六ヶ所村「核燃料サイクル施設」
青森県六ヶ所村にある施設で次の4つからなる。
- 1)再処理工場
- 2)高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(海外からの返還ガラス固化体用)
- 3)ウラン濃縮工場
- 4)低レベル放射性廃棄物埋設センター。
- 1)は、使用済み燃料の受け入れ/貯蔵プール(3000トン分)、再処理ででてくる高レベル廃液(核分裂生成物=死の灰)を一時的に入れておく貯蔵タンク、廃液をガラス固化する施設、そのガラス固化体を貯蔵する施設などを含む。
*MOX加工工場を再処理工場の南側隣接地に建設したいとする会社側の計画について県・村での検討が行われている。
- 施設のあらまし(日本原燃)
- 再処理工場概要・歴史(日本原燃)
- 低レベル放射性廃棄物埋設センター(日本原燃)
- 高レベル放射性廃棄物管理センター(日本原燃)
- 核燃料サイクル施設の概要 page 4=低レベル放射性廃棄物用 page 5=高レベル放射性廃棄物用
- 海外返還ガラス固化体受け入れ実績
- 返還される高レベル廃棄物(ガラス固化体)(資料pdfの、 p29 30/50)
- 返還廃棄物の交換の提案 (資料pdfの、 p33ー34 34/50 ─ 35/50 参考8−10 46/50 ─ 49/50)
- 第9回受け入れ 平成16年3月4日 輸送容器数:5基。ガラス固化体本数:132本 (日本原燃)
- 六ケ所・返還固化体を搬入(2004/03/05掲載)
- 経営は、9電力会社が中心になって設立した日本原燃株式会社。
- 会社のあらまし(日本原燃)
- 頓挫したむつ小川原開発構想の「切り札」となるべく登場し、1985年に県および村と会社側の間で上記4施設の設置に関する協力協定が結ばれ、事業が進められてきたが、「切り札」にはならなかった。
- 当社の歩み(日本原燃)
- 核燃料サイクルの主な歩み デーリー東北
- 核燃むつ小川原概要 東奥日報
- 核燃むつ小川原ドキュメント 東奥日報
*図は8回目まで。これまで9回。これまでの受け入れ総数は、892本。(現在の容量は1440本。将来的には、2880本に増設予定)
現在の計画では、フランス約1350本、英国約850本、合計約2200本が返還 予定。
*英国は、低レベル放射性廃棄物を同じ放射線影響の高レベル廃棄物に変えて返還することを提案している。輸送量・回数を減らすため。
これが実現すると、上記2200本にこの交換分の高レベルガラス固化体約150本 が加わる。
10回目は2005年4月頃の予定
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再処理
原子炉からでてくる使用済み燃料を化学的に処理して、
- 1)燃え残ったウラン、
- 2)炉内でできたプルトニウム、
- 3)核分裂生成物
の三つに分けること。
世界の再処理施設
現在商業規模のものを運転しているのは、英・仏・ロのみ。後は、インドが小規模のものを持っているだけ。六ヶ所再処理工場が運転に入れば、非核保有国として初めてのケースとなる。
海外委託
これまでは東海村での少量の処理(1977年9月から2003年末までに1009トン)を除いては、海外に委託していた。 英仏合計 7100トン(軽水炉約5600トン、ガス炉=東海原発約1500トン)
核拡散問題を除く再処理推進・反対の議論
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ウラン試験
再処理工場において、劣化ウランを使って行う稼働試験。酸化ウラン粉末を使った試験の後、本物の使用済み燃料の代わりに模擬ウラン燃料を使った剪断試験などに進む。
六ヶ所再処理工場では、2004年12月21日、ウラン試験が始まった。仕上げのウラン総合確認試験は、10月の予定。
- 『再処理施設ウラン試験計画書の概要について』(pdf)日本原燃
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アクティブ試験
再処理工場において、実際の使用済み燃料を使って行う稼働試験。施設の放射能汚染という点でウラン試験とは比較にならない段階。本格運転が年間800トンの使用済み燃料を処理する計画であるのに対し、、アクティブ試験は、約430トンも使うことになっており、量からいうと事実上の操業に等しい。
アクティブ試験で使用する使用済燃料の量 出典:日本原燃プレスリリース(pdf)
型式 | 体数 | tU |
BWR | 約1250 | 約220 |
PWR | 約460 | 約210 |
合計 | 約1710 | 約430 |
*量については概算値であり,試験計画の進捗により変動がありうる。
日本原燃は、11月18日、アクティブ試験の開始時期を、2005年12月から2006年2月に、操業開始時期を2007年5月から2007年7月にそれぞれ変更すると経済産業省に届け出た
なお、年間800トンの本格運転に入るのは2011年度の計画である。
使用済燃料の取得計画及び予定再処理数量 (単位:t・Upr) 出典:日本原燃プレスリリース(pdf)
年度 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 |
H10 | H11 | H12 | H13 | H14 | H15 | H16 | H17 | H18 | H19 | H20 | H21 | H22 | H23 | |
取得計画 | 8 | 24 | 96 | 340 | 312 | 0 | 524 | 434 | 550 | 550 | 650 | 800 | 800 | 800 |
予定 再処理数量 | 15 | 258 | 392 | 440 | 600 | 760 | 800 | |||||||
貯蔵量 | 8 | 32 | 128 | 468 | 780 | 780 | 1304 | 1723 | 2015 | 2173 | 2383 | 2583 | 2623 | 2623 |
注:・t・Upr は照射前金属ウラン質量換算です。
・1998(H10)年度から 2004(H16)年度までは実績値です。
・今年度の使用済燃料の取得計画については 575 t・Upr から 434 t・Upr に変更して います。(9 月 14 日お知らせ済み。)
・貯蔵量は輸送容器(キャスク)に収納されている使用済燃料も含みます。
(参考) 平成17年3月に公表した計画 (単位:t・Upr)
年度 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 |
H10 | H11 | H12 | H13 | H14 | H15 | H16 | H17 | H18 | H19 | H20 | H21 | H22 | H23 | |
取得計画 | 8 | 24 | 96 | 340 | 312 | 0 | 527 | 575 | 550 | 550 | 600 | 800 | 800 | 800 |
予定 再処理量 | 34 | 358 | 326 | 467 | 627 | 787 | 800 | |||||||
貯蔵量 | 8 | 32 | 128 | 468 | 780 | 780 | 1307 | 1848 | 2040 | 2264 | 2397 | 2570 | 2583 | 2583 |
注:・t・Uprは照射前金属ウラン質量換算です。
・1998(H10)年度から2003(H15)年度までは実績値です。
・貯蔵量は輸送容器(キャスク)に収納されている使用済燃料も含みます。
(参考) 平成15年9月に公表した計画 (単位:t・Upr) 出典:日本原燃プレスリリース(pdf)
年度 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 |
H10 | H11 | H12 | H13 | H14 | H15 | H16 | H17 | H18 | H19 | H20 | H21 | H22 | |
取得計画 | 8 | 24 | 96 | 340 | 312 | 116 | 500 | 500 | 800 | 850 | 850 | 800 | 800 |
予定 再処理量 | 30 | 270 | 350 | 480 | 640 | 800 | 800 | ||||||
貯蔵量 | 8 | 32 | 128 | 468 | 780 | 896 | 1366 | 1596 | 2046 | 2416 | 2626 | 2626 | 2626 |
注:t・Uprは照射前金属ウラン質量換算です。
貯蔵量は輸送容器(キャスク)に収納されている使用済燃料も含みます。
- 再処理施設のアクティブ試験に係る計画書等の提出について 日本原燃 2005年12月22日
- 再処理施設の工事計画に係わる変更の届け出について 日本原燃 2005年3月28日
- 再処理操業延期を経産省に届け出/原燃 東奥日報2005年3月29日(月)
- 「それから、アクティブ試験につきましては、現在では340トンほどの燃料を用 いてアクティブ試験を行おうという計画になってございますけれども」 青柳日本原燃技術部長 原子力安全委員会 再処理施設安全調査プロジェクトチーム第1回会合 2003年7月31日
- 六ヶ所再処理施設の建設状況の概要(pdf)日本原燃(平成14 年11 月19 日)
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ウラン濃縮
天然ウランの中に少量(0.7%)しか含まれない核分裂性の(燃えやすい)ウラン235の割合を遠心分離法、ガス拡散法などの工程によって高めること。
天然ウランのほとんどは、ウラン238からなる。現在一般的に使われている遠心分離法では、6フッ化ウランというガス状にしたウラン化合物を洗濯機のような回転体(遠心分離器)に入れ、遠心力を利用して、外側に重いウラン238、真ん中に軽いウラン235を集める。ウラン235の含有率が少し高まったガスを次の遠心分離器に送るという形で、同じ過程を繰り返してウラン235の含有率を3−4%にすると世界で一般的に使われている軽水炉の燃料に使える。核兵器用には、さらに濃縮を繰り返してウラン235の含有率を90%以上に高める。(ただし、広島に投下された原爆の場合は、平均含有率が80%程度だった。)
世界のウラン濃縮施設
日本以外で単独で商業用ウラン濃縮工場を運転しているのは、核保有国の米・ロ・中。その他は、核保有国の英・仏が絡んだ多国間経営。
六ヶ所村のウラン濃縮工場は、現在の1050トンSWU(分離作業)/年の体制でフル操業すれば100万キロワット級原発9基の年間必要量を1年の操業でまかなえるという規模。最終的には、1500トンSWU/年の体制を目指している。しかし、現在の公称能力のうち、450トンSWU/年は停止されており、実質的には600トンの状態であり、最終目標達成となるかどうかは不透明。
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MOX(混合酸化物)燃料
再処理で得られた酸化プルトニウムと酸化ウランを混ぜて作る燃料。
酸化ウランの方は、天然ウラン、回収ウラン(再処理の際に回収されるもの)、劣化ウラン(ウラン濃縮過程で副産物としてでてくるものでウラン235の含有率が低くなっている)などが使われる。
この燃料を軽水炉に入れて使うのがプルサーマル。プルサーマルは、プルトニウムを熱(サーマル)中性子炉(普通の原子炉)で使うという意味の和製英語。元々、プルトニウムは熱中性子炉ではなく高速中性子炉(高速増殖炉)で使ってさらにどんどんプルトニウムを作る予定だったが、この計画が頓挫しているためにでてきた苦肉の策がプルトニウムを何とか燃やそうというプルサーマル。
六ヶ所再処理工場では、プルトニウムと燃え残りのウランを混合粉末として取り出す工程となっているので、六ヶ所村にMOX工場ができた場合、これをさらに劣化ウランで希釈することになる。
MOX工場は、1985年の会社側と青森県および六ヶ所村との立地協力基本協定には入っていなかったが、2001年8月、会社側が県および同村に立地協力を申し入れ、現在県と村による検討が進められている。計画では、MOX工場は再処理工場の南側に隣接して建てられることになっている。
- 六ヶ所MOX工場建設計画
- 日本原燃 パンフ「MOX燃料工場」 ページ6
世界のMOX施設
現在商業施設を運転しているのは、英・仏・ベルギーのみ。
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原子力長期計画
正式名称:原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画
原子力に関する基本計画を定めたもので、現行の 「長期計画」 (平成12年11月24日)は、主として海外に委託してきた再処理を六ヶ所再処理工場で行い、それに続く再処理工場では、軽水炉使用済みMOX燃料の再処理もできるものとすることなどを謳っている。
長計「軽水炉使用済燃料再処理 」該当部分
3−4.軽水炉使用済燃料再処理
我が国においては、軽水炉の使用済燃料はこれまで、核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設に委託された一部を除いて、海外の再処理事業者に委託され再処理されてきた。この間に、民間事業者は、国内におけるその需要の動向等を勘案し、核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設の運転経験を踏まえつつ、海外の再処理先進国の技術、経験を導入して、六ヶ所再処理工場を計画し、現在、2005年の操業開始に向けて建設を進めている。
我が国は、核燃料サイクルの自主性を確実なものにするなどの観点から、今後、使用済燃料の再処理は国内で行うことを原則としており、民間事業者は、我が国に実用再処理技術を定着させていくことができるよう、この我が国初の商業規模の再処理工場を着実に建設、運転していくことが期待される。なお、この再処理工場や中間貯蔵の事業が計画に従って順調に進捗していく限り、海外再処理の選択の必要性は低いと考えられる。また、この問題については、国際輸送に伴う沿岸諸国の動向を考慮することが重要である。
核燃料サイクル開発機構は、現在、東海再処理施設において、従来の再処理に加え、高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料等の再処理技術の実証試験等を行うこととしており、これらの成果は将来に重要な貢献をもたらすと考えられるので、成果について段階的に評価を受けながら実施することが必要である。
六ヶ所再処理工場に続く再処理工場は、これらの研究開発の成果も踏まえて優れた経済性を有し、ウラン使用済燃料の再処理を行うだけでなく、高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料の再処理も行える施設とすることが適当と考えられるが、さらに、今後の技術開発の進捗を踏まえて、高速増殖炉の使用済燃料の再処理も可能にすることも考えられる。したがって、この工場の再処理能力や利用技術を含む建設計画については、六ヶ所再処理工場の建設、運転実績、今後の研究開発及び中間貯蔵の進展状況、高速増殖炉の実用化の見通しなどを総合的に勘案して決定されることが重要であり、現在、これらの進展状況を展望すれば、2010年頃から検討が開始されることが適当である。
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新長期計画策定会議
2005年中に新長期計画を定めるべく2004年6月から策定会議が行われている。
再処理政策維持を支持する「中間とりまとめ」が2004年11月12日に発表された。
- 新策定会議第13回会議資料
- 参考資料1 核燃料サイクル政策についての中間とりまとめ 平成16年11月12日(pdf, 82KB)
- 参考資料2 基本シナリオの核燃料サイクルコスト比較に関する報告書(pdf, 7,609KB)
- 現行の核燃サイクル政策を維持 東奥日報 2004年11月12日
- 使用済み核燃料、超過分は中間貯蔵 デーリー東北2004年11月12日
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再処理の圧力
再処理問題を追いかけているジャーナリストらは青森県の意向が大きな圧力になっているという。青森県の主張は、再処理が実施されなければ、すでに各地の原発からの使用済み燃料の搬入が始まっている六ヶ所村が燃料の長期保管場所になってしまうから、それを防ぐために再処理をしろというものである。
青森県は、再処理しない場合は使用済み燃料の施設外搬出も含め協議するとした日本原燃との1998年の覚え書きを盾にとる。六ヶ所をゴミ捨て場にするなということだ。
だが
再処理中止となれば、青森県による使用済み燃料受け入れ拒否、貯蔵中使用済み燃料の送り返し要求などという事態になりかねない。それは使用済み燃料の行き場がなくなるという問題を起こすとともに、地元との信頼関係を裏切ったという意味で各地の原子力関連施設を受け入れている自治体との信頼関係の崩壊につながりかねない。このことが再処理強行論の背景にあるという声を記者諸氏から良く聞く。使用済み燃料対策として再処理がいいかどうかという議論とは全く別の次元の問題である。
東奥日報は「拒否カード/「凍結論」封じる重み」(2004年11月19日)と題する記事を次のような県知事の発言の引用から始め、青森県の圧力について解説している。
「青森県は、あくまで国策として、全量再処理されることを前提に、六ケ所再処理施設に使用済み核燃料を受け入れており、万が一でもこれらが再処理されないとすれば、一体誰がどこで保管するでしょうか」(九月二十四日、新原子力長期計画策定会議)。 (上)拒否カード/「凍結論」封じる重み(2004年11月19日 東奥日報)
次の記事も青森県の特殊な力について論じている。 中間貯蔵立地検討の遅れ、背景に県の発言力低下警戒感も (2005年2月13日 東奥日報)
六ヵ所再処理工場の運転が中止あるいは一時停止された場合は、我が国のエネルギー 政策の基本線を大変更することになるので、その影響は計り知れない。日本原燃は青 森県との間に「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合には・・・使用済 み燃料の施設外への搬出を含め、適切な措置を講じるものとする」との覚書を結んで いる。同工場の運転が行われなくなった場合下記のような大きな混乱を招く事になる。
- もし六ヵ所への使用済み燃料の搬出が不可となり、さらに既に貯蔵されている使 用済み燃料が発電所に返還されてきた場合、原子炉サイトでの使用済み燃料プールの 能力が不足し、2015年には全ての発電所の運転が出来なくなる見通しである。
- 政策変更によって地元との信頼関係が崩れれば、海外から返還される高レベル放 射性廃棄物固化体の六ケ所施設への受け入れが拒否される可能性がある。海外からの 返還固化体受入れは、国際取引上の明文化された契約事項である。
- 同様に低レベル放射性廃棄物の受け入れが拒否され埋設処分が実施できなくなる。
- 再処理工場への建設投資額の回収ならびに廃止措置費用を要するのは言うまでも 無い。
- さらに、青森県において長年にわたって構築してきた地元との信頼関係が崩れれ ば、他の原子力施設においても、政府ならびに民間に対する信頼は大きく影響される であろう。
- 2−14 我が国の発電所の使用済燃料から回収されたプルトニウ ムを英仏に保有し、国内においてMOX燃料の使用先が確定しない 段階で、なぜ六ヶ所再処理工場の稼働を急ぐのでしょうか。現在の 状況で、いわゆるプルトニウム・バランスがとれるのですか。
2−1、2−4で述べたとおり、国内における核燃料サイクルの 確立は、エネルギーの安定供給の確保のための手段であります。さ らに、核燃料サイクル事業を着実に進めていくことにより、 ・・・・
(2)国内におけるいくつかの原子力発電所の使用済燃料の貯蔵プー ルの容量は既に限界に近づいており、2010年まで中間貯蔵 施設が稼動しないことを踏まえると、使用済燃料を着実に再処 理することにより原子力発電所の運転の円滑化が図られる
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中間貯蔵施設
使用済み燃料を原発の敷地以外の場所で数十年保管する施設。
電力会社にとっては、六ヶ所再処理工場の使用済み燃料受け入れ・貯蔵プールは、実は、中間貯蔵施設。1998−99年の試験搬入を経て2000年から使用済み燃料の受け入れを始めている。
しかし3000トンしか容量がない。2001年7月の貯蔵プールの水漏れ発見の影響で搬入が遅れていたが、2004年度末には、累積搬入量は約1300トンに達した。再処理が始まらなければ、この貯蔵プールは数年で満杯になる。そうすると行き場を失った燃料で満杯になる原発が2010年頃には数多くでてくる。
3月28日、日本原燃は、2005年度に約575トン(2,510体)を受け入れるとの計画を発表した。そのうち、プールの余裕に問題を抱える東京電力福島第二原子力発電所からのものが約203トン(1178体)となる。
再処理工場が動き出せばこのプールに燃料を送り続けることができる。再処理されるかどうかよりも、発電所から使用済み燃料が送り出せるかどうかがポイントのようである。
しかし、六ヶ所再処理工場がフルに稼働し始めてもその処理能力は年間800トン。現在約900トンの使用済み燃料が毎年発生している。発生量は将来はさらに増えていく。原発の運転停止を逃れるためには、いずれにしても中間貯蔵施設が必要だということになる。東京電力は、青森県むつ市に中間貯蔵施設「リサイクル燃料備蓄センター」(容量5000〜6000トン。運転開始2010年目標。貯蔵期間50年)の受け入れを要請している。県の専門家会議「安全性チェック・検討会」は、2月末にも結論を出す予定。
各原子力発電所の使用済み燃料貯蔵量および貯蔵容量
電力会社 | 発電所名 | 1炉心 (tU) | 1取替分 (tU) | 使用済燃料 貯蔵量(tU) | 管理容量 (tU) |
北海道電力 | 泊 | 100 | 30 | 290 | 420 |
東北電力 | 女川 | 260 | 60 | 280 | 790 |
東京電力 | 福島第一 | 580 | 150 | 1,360 | 2,100 |
福島第二 | 520 | 140 | 1,250 | 1,360 | |
柏崎刈羽 | 960 | 250 | 1,840 | 2,630 | |
中部電力 | 浜岡 | 420 | 110 | 820 | 1,090 |
北陸電力 | 志賀 | 60 | 20 | 70 | 160 |
関西電力 | 美浜 | 160 | 50 | 360 | 620 |
高浜 | 290 | 100 | 940 | 1,100 | |
大飯 | 360 | 120 | 1,030 | 1,900 | |
中国電力 | 島根 | 170 | 40 | 330 | 600 |
四国電力 | 伊方 | 170 | 60 | 450 | 930 |
九州電力 | 玄海 | 270 | 100 | 660 | 1,060 |
川内 | 140 | 50 | 630 | 900 | |
日本原子力 発電 | 敦賀 | 140 | 40 | 520 | 870 |
東海第二 | 130 | 30 | 300 | 420 | |
合計 | 4,730 | 1,350 | 11,110 | 16,940 |
注1)管理容量は、原則として「貯蔵容量から1炉心+1取替分を差し引いた容量」。
注2)四捨五入の関係で合計値は、各項目を加算した数値と一致しない部分がある。
- 中間貯蔵施設の必要性
- 使用済燃料発生量見通し
- 東京電力「リサイクル燃料備蓄センター」事業構想(pdf)
- 使用済み核燃料、貯蔵1300トンに
- 3月17日累積受入れ量約1304トンに 日本原燃
- 2005年度使用済み燃料受け入れ計画 日本原燃
- 東電2005年度使用済み燃料輸送計画
- 東電使用済み燃料貯蔵状況
- 中電使用済み燃料貯蔵状況
- 使用済み燃料等輸送に関する各社のプレスリリース 電気事業連合会
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貯蔵プール水漏れ
2001年7月、再処理工場の使用済み燃料受け入れ・貯蔵プールで水漏れが発見された。日本原燃は、当初、結露水が原因と判断していたが、同年末になっても、水滴の発生が治まらず、水漏れと判断して、調べたところ、不良溶接が原因だったことが判明した。不良溶接ヵ所は、291に上った。
プールは、沸騰水型(BWR)原子炉使用済み燃料用、加圧水型(PWR)原子炉使用済み燃料用、両用の3つがあり、連結されている。水漏れが見つかったのは真ん中のPWR用だったが、調査の結果、溶接問題は他の二つのプールや工場本体にも及んでいることが明らかになった。日本原燃は、ずさんな工事を下請けのせいにしているが、この事件で、下請けに作業を任せっぱなしにして、品質管理を怠ってきた企業の体質が明らかになった。
- 再処理工場貯蔵プール、不良溶接291カ所(2003/08/07掲載)
- 使用済燃料受入れ・貯蔵施設内における漏えい検知装置に係る調査について 2001年12月28日(日本原燃)
- 使用済燃料受入れ・貯蔵施設内における出水原因の調査状況について2002年2月1日(日本原燃)
- 使用済燃料受入れ・貯蔵施設のPWR燃料貯蔵プール水漏えい調査の状況について 2002年4月23日(日本原燃)
- 再処理事業所 使用済燃料受入れ・貯蔵施設のPWR燃料貯蔵プール水漏えい原因調査状況について 2002年11月15日(日本原燃)
- 使用済燃料受入れ・貯蔵施設のプール水漏えいに係る報告について 2003年8月6日(日本原燃)
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再処理コスト
再処理は高くつくことが明らかになっている。
地下深くに処分する場合、使用済み燃料を直接処分すれば、再処理してから廃棄物のガラス固化体を処分する方式の半分のコストで済むとの試算を政府自身が行っていながらその存在を隠していたことが2004年7月に明らかになった。
2003年11月11日、電力業界は、六ヶ所村の再処理コストが総額で約19兆円になるとの試算を提出した。再処理工場だけのコストは、建設・操業・廃止措置(2078年まで)を合わせて約12兆円。高レベル廃棄物の処分、輸送、中間貯蔵など「バックエンド」事業の総額が約19兆円との計算。再処理工場がフル稼働で操業し続けるとするなど無理のある想定が行われていること、最終処分場計画が確定していないことなどを考えれば、コストがこれより大きくなることはさけられないだろう。
- 六ケ所の核燃再処理費用/電力業界試算で19兆円(デーリー東北2003/11/12掲載)
- 原子燃料サイクルのバックエンド事業コストの見積もりについて2004年1月電 気事業連合会
- 巨額な原発のバックエンドコスト−−それでも楽観的な費用計算 勝田忠広(原子力資料情報室)
2004年10月22日、原子力委員会は、2002年−2060年度までの59年 間の発電に伴うコストをつぎの4つのシナリオについて算定した結果を発表した。 (上記のバックエンド事業コスト計算と比べ、期間が長く、再処理対象量が倍近くに なっている)
- シナリオ1:全量再処理 42.9兆円
- シナリオ2:部分再処理(六ヶ所工場で再処理できない部分は直接処分)38.7− 45.6兆円
- シナリオ3:全量直接処分 30.0−38.6兆円
- シナリオ4:当面貯蔵 36.7−40.9兆円
- 核燃料再処理総事業費は42兆円超 東奥日報 2004年10月22日
- 原子力長期計画 原子力委員会サイト
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日本の原子力発電所
2005年1月現在 53基 (浜岡5号炉が1月18日営業運転開始)
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[世界の原子力発電開発の現状]
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六ヶ所再処理工場でできるプルトニウムの量
年間約8トン。国際原子力機関(IAEA)の計算方式に従えば、核兵器1000発分。 年間処理量が使用済み燃料にして800トン。
使用済み燃料中のプルトニウムの含有率は1%弱。 800トンの燃料に含まれるプルトニウムの量は、8トン弱
政府は、年間約5トン弱との数字を使っているが、「プルトニウム量は核分裂性プルトニウム量」と断ってあるとおり、プルトニウム239、プルトニウム241などの核分裂性プルトニウムだけを計算した量。
原子力委員会長期計画策定会議第二分科会報告書『エネルギーとしての原子力利用』 第二分科会報告書 平成12年6月5日 38/48 (pdf)資料自体のページでは、35ページ
「国内再処理工場においては、六ヶ所再処理工場が本格操業した段階で年間約5トン 弱のプルトニウムを回収することが予定されています。」
5トン弱の核分裂性プルトニウムは、全量でいうと8トンだとの説明は、新計画策定会議(第3回)資料第3号 核燃料サイクルの主要要素に係る基礎資料(pdf)の再処理(国内3/4)─下記引用部分─を参照
再処理(国内3/4)
<事業の概要(その2)>○日本原燃(株)が青森県六ヶ所村に、2006年7月の竣工を目指して、我が国初の商業用再処理工場(最大処理能力800t−U/年)を建設中。
- 2004年5月末現在の建設工事進捗率は約95%。
- 2002年11月から化学試験を開始し、主要建屋については2003年12月までに化学試験を終了し、今後、ウラン試験(※1)や使用済燃料を用いた総合試験(アクティブ試験)(※2)を実施する予定。
- 工場内の使用済燃料貯蔵施設の最大貯蔵能力は3,000t−U(現時点で約943t−Uが搬入済)。
- 回収される核分裂性プルトニウムは年間約5トン弱(※3)
- この工場を約40年間操業して約3万2千t−Uの使用済燃料を再処理すると、約4万本の高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)と約5万m3のTRU廃棄物が発生すると試算。
- また、この工場の解体により約4万5千m3のTRU廃棄物が発生すると試算。
- ※1 ウラン試験・・・・使用済燃料の代わりに、放射能の低いウランを模擬燃料として用いることにより、再処理工場の機能・性能の確認等を行う試験。
- ※2 アクティブ試験・・実際に使用済燃料を用いて運転試験を行い,再処理工場の性能が設計どおりであることを確認する試験。
- ※3 非核分裂性プルトニウムを合わせた回収されるプルトニウムは約8トン
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有意量
これだけ行方不明になったら、核兵器一発が作られているかもしれないと考えるようにと国際原子力機関(IAEA)が定めている量。
プルトニウム 8kg
核分裂性のプルトニウムだけの量ではなくプルトニウムの総量。
高濃縮ウラン 25kg
高濃縮ウランの定義は、ウラン235の含有率が20%以上のもの。有意量は、ウラン235の量だけを計算したもの。実際の核兵器は、ウラン235の含有率が90以上のものを使うが、あらゆるレベルの高濃縮ウランで核兵器が製造できるとされている。
なお、25kgというのは、 長崎型の構造 でプルトニウムの代わりに高濃縮ウランを使った場合の量。
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日本の分離済みプルトニウム保有量 2003年末現在
(2004年9月21日発表)英国 13.6トン
フランス 21.6トン
日本国内 5.5トン
合計 40.7トン
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世界の核兵器の材料となりうる物質の量
ISISによると分離済み民生用プルトニウムは2003年末現在で235トンに達している。2002年の数字は、231.3トン。この中で非核保有として目立つのは、ドイツの25.6トンと日本の38.6トン(ともに2002年末の数字)。
プルトニウム
民生用
使用済み燃料 1370トン(毎年70−75トン増加)
分離済み(2002年末現在) 231.3トン (日本38.6トン)
2003年末推定 235トン (日本40.7トン)
毎年15−20トン分離
軍事用
155トン(プラスマイナス31トン)
余剰と宣言された軍事用(つまり民生用)
107トン
高濃縮ウラン
民生用 50トン
軍事用 1425トン(プラスマイナス362トン)
余剰と宣言された軍事用(つまり民生用) 423トン
*これに少量の印パ・イスラエル・南アフリカのものが加わる
民生用原子炉からの分離プルトニウム(2002年末)
- イギリス
- 70.8
- フランス
- 47.9
- 日本
- 38.6
- ロシア
- 37.8
- ドイツ
- 25.6
- イタリア
- 2.4
- オランダ
- 2.1
- スイス
- 2.0
- ベルギー
- 1.8
- インド
- 1.0
- スウェーデン
- 0.8
- スペイン
- 0.5
- 合計
- 231.3
軍事用及び余剰核分裂性物質(2003年末)
(単位:トン) | 軍事用 プルトニウム | 余剰 プルトニウム | 軍事用 高濃縮ウラン | 余剰 高濃縮ウラン |
イギリス | 3.2±0.15? | 4.4 | 21.9±? | - |
中国 | 4.8±2 | - | 20±5 | - |
フランス | 5±1.5 | - | 30±7 | - |
ロシア | 95±25 | 50 | 773±300 | 300 |
米国 | 47±2 | 52.5 | 580±50 | 123 |
合計(四捨五入) | 155±31 | 107 | 1,425±362 | 423 |
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参考になるページ・リンク:
- 原子力キーワードガイド原子力資料情報室発行
- 核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団 資料集
- 東奥日報 むつ小川原開発・核燃料サイクル施設
- デーリー東北 地方特報版 核燃サイクル関連
- asahi.com MYTOWN青森 企画一覧
- 電気新聞記事企画 原子力
- 原子力委員会とは
- 原子力白書
- 原子力安全保安院
- 原子力関連法規
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