米海軍は、10月31日に弾道ミサイル戦略原子力潜水艦ペンシルバニアがグアムのアプラ港に到着したと発表しました。この原潜のグアム寄港の意味について、米国科学者連合(FAS)の核問題専門家ハンス・クリステンセンに問い合わせてみました。
参考:
- 米戦略原子力潜水艦がグアムに 核抑止力強調か NHK 2016年11月1日
- 弾道ミサイル原潜がグアム寄港=北朝鮮けん制か−米 時事通信2016年11月01日
- 在韓米軍司令官「戦争すべきときには戦争の準備を」 朝鮮日報 2016/11/02
- Ballistic Missile Submarine USS Pennsylvania Arrives in Guam Navy News Service, 11/1/2016
- Ballistic missile submarine visits Guam Pacific Daily News, October 31, 2016
以下の返事が来たのは、11月5日、つまり大統領選挙の前です。
二つのアングルがある。
1.この寄港は、公式に、北朝鮮に対する警告だと喧伝されている。STRATCOM(戦略軍)は、この関連を明確に発表した。韓国と日本の政府関係者らがグァムまで引っ張り出され、潜水艦の中を案内され、スピーチをし、そして、アンダーソン空軍基地を訪問した。基地では、B1爆撃機の前で米国政府関係者らと親指を立てるしぐさを仕草をして見せた。
2.寄港は、海軍が昨年、弾道ミサイル戦略原子力潜水艦(SSBN)が時々外国の港で姿を見せるようになると発表してから3番目の「新しい可視性」寄港である。SSBNによる外国の港への寄港は冷戦時代には頻繁にあった。1970年代末から1980年代初頭にかけては、韓国の港にも頻繁に訪れている。しかし、SSBNによる外国の港への寄港は、冷戦終焉後は稀になっていた。2003年の1回を含め、数回しか起きていない。ところが、2015年になって、一隻が突然スコットランドに寄港した。ウクライナ後、ロシアに警告するためである。これが、今年の初めに繰り返された。SSBNは、1988年以来、グアムを訪れていない。しかし、ハワイとサンディエゴには数回寄港している。
全体として、これは、ウクライナとロシアのオペレーションの増加の後、核のさや当てが広い分野で起きていることの一環である。現在の米国のオペレーションには、北極を超えた新しい爆撃機演習や、ヨーロッパ、韓国、オーストラリアへの爆撃機前進配備、それに射程の長いICBM(大陸間弾道弾)の発射実験などが含まれる。
9月9日に北朝鮮が5度目の核実験を行ったことに対する措置として同13日に米国のB1爆撃機2機がグアムから韓国に飛び低空飛行して見せたことに関し、クリステンセンはこれが核搭載能力のない爆撃機によるものだったことを指摘し、「非核限定の戦略爆撃機を拡大抑止の任務支援に使うということは核兵器の役割を減らすという米国の軍事戦略の新しい段階を示すものである」と述べていました。
このこととの関係についてはクリステンセンは次のように説明します。
すべて、様々な戦略能力のミックス(組み合わせ)の一部ということだ。拡大抑止というのは、通常及び核の能力及び行動のミックスだ。だが、ここには、組織間の競争、ステータスという要素もある。空軍は核爆撃機と通常爆撃機の両方でいろいろできる。海軍も、何を持っているか示して見せたい。今回の寄港は、SSBNの新しいタイプのオペレーションだが、いうまでもなく、海軍は攻撃原子力潜水艦(SSN)や水上艦船も持っており、これらも、メッセージを送るために常に使われている。