NPT 核不拡散条約(核拡散防止条約)
核兵器を持っている国(米ロ英仏中)は、核を委譲しない、持っていない国は持たないと決めた条約。持たない国の持つ不平等感を和らげるため、核保有国の軍縮の義務を謳った6条と、非核兵器国による原子力利用への協力を謳った4条が設けられている。
採択(作成) 1968年7月1日
効力発生 1970年3月5日
日本 署名1970年1月3日 国会承認 76年5月24日 批准書寄託・発効 6月4日
加盟国 190ヶ国 ただし、国連未加盟でNPT加盟のバチカン市国を除くと189カ国。
(国連加盟国192ヶ国中、未加盟は、インド、パキスタン、イスラエルの3国のみ。2003年1月の北朝鮮の脱退表明は未公認状態。)
核保有国の定義(第9条) 1967年1月1日前に核実験をして核兵器を持っていた国。
- 1条 核兵器国(米、ソ(ロ)、英、仏、中)の義務 核を委譲しない
- 2条 非核兵器国の義務 核を持たない
- 3条 保障措置(核兵器を持っていない国が核開発をしていないことを確認する作業)
- 4条 原子力の平和利用の保障
- 5条 核爆発の平和利用の保障
- 6条 核軍縮 「各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。」
- 7条 地域的非核化条約 非核地帯の設立の自由
- 8条 改正 全ての核兵器国の賛成が必要 発効の5年後に運用状態について会議開催。その後、締約国の過半数が望む場合には5年ごとに会議。
- 9条 署名・批准・効力発生
- 10条 期限・脱退 3ヶ月前に通知して脱退が可能。25年後に無期限または一定期間延長について会議開催。
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NPT再検討・延長会議
NPT条約10条の規定に従い、発効から25年たった1995年に条約の延長と運用状態について議論するためにニューヨークで開かれた会議。 会議は三つの文書を同時に無投票で採択するという形で条約の無期限延長を決めた。
- (1)『条約の再検討過程の強化』
- (2)『核不拡散及び軍縮の原則と目標』
- (3)『核不拡散条約の延長』
の三つである。
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核不拡散と核軍縮のための原則と目標
NPT発効から25年たった1995年に条約の延長と運用状態について議論するためにニューヨークで開かれた再検討・延長会議で他の二つの文書(1)無期限延長2)条約再検討のプロセス強化に関するもの)および『中東に関する決議』とともに採択された文書。
文書の構成は次の通り。
- 1)普遍性
- 2)不拡散
- 3)核軍縮
- 4)6条の確認
- a)CTBTの96年中の締結。それまでの最大限の自制。
- b)カットオフ(核兵器用核分裂性物質生産禁止)条約交渉の開始・早期締結。
- c)核廃絶を究極的目標として削減の努力。全面的・完全な軍備縮小。
- 5)非核兵器地帯の重要性の確認
- 6)とくに中東における非核兵器地帯・非大量兵器地帯の設置の重要性。
- 7)核兵器国による関連議定書の尊重・支持の重要性。
- 8)安全の保障
1995年4月11日に全会一致で採択された国際連合安全保障理事会決議984(1995)、並びに、消極的安全保障及び積極的安全保障の双方に関する核兵器国による宣言に注目し、核兵器の使用または核兵器の使用の威嚇に対して、[核兵器不拡散]条約締結国である非核兵器国を保障するために一層の措置が検討されるべきである。そのような措置は、国際的に法的拘束力を有する文書の形をとることがありうる。
- 9−13)保障措置
(13 核兵器国の余剰核兵器物質を自発的保障措置協定の下に。) - 14−20)原子力の平和利用
平和利用の権利、安全性、IAEAへの資金提供など。 (20 平和利用目的の核施設に対する攻撃や攻撃の威嚇についての戒め。)
6条の履行に当たって次が重要。
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「条約再検討プロセスの強化」
1995年の再検討・延長会議で採択された文書の一つ。
文書は、条約に定められていなかった5年に一度の再検討会議を公式に定例化することを決めた。そして、「再検討会議に先立つ3年間、毎年、通常、実質10日間の準備委員会の会合を開催することを決定した」。
準備委員会の開催回数が一回増え、毎回の日数が倍になっている。文書は、また、再検討会議開催の年に準備委員会をもう一回開く可能性を認めている。さらに、これまでと違い、準備委員会の場で、手続き上の問題だけでなく、「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」の項目を含め条約の実施に関する中身も検討し、再検討会議に勧告をすることを定めている。また、再検討会議は、過去を振り返るだけでなく、将来を見渡すこともすべきだとしている。
文書は、「会議はまた、現在の3つの主要委員会という構成は継続」するとしている。さらに、これらの軍縮(第1委員会)、保障措置(第2)、原子力(第3)の「各主要委員会内において、条約に関する特定の問題に焦点を当てて審議することができるように、特定の問題に関する下部機関を設置することができる」としている。
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安全の保障
1995年に開かれた再検討・延長会議で採択された「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」第8項目で非核兵器国の「安全の保障」のための措置について検討すべきとされている。
ここでいう安全保障には消極的安全保障と積極的安全保障の二つがある。消極的安全保障とは、核を持っていない国に対して核で攻撃をかけないことを意味する。これは、何々しないという否定文(ネガティブ)の形を取っている。このネガティブが日本語では消極的と訳されている。積極的安全保障は、肯定文の形を取り、非核国が核による攻撃又は威嚇を受けた場合には、国連憲章に従い適切な処置をとると約束するものである。核保有国は95年の再検討・再延長会議の直前の4月5日、安全保障の宣言を行っている。例えば米国は、その消極的安全保障の部分において、「米国は、以下の場合を除き、核兵器の不拡散に関する条約の締約国である非核兵器国に対して、核兵器を使用しないことを再確認する。すなわち、米国、その準州、その軍隊、もしくは、その他の兵員、その同盟国、又は、米国が安全保障上の約束を行っている国に対する侵略その他の攻撃が、核兵器国と連携し又は同盟して、当該非核兵器国により実施され又は支援される場合を除き、それらの非核兵器国に対して核兵器を使用しないことを再確認する。」また、同年4月11日、国連安全保障理事会は、その決議984(全会一致)において「安全保障理事会は、・・・・・核兵器の不拡散に関する条約の締約国である非核兵器国に対して、核兵器を使用しないとの安全の保障を与える各核兵器国による声明を、謝意をもって留意する。」と述べている。決定2の安全保障の項目は、これらに触れ、宣言を法的拘束力を持つものとすることを含め、いっそうの措置を講じるべきだとしている。
日本の外務省は、消極的安全保障を法的拘束力を持つものにすることに賛成している。だが、それは、必ずしも、生物・化学兵器による攻撃に対して核兵器による報復をかけることを禁止するものにはならないとしている。北朝鮮による攻撃を念頭に置いたものである。
なお、2000年再検討会議最終文書(pdf)の「第7条(非核地帯)および非核兵器国の安全保障」の項には次のようなものが入っている。
- 1.国連憲章による武力行使禁止
- 2.「会議は、完全な核廃絶が、核兵器の使用または使用の威嚇に対する唯一の絶対的な保障であることを再確認する。会議は、5つの核保有国によるNPTの非核加盟国に対する法的拘束力のある安全保障が、核不拡散体制を強化するという点で合意する。会議は、準備委員会に対し、この問題について、2005年再検討会議に勧告を出すよう要請する。」
- 3.「会議は、NPTの非核加盟国のための安全保障に関する国連安保理決議984(1995)についての核保有国のコミットメントの再確認に留意する。」
- 4.「会議は、非核保有国に対して核兵器の使用あるいは使用の威嚇をしないと保障する効果的な国際的取り決めについて、軍縮会議(CD)が1998年3月に特別委員会を設置したことに留意する。」
- 7.中東や南アジアなどでの非核地帯設立の提案を支持。
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核軍縮に向けた13のステップ
2000年再検討会議で採択された最終文書で挙げられている「CTBT早期発効」、「カットオフ(核兵器用核分裂性物質生産禁止)条約の5年以内の妥結」、「核兵器の全面廃絶に対する核兵器国の明確な約束」、「安全保障政策における核兵器の役割の低減」などの措置。文書の「第6条および前文第8−12段落」に関する部分の第15項目において、NPT第6条と、1995年再検討・延長会議で採択された「核不拡散と核軍縮の原則と目標」第3項及び第4項(C)核軍縮に向けた努力)を実施するための実際的措置として合意された。
外務省による「2000年NPT運用検討会議最終文書の概要」 の「1.核軍縮」に13項目全てがまとめられている。 (マスコミではReview Conferenceの訳語として「再検討会議」が一般的だが、外務省は「運用検討会議」を採用している。)
より詳しくは...
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NPT関係文書リンク
再検討会議関係の公式文書(英文)などを調べるには、つぎのサイトが便利。
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原子力の軍事利用を禁止する法律
原子力基本法に 次のようにある。
(基本方針) 第二条 原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
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核実験を禁止する法律
CTBTの批准に合わせて一九九七年に原子炉等規制法が次のように改正されている。
76条の3
核爆発を生じせしめた者は、7年以下の懲役に処する。
2 前項の未遂罪は、罰する。
「この法律は、包括的核実験禁止条約が日本国について効力を生ずる日から施行する」とあり、CTBTが発効すると同時に施行される。
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非核三原則
「核は持たず、作らず、持ち込まさず」という原則。1967年12月11日に佐藤総理大臣が国会で表明。
核の脅威にどう対処するのかという松野頼三議員の問いに対して:
「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則・・・のもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、・・・私はジョンソン大統領とこの前一九六五年に会ったときも、また今回会ったときも、日米安全保障条約というものは日本が受けるいかなる攻撃に対しても守ることができるのか、言いかえるならば、核攻撃に対してもこれはやはり役立つのかと、こういうことを実は申しております。ジョンソン大統領は、明らかにあらゆる攻撃から日本を守りますと、かように申しております。」
非核三原則国会決議
非核三原則は、1971年以後の国会決議で国是として確認されている。
非核三原則に関する国会決議
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非核2.5原則
川口順子外相の私的諮問機関「外交政策評価パネル」(座長・北岡伸一東大教授)は、2003年9月18日に提出した報告書の中で「北朝鮮が核兵器開発を本格化したとき、日本を守る抑止力を、どの程度制限するかは大問題。国民の良識を信頼して、実は(一時寄港は認める)2.5原則だったというべきではないか」と述べている。
核搭載艦の一時寄港容認を 外相の諮問機関