核情報

2014. 7. 4〜

欧米専門家等、安倍首相の「プルトニウム最小化策」実現要請

米国プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル公共・国際問題名誉教授と、ドイツで再処理及び使用済み燃料乾式貯蔵キャスク開発に関わった経歴を持つクラウス・ヤンバーグ博士が、6月30日、安倍首相等に書簡を提出し、核物質最小化政策を実現するよう呼びかけました。安倍首相は、3月の「核セキュリティー・サミット」で、プルトニウムの最小化を各国に呼びかけると共に、「プルトニウムの回収と利用のバランス」の考慮を確約しました。二人は、韓国使用済み燃料公論化委員会に招聘された機会を使って来日しました。

二人を含む欧米の5人の専門家の署名した書簡は、年間8トンの生産能力を持つ六ヶ所再処理工場の運転を、首相の方針に従い、少なくとも日本の保有する約45トン(核兵器5000発分以上)が大幅に削減されるまで開始しないようにと要請するものです。

目次

  1. 二人の略歴
  2. 政府宛公開書簡日本語版
  3. 政府宛公開書簡英語版
  4. 記者会見用背景資料

参考


二人の略歴

●フランク・フォンヒッペル(Frank von Hippel)

プリンストン大学公共・国際問題上級研究物理学者・名誉教授。「核分裂性物質に関する国際パネル」(IPFM)共同議長

1993─94年、ホワイトハウス「科学・技術政策局」国家安全保障担当次官として、ロシアの核兵器物質セキュリティー強化のための米ロ協調プログラム策定に関わる

●クラウス・ヤンバーグ(Klaus Janberg)

ドイツ出身・フランス在住。ドイツ工学者、フランス物理学者。核技術コンサルタント。独GNB(原子力容器社)の社長かつGNS(ニュークリア・サービス社)の取締役として使用済み燃料輸送・貯蔵兼用のキャスク技術の開発を指揮。現在仏在住



政府宛公開書簡日本語版

公開書簡

核セキュリティーと核兵器利用可能物質(プルトニウム及び高濃縮ウラン)の最小化

総理大臣 安倍晋三様、環境大臣 石原伸晃様、外務大臣 岸田文雄様、経済産業大臣 茂木敏充様、文部科学大臣 下村博文様、原子力委員会委員長 岡芳明様、原子力規制委員会委員長 田中俊一様

2014年6月30日

大臣及び委員長の皆様

プルトニウムのセキュリティーと使用済み燃料管理に関心を持つ欧米の専門家グループとして書簡を差し上げます。私たちは、長年、日本の原子力政策を巡る議論に関連して提言をしてきました。

3月にハーグで開かれた核セキュリティー・サミットにおいて安倍首相が発表された東海村の「高速臨界炉(FCA)」に警備体制の不十分な形で置かれているプルトニウムと高濃縮ウランを厳重な保管と処分のために米国に送るという日本政府の決定に拍手を送ります。私たちはまた、「核物質の最小化と適正管理」を核セキュリティー「サミットの議題の中核」と位置づけた首相の表現、そして、「更なるHEU[高濃縮ウラン]とプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励」した米国大統領との共同声明を高く評価します。

しかし、私たちは、日本がその核セキュリティー・サミットに対する国別報告書において、「余剰プルトニウムは持たない」との日本の約束を「利用目的のないプルトニウム(のreserve蓄え)を持たない」とする日本原子力委員会による2000年の再定義を繰り返したことを憂慮しております。これは、元の1991年の原子力委員会の「核燃料リサイクル計画の推進に当たって必要な量以上のプルトニウムを持たない」との原則よりずっと弱いものです。

2000年の文言は、単に将来の利用の計画を発表すれば、それにより、その計画がたとえ信憑性を欠くものであっても、いかなる量の分離プルトニウムをも蓄積するのを正当化することができるようにしています。

国別報告書によれば、毎年「電気事業者等がプルトニウム利用計画を公表して」から再処理が許可されており、その利用計画の「妥当性を我が国の原子力委員会が確認してきている」とのことです。

しかし、2003年に原子力委員会によって導入されたこの利用計画発表に関する規定は、六ヶ所再処理工場で分離されるプルトニウムについてのみ適用されるもので、ヨーロッパに溜まっている日本の分離プルトニウム――現在約34トン――を無視しています。そして、原子力委員会の方針は、プルトニウムの利用開始時期の詳細を公表するよう定めていますが、現在は、原子力委員会は、日本のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場の運転開始後にプルトニウム利用が始まるとのみ述べている利用計画を容認しています。この工場の完成予定は延期され続けており、最新の予定は、2017年10月となっています。

2010年までにMOX燃料を使用する発電用原子炉を16~18基にするとの電力会社の長年の計画(1997年以来)は、実現しませんでした。プルトニウムを燃料とする「もんじゅ」を運転するとの日本原子力研究開発機構の計画も実現していません。現在日本は次のような状況にあります。

  • 運転中の発電用原子炉が1基もない。
  • 1999年以来、わずか2トンのプルトニウムをMOXのかたちで照射することに成功しただけであり、日本国内とヨーロッパに溜まっている日本のプルトニウムは、約45トン(核兵器5000発分以上)に達している。
  • MOX燃料製造工場を持っていない。

安倍首相が述べたとおり、このような核兵器利用可能物質の不必要な生産と蓄積は、核セキュリティー・サミットの「議題の中核」です。それにもかかわらず、日本原燃は、六ヶ所再処理工場で更なるプルトニウムの分離をできるだけ早く始めることを計画しています。日本原燃の公表している計画では、今年の10月までに安全対策用の追加工事を終え、原子力規制委員会の承認と関連自治体の同意を得次第、再処理を開始するとのことです。

六ヶ所再処理工場で分離されたプルトニウムは、六ヶ所MOX燃料製造工場が運転開始となるまで蓄積され続けることになります。六ヶ所村と東海村に酸化物の形のプルトニウムが5.4トンあり、MOX工場の試験にはこれを使うことができます(MOX工場が運転されるようになるという保証はありません)。英国のMOX燃料製造工場は、これを運転しようとの10年間にわたる試みの末2011年に放棄されました。米国が、その余剰プルトニウムの処分用に建設しているMOX工場はコストがあまりにも大幅に上がったため、エネルギー省はその放棄を検討しています。日本はこのような問題と無縁でいられるわけではありません。例えば、六ヶ所再処理工場の商業運転は10年以上遅れています。

日本の大量のプルトニウムの問題に対処するためのもっと現実的な計画を立てる必要があります。既存のプルトニウムの処分に関する信憑性のある計画が存在しない状態で、これ以上のプルトニウムの分離を許可すれば、日本政府は大変な過ちを冒すことになります。このため、私たちは、東京で2013年12月5日に開かれた朝日・プリンストン共催シンポジウムの後に出したステートメント(添付)で、次のように呼びかけています。

「すくなくとも、日本は、分離済みプルトニウムの保有量が最小限の実施可能な作業在庫(約1年分の消費量)に減るとともに、六ケ所再処理工場で分離されるプルトニウムを直ちに消費する態勢が整うまで同工場を運転すべきではない。日本はジャストインタイムの在庫管理のパイオニア国である。このアプローチを分離済みプルトニウムに適用すべき理由がセキュリティーと経済性の両面で存在する。」

日本の極めて高くつく使用済み燃料再処理政策は、日本の原発の一部の使用済み燃料プールが約4年で満杯になってしまうとの予測(2011年3月11日以前)によって正当化されてきました。しかし、再処理工場へ使用済み燃料を送るというのは、この問題に対処する唯一の方法ではありません。実のところ、他のほとんどの国は、プールで少なくとも数年間冷却された使用済み燃料を乾式貯蔵に移すというかたちでこの問題に対処しています。日本は、事故以前に、福島第一原子力発電所と東海第二原子力発電所でこれを実施していました。経済産業省が安全性の理由から、乾式貯蔵をする原子力発電所がもっと増えるよう奨励する計画だとの最近の報道を興味深く読みました。これは、時期尚早のかたちでさらにプルトニウムを分離することに関連したリスクやコストを回避しようとする場合、使用済み燃料の管理の上で必要な柔軟性を日本に提供することになるでしょう。

私たちは、また、経済産業省の総合資源エネルギー調査会地層処分技術ワーキング・グループの委員長が、廃棄物処分の観点からいうと再処理は好ましくないと最近発言していることを歓迎します。これが日本の電力会社に使用済み燃料の再処理を義務付けている政府の規定の再考に繋がるかもしれないと私たちは期待しております。原子力発電をしている24の非核兵器国のうち未だに再処理をしているのは日本だけです。核兵器国の中では、英国が再処理放棄の決定において米国の仲間入りをしました。

私たちは、これらの重要な問題について意見交換をする機会を歓迎します。私たちのうちの二人(ヤンバーグとフォンヒッペル)は、6月30日と7月1日東京を訪れています。

スティーブ・フェター(Steve Fetter) メリーランド大学副学長・公共政策教授。元ホワイトハウス科学技術政策局次長(2009~12年)

クラウス・ヤンバーグ(Klaus Janberg) 核技術コンサルタント。GNS社CEOとして、ドイツその他の多くの国で中間貯蔵に使えるキャスク開発・生産を指揮。

ゴードン・トンプソン(Gordon Thompson) 放射線リスク低減専門家。米国の資源・安全保障問題研究所(IRSS)所長。

フランク・フォンヒッペル(Frank von Hippel) プリンストン大学公共・国際問題上級研究物理学者・名誉教授。「核分裂性物質に関する国際パネル」(IPFM)共同議長。

ウィリアム・ウォーカー(William Walker) 英国のセントアンドルーズ大学国際関係名誉教授。


添付文書

2013年12月5日朝日新聞・プリンストン・シンポジウム
「使用済み燃料の管理:再処理か貯蔵か」(東京)
(邦題:「核燃料サイクルを考える~日本の選択はどうあるべきか」)
外国人参加者による提言

使用済みプルトニウムは、民生用のものであると軍事用のものであるとにかかわらず、核兵器製造に使用することができる。日本は現在国内に分離済みプルトニウムを10トン保有している。これは、核兵器1000発分以上に相当し、中国が核兵器用に分離した量の5倍に達する。日本は、さらに34トンのプルトニウムを英仏に保管している。六ケ所再処理工場は、これに加えて年間8トンを分離する設計になっている。

 日本の経済産業省が繰り返す主張とは異なり、プルトニウムを分離して軽水炉の燃料としてリサイクルすることは、原子力発電所で生じる放射性廃棄物の危険性を大幅に下げたり、処分を簡単にしたりはしない。使用済み燃料を再処理してその廃棄物を処分することは、使用済み燃料を中間貯蔵した後に直接処分するのに比べ、原子力発電のバックエンド・コストを倍増する。これらの点は、日本原子力委員会の核燃料サイクルに関する小委員会が2011年11月の報告書で明らかにしているものである。

 再処理をする唯一の非核兵器国として日本は、核兵器を取得することに関心を持つ国々にとって、国際的に認められた正当な活動だと指し示すことができる前例を作っている。さらに、分離済みプルトニウムは、核テロを起こそうとするものにとって標的となる。

 私たちは、日本がプルトニウムの分離を止め、米国その他の国々とともに全世界におけるプルトニウムの分離に反対するようになることを切に願っている。少なくとも日本は、1997年に合意された「国際プルトニウム指針」が明言している「合理的作業在庫の需要を含み、可能な限り早期に受給をバランスさせることの重要性」を真摯(しんし)に捉えるべきである。これは日本自身が策定に寄与した指針である。実際、日本は、同指針に従ってIAEAに送付した1997年12月5日付の書簡において、「我が国は・・・核燃料サイクルを推進するに当たっては、核拡散に係る国際的な疑念を生じないよう核物質管理に厳重を期すことはもとより、我が国において計画遂行に必要な量以上のプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持」すると誓約している。

 茂木敏充・経済産業相は12月6日――私たちの朝日・プリンストン・シンポジウムの翌日――の記者会見で、2030年代末までに原子力ゼロを目指すと同時に六ケ所再処理工場の商業運転開始計画を続行するという前政権の政策の矛盾を批判し、「じゃあプルトニウムバランスどうなるんですか?」と問いかけた。

 茂木大臣の念頭には、オバマ大統領が2012年3月にソウル核セキュリティー・サミットのために韓国を訪れた際に語った次のような言葉があったのかしれない。「分離済みプルトニウムのような、我々がテロリストの手に渡らぬようにしようと試みているまさにその物質を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない!」

 茂木大臣が懸念しているプルトニウムのアンバランスをもたらさないようにするためには、日本は、そのプルトニウムの量を最小限のレベルに減らすまで六ケ所再処理工場の運転を開始すべきではない。日本が保有する40トン以上のプルトニウムのうち、福島第一原発事故の前の12年間で消費することができたのはわずか2・5トンであるという事実からすると、たとえ全力で取り組んだとしても、数十トンのストックを数トンのレベルに減らすのには10年以上かかると見て良いだろう。

 核不拡散に対する日本のコミットメントについての信頼を周辺地域及び世界全体において高め、また、原子力の安全性を改善するとともに、日本における原子力発電のコストを下げるために、私たちは以下のことを提言する。

 1、分離済みプルトニウムの保有量を最小限にすること。すくなくとも、日本は、分離済みプルトニウムの保有量が最小限の実施可能な作業在庫(約1年分の消費量)に減るとともに、六ケ所再処理工場で分離されるプルトニウムを直ちに消費する態勢が整うまで同工場を運転すべきではない。日本はジャストインタイムの在庫管理のパイオニア国である。このアプローチを分離済みプルトニウムに適用すべき理由がセキュリティーと経済性の両面で存在する。具体的には日本は次のことをすべきである。

  • ●英国にある約18トンの日本の分離済みプルトニウムの将来について英国と交渉すること。英国エネルギー・気候変動省は2011年に、「商業的条件が英国政府にとって受け入れられるものであれば」とした上で、英国にある日本のプルトニウムの所有を英国に移しても良いと申し出ている。
  • ●フランスからの混合酸化物(MOX)燃料輸送については、到着次第原子炉に装荷するための具体的な計画が日本の電力会社側で整わない限り実施しないようにすること。現在、日本の五つの原子力発電所で、フランスから送られたMOX燃料が、保安態勢の不十分な使用済み燃料用プール内に保管されている。このMOX燃料の中には合計2トン近くのプルトニウムが入っている。これは核兵器200発分以上の量である。これらの原子力発電所の中には、MOX燃料が12年間も保管されたままになっているところもある。
  • ●米国とともに、MOX燃料使用に代わるプルトニウム処分方法を研究すること。米国は、冷戦時代に分離された余剰プルトニウム34トン以上を処分するためのMOX燃料プログラムを進めてきたが、多額のコスト超過と、MOX燃料使用に対する電力会社側の抵抗に直面している。このため米国は現在、地下深くに直接処分するための様々な代替オプションを検討している。

 2、各原子力発電所で乾式貯蔵施設を設置すること。福島第一における事故は、空冷が可能なレベルまで冷えた使用済み燃料については、乾式貯蔵の方がプール貯蔵よりも安全であることを劇的な形で示した。2012年9月、新設された原子力規制委員会の田中俊一委員長は、就任記者会見において、プールで5年以上冷却された使用済み燃料は乾式貯蔵に移すべきだと提言した。そうすれば、新たに取り出された燃料をプール内で、より安全な形状で貯蔵することが可能になる。また、六ケ所への使用済み燃料の搬出に代わる道を提供することにもなり、六ケ所再処理工場を運転する必要がなくなる。六ケ所再処理工場の受け入れプールにある3000トンの使用済み燃料も、乾式貯蔵に移すことができる。むつ貯蔵施設での貯蔵も考えられよう。

 3、未照射のMOX燃料に入っているものを含め、分離済みプルトニウムのセキュリティーを強化すること。20年前、米国科学アカデミーの報告書が、分離済みプルトニウムの貯蔵及び輸送は、米国が核兵器に提供しているのと同等のセキュリティー・レベルで実施するよう勧告している。これは、今日、日本の分離済みプルトニウムに適用されているものよりもずっと高いセキュリティー基準である。

 4、六ケ所再処理工場及び東海再処理工場で貯蔵されている大量の高レベル再処理廃棄物をガラス固化する――つまりガラス内へ埋め込む――こと。事故あるいはテロ行為によってこの廃棄物の相当量が大気中に放出されると、日本の広範な部分が汚染しかねない。ガラス固化をジャストインタイム・ベースで実施すれば、危険な高レベル廃棄物の在庫量を最小限にするとことができる。

 5、使用済み燃料を地下深くで直接処分するための梱包(こんぽう)及び処分地選定基準に関する研究を始めること。使用済み燃料の乾式キャスク貯蔵は、プールよりは安全な中間貯蔵方法である。しかし、100年程度の期間が経つとキャスク貯蔵は劣化を伴う。ガラス固化された再処理廃棄物の地上での貯蔵の場合と同様である。500メートルあるいはそれ以上の深さの適切な地層での処分を長期的な目標とすべきである。

  • スティーブ・フェター(Steve Fetter) メリーランド大学副学長・公共政策教授。2009~2012年、ホワイトハウス科学技術政策局次長
  • クラウス・ヤンバーグ(Klaus Janberg) 核技術コンサルタント。GNS社CEOとして、ドイツその他の多くの国で中間貯蔵に使えるキャスク開発・生産を指揮。
  • ゴードン・トンプソン(Gordon Thompson) 放射線リスク低減専門家。米国の資源・安全保障問題研究所(IRSS)所長。
  • フランク・フォンヒッペル(Frank von Hippel) プリンストン大学公共・国際問題名誉教授。「核分裂性物質に関する国際パネル」(IPFM)共同議長。
  • ウィリアム・ウォーカー(William Walker) 英国のセントアンドルーズ大学国際関係名誉教授

政府宛公開書簡英語版


記者会見用背景資料

  1. 核セキュリティー・サミット
  2. プルトニウム管理
  3. 余剰プルトニウムを巡る表現の変遷
  4. 利用計画公表 2003年8月5日原子力委員会決定『我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について』
  5. 「日本のプルトニウム、拡散懸念小さいと原子力委・岡委員長」核情報より
  6. ウランとプルトニウムの混合酸化物のIAEA保障措置上の扱い

1. 核セキュリティー・サミット

●総理ステートメント

第3回ハーグ核セキュリティ・サミット 安倍総理 サマリー・ステートメント: 外務省

これらの核物質[高濃縮ウランや分離済みプルトニウム]の最小化に取り組んでいきます。また、プルトニウムについては、「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持します。これを実効性あるものとするため、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮します。

●日米共同声明(和文仮訳)

世界的な核物質の最小化への貢献に関する日米首脳による共同声明:外務省

プルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励する。

●国別報告(和文仮訳)

2014年ハーグ核セキュリティ・サミット 国別報告書 日本: 外務省

また,唯一の戦争被爆国として日本は・・・軍事用核物質について,少なくとも民生用核物質と同程度のセキュリティが保たれるべきであると考える。核テロが起これば,核兵器が使用された場合の壊滅的な人道面での結末と同様の事態を招きかねず、そのような事態を生じさせないためにも,あらゆる核物質に関して核セキュリティを強化する必要がある。・・・プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮する。・・・

2. プルトニウム管理

 我が国の原子力利用は,原子力基本法に則り,厳に平和の目的に限り行われてきている。プルトニウムについては,「利用目的のないプルトニウム,すなわち余剰プルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持する。この政策を具体化するために,プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮する。プルトニウムについては,電気事業者等がプルトニウム利用計画を公表して,その妥当性を我が国の原子力委員会が確認してきている。また,今後ともプルトニウムの適切な管理を徹底する。

 なお,日本は,NPT(核兵器不拡散条約)を遵守し,IAEA(国際原子力機関)の保障措置を受け入れ,我が国における平和的原子力活動に軍事転用がないとの保証を得つつ,全ての原子力活動を行っている。その上で,特にプルトニウムに関しては,その利用の透明性の向上を図ることにより国内外の理解を得ることが重要であるとの認識に基づいて,1994年から毎年「日本のプルトニウム管理状況」を公表してきている。直近では2013年9月に「平成24年末における日本の分離プルトニウム管理状況」を公表している。

●ハーグ核セキュリティー・サミット・コミュニケ(和文仮訳)

ハーグ核セキュリティ・サミット コミュニケ:外務省

我々は,国家がそれぞれの国内的要請と一致する形で,HEU[高濃縮ウラン]の保有量を最小化し,また分離プルトニウムの保有量を最小限のレベルに維持することを奨励する。

3. 余剰プルトニウムを巡る表現の変遷

核情報 MOX・プルサーマルの基礎知識より(出典URL等あり)

4. 利用計画公表 2003年8月5日原子力委員会決定『我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について』

「プルトニウムの利用目的を明確に示すことにより、より一層の透明性の向上を図る」ため、「電気事業者はプルトニウム利用計画を毎年度プルトニウムの分離前に公表」し「原子力委員会は、その利用目的の妥当性について確認」し「電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的(利用量、利用場所、利用開始時期、利用に要する期間のめど)を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表する」

*電気事業者等の公表内容

プルトニウム利用計画の公表の目的が透明性の一層の向上にあることを踏まえ、公表される内容は以下を含むことを期待する。なお、電気事業者等は、事業の進捗に応じて内容をより詳細なものとしていくことが望ましい。

  • ○当該年度の再処理予定量及びプルトニウムの回収見込み量
  • ○前年度末のプルトニウム保管量の目途
  • ○再処理したプルトニウムの利用場所(発電所名又はプラント名)の目途
  • ○再処理したプルトニウムの年間利用目安量(トン/年)
  • ○利用場所ごとの利用開始時期及び利用に要する期間の目途

◆六ヶ所再処理工場回収プルトニウム利用計画(平成 22 年度)電気事業連合会 (2010年9月17日, pdf)

「利用開始時期及び利用に要する期間の目途」、各社とも「平成27年度以降約XX年相当」

5.「日本のプルトニウム、拡散懸念小さいと原子力委・岡委員長」核情報より

第19回原子力委員会 定例会議 2014年6月10日録音(議事録未掲載)

書き方は少し分かりにくいと言うこと。

まあ、炉内に入ったものは、今までは全部照射済み、[参考1の]一番右の欄は基本的には照射済みのものですね。ですから、基本的に核拡散上の懸念はないものだと。だが今回は、一遍入れて照射せずに出したものが出てきた。だから、それをもうちょっと分かるように。そして核拡散の懸念と言う意味では分かるようにと。

ただ、まあ、MOX燃料になってますので、分離されたあれではないですから、日本の分離されたプルトニウムも、混合酸化物でウランと混じっていますので、核拡散という観点で言えば、燃料に加工されたものは、又戻すまでにずいぶんかかりますし、それから、プルトニウムとウランは混合した状態で分離されていますから、そう言う意味でも、核拡散上の懸念は、少しステップがあると言うようなことは事実なんですけど、まあ、海外の方に、よく、この辺りを、分かって貰うと言うことも非常に重要なので、まあ、少し、公表の仕方、今の新しい事例を含めて、公表の仕方を工夫をすると言うことではないかと思うんですけど。

そう言うことでよろしいでしょうか。

6.ウランとプルトニウムの混合酸化物のIAEA保障措置上の扱い

「核爆発装置の金属構成要素に転換するのに必要な時間」の項目では、二酸化プルトニウムとMOX製品及びMOX燃料は区別されておらず、「転換時間」はともに「週のオーダー(1-3週間)」。プルトニウム金属の場合は「日のオーダー(7-10日)」。

IAEA保障措置用語集 [2001年版]より

ウランとプルトニウムの混合酸化物のIAEA保障措置上の扱い

◎参考 核情報記事(上記記事にリンクあり)

◆韓国公論化委員会関係資料

2013年11月12日 発行 海外情報ニュースフラッシュ

韓国で使用済燃料公論化委員会が発足  原子力環境整備促進・資金管理センター



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