核情報

2009.9.13

核軍縮に向けた日本の新政権の緊急課題
オバマ政権核軍縮の障害除去

オバマ政権が遅くとも10月には骨格を固めるとされる「核態勢の見直し」で、「核の役割を他国の核使用の抑止に限定」する可能性が議論されています。ところが通常兵器や生物・化学兵器の攻撃も、米国の核で抑止して欲しいと望む日本がこれに反対していることが、この新政策採用の障害となっていると米国の活動家らが警告しています。日本の新政権は、この障害を早急に取り除かねばなりません。

もちろん、「核の役割を他国の核使用の抑止に限定」すると言うのは、核兵器のない世界に向けた一歩でしかありません。しかし、重要な一歩です。「役割限定」を確認し、さらに、先には核兵器を絶対使わないと明言する「先制不使用」政策を採用し、核態勢を変える(偶発的核戦争を防ぐため、分単位で発射できるミサイルの警戒態勢を解除し、核の大幅削減を実施するなど)。このように米国自身が率先して核の存在意義を薄めることにより、核拡散防止体制の強化のための協力を得る上での説得力も増します。また、他の核保有国とともにさらなる大幅削減を行う準備が整ってきます。

日本は、「核の役割を他国の核使用の抑止に限定」するという核廃絶に向けての一歩にさえ反対してきました。また、ほとんど廃棄の決まっている核弾頭型巡航ミサイル「トマホーク」を攻撃型原潜に再配備するよう働きかけていると伝えられています。このような日本の態度を変更することを新政権が米国政府に緊急に伝えなければ、日本の態度が原因で米国の冷戦時代からの核政策がそのまま続行されてしまうことになってしまいます。

以下、新政権に向けたメモに加えて、他の場所で掲載された記事を載せました。

参考




  1. 新政権のためのメモ
  2. 軍縮の障害となる日本の政策:再処理推進と先制不使用反対 反原発新聞用原稿(2009年9月号)
  3. 「核兵器廃絶に向けて──世界と日本の動き」
     ──先制不使用に反対する日本は障害となるのか? 社会新報用原稿(2009年8月5日号)
  4. 「核兵器のない世界」への流れを決める夏──鍵を握る日本 『世界』訳者解説(2009年9月号)


新政権のためのメモ

オバマ政権、「核の役割限定」の可能性:核態勢の見直し
「日本」の支持が鍵、10月が期限

●「核態勢の見直し」で「核の役割を他国の核使用の抑止に限定」する可能性

「核兵器の役割を他国の核使用の抑止に限定する」との政策がオバマ政権内部で議論されている。生物化学兵器や通常兵器などの攻撃に対する報復には核を使わないということ。これはもう一歩進めれば、核を最初 には使わないと明言する「先制不使用宣言」となる。

●日本の反対が「役割限定」阻止の理由に

日本が反対しているから、核の「役割限定」や「大幅削減」(核付きトマホークの2013年の退役を含む)をすべきでないと米国政府の現状維持派が主張している。(オバマ政権に近いNGOや政府関係者からの情報)

●背景に「日本を無視すると日本が核武装する」との見方

シュレシンジャー、ペリー元国防長官らの証言 下院委員会公聴会(2009年5月6日)

●「核態勢の見なおし」の実質的期限:9-10月

議会が定めた文書提出の期限は年末だが、遅くとも10月中には骨格が決まる。12月5日に失効する戦略削減条約(START)の後継条約についての交渉を本格化する前に方針を確定する必要があるから。 (オバマ政権に近いNGOや政府関係者からの情報)

★緊急課題「日本は、米国が核の役割限定政策をとることに反対しない。米国がこれを宣言したから日本が核武装するということは絶対にない」と米国に早急に伝えることが重要


●核政策に関する日本独自または日米共同の文書等での文言のオプション:

1)「米国の核兵器の役割を縮小」 オバマのプラハ演説にある

2)「米国の核兵器の役割を核使用の抑止に限定」 米国の反核・軍縮運動が望んでいるところ。日本の抵抗がなければオバマ政権が受け入れる可能性がある。

3)「米国による先制不使用宣言」 曖昧性を残さず好ましい。先制不使用を喧伝していたソ連が実は、先制使用を考えていたことを示す文書の存在もあり、米国では抵抗が強い。

●相手の先制不使用の約束は交換条件ではないー核攻撃は核報復の警告で抑止

米国が先制不使用宣言をしても、核攻撃は核報復の警告で抑止する方針は続く。この抑止論の是非はともかく、圧倒的な核及び通常戦力を持つ米国が、核以外の攻撃の抑止にも核が必要と言っていては核拡散防止の訴えの説得力もなく、核廃絶に向けて進みようがない。 

●非核三原則の遵守なら少なくとも「核の役割限定」は当然

生物・化学兵器や通常兵器に対しても核で報復して欲しいと言うこれまでの日本の姿勢を変更することを示さないで「非核三原則」だけ強調すると欺瞞的との批判を免れられない。

核情報




軍縮の障害となる日本の政策:再処理推進と先制不使用反対

反原発新聞(2009年9月)用原稿

 世界的に核軍縮の機運が高まりつつある。そんな中、七月末から八月始めにかけて相次いで日本を訪れた米国の三人の核問題専門家が原子力資料情報室・日本原水禁国民会議の共催の会合で、日本が障害となっていると訴えた。「憂慮する科学者同盟(UCS)」のグレゴリー・カラキー、クリントン政権下のホワイトハウスで不拡散問題について助言した経験を持つプリンストン大学教授フランク・フォンヒッペル、「軍備管理・不拡散センター」のレオノール・トメロの三人だ。

 フォンヒッペルとトメロの両氏は、非核兵器国の中で唯一再処理を推進している日本のプルトニウム政策の問題点を強調する。米ロがその核弾頭を一〇〇〇発ずつにまで削減すると、そこに含まれるプルトニウムは、それぞれ約四トンとなる。現在の日本のプルトニウム保有量は約四六トンだ。この量は増え続ける予定だ。日本にならって再処理をする国々が増えると核拡散の危険性がさらに強まり、米ロの削減速度にも影響を与え兼ねない。

 フォンヒッペルは、世界の原子力発電容量の七五%の使用済み燃料は、取り出し後冷却プール内で(最大二〇年間)保管した後、巨大な空気冷却の乾式容器(ドライキャスク)に入れて貯蔵する方針だとして、こう説明する。この方が再処理よりずっとコストが低いし、事故や攻撃を受けた際の影響の大きさは、運転中の原子炉やプールに貯蔵されている新しい使用済み燃料の方が何倍も大きい。

 三人が口を揃えて問題だというのが、核兵器以外の攻撃には核で報復しないとの政策に反対する日本の姿勢だ。オバマ大統領は、プラハで、核兵器のない世界を目指し、核の役割を縮小すると述べた。その手段として、核兵器の役割を他国の核使用の抑止に限定するとの政策がオバマ政権内部で議論されている。これはもう一歩進めれば、核を最初には使わないと明言する先制不使用宣言となる。

 だが、米国の現状維持派は、日本の立場を無視すると日本が核武装する恐れがあると牽制する。日本は、通常兵器や生物化学兵器の攻撃も、米国の核で抑止して欲しいというからだ。

 麻生首相は、八月九日の記者会見で、先制不使用宣言をした国の「意図、お腹のなかを検証する方法はない」から、これに頼るのは、「日本の安全を確保する上で、現実的にはいかがなものか」と述べた。これは先制不使用宣言をしている中国を念頭に、これまでの外務省の説明を繰り返したものだが、議論のすり替えだ。先制不使用方針をとっても、中国や北朝鮮による核攻撃に対する米国の核抑止の前提は変わらない。現在求められているのは、圧倒的な核及び通常戦力を持つ米国の先制不使用宣言だ。これもできないようでは、オバマ大統領や日本が目指すという核廃絶に向けて進みようがない。 

 残された時間は少ない。オバマ政権は、現在議会の定めた「核態勢の見直し」作成作業を行っている。核政策の根幹となるこの文書の期限は年末だが、その骨格が決まるのは、もっと早いと見られている。戦略削減条約(START)の後継条約についての交渉を本格化する前に方針を確定する必要があるからだ。条約は、一二月五日に失効する。だから、「見直し」の期限は、遅くとも一〇月と見られている。

 民主党は二〇〇〇年に発表した核政策で、「核の先制不使用を日米間で合意すべき」としている。また最近も、鳩山由紀夫代表と岡田克也幹事長の両氏が米国に先制不使用策の採用を働きかけるべきだと述べている。だが、政権についた民主党がこの考え方を政策として実施するようにするには世論の後押しが必要だ。




「核兵器廃絶に向けて──世界と日本の動き」

──先制不使用に反対する日本は障害となるのか?

社会新報用原稿(2009年8月5日号)

 二〇〇七年一月と二〇〇八年一月にヘンリー・キッシンジャー元国務長官ら米国民主・共和両党の四人の重鎮が『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙で「核兵器のない世界」の実現を呼びかけて米国内外で反響を呼んだ。決してハト派ではない四人が、一九八六年一〇月にアイスランドのレイキャビクで開かれた米ソ首脳会議でレーガン大統領とゴルバチョフ書記長が共有した「核兵器のない世界」という考えを復活させようと提唱したのだ。背景には、九・一一が核兵器によるものだったらという戦慄がある。

 四人の投稿で醸成された核兵器全廃の世界的機運を背景に、オバマ大統領は、四月五日、チェコ共和国プラハでの演説で、「米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言する」と述べ、「冷戦時代の考え方に終止符を打つために、米国は国家安全保障戦略における核兵器の役割を縮小し、他国にも同様の措置を取ることを求める」と約束した。  

 日豪両政府の提唱で設置された核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)は、このオバマ大統領の約束に沿った短期的な措置の一つとして、「先制不使用政策」を発表するよう米国に勧告することを検討している。核兵器の役割を、他国による核使用の抑止に限定し、先には核兵器を使わないという政策をとるようにとの勧告だ。ところが、ギャレス・エバンズ同委員会共同議長(元オーストラリア外相)は、五月末に来日した際、委員会の大半は、米国が先制不使用宣言をし、その政策に合わせて核態勢を構築しなおすべきだと考えているが、日本の政策が、勧告の採択にとって障害になっていると説明した。

 日本政府は、核以外の攻撃に対する抑止が薄れるなどとして、先制不使用策に一貫して反対している。一九九四年以来国連に核廃絶を求める決議文を提出する一方で、核以外の攻撃に対しても核で報復するオプションを米国が持たなければ日本の安全保障が達成出来ないと主張しているのだ。エバンズ共同議長は、「核兵器廃絶を唱える一方で核兵器が大好きだと言っていたのでは、世界からまともに相手にされない」との忠告した。広島での最終会議に出席するために一〇月に再来日するまでの宿題を私たちに残した格好だ。

 日本政府はまた、先制不使用は検証できないとも主張する。だが、他の国が核攻撃するなら米国は核兵器で報復すると警告することで核攻撃を抑止する態勢をすぐに放棄しようという話ではない。従って、そもそも核抑止なるものを信じる立場に立つなら相手側の約束の検証など必要ない。今求められているのは、米国が先制不使用政策を採用し、それに基づいて、核態勢を変える(偶発的核戦争を防ぐため、分単位で発射できるミサイルの警戒態勢を解除し、核の大幅削減を実施するなど)ことだ。米国自身が率先して核の存在意義を薄めることにより、核拡散防止体制の強化のための協力を得る上での説得力が増す。また、他の核保有国とともにさらなる大幅削減を行う準備が整う。

 オバマ政権は、現在、議会が定めた「核態勢の見直し」の作業を行っている。年末までに作成されるこの文書が、オバマ政権の核政策の大本となる。向こう四年間、あるいは八年間の削減の可能性の基本がこれで決まる。先に使うことを前提に核戦争を勝ち抜く様々なシナリオを温存するなら、大幅削減は不可能となる。米国の運動は、この文書の中に先制不使用の考え方を入れることに全力を挙げている。米国の活動家・アナリストらは、日本の懸念・反対が、先制不使用の考え方を「核態勢の見直し」に組み入れる上で、最大の障害になっていると日本の平和運動に向けて警鐘を鳴らしている。

 ICNNDは、一〇月の最終会合を経て、その報告書を年内に発表する予定だ。だが、「核態勢の見直し」自体も、年内に終わる。さらに、米国は、現在、今年の一二月五日に失効するSTARTの後継条約についての交渉をロシアと始めている。具体的な数などについての交渉を本格化する前に核態勢の見直しの骨格を決めなければならない。その期限は、九月中、遅くとも一〇月と見られている。残された時間は少ないのだ。

 日本の懸念・反対が米国で重要視されるのは、これを無視すると日本が核武装するとの警戒感が米国の側にあるからだ。米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」は、七月中旬、中国の核問題に詳しいグレゴリー・カラキー博士を日本に派遣した。日本は本当に米国に対し「懸念」を表明しているのか、日本は本当に核武装しそうなのか、あるいは、米国内の核削減反対派が「日本問題」を「利用」しているのか。これを確認するためだ。博士は言う。「いずれにせよ、『唯一の被爆国』日本が、『核兵器のない世界』に向けた不可欠の一歩を阻止する理由となるとしたら極めて皮肉なことと言わざるを得ない。」日本の私たちの課題は、極めて重大かつ緊急のものだ。




「核兵器のない世界」への流れを決める夏──鍵を握る日本

ハンス・クリステンセン「被爆国日本は核軍縮の足かせとなるのか」

『世界』9月号

 訳者解説

 米国の核兵器の役割の低減や核弾頭数の大幅削減にとって日本の態度が最大の障害となっていると米国の軍縮・平和団体が日本の平和運動に対して警鐘を鳴らしている。ここに訳出した記事は問題の所在を示す一つの例だ。ほとんど廃棄の決まっている核弾頭型潜水艦発射巡航ミサイル「トマホーク」を復活させようという米国内の動きの原動力に日本の核政策がなろうとしているというのだ。これらのミサイルは、一九九一年九月二七日にブッシュ(父)大統領が、水上艦船及び攻撃原潜から核兵器を撤退すると宣言したため、翌年以来、原潜には搭載されず、陸上で保管されているものだ。

 記事の筆者のクリステンセンは、「核情報」へのメール(五月一二日)でこう述べた。「《1》「「国防長官タスク・フォース」(二〇〇八年一二月最終報告書や《2》「米国戦略態勢議会委員会」(〇九年五月最終報告書)に対して日本政府関係者が行ったとされる不確かな発言が、ここワシントンでは、オバマ政権の核軍縮のアジェンダを阻止し、不必要な核兵器の維持の必要性を主張するために使われている。核トマホークは、戦術核が世界中に配備されていた時代の冷戦型兵器だ。基本抑止には必要のないもので、米軍は、長年これを廃棄しようとしてきている。」

 攻撃されたら攻撃仕返すという有言・無言の警告で攻撃を未然に防ぐのが軍事力による抑止の考え方だ。米国が、同盟国などに対する攻撃を防ぐとの目的にまで拡大してこの警告を使うのが拡大抑止だ。核軍事力に頼れば核抑止、拡大核抑止となる。後者がいわゆる核の傘だ。核の役割を、自国あるいは同盟国に対する他国からの核攻撃の抑止だけに限るのが基本核抑止、中核的核抑止の考え方だ。これは、先には核兵器を使わないと言う意味で「先制不使用策」を意味する。

 ジェイムズ・シュレシンジャー(元国防長官)が委員長を務めた《1》は、核兵器の管理態勢の改善のために設置されたものだが、その最終報告書は、本題から外れ、核抑止力の維持を主張する内容となっている。《2》は、米議会が、二〇〇八年度国防歳出権限法の一部として、国防省に〇九年中の「核態勢の見直し」を義務付けた際に、設置を決めたものだ。ウィリアム・ペリー(元国防長官)が委員長、シュレシンジャーが副委員長という構成だ。これら二グループの報告書策定過程で日本政府が核兵器の大幅削減に抵抗を示したというのだ。

 日本の態度が重要な意味を持ちうるのは、日本の核武装に対する警戒感があるからだ。《2》の最終報告書に関する公聴会(五月六日)でシュレシンジャーは、「日本は、米国の核の傘の下にある三〇ほどの国の中で、自らの核戦力を生み出す可能性の最も高い国であり、現在、日本との緊密な協議が絶対欠かせない」と主張した。ペリーはこう続けた。「[拡大抑止の問題は]、新しい話ではない。一九七〇年代後半、私が国防次官だった頃、ソ連がその中距離ミサイルをヨーロッパに配備して、西ヨーロッパの脅威となっていた。それで、我々は、それに対する相殺手段を、それに対する抑止力を、計画していた。・・・我々の判断は、この相殺手段をいわゆる戦略核兵器で行えるというものだった。・・・しかし、同盟国の協議の中で極めて明確になったのは、彼らは我々の主張の論理は理解したが、米国の抑止力が維持されるとの確信を持つには米国の戦力をヨーロッパに配備することが必要だと感じていたのだ。・・・現在でも、ヨーロッパとアジアの両方において我々の拡大抑止の信頼性についての懸念が存在している。彼らの懸念について注意することが重要だ。抑止が我々の基準において有効かどうか判断するのではなく、彼らの基準も考慮しなければならない。それに失敗すると、シュレシンジャー博士が言ったように、これらの国々が、自前の抑止力を持たなければならないと感じてしまう。」核拡散を防ぐためには、同盟国が望むなら不必要な形の拡大核抑止でも提供しなければならないというのだ。

 日本の姿勢のもう一つの問題は先制不使用策を巡るものだ。日豪両政府の提唱で設置された核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)は、「先制不使用政策」の発表を米国に勧告することを検討中だ。だが、五月末に来日したギャレス・エバンズ同委員会共同議長(元豪外相)によると日本の政策が勧告の採択にとって障害になっているという。日本政府は、核以外の攻撃に対する抑止が薄れるなどとして、先制不使用策に一貫して反対している。エバンズ共同議長「核廃絶を唱える一方で核兵器が大好きだと言っていたのでは、世界からまともに相手にされない 」と日本の政府や平和運動に忠告する。委員会は一〇月の広島会議を経て年内に報告書をまとめる。

 前述の「核態勢の見直し」の作業も年末までに終わる。この過程で作成される文書が、オバマ政権の核政策の大本となる。向こう四年間、あるいは八年間の削減の可能性の基本がこれで決まる。先に使うことを前提に核戦争を勝ち抜く様々なシナリオを温存するなら、大幅削減は不可能となる。米国の運動は、この文書の中に先制不使用の考え方を入れることに全力を挙げている。政府内部での議論に詳しい米国の活動家・アナリストらは、日本の懸念・反対が最大の障害になっているという。

 残された時間は少ない。米国は、現在、一二月五日に失効するSTARTの後継条約についての交渉をロシアと始めている。具体的な数などについての交渉を本格化する前に「核態勢の見直し」の骨格を決めなければならない。その期限は、九月中、遅くとも一〇月と見られている。米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」は、七月中旬、グレゴリー・カラキー博士を日本に派遣した。日本は本当に米国に対し「懸念・反対」を表明しているのか、日本は本当に核武装しそうなのか、あるいは、米国内の核削減反対派が「日本問題」を誇張して「利用」しているのか。これを確認してロビー活動に活用するためだ。博士は言う。「いずれにせよ、『唯一の被爆国』日本が、『核兵器のない世界』に向けた不可欠の一歩を阻止する理由となるとしたら極めて皮肉なことだ。」「懸念・反対」は官僚らによって間違いなく表明されていると博士は見た。問題は、それが日本の核武装を招くほど重要な課題と見られて核軍縮が阻止されるか否かだ。日本の私たちは、日本政府の政策を変えさせ、「核軍縮の最大の障害」を取り除くことができるだろうか。


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