核情報

2016. 3.30

米高官が日本の核燃政策「懸念ない」と発言修正?
 カントリーマン国務次官補、実は懸念確認

3月17日の上院外交委員会の公聴会でトーマス・カントリーマン米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)が、再処理は経済性も合理性もなく、核拡散防止の観点から「全ての国が再処理事業から撤退すれば非常に喜ばしい」と述べたことを翌日報じた読売新聞は、3月29日の記事で、「米高官が発言修正」と報じました。実は、日本が核武装するとは懸念していないが核不拡散・核セキュリティー・経済性の面での懸念があるから、日本政府及び日本国民にこれを明確に伝えていきたいとの発言でした。

参考

 読売新聞の記事<日本の核燃政策「懸念ない」…米高官が発言修正>は、カントリーマン次官補が「日本が核不拡散の政策から外れる懸念はない」と述べ、「今後、国際社会の懸念払拭に同盟国として協力していく考えを示した」と報じています。前半は正しいのですが、後半が発言と異なります。次官補は実際は、次のように言っています。

最も緊密な同盟国として、我々両国には透明性についての責任がある。両国が、核燃料政策サイクル政策の選択肢と関連する核不拡散面での懸念事項、核セキュリティー面での懸念事項、経済面で懸念事項について、非常に明確にしておく責任がある。それで、我々は、これらの選択について、両国同士で、また、日本の人々に対してできるだけ透明であるように務めていく。

要するに、こういうことです。米国は日本が核武装をすると懸念をしているわけではない。だが、日本が経済性もない再処理計画を進め、プルトニウムを蓄積していることが核拡散・核セキュリティー上の問題をもたらしている。米国は、このことを懸念している。同盟国であるからこそ、黙っていられない。この考えを次官補は再度表明したのです。そして、そのことについては、日本政府に明確に伝えたいし、日本国民にも知って欲しいということです。

この懸念再表明の裏には、3月18日のカントリーマン発言について、岸田文雄外務大臣が国会で次のように述べたことがあったと思われます。

米国政府高官の核燃料サイクルに関する言及についてお尋ねがありました。御指摘の発言については、一般論として民生用再処理に関する米国政府の従来の見解を述べたものと認識をしております。我が国が再処理を含む核燃料サイクルを推進していくとの方針については、米国政府の理解を得ていると考えており、今後とも、米国との間で円滑かつ緊密な原子力協力の確保に努めていく考えです。

2016年3月24日 衆議院本会議

オンライン記者会見での今回の発言は、官房長官や外務大臣が、米国の懸念なんて知らないと言っていることについて米国が業を煮やし、外務省関係者等に何度伝えても話が通じないなら、日本国民に直接訴えると宣言した内容ともとれます。

以下は、3月28日の国務省オンライン記者会見の該当部分です。

次の質問は、カントリーマン次官補に対するもので、日本のNHKからです。「米国政府は、最近、日本その他の国がやろうとしているプルトニウム再処理についての懸念を再度、表明した。あなたは、日本の再処理に反対し、この計画を放棄するように日本に要請するか。イエスとすればなぜか。でなければ、なぜそうしないのか。」

カントリーマン次官補:

日本は、原子力の民生用利用のパイオニアになっている。そして、この分野――民生用原子力――において、米国にとって日本より重要で親密なパートナーはない。核燃料サイクル政策を追求するに当たって、日本は、その使用を明確に想定できないプルトニウムを蓄積しないとの約束をした。日本は、世界全体に見えるような透明なかたちでやってきた。だから、我々は、日本がこの方針に違反するとか、不拡散問題に関する極めて完全な経歴に反することをするとの懸念は持っていない。

従って、プルトニウムの蓄積ということで言えば、これは、日本がその国家核燃料サイクル政策の下で決めたことだ。これは、日本の選択だ。この政策選択について承認するとか反対するとかというのは米国の役割ではない。しかし、最も緊密な同盟国として、我々両国には透明性についての責任がある。両国が、核燃料政策サイクル政策の選択肢と関連する核不拡散面での懸念事項、核セキュリティー面での懸念事項、経済面で懸念事項について、非常に明確にしておく責任がある。それで、我々は、これらの選択について、両国同士で、また、日本の人々に対してできるだけ透明であるように務めていく。



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