の計画は中止し、使用済み燃料は暫定保管して、新しい再処理技術・核変換技術が現実のものとなるまで待つべきと言う方が論理的に一貫した提案となる。核変換技術に期待をすべきかどうかは別問題だが、これについて詳細な分析をした様子はなかった。

また、核変換技術を重要視するとのメッセージは、もんじゅの延命の正当化に使われる可能性を持っていた。プルトニウムその他の超ウラン元素を燃やす研究をするのにもんじゅが必要だと強調されているからである。プルトニウムを燃やしながらプルトニウムを増やす夢の原子炉となるはずの高速増殖炉もんじゅの計画が成功せず、これを運転する日本原子力研究機関の安全性無視の体質が次々と明らかにされてもんじゅの命運が尽き果てようとしているなかで出された「回答」である。

このように、高レベル廃棄物を「数十年から数百年暫定保管」という「回答」は、その意図とは別に、現実の最終処分計画の遅れがさらに続いて数百年遅れることを良しとする一方、六ヶ所再処理工場運転を容認し、処分場に影響を与えうるるMOX利用計画も容認し、もんじゅの延命も容認するという形で日本の再処理政策をそのまま認めてしまう、つまりは現状を全て肯定するという側面を持っていた。

現実無視と再処理政策の肯定

「回答」を出した後この問題についての審議を継続するために設置さたフォローアップ委員会は、再稼働で発生する使用済み燃料については各電力会社が配電地域内の原発立地自治体以外の場所に暫定貯蔵施設を1カ所以上作り、50年間暫定貯蔵するべきとの提言案を2月17日に発表した。この施設が確保されるまで再稼働を認めるべきではないとの提言である。同委員会の技術分科会で敷地内乾式貯蔵を有力な選択肢として検討したにも関わらず、今回の提言案では、これが選択肢としても登場しない。それどころかこれに反対と読める内容になっている。

元々、六ヶ所再処理工場を運転しても、処理能力の限界から、むつ市に建設された原発敷地外貯蔵施設がいくつか必要と考えられていた。だが、用地の確保ができていない。提言案は、元々あったが遅れている敷地外貯蔵施設の計画の実現を原発再稼働の条件としている。できていない計画の実現を再稼働の条件とすることによって現実的に何が得られるかについての分析がない。

一方、提言案は負担の公平性の観点を強調して、敷地内乾式貯蔵の導入に反対と受け入れられる内容となっている。原発の地元の過度の負担を心配しながら、東海第二原発や浜岡原発の周辺自治体が安全性のために早く乾式貯蔵をと訴えているという現実が考慮されていない。六ヶ所再処理工場運転に代わりうる重要な選択肢を外すことによって、提言案は再処理計画促進の役割を果たす可能性持っている。敷地内貯蔵の可能性は誰のどのような議論により消えていったのか、それについて反論はあったのか。学術会議の「答え」で終わりとせず、議論の過程を明らかにし、広範で自由な議論を呼びかける必要はないのか。

提言案は再稼働問題には影響を与えず、六ヶ所再処理工場運転開始の口実になり、結果的に、回答に続いて再処理を巡る状況をそのまま容認することとなりかねない。学術会議の意図通り、再稼働を遅らせ六ヶ所再処理工場の運転を認めた場合、そこで分離される核兵器利用可能プルトニウムはどうするべきと学術会議は考えているのだろうか。すでに溜まっている47トンだけでも、地下に直接処分する可能性を学術会議の「回答」や「提言案」は議論すべきではなかったのか。ましてや設計能力に従って年間約8トンのペースでプルトニウムが溜まっていった場合はそうである。

安倍晋三首相は、2014年3月、オランダのハーグで開かれた核セキュリティー会議でバラク・オバマ米大統領との日米首脳共同声明において「世界規模でHEU及び分離プルトニウムの保有量を最小化するという共通の目標」に触れ、「更なるHEUとプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励」している。

「従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟」を持った議論が日本学術会議には求められているのではないだろうか。

資料

検討委員会

2015年2月17日 日本学術会議提言案 『高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策について−暫定保管を中心に』(pdf)

12項目要約

  1. ガラス固化体の場合も使用済燃料の場合も、乾式(空冷)貯蔵技術による地上に暫定保管
  2. 暫定保管の期間は原則50年とし、最初の30年を目途に最終処分のための合意形成と適地選定を行い、その後20年を目途に処分場の建設。暫定保管の開始は施設の建設を終えた時点からとする。なお、天変地異など不測の事態が生じた場合は延長もありうる。
  3. 高レベル放射性廃棄物の保管と処分については、発電にともないそれを発生させた事業者の発生責任が問われるべき。
  4. 暫定保管施設は原子力発電所を有する各電力会社の配電圏域内の少なくとも1箇所に、電力会社の自己責任において立地選定及び建設(負担の公平性の観点から、この施設は原発立地点以外での建設が望ましい)。
  5. 暫定保管や最終処分の候補地域の選定及び施設の建設と管理にあたっては、立地地域及びそれが含まれる圏域の意向を十分に反映すべき。
  6. 現世代の将来世代に対する世代責任を真撃に反省し、暫定保管についての安全性の確保。その期間について不必要に引き延ばすことは避けるべき。
  7. 原子力発電所の再稼働問題に対する判断は、新たに発生する高レベル放射性廃棄物の暫定保管施設の確保を条件にすべき。
  8. 最終処分のための適地について、現状の地質学的知見を詳細に吟味してリスト化すべき。国からの申し入れを前提とした方法だけではなく、自治体の自発的な受入れを尊重すべ。リスト化は、後述する「科学技術的問題検討専門調査委員会」が担う。
  9. 暫定保管中になすべき重要課題は、地層処分のリスク評価とリスク低減策の検討。このための委員会も「科学技術的問題検討専門調査委員会が担う。
  10. 高レベル放射性廃棄物問題を社会的合意のもとに解決するために、国民の意見を反映した政策形成を担う「高レベル放射性廃棄物問題総合政策委員会」(総合政策委員会と略す)を設置すべきである。この総合政策委員会は、後述の「核のごみ問題国民会議」および、「科学技術的問題検討専門調査委員会」を統括。総合政策委員会の委員のうち、学術的な専門家の委員は、日本学術会議が推薦する。
  11. 福島第一原発の激甚な事故とその後の処理過程で損なわれた信頼関係を回復するために、市民参加に重きを置いた「核のごみ問題国民会議」を設置すべき。
  12. 暫定保管及び地層処分の施設と管理の安全性に関する科学技術的問題の調査研究を徹底して行う諮問機関として「科学技術的問題検討専門調査委員会」を設置すべき。

経緯

高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについて(依頼)(pdf) 原子力委員会 2010年9月7日

貴会議におかれまして高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについての国民に対する説明や情報提供のあり方についてよろしくご審議の上、ご意見をくださるよう、お願い申し上げます。提言には、地層処分施設建設地の選定へ向け、その設置可能性を調査する地域を全国公募する際、及び応募の検討を開始した地域ないし国が調査の申し入れを行った地域に対する説明や情報提供のあり方、さらにその活動を実施する上での平成22年度中にとりまとめられる予定のNUMOによる技術報告の役割についての意見が含まれることを期待しています。

回答 高レベル放射性廃棄物の処分について(pdf) 2012年9月11日 日本学術会議

本回答において、「高レベル放射性廃棄物」とは、使用済み核燃料を再処理した後に排出される高レベル放射性廃棄物のみならず、仮に使用済み核燃料の全量再処理が中止され、直接処分が併せて実施されることになった場合における使用済み核燃料も含む用語として使用する。

……

これまでわが国は、原子力発電をめぐる大局的政策についての広範な社会的合意形成に十分取組まないまま、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定という個別の争点についての合意形成を求めるという、手続き的に逆転した形の取組みを行ってきた。高レベル放射性廃棄物の処分に関して、合意形成に立脚した問題解決を実現するためには、大局的な原子力発電政策に資する形で、いくつかの基本的考え方を明確にし社会的に共有する必要がある。

……

(1)「暫定保管」というモラトリアム期間の設定

 社会的な合意形成に立脚して問題を解決するためには、意思決定の手順と合意形成の道を、それぞれ多段階で構想する必要があり、最終的な処分に至るまでの1つの段階として、高レベル放射性廃棄物の暫定保管(temporal safe storage)によるモラトリアム(猶予)期間の設定を考慮すべきである。

暫定保管という管理方式は、いきなり最終処分に向かうのではなく、問題の適切な対処方策確立のために、数十年から数百年程度のモラトリアム期間を確保することにその特徴がある。この期間を利用して、技術開発や科学的知見を洗練し、より長期間を対象にした対処方策を創出する可能性を担保するメリットがもたらされる。

例えば、こうして確保した時間的猶予を利用して、容器の耐久性の向上や放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の核反応による半減期の短縮技術(核変換技術)といった、放射性廃棄物処分の安全性における確実性を向上させる研究開発を進め、処分方式に反映させることができる可能性がある。「核変換技術」を高レベル放射性廃棄物に適用して、短寿命核種に変えてから保管すれば、およそ千年間で、自然界と同じ程度の放射線レベルにまで下がり、さらに確実な管理ができるとされている。もちろん、現段階ではこれを最終処分に確実に活かすことができる確証はないが、JAEA(日本原子力研究開発機構)等の関係する研究機関で積極的に技術開発に取り組み、成果を得ることが期待される。

また、地層の安定性に関する研究も、このモラトリアム期間にさらなる進展が求められる。

……

 総量管理とは、高レベル放射性廃棄物の総量に関心を向け、それを望ましい水準に保つように操作することであるが、その含意としては、「総量の上限の確定」と「総量の増分の抑制」とがあり、その内実がいかなるものとなるかは、原子力政策の選択と深く関係している。「総量の上限の確定」とは、総量に上限を設定することであり、社会が脱原子力発電を選択する場合には、その脱原子力発電のテンポに応じて上限が定まってくる。「総量の増分の抑制」とは、総量の増加を厳格に抑制することであり、単位発電量あたりの廃棄物の分量を可能な限り少ない量に抑え込むことに他ならない。

「高レベル放射性廃棄物の地層処分について」─地質環境の長期的安定性の観点から(学術会議の報告を受けて)─(pdf)

吉田英一1*(名古屋大学)・高橋正樹(日本大学)・渡部芳夫(産業技術総合研究所)・井龍康文(東北大学)・千木良雅弘 5(京都大学)・石渡 明 6(東北大学)

  • 1) 日本地質学会「地質環境長期安定性研究委員会」委員長
  • 2) 日本地質学会理事・「地質環境長期安定性研究委員会」委員
  • 3) 日本地質学会副会長・「地質環境長期安定性研究委員会」委員
  • 4) 日本地質学会理事・学術研究部会長
  • 5) 日本応用地質学会会長・学術会議連携会員
  • 6) 日本地質学会会長

最後に,学術会議の報告書の内容は,最終処分の再考を促したものではあるものの,最終処分としての地層処分が不可能と断定したものではないことを付記します.「暫定保管」は,フランスなどが採用している地層処分における「再取り出し可能性(Retrievability)」に通じるものです.しかし,これは処分を前提としたものであり,いわゆる「管理」ではありません.「暫定保管」を実施するにおいても,最終的には地質環境の長期挙動に関する知見は重要であり,今後も継続的研究開発によって知見を蓄積していくことが不可欠です。これまで我が国が培ってきた放射性廃棄物処分技術の長期的な継承・改良とその重要性の共有化が,「認識共同体」において議論されるべきであることを明記してコメントと致します.

「貯蔵施設を立地することが地元に受け入れられるかどうか」?

東海第二原子力発電所周辺自治体の乾式貯蔵早期移行の要求

浜岡原発周辺自治体及び静岡県知事の敷地内乾式貯蔵施設早期導入要請の声

玄海原発を巡る動き

  • 玄海町に使用済み核燃料中間貯蔵施設計画 佐賀新聞 2009年03月02日
  • 九電、3年内に中間処理施設の候補地 使用済み核燃料一時保管 日経新聞(2009/03/31)
    「中間貯蔵施設を巡っては、佐賀県玄海町の岸本英雄町長が受け入れに前向きな姿勢を表明している。」
  • さまよう核のごみ(4) 中間貯蔵施設の行方は 西日本新聞 2013年04月17日

    岸本玄海町長「今のままでは核燃料サイクル政策は立ちゆかない。近い将来、玄海原発の貯蔵プールも核燃料で満杯になる。中間貯蔵施設は絶対に必要なんだよ」

  • 玄海原発隣接地10ヘクタール九電買収へ 佐賀新聞 2014年12月13日

    九州電力は12日、玄海原発(東松浦郡玄海町)に隣接する土地約10ヘクタールを買収する計画を明らかにした。

    「原発構内が原発事故対策で使う資機材で手狭になったため」と説明した。  

    5年前に計画が浮上した使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設の建設用地としての活用は否定した。 ・・・九電は「あくまで構内が手狭になったことが土地購入の理由。ただ中間貯蔵施設を建設する必要性はあるので社内でも検討しているが、今のところ具体的な計画は立てられていない」と強調した。

美浜原発を巡る動き

数十年から数百年:『回答』では検討していなかった、具体的に考えていなかった…

報告書『高レベル放射性廃棄物の暫定保管に関する技術的検討』 (暫定保管に関する技術的検討分科会2014年9月19日, pdf)

日本学術会議は2012年9月に取りまとめた原子力委員会からの依頼に対する回答「高レベル放射性廃棄物の処分について」(以下、「回答」という)において、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料と再処理後のガラス固化体の双方を想定)の暫定保管を提案した。しかし、暫定保管の提案は概念的なもので、保管期間を数十年から数百年とするなど技術的条件に大きな幅があり、保管の具体的技術的方法については検討を行っていなかった。また、「回答」に対して、原子力委員会は同年12月に見解「今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組について」を発表した。この見解では暫定保管の考えに対応すると思われる概念として地層処分施設における回収可能性に言及した。

本分科会では、国内外の使用済燃料やガラス固化体の保管施設とともに地層処分施設における回収可能性を確保する技術を含めて技術の現状を把握し、安全確保を含む暫定保管技術や回収可能性を確保する技術に関する特性を整理するとともに経済性評価に関する知見を収集した。また、地震や津波等に対する安全確保のために必要な施設立地において考慮すべき地盤・地質条件等の要件を整理した。さらに、様々に想定される暫定保管の形態を整理して暫定保管のシナリオ(保管対象、保管規模、保管期間等)の検討を行った。

報告書『高レベル放射性廃棄物問題への社会的対処の前進のために』 (暫定保管と社会的合意形成に関する分科会 2014年9月19日, pdf)

(3) 暫定保管の期間の問題

 2012年の「回答」においては、暫定保管の期間については、「数十年から数百年の間」という形で言及したが、暫定保管の期間について、「現在世代責任の原則」及び「科学の限界の自覚」の観点から、より具体的に考える必要がある。

……

A期間があまりにも長いことは、対処するべき高レベル放射性廃棄物を生み出した世代の関与や責任問題があいまいになるおそれがある。そして、関心の低下、暫定保管を開始した当初の原則の忘却や変質が生じるおそれがある。

B暫定保管政策は、法制度にのっとって長期的に安定的に運用されるべきである。特に、立地点自治体及び将来世代との社会的契約の問題が出てくる。社会的に有効で、実効性のある社会的契約期間はどの程度なのかを考える必要がある。

……

以上の視点を総合すると、社会的判断をする「モラトリアム」の期間、すなわち、次の段階における高レベル放射性廃棄物の取扱いについて「政策案形成と政策的判断」を実施する期間としては、一世代、すなわち、30年を一区切りとして、考えるべきであろう。技術的視点から見て、これより長い暫定保管期間(例えば、100年)が設定可能である場合でも、30年ごとに、政策の在り方と取組の前進のための判断をその都度形成し、刷新していくべきであろう。

核変換についての議論 期待と過度な期待に対する戒め

期待

高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会(第2回)議事要旨(pdf)

1.日時:平成24年1月24日

・講演(大井川宏之 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究部門研究推進室長)

 資料2に基づき大井川宏之参考人(日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門研究推進室長・J-PARCセンター核変換セクションリーダー)から分離変換技術による高レベル放射性廃棄物処分の負担軽減の可能性に関する説明があった。主な質疑は以下のとおり

○分離変換技術は再処理工場の稼働を前提としたシステムですか。

→様々な定義があるが、我が国では再処理工場が前提。再処理が行われて、その際に出てくる高レベル放射性廃棄物の廃液を処理するのが前提。

○ADSには直線加速器まで必要である。そこで、ADS一基の専有面積はどのくらいか。

→直線加速器は、現在検討しているのが、長さ400m程、幅数十mメートル位の建物。六カ所再処理工場の規模で考えると、それが4つ必要である。

○技術の成熟度がどの辺にあるのか。

→NASAの評価手法 TRL(technology readiness level)を利用した場合、レベル

4。(レベル0が一番低く、レベル10が一番高い)

○ADSを発電には使えないのか。

→かつて、イタリアのカルロ・ルビア(Carlo Rubbia)博士が発電のためのトリウム炉を提案したことがあるが、今は下火。エネルギー生産のために、加速器を付けるということは、経済的に成り立たない。

○ADSを使えば、最終処分場の面積を1/100にできる。また、監視期間も10万年が数百年になる。すばらしいシステムである。

→未だ開発の途上。実用化に時間も経費もかかる。

○実用化への大まかな経費は

→数兆円

*注:ADS=加速器駆動システム(accelerator driven system)。ADSR(加速器駆動未臨界炉=accelerator driven subcritical reactor)とも。

参考

戒め

  • 報告 高レベル放射性廃棄物の暫定保管に関する技術的検討(pdf) 2014年9月19日

    A高レベル放射性廃棄物の有害度低減の可能性

     高レベル放射性廃棄物の有害度は放射能の減衰に従って低くなる。廃棄物を生み出す基になった天然ウラン鉱石の有害度まで低減する時間は、使用済燃料処分の場合は約10万年、通常再処理(U と Pu 回収)のガラス固化体では約1万年、TRU回収再処理・核変換処理(U・Pu に加えて超ウラン元素も回収して短半減期核種に核変換)する場合には1000年程度以下(超長寿命の核分裂生成物(99Tcや129I等)の考慮も必要で幅がある)になる。ただし、有害度は高レベル放射性廃棄物が持つ潜在的なハザードの大きさを示しているだけで、放射性物質が環境中に漏えいして引き起こすリスクそのものではない。リスクは健康被害を起こす被曝の確率を考慮して評価すべきもので、TRUの分離・回収や核変換の工程が加わることによってかえってリスクが高まる可能性もある。

  • 日本学術会議 課題別委員会 高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会(第23期・第2回)(2014年12月18日)議事要旨(pdf)

    暫定保管の期間に何をするのか。その期間に地層処分以外の方法も含めてどうするかの対処を決めるのか。それとも地層処分の場所を確保して処分場をつくっていくというつもりで対処するのか。そこが問われているのだと思うが、いかがか。

    ○そこはこれまであまり審議してきていないが、各位はいかが思われるか。

    ○核変換を行えば超ウラン元素の半減期が短縮し、対処が必要な期間が数百年となる可能性がある。そうすれば人間の管理で対処することも原理的には可能だ。しかし、完全に変換しきれるかというと、現実にはそうではない。変換を重ねても最後に残る物質はある。もちろん、量が減ることは間違いないのでリスクは大きく減少できるだろうが。また、核変換の技術はまだ理論的検討や実験の段階で、実証的な技術開発の段階にはない。そうした技術のメドが経つのを待って、というのは現状では期待できないと思う。

    ○先ほどのご質問への答えは、すでに今田委員長の案に書き込まれているのではないか。30年をかけて地層処分のための合意形成と地域選定を行い、20年をかけて処分場建設を行うとされている。直前にご指摘のあった核変換の話だが、その際に半減期が何年という議論をしているが、そこでしばしば言及される年数は、もともとのウラン鉱石と同レベルになるまでに、という比較での議論だ。福島の除染で出る指定廃棄物の放射能レベルはそのウラン鉱石のレベルと同等程度で、我々は現在、そのレベルの廃棄物の処分場の受け入れについて大きな議論をしている。したがって、核変換をすれば本当に社会の懸念に応えきれるのかには疑念が残る。むしろ受け入れ可能なリスクについての議論をすることが必要なのだ。核変換に踏み込みすぎた議論を持ち出すことには注意が必要だ

参考:「全米科学アカデミー(NAS)報告書

Nuclear Wastes: Technologies for Separations and Transmutation (National Academy Press, 1996), p. 3.

被曝量の如何なる低減も、核変換(トランスミューテイション)の費用と運転のリスク追加を正当化するようなものではないと見られる

乾式貯蔵の説明

高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会暫定保管に関する技術的検討分科会(第2回)(pdf) 2014年2月17日

1−5ページ

(乾式貯蔵の専門家、三枝利有特任連携会員(電力中央研究所首席研究員)による報告)

○使用済み燃料の乾式貯蔵は1970年代初頭から行われている(湿式貯蔵は1950年代から行われていた)。実施国は、英、ハンガリー、カナダ、米、独等である。

……

○米国内の貯蔵施設は一般認可済みが54、サイト固有認可済みが15、さらに一般認可申請が8件予想されている。なお、当初の貯蔵施設の許認可では認められた貯蔵期間が20年であったため、許認可更新を行った施設がある。

……

○続いてドイツの状況を紹介する。1992年から原子力発電所敷地外の集中貯蔵施設が運転開始している。ただ、ドイツでは使用済み核燃料の輸送に対する公衆の反対が強くて実現せず、結局は再処理高レベル放射性廃棄物の輸送・貯蔵にとどまってしまっている。

○ドイツ国内の貯蔵施設の分布は図表を参照されたい。貯蔵方式としては、トンネル方式金属キャスク貯蔵、地上の金属キャスク貯蔵が見られる。

三枝三枝利有特任連携会員の報告文の要旨全文と使用されたパワポ資料はこちら

参考:

原発敷地内中間貯蔵の検討──「技術的課題はほとんどない」

高レベル放射性廃棄物の暫定保管に関する技術的検討(pdf) 2014年9月19日

iii 及び16−17ページ

(4)技術的実現可能性を考慮した暫定保管シナリオとして、

使用済燃料の場合には、

1)原子力発電所に数百トンから数千トンを50年から100年程度保管する、

2)再処理工場に数千トンから1万トン程度を50年程度保管する、

3)独立立地点に数千トンから数万トンを最長300年保管する、

4)使用済燃料処分場に数千トンから数万トンを最長100年程度(処分場閉鎖時までを想定)保管する

という四つのシナリオ、

ガラス固化体の場合は、

1)再処理工場に数万本を50年から100年程度保管する、

2)独立立地点に数万本を最長300年程度保管する、

3)ガラス固化体処分場に数千本から数万本を最長100年程度保管する

という三つのシナリオを設定して課題を整理した。…

@使用済燃料の場合

使用済燃料の場合は、日本学術会議が提案したモラトリアムとしての暫定保管とは目的が異なるが、技術的には同じ機能を持つ施設が我が国に存在している。原子力発電所や再処理工場での貯蔵の多くは湿式のプール貯蔵であるが、暫定保管施設で想定される乾式貯蔵も2か所で行われている。竣工直前の青森県のリサイクル燃料貯蔵施設は乾式貯蔵技術(金属キャスク)を採用しており、保管後は再処理を行う前提ではあるが、技術的機能としては独立立地の50年間の暫定保管と全く同じである。新しい技術シナリオとしては、立地場所が処分場である場合だが、そもそも処分場の立地が行われているという前提でのシナリオであるから、この場合に想定されるのは回収可能性を確保するケースに絞られる。

以上のことから、シナリオを下記のケースに統合し、それぞれの場合の課題を示す。

ア 原子力発電所に立地、保管容量は数百トンから数千トン程度、保管期間は50年から100年程度というシナリオ

 このシナリオの場合には技術的課題はほとんどない。主要な課題は、保管後の搬出先を決めずに貯蔵施設を立地することが地元に受け入れられるかどうかであろう。発電所の運転終了後も保管を続ける場合があり得るが、その場合も地元の了解が必要になる。

イ 再処理工場に立地、保管容量は数千トンから1万トン程度、保管期間は50年というシナリオ

 このシナリオの場合も技術的課題はほとんどないが、貯蔵後は再処理が前提になると想定され、貯蔵技術は湿式のプール貯蔵が主体になるだろう。貯蔵期間も湿式貯蔵の技術経済的特性及び再処理との連携を考慮すると50年を超えることは想定しがたい。

ウ 独立立地点、保管容量は数千トンから数万トン、保管期間は最長300年というシナリオ

 このシナリオの場合は、50年を大幅に上回る保管期間になることも想定されるが、その場合には、長期にわたる安全確保に技術的見通しをつけるための研究開発が必要になり、立地点の選定も処分場の立地と大きくは変わらない困難が予想される。また、地元と合意して決めた保管期間後は確実に搬出することを保証する必要がある。

エ 使用済燃料の処分場で回収可能性を確保、保管容量は数千トンから数万トン、保管期間は100年程度まで、回収しない場合は処分に移行というシナリオ

 このシナリオの場合は、回収可能性を確保する技術の研究開発が必要であり、最終処分場の有力候補としての立地選定を行うことになる。また、回収することになった場合には新たな保管施設を建設しなければならない。なお、ガラス固化体の暫定保管の場合も同様であるが、処分場において回収可能性を確保するシナリオにおいては、その立地の社会的合意に関しては最終処分場立地と同様の困難が予想される。本分科会と並行して審議している「暫定保管と社会的合意に関する分科会」では、処分場において回収可能性を確保するシナリオについては検討を行っていない。

参考:原子力規制委員会の考え方については例えば田中委員長及び更田委員の九州電力の社長に対する発言を参照

更田委員:加圧水型(PWR)の場合は「使用済燃料プールが比較的低い位置にあるとは言うものの、ああいった形で使用済燃料プールの貯蔵量を増やしていくよりは、乾式のキャスクに入れて、それこそ、その辺に転がしておくというと言葉は悪いですけれども、その方がまだ更に安全性は高いのではないか」

田中委員長:福島の教訓を強調します。「4号機にあった千数百体はほぼ下に下ろすことができた(が)一時は大変なパニック状態」。乾式キャスクは「建物は壊れたけれども、中の燃料も容器も健全であった」「落下試験とか、火災試験とか、いろいろなことに耐えられるように、非常に頑丈にできている」「国際的に見ても、一定程度冷却が進んだものはプールから出して、乾式容器に入れてサイト内に貯蔵する方が……一般化」「積極的に、安全確保とセキュリティの面から、是非取り組んでいただきたい」「規制という段階では」ないが「是非福島第一原子力発電所の事故の教訓も踏まえ……社長のイニシアチブでやっていただければありがたいと思います」。

この部分の全文は

2014年10月29日 原子力規制委員会第35回臨時会議議事録(pdf)

暫定保管施設の立地にすら30年以上の議論?

日本学術会議 課題別委員会 高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会(第23期・第4回)議事要旨(案)(pdf)

1.日時:平成27年1月26日(月)

○高レベルどころか、福島由来の低レベル放射性廃棄物であっても議論が紛糾して立地が難航している。暫定保管施設の立地にすら30年以上の議論を要するのではないか。本当に30年の間に高レベル放射性廃棄物の処分にこぎつけられる状況にあるのか。

○そうは言っても、電力を消費してきて、廃棄物を産出してきている。誰もが施設の受け入れを嫌がるかもしれないが、放置すればより深刻な問題になる。先送りは許されないのではないか。

○学術会議が提案する暫定保管施設と政策的な意味合いは異なるが、技術的には共通の保管施設はすでに国内に存在している。青森県六ヶ所村に施設が現にある。したがって、保管施設の立地に30年以上を要するとは思えない。

*「六ヶ所村に施設が現にある」というのは、再処理工場に隣接するガラス固化体貯蔵施設のことになるが、ガラス固化体の話をしているのか、使用済み燃料の保管施設の話をしているのか不明。後者なら、むつ市にある使用済燃料中間貯蔵施設「リサイクル燃料備蓄センター」の誤記または言い間違いか?

脱原発がある程度ポジティブな影響

総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 放射性廃棄物ワーキンググループ(旧放射性廃棄物小委員会)第6回会合(2013年11月20日)

議事録(pdf)

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)インターナショナル社長マグヌス・ホルムクヴィスト氏

資料(pdf)に沿った講演の後)

(伴委員質問:フェーズアウトが大きな影響を及ぼしているのではないかと思い至るので、その辺についてどうだったのかということです)

マグナス・ホルムクヴィスト氏応え

次に、フェーズアウトについてです。そもそも2010年ということだったんですね。1980年に行った国民投票の結果ですけれども、ある程度ポジティブな効果があったと思います。・・・SKBにとっては、この国民投票があったおかげで、そして長きにわたって新しい原発も建たなければリプレースメントもなかったということで、その分、はっきりとプログラムを書くことができたと思います。既存の原発を対象にして。それは確かだと思います。今日のSKBのプログラムが対象としているのは既存の原発ですから、これがリプレースされたりということになると、これはまた別の決定が必要となります。今はそれは我々の範疇に入っていないわけですから、それは考えていないわけです。処分場をつくるといっても、これは既存の原発だけが対象とはっきり決まっています。ロッテルパウエルという所が2基リプレースしたいということで、今、申請を出しています。

現在、当局が申請書を審査しているところです。

ウラン資源の問題は懸念には及ばない──資源の有効利用という点では再処理はまったく必要ない?

高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会 暫定保管に関する技術的検討分科会(第6回)平成26年5月8日

議事要旨(案)(pdf)

○暫定保管期間中に検討すべき課題を示していただければよい。

○その点を確認したかった。それでよろしいか。

○期間中にできることは期間の長さにもよるはずだ。期間が短ければできることは限られるし、長くなれば長期的な取り組みができる。地層について調べる技術は向上するだろう。核種変換技術の成立性もある程度取り組めば見通しがつく。50年では短いかもしれないが、100年かければ十分そうしたデータが得られるはずだ。それ以外にも、例えば、古い物を掘り出して、これだけ持つというデータはあるが、そこに放射線が当たれば結果が変わるかもしれない。そうしたデータも一定期間があれば得られるはずだ。そうしたできること、やるべきことの羅列でもよいだろう。

○100年というのが現実的な目安となる案となりつつあると受け止めている。その傍証を挙げたい。前回も申し上げたが、ウランが掘り尽くされつつあり、原発そのものが動かせなくなるまでに100年、100年で枯渇するとされている。核燃料サイクルが飛躍的に性能向上すれば別だが。つまり、100年経てば、おそらく、もう原発は使いたくても使えなくなる可能性が高いという判断が入ってくれば、100年が大きなヤマになるので、それまでに、技術的にも社会的にも目途をつけようという議論ができるだろう。ウラン鉱石があと100年で尽きるというのは自然科学で確認されているのか

○あまり議論を拡げたくないが、ウラン資源の問題は懸念には及ばない。確認埋蔵量が500万トンあり、年間5万トンぐらいしか使っていない。500万トンは確認埋蔵量なので、実際の埋蔵量はもう1ケタ多い規模が残っていると考えるのが他の資源も含めた通常の考え方だ。したがってウラン資源の問題をあまり考慮する必要はない。ここで考えることはむしろ、モラトリアムの期間をシナリオとしてどう設定するか、そのいい点、悪い点を技術的に整理する、それに尽きると思う。

日本学術会議とは

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。職務は、以下の2つです。

○科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。

○科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。

日本学術会議の役割 日本学術会議は、我が国の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野の約84万人の科学者を内外に代表する機関であり、210人の会員と約2000人の連携会員によって職務が担われています。

 日本学術会議の役割は、主にT政府に対する政策提言、U国際的な活動、V科学者間ネットワークの構築、W科学の役割についての世論啓発です。

資料引用部詳細

九州電力と原子力規制委員会のやり取り詳細

○更田委員長代理

従来のように、全ての炉が一律に同じような安全性を備えているという説明をする時代

は終わったと、一種のそれは安全神話であったろうと思います。今後は、各サイト、各炉のリスクの違い、安全性の違いを公にしていく。これが安全性向上、FSAR(発電用原子炉施設の安全性向上のための評価)の仕組みの中でも重要なポイントの1つであろうと思いますけれども、九州電力の場合は、例えば、サイトであれば、2つのサイトを持っている。

それぞれの安全性の違いについて話をしていく用意は、覚悟はあるかというのが1つ目の質問です。

2つ目はちょっと具体的なのですが、今、どの炉も、使用済燃料プールに貯蔵している燃料がどんどん増えてきている。やはりこれ、実態としては、PWRの場合は使用済燃料プールが比較的低い位置にあるとは言うものの、ああいった形で使用済燃料プールの貯蔵量を増やしていくよりは、乾式のキャスクに入れて、それこそ、その辺に転がしておくというと言葉は悪いですけれども、その方がまだ更に安全性は高いのではないか。今、使用済燃料プールの持って行き先そのものがなかなか難しい状態にありますので、地震であるとか、火山活動であるとかといった自然現象を考えた上では、キャスクの調達も時間のかかる話ではありますので、そういった乾式キャスクに入れて使用済燃料を保管していくということに関して、意図なり、計画なりがあれば教えていただきたいのですが。

○瓜生九州電力株式会社代表取締役社長

各2つのサイトの違いというのは、1つは、当然、周辺の自然環境が違うというところが一つあります。川内原子力発電所は、ちょうど北側の卓越風が吹く背後に山があるが、玄海原子力発電所にはそれがなくて、非常にのっぺらであることと、三方を海に囲まれているというのが玄海原子力発電所の大きなウィークポイントと言えばウィークポイントであろうと私は思っています。具体的に、FSAR等をやりながら、2つのサイトの安全性の違いをこれからしっかり明確にしていきたいと思いますが、ただ私の個人的な思いでは、そういう大きな差があるだろうなと思っています。ただ、それぞれの地点のいいところもあれば、ウィークポイントもあるという、それは当然そうだろうと思っていますので、それは明確にしていく必要性がある。リスクコミュニケーションの中でもそういうのが明確になってくるのだろうと私は思っています。

それから、2つ目の乾式キャスクについては、当然、我々も、実は具体的な計画はありませんけれども、今後は乾式キャスクについても考慮すべきだという思いはございます。

○田中委員長

私からも、使用済燃料の扱いについては、ちょっとお願いベースになるのかもしれませんけれども、結局、福島第一原子力発電所で国民に重大な不安を与えたし、実際のリスクにもなったのが使用済燃料だったと思います。幸いにして、今、4号機にあった千数百体はほぼ下に下ろすことができたわけですけれども、一時は大変なパニック状態になりました。一方で、福島第一原子力発電所は御承知のように、乾式キャスクにもかなりの量が入っていて、津波をもろにかぶって、建物は壊れたけれども、中の燃料も容器も健全であったと、これも事実なのです。それは当然、ああいう乾式の輸送容器であれば、落下試験とか、火災試験とか、いろいろなことに耐えられるように、非常に頑丈にできているわけです。

だから、我が国ではなかなか進んでいないのですが、国際的に見ても、一定程度冷却が進んだものはプールから出して、乾式容器に入れてサイト内に貯蔵する方が、安全上も、これからセキュリティの問題もありまして、そういうことが一般化しています、ヨーロッパとかを見ますと。そういう点で日本は少し遅れていますので、九州電力も原子力発電所を相当長く運転して、相当の使用済燃料がたまってきておりますので、それは積極的に、安全確保とセキュリティの面から、是非取り組んでいただきたいというのが私からのお願いです。

○瓜生九州電力株式会社代表取締役社長

おっしゃる意味は非常によくわかりますので、今、我々も乾式の、まだキャスクをどこに置くとかまでいきませんけれども、そういった粗々の思いはございますので、ここでは具体的には申し上げられませんけれども、そういう方向性も考えております。

ただ、1つだけ申し上げますのは、今、玄海原子力発電所の炉については、SF(使用済燃料)の使用済燃料プールを少し整理して、もうちょっと増やしたいというお願いも、実は申請もさせていただいたところで、今後、炉を廃炉にするとかになったとき、SFをこちらで受け入れる必要があるので、その後、緊急避難的に、一時、SFを受けるスペースも増やしていただければという思いもございます。

○田中委員長

今、我が国の状況では、そう簡単にスペントフューエルがどこかに行くというような状況は、すぐには期待できないということですし、元々、その辺については我々の規制も、貯蔵キャスクというものについての考え方をもう少し議論する必要があろうと思ってはいます。ただ、こちらの方はどうしても長期になると思います、これは。客観的に考えると。

ですから、是非そういった点は、いずれそういう時期が来るかもしれませんけれども、規制という段階ではありませんけれども、是非福島第一原子力発電所の事故の教訓も踏まえ、PWRとBWRとは場所が違うということはありますけれども、是非、そういう方向で、社長のイニシアチブでやっていただければありがたいと思います。

そのほか、ございますか。中村委員、どうぞ。

高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会暫定保管に関する技術的検討分科会

高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会暫定保管に関する技術的検討分科会(第2回)(pdf) 2014年2月17日

1−5ページ

(乾式貯蔵の専門家、三枝利有特任連携会員(電力中央研究所首席研究員)による報告)

(2)ガラス固化体及び使用済み燃料の安全な保管(貯蔵)に関する技術の現状と課題

三枝委員より、「使用済み燃料の貯蔵に関する国内外技術の現状」と題し、 資料2に基づいた講演があった。

○使用済み燃料の乾式貯蔵は1970年代初頭から行われている(湿式貯蔵は1950年代から行われていた)。実施国は、英、ハンガリー、カナダ、米、独等である。

○米国の使用済み燃料管理の状況であるが、ユッカマウンテン計画の中止に伴い、ブルーリボン委員会での検討、エネルギー省での検討を経て、2021年に中間貯蔵施設(パイロット施設)の運転開始、2025年に大容量中間貯蔵施設の運転開始、2026年に処分施設の立地場所選定、2048年に処分施設の運転開始が計画されている。

○米国内の貯蔵施設は一般認可済みが54、サイト固有認可済みが15、さらに一般認可申請が8件予想されている。なお、当初の貯蔵施設の許認可では認められた貯蔵期間が20年であったため、許認可更新を行った施設がある。

○米国での近年の注目点は、上記の許認可更新の件である。メリーランド州カルバート・クリフ原発での許認可更新のための貯蔵経年変化検査の様子を紹介する。ステンレス鋼の応力腐食割れ(SCC)が主な懸念となる。これまでの検査では、SCCは発生していないことが確認されている。なお、前回の分科会で、検査の手法についてのご質問があったが、この検査では代表検査が行われ、全数検査は不要という考えであったことを申し添える。

○米国では使用済み燃料長期貯蔵の研究が進められている。エネルギー省のプログラムでは、人材育成も兼ね、大学等に資金を拠出して研究開発が行われているものもある。また、NRC(米原子力規制委員会)も独自に研究開発資金を拠出して研究プログラムを実施している。

○これらの研究のうち、ESCPと呼ばれるエネルギー省の研究プログラムでは、長期貯蔵中のシステムの健全性実証、長期貯蔵後の回収・輸送の技術開発、高燃焼度燃料の輸送技術開発などがテーマとなっている。年2回程度、全体会議が開かれ、これには日本からも研究者が参加している。なお、詳しい研究テーマはスライド資料に表を示した。

○また、米国では長期貯蔵と地層処分のコスト比較試算の研究も行われている。米国では現在までに約7万トンの使用済み燃料が35州の80のサイトで貯蔵されている。2055年までに蓄積すると見込まれるものも含め、計15.3万トンの使用済み燃料を貯蔵または地層処分した場合のコストの試算例が資料の表である。絶対値はあまり参考にならないかもしれないが、比較という意味で相対的に数字の違いを見ていただきたい。

○続いてドイツの状況を紹介する。1992年から原子力発電所敷地外の集中貯蔵施設が運転開始している。ただ、ドイツでは使用済み核燃料の輸送に対する公衆の反対が強くて実現せず、結局は再処理高レベル放射性廃棄物の輸送・貯蔵にとどまってしまっている。

○ドイツ国内の貯蔵施設の分布は図表を参照されたい。貯蔵方式としては、トンネル方式金属キャスク貯蔵、地上の金属キャスク貯蔵が見られる。

○ドイツにおける使用済み燃料の長期健全性研究の一例を紹介する。ヘリウムガスの発生量を計算したところ、燃焼度の上昇及び経過年数につれてヘリウム生成量も上昇することが明らかになった。また、特にMOX燃料の使用済み核燃料でその傾向が大きいことがわかった。ドイツの研究機関(GRS)はこの現象が長期健全性に与える影響について警告しているが、フランスの原子力庁(CEA)が同様の研究を行い、影響は無視できると結論づけている。こうした見解の相違があることは日本でのMOX燃料貯蔵の際にも注意すべき点であろう。

○ドイツでは、貯蔵施設に対する10年ごとの定期安全レビュー(PSR)を導入する勧告案が出されている。パイロットケースで試行が行われ、問題点を修正し、勧告案を改善することとした。

○続いてスウェーデンでの使用済み燃料について紹介する。スウェーデンではオスカーシャム原発に隣接する地下にCLABと呼ばれる湿式の集中中間貯蔵施設が存在する。この施設の計画時には乾式貯蔵の技術が確立していなかったため、プールによる湿式貯蔵が選ばれたと聞いている。

○日本の状況についてである。東海原発(金属キャスク貯蔵)ならびに福島第一原発(敷地内プールならびに金属キャスク貯蔵)に貯蔵施設が存在する。金属キャスク貯蔵については法令、学会標準・規格類が整備されている。また、青森県むつ市に敷地外金属キャスク貯蔵施設が完成し、2015年にも運用開始の予定である。なお、コンクリートキャスク貯蔵は学会標準・規格のみの整備となっている。

○IAEAの動向について概説する。IAEAでは、貯蔵の指針・技術文書が作成されている。資料に列挙したような文書類が整備されつつあり、また、福島事故後の勧告も取り入れる議論が行われている。

○この中で本分科会に関連する課題として、「不確実な貯蔵期間の課題」が挙げられている。貯蔵の安全性、経年変化対策、立地と設計、規制上の考慮、政策上の考慮などについて、考慮すべき課題が列挙されている。また、社会的受容、制度的管理、財政コストの問題といった非技術的な因子が安全性やセキュリティの維持以上に重大な課題であることが指摘されている。

○なお、IAEAにおいても国際共同研究が行われており、日本からも関係機関が参加している。必要があれば、それらの内容も紹介できる。

○また、OECDにおいて、昨年5月に長期暫定貯蔵施設の安全性についてのワークショップが開催され、勧告がなされた。そこでは、「長期貯蔵」は「再処理」か「処分」までの中間工程であり、それ自体を政策とすべきではないこと、長期貯蔵技術の確立に必要な研究を行うべきこと、非技術的な側面にも配慮すべきことが盛り込まれている。

○以上をまとめると、使用済み燃料政策は各国により異なるものの、長期貯蔵の実施が世界的な傾向であること、ただし、貯蔵方式は各国の事情により異なること、一方で、貯蔵期間は共通して20から60年程度に設定され、米国では貯蔵期間の更新も行われ始めたことが挙げられる。

○最後に、本分科会の審議に参考になると思われる事柄として、長期貯蔵のシナリオについて補足する。米国(NRC)では、短期、長期、無期限の貯蔵というようなフェーズを用意してシナリオを検討している。また、カナダでは、使用済み燃料管理選択肢(地層処分、敷地内貯蔵、敷地外集中貯蔵、順応型段階的管理)間のコスト比較を1000年程度の期間で行った事例がある。それによると、地層処分はコストが150年後ぐらいには上げ止まるのに対し、貯蔵では階段状に上昇し続けることがわかる。これは、貯蔵施設は一定期間ごとに改修が必要であるからである。また、最初はこの3つの選択肢で検討し、最後に順応型段階的管理が追加された。この場合は地層処分オプションよりも少し高くなったところで上げ止まるとされている。

【質疑応答】

○「貯蔵期間」、「長期貯蔵」といった言葉が出ているが、これは日本で言う「中間貯蔵」の時間軸を単に長くしたものと考えてよいのか。我々の「回答」で出した「暫定保管」との異同はどうか。

○現実的に海外を見ていると、最初に決めた貯蔵期間の間に、再処理あるいは最終処分という次の段階が間に合わず、どうしても貯蔵期間の更新が必要になるという経緯が共通してみられる。最後に参考としてお見せした1000年程度のコスト比較はあくまでも試算であり、政策文書そのものではない。政策形成・決定のための参考資料である。なお、DOEの長期貯蔵シナリオは政策文書そのものである。

○NRCの長期貯蔵のシナリオを見せていただいたが、昨年発表されたものだとのことだった。我々の「回答」が意識されたのか。それとは関係がないのか。

○背景として、使用済み燃料の安全な管理なしには原子力発電所の運転を認めるべきではない、という訴訟があり、NRCは安全な貯蔵・処分は可能という声明を出している。このような経緯があり、これに関連したプロアクティブな政策対応としてこのような文書がつくられたと理解している。

○これは合計120年間の貯蔵を決定しているということなのか。

○それを政策として定めているのではなく、120年間は貯蔵可能であるとNRCが判断している、という趣旨だ。

○また、先ほど20年の貯蔵期間を更新という話があったが、プールから出して乾式貯蔵に移ってから20年と言うことか。

○その通りだ。

○地下の保管施設はスウェーデンとドイツだけか。また、地下の保管方式は多様にあるのか。

○地下の施設はおっしゃるようにその二つだけだ。保管方式は多様に見えるかもしれないが、実際はそうではなく、ここに示した2種だけだ。

○2010年の Waste Confidence Rule については、環境団体からクレームが付き、それ自体が現在見直されつつあり、その結果が出る局面にあると記憶しているが、いかがか。

○NRCは訴訟を受けるなどして揺れ動いている。この2013年の文書はまだドラフトだが、Waste Confidence という言い方自体を取りやめるという内容になっている。おっしゃるように、出された批判に応えつつあるということなのだろう。それ以上の状況は存じ上げない。

○ブルーリボン委員会の勧告後に出されたスケジュールの紹介があったが、これはあくまでもエネルギー省がこう進めたいという方針を示したものであって、決定した目標年次ではないと理解している。

○数十年といった期間であれば地層の安定性はあまり論点にならないだろうが、1000年といった期間が話に上る場合には、そうした面の評価等も行われているのか。

○NRCは認可の更新の際に、安全な貯蔵が継続できるので更新を許可するのだ、という言い方をしているが、そうした長期の場合については存じ上げない。

○先ほど、OECDの文書で、長期貯蔵をエンドポイントとするべきではない、あくまでも再処理や最終処分が政策だ、という言い方になっている。我々の回答も貯蔵は期間を区切ると言っているのだから、矛盾はしないが、相当の長期間を想定に入れているので、そうすると意味合いが微妙になってくる。このあたりはいかがか。

○フランスで15年、スイスで10年のモラトリアム期間を設定したが、無期限のモラトリアムというのは国際的には無責任という判定を受ける可能性がある。

○こうした点について「回答」をまとめた立場として今田委員のご意見はいかがか。

○中間貯蔵の期間をずるずると延ばすという論理で対処すること自体が問題だと、我々は「回答」で示した。今回紹介されたような事例にはそうした理念はあるのか。そのような理念がなければ、社会から批判される結果になる。延ばすことには延ばすことの理念、哲学が必要であろう。

○いきなり100年といった長期間の単位で認可するという事例はないと今日のお話で伺ったが、他国での認可期間は皆20年なのか。

○40年というのが見られる。

○むつ市の施設は50年と言うことで審査だったと記憶するが。

○その通りだ。

○先ほどのカナダの試算では、300年ごとに施設改修(リファービッシュ)とあったが、それは300年ごとに改修すればよいということなのか。

○実際には劣化の度合いに応じて対処するということであろう。

○なお、むつ市の施設については、50年経過後の更新は行わないという地元との約束があったと記憶している。

高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会暫定保管に関する技術的検討分科会(第7回)平成26年5月29 議事要旨(pdf)にも三枝特任連携会員の説明がある。

ただし、以下の部分の「むつ市の施設では」とあるのは、「福島第一の仮保管施設」ではの誤記。

いくつか確認したい。三枝委員の担当部分で、福島第一と東海第二のキャスクが貯蔵専用だというのは初耳だった。輸送兼用ではないのか。

:貯蔵専用だ。なお、むつ市の施設では、20基までは貯蔵専用で、それ以降は貯蔵・輸送兼用だと聞いている。


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