核情報

2009.10.6

ペンタゴンの「核態勢の見直し」草案を突き返したオバマ大統領
核政策の大幅変更を求めて──日本政府は、大幅変更支持のメッセージ送れるか

英国ガーディアン紙(9月20日)が、オバマ大統領は、ペンタゴンが提出した「核態勢の見直し」の草案を臆病すぎると突き返したと報じました。ヨーロッパ政府関係者の情報とのことです。これは、希望を持たせると同時に、いよいよ時間がなくなっていることを示すものでもあります。米国のNGOは、核兵器の役割を核攻撃の抑止のみに限ることに日本が反対していることが現状維持の正当化に使われていると警告しています。日本政府からの役割限定支持の明確なメッセージの発信が必要です。

「バラク・オバマは米国核兵器の大幅削減の用意がある──大統領が国連での会合の議長を務める準備をするなか、ペンタゴンは、ラジカルな削減の計画を立てるようにと指示を受ける」と題された9月20日付けの記事(英文)は次のように述べています。

ヨーロッパの政府関係者によると、オバマは、ペンタゴンによる核態勢の見直しの最初の草案を臆病すぎると拒絶し、核兵器を最終的に廃絶するという彼の目標に沿ったもっと大幅な変更の様々なオプションを出すように要求した。

これらのオプションには次のものが含まれる。

  • 配備戦略核弾頭を数千のレベルではなく、数百のレベルにできるように米国の核戦力を再編すること。
  • 米国が核兵器を使う条件の幅を狭めるために核ドクトリンを策定し直すこと。
  • 核実験をしたり新世代の核弾頭を作ったりせずに、核兵器の将来の信頼性を保証する方法を検討すること。

問題の草案の大部分の作成に当たるのは、国防省のブラッド・ロバーツだろうとの情報がオバマ政権内部から核情報に届いていました。ロバーツは、国防省で採用される前に「米国戦略態勢議会委員会」の報告書の執筆をした人物です。同委員会は、米議会が、2008年度国防歳出権限法の一部として、国防省に2009年中の「核態勢の見直し(NPR)」を義務付けた際に、設置を決めたものです。「核態勢の見直し」の参考にする報告書を提出するのが目的でした。しかし、この超党派の委員会の最終報告書は、核兵器の役割維持を訴えるものとなっています。

彼のような核の役割維持を主張する勢力が、その主張を正当化するために真っ先に挙げるのがこれまでの日本政府の政策です。オバマ・鳩山両首脳の初会談を控えた9月22日に米国の核問題の専門家らが両首脳に宛てて出した書簡は、オバマ政権内の現状維持派が、これまでの「政策を変更すれば、日本が自分たちの核兵器を作ることになる恐れがあると主張」していることを指摘し、このような議論が政策変更の障害になってはならないと述べ、次のように要請しています。

私たちは、鳩山首相に対し、米国の核兵器の唯一の目的は他国によるこれらの兵器の使用を抑止することにあるとする米国の新しい政策に対する支持を再確認するよう求めます。私たちは、オバマ大統領に対し、オバマ政権における核政策の見直しに個人的に関わり、この立場を米国の公式の政策とするよう求めます。

議会が定めた「核態勢の見直し」の提出期限は年末ですが、遅くとも10月中には骨格が決まると見られています。12月5日に失効する戦略削減条約(START)の後継条約についての交渉を本格化する前に方針を確定する必要があるからです。それで、早急に日本政府から「核の役割を核攻撃の抑止のみに限定する政策を支持する」との明確なメッセージを米国政府に送るようにして欲しいと米国のNGOが日本の運動に要請し続けています。

国連安保理首脳会合や総会における鳩山首相の演説のようなものでは十分ではありません。米国政府内の抵抗勢力が日本の姿勢を自分たちの立場の正当化に使えないようにするには、明確なメッセージが必要です。鳩山首相や岡田外相の持論を明確な日本の政策にして表明することです。

「核兵器の役割を、核攻撃の抑止だけに限り、通常・生物・化学兵器には通常兵器で対処する方針を支持する。さらに一歩進めて、決して核を先には使わないとの先制不使用宣言を米国が行うことも支持する。また、これらの政策に従って、核兵器の数を大幅に削減することも支持する。」との明確なメッセージを日本政府として米国政府に送ることが重要です。そうしなければ、結果的に、日本政府、日本の反核運動が、米国内の抵抗勢力の味方をすることになってしまいます。

参考


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