核情報

2014.12.11

オバマ大統領核軍縮の実績
冷戦後最小の削減量・率、残りの2年で挽回の手は

2009年4月5日のプラハ演説で、「核のない世界」を目指し、「冷戦時代の考え方に終止符を打つ」「核兵器の役割を縮小する」「核兵器の量を削減する」と約束したオバマ大統領でしたが、実は、就任から6年間で503発削減しただけで、冷戦後の4人の大統領の中でもっとも削減数が小さいという結果になっています。

「米国科学者連合(FAS)」のハンス・クリステンセン氏が10月15日のブログに載せた下のグラフを見てみましょう。灰色の部分が、米国の保有核数の歴史的水位を、折れ線が各年の増減数を示しています。右に示したのは同氏のデータを使って冷戦後の政権毎の削減数を棒グラフにしたものです。前政権から引き継いだ核兵器を何%減らしたかを示す数字を見ても、冷戦後の4人の大統領は就任順にそれぞれ41%、23%、50%、10%となっており、オバマ大統領の成績は振るいません。クリステンセン氏が指摘している通り、保守的な米国議会、核削減交渉を拒絶するロシアのウラジーミル・プーチン大統領、米国内の核兵器関連組織の抵抗などに直面した結果なので大統領だけを責めることはできませんが、皮肉な結果となっています。

残りの2年と日本の役割

クリステン氏は、残された2年で挽回できる手は、2010年4月に米ロが締結した新「戦略兵器削減(START)」条約で予定されている弾頭退役を前倒しで進めたり、財政事情を心配する議員らと、戦略原子力潜水艦や大陸間弾道弾(ICBM)の削減や無用な計画の中止について交渉して将来必要でなくなる弾頭を退役させたりすることだと言います。

大統領の成績に日本が貢献できることがあります。オバマ大統領は、できるだけ多くの核兵器を数分で発射できる一触即発の「警戒態勢」から外すこと、世界中の核兵器利用可能物質の量を最小化し防護体制を強化することを提唱してきています。

核のない世界と一触即発の核ミサイル発射態勢解除──日本に協力求める米団体」で紹介したとおり、米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」は大統領がまず、ICBMの警戒態勢を一方的に解除することを提案しています。これなら、ロシアや議会と交渉することなく実施できるが、日本が反対しないことが鍵となるとして、日本の反核団体に協力を求めています。 また、日本は、プルトニウムを核兵器6000発分近くになる47トンも保有していながら、消費の目処も立たないまま、六ヶ所再処理工場を動かしてさらに年間8トン(1000発分)も抽出する計画です。UCSのキャンペーンに協力すると共に、この非核兵器国で唯一の大規模再処理工場の運転をさせないことが、オバマ大統領の成績向上に繋がります。


米国の保有核兵器数と年次変化


参考

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