2005年04月07日

ウラン濃縮及び再処理の開発を差し控えるよう求めるアナン国連事務総長

アナン国連事務総長は、3月21日付けの国連改革に関する勧告において、「ウラン濃縮及びプルトニウム分離の能力の自国における開発を各国が自発的に差し控えるようなインセンティブを創出することに焦点を合わせるべき」だと述べた。「軍縮と核拡散防止の両面における進展が極めて重要であり、どちらも他方の人質となってはならない」として、核保有国の核軍縮の努力を求めると同時に、核拡散防止措置の強化の重要性を強調した。

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投稿者 kano : 20:29

2005年04月06日

NPT再検討会議を控えて ─ 世界で巻き起こる再処理凍結の要求

(原子力資料情報室通信370号用原稿)

 5月2日から27日にまでニューヨークで5年に一度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開かれる。2000年の会議以後に起きた北朝鮮やイランの核疑惑問題の浮上、闇市場の発覚、同時多発テロなどを背景に、ウラン濃縮施設及び再処理施設の凍結を求める声が高まっている。これらの施設では核兵器の材料が作れるからである。

 その中で世界の目が向けられているのが昨年末にウラン試験を始めた六ヶ所再処理工場である。現在大規模な再処理工場を持っているのは、英仏ロだけである。いずれも核保有国である(あとは、インドの小規模施設と日本の東海村パイロット工場)。しかも、英国の再処理工場は近々運転中止となる見込みである。このような中で非核保有国における初めての商業規模の再処理工場が使用済み燃料を使った試運転に年内にも突入しようとしている。

 六ヶ所では、年間800トンの使用済み燃料が処理され、約8トンのプルトニウムが生産される計画である。国際原子力機関(IAEA)では、プルトニウムが8kg無くなれば1個原爆が作られている可能性があると思えという基準を定めている。つまり、フル稼働すれば原爆1000個分程度が毎年作られるということである。このような大規模な工場では、約1%程度の計量管理の不確実性が避けられないとマサチューセッツ工科大学(MIT)のマービン・ミラー教授が説明している。年間10個分程度は、本当に無くなっているのかどうか確認できないと言うことである。

 日本ではしばしば原子力発電の使用済み燃料から抽出される「原子炉級」プルトニウムでは、核兵器はできないと主張されるが、国際的には、できるとの決着がついている。例えば、IAEAのブリックス事務局長(当時)は、1990年に、次のように述べている。IAEAは「原子炉級プルトニウムも・・・核爆発装置に使うことができると考える。当機関の保障措置部門にはこの点に関して論争はまったくない。」

 日本には核武装の計画などないと言っても問題はなくならない。六ヶ所のような施設が世界各地にできれば核拡散の可能性が大幅に高まる。イランや北朝鮮は、隠れて再処理・ウラン濃縮施設を建設・運転しようとしたから問題になっているが、公式に宣言して作れば、反対する根拠はない。闇市場の存在は、いかに原爆の材料の生産技術が手に入れやすいものになったかを示している。その気になればどこの国でも、公に濃縮や再処理の施設を作ることができる。「プルトニウムか高濃縮ウランを手にした国は、核兵器の開発能力という点で、その決定をすればおそらくあと1ヶ月のところにあるといえるだろう」とIAEAのエルバラダイ事務局長は述べている。

 経済性がないと政府自身が認めている再処理工場を日本が運転することになれば、他の国がエネルギー供給の上で必要性のないウラン濃縮・再処理施設を作る口実になってしまう。日本は、再処理を委託してきた英仏に合計35トン、国内に5トン、合わせて40トンのプルトニウムを保有している。これを活用するはずの高速増殖炉計画は破綻し、何とか普通の原子炉で燃やそうというMOX計画も進んでいない。これ以上のプルトニウムを急いで作る理由はない。

 国家に核保有の意図が無くとも、テロリストグループが核物質を密かに盗み出したり攻撃によって略奪したりする可能性がある。

 エルバラダイ事務局長は、ウラン濃縮・再処理施設の建設を5年間凍結してその間に規制方法を議論するとの決定を再検討会議ですべきだと主張して脚光を浴びている。凍結要求の声は他にもある。国連の機能・組織改革の検討のためにアナン国連事務総長が設立したハイレベル諮問委員会は、昨年暮れに発表した『提言』の中で、濃縮・再処理サービスの提供保証について交渉が続けられている間、 各国が「自発的に、濃縮・再処理施設の新規建設に関する期間限定モラトリアムを設定すべきだ」と 提案している。ブッシュ大統領も、昨年2月『原子力供給国グループ(NSG)』の40カ国(現在は44カ国)は、本格的なすでに稼働しているウラン濃縮・再処理施設を持っていない国には濃縮及び再処理機器・技術を売ることを拒否すべきだ」と主張した。六ヶ所は例外扱いとなっている。

 これらは新設についての凍結案だが、既存のものを含めたプルトニウム製造停止案もある。国連の大量破壊兵器委員会(WMDC)の委員長を務めるブリックス前IAEA事務局長は、昨年6月「私の委員会では、すべての国の高濃縮ウラン及びプルトニウムの製造を禁止する条約に向けて進まなければならないとの非常に広範かつ強い意見がある。」と述べている。また、米国のカーネギー平和財団の核拡散問題の専門家らは、3月3日発表した報告書で、高濃縮ウランの製造禁止とプルトニウムの一時製造停止を呼びかけ、「プルトニウムの蓄積は、今日の状況において非常に大きな世界的脅威をなすものであり、安全保障上の命題が他の面の考慮全てに優先すべきであり、追求されるべきである」と述べている。世界の民生用の分離済みプルトニウムは約235トンに達しているのである。これまで核兵器用に生産されたプルトニウムの量約250トン(うち余剰と宣言されたのが100トン)と比べればその大きさが分かる。軍用の余剰分と民生用を合わせた合計330トンの処分が核拡散防止の緊急課題である。

 米国の「軍備管理協会(ACA)」のダリル・キンボール事務局長は、六ヶ所のウラン試験開始について、「核の拡散防止を目指して国際社会が新たな規範を確立しようと奮闘しているのに、再処理の選択肢をほかの国にも与えかねない」と厳しく批判している。

 六ヶ所再処理工場が運転に入ってしまえば、それは第二の核時代−−大規模核拡散の時代−−の幕開けを告げることになるかもしれない。いま再処理計画の中止を発表すれば、日本は、第二の核時代の幕開けを阻止した国として歴史にその名を残す可能性がある。選択をするのは私たち日本人である。

投稿者 kano : 18:27

2005年04月04日

「六ヶ所は核拡散防止面の大きなテスト」 ─ 再処理計画中止を呼びかける米専門家

グリーンピース・インターナショナル上級アドバイザー(核問題担当)のトム・クレメンツ氏が「六ヶ所 ─ 核兵器を持っていない国における唯一の商業用再処理工場となる施設 ─ が、運転を実際に始めれば、核兵器物質の拡散は受け入れられるものであり、NPTはそれを阻止し損ねたというシグナルになる」と運転開始断念を訴える講演を東京(3月22日)、広島(同22日)、大阪(同23日)、京都 (同24日)で行った。

『日本・世界の核軍縮・核拡散防止 ─ プルトニウム拡散の「六ヶ所テスト」を前にして』トム・クレメンツ

各紙は次のように報道した。

トム・クレメンツ

グリーンピース・インターナショナル上級アドバイザー:核問題担当(核拡散、核物質輸送、米ロ軍事用プルトニウム処分(MOX)など)NPT問題に深く関わり、IAEA関係者とも頻繁に接触。

1989年 米国グリーンピース・スタッフ。エネルギー省核兵器製造施設問題担当
1992年 グリーンピース・インターナショナル・スタッフ。核拡散問題担当。
 プル トニウム、MOX、核廃棄物、とりわけその輸送が中心課題。
 民生用プルトニウム利用計画に反対する活動の中で日本にもたびたび訪れる。
1999年 NGO核管理研究所(NCI)事務局長。核拡散問題に取り組む。
2002年 グリーンピース・インターナショナル上級アドバイザー
2003-4年 NPT再検討会議準備委員会において米国の核軍縮の義務を主張し、新型低威力及び地中貫通型核兵器開発反対の論陣を張る。

投稿者 kano : 18:18