核情報

2012. 5. 2

再処理割高との再計算結果──それでも前回計算「ペテン」をごまかす原子力委事務局
 説明責任と「国民的議論」

4月27日、原子力委員会事務局が、再処理の方が割高になるとの再計算結果を発表しました。2011年11月に原子力委員会が発表した再処理が割高との報告からすれば当然です。事務局は、再処理の方が安いとの19日の計算結果との違いは、今回は「2010年から2030年までだけを見るのではなく」「将来を見通して発生する」総費用を見たからだとの説明をしていますが、これは明らかなごまかしです。実際は、前回の計算も将来まで見たものでした。

違いは、今回はバックエンドの計算対象となる使用済み燃料の量を六ヶ所再処理工場で処理予定の合計3.2万トンにそろえたということです。2010年に約 5000万kWだった原子力設備容量を2030年に3000万kWに減らすケース II で見ると、前回は、再処理では、2010−2030年の20年間に発生する約1.6万トンだけの将来にわたる処理・処分費用を計算していました。一方、直接処分では、この約1.6万トンと既発生分の約1.7万トンとを合わせた合計約3.2万トン分に関係する六ヶ所再処理工場建設・廃止措置費用などを1.6 万トン分の直接処分費用に加算していました。1.6万トン vs 3.2万トンという比較です。これに対し、今回は、再処理も、直接処分も、3.2万トン分の費用を計算して比べてみたら、再処理の方が高くつくという当たり前の結論になったということです。つまり、違いは、将来の扱いではなく、過去分の扱いにあるのです。事務局の説明では、二つの計算で、再処理の方が高くなったり、低くなったりする理由が分かりません。

ここでは、計算・再計算のどたばたの流れを概観した後、4月27日の事務局説明資料を 見ながら,計算のまやかしについてまとめます。

参考




概観

事務局の問題は4つあります。これを下に整理しておきましょう。

背景

0.1 4月12日 原子力委員会近藤委員長が、2004年政策変更コストについて、「皆さん勝手に足し算しちゃった」と事務局が勝手なことをしたことを示唆する発言。

0.2 4月12日、「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」の鈴木座長が、次回提出する計算では、既投資額(建設費等)は入れないと説明。

事務局の問題行為

  1. 4月19日、座長の指示を無視して、六ヶ所再処理工場建設費を直接処分コストに上乗せする計算方法を提示したこと。
  2. この3.2万トン分の費用を全額、20年間に発生する1.6万トン分のコストとして計算したこと。
  3. 六ヶ所工場の廃止措置などについても、3.2万トン分の費用を1.6万トン分のコストとして計算したこと。
  4. 4月27日、再計算手法と19日の計算の手法の違いをごまかして説明することにより、19日の計算手法の問題を糊塗したこと。

4.の結果、座長が「誤解を招いた」としている4月19日の計算結果が、そのまま報告書に残されようとしています。このままの形で小委員会の報告がまとめられてしまうと、5月半ば以降行われることになっている「国民的議論」は事実に沿わないものとなってしまう恐れがあります。マスコミや国会は、国民の知る権利を保証することができるでしょうか。

以下、4月27日の原子力委員会事務局の説明を見ながら、上述の4つの行為

  1. 「服務規程違反」的建設費追加行為
  2. 六ヶ所再処理工場建設費の「ペテン的足し算」的行為1
  3. 六ヶ所再処理工場廃止措置他の「ペテン的足し算」的行為2
  4. 「ペテン的説明」的行為

をまとめておきます。

  1. 概観
  2. 今回(4月27日)の計算の概要
    1. 六ヶ所再処理工場で再処理する計画の3.2万トン、どちらの処理・処分方法がお得?
    2. 計算方法の明確化を
  3. 前回の計算との比較
    1. 二つの計算をケース II で比較
    2. 二つの計算についての説明 違いは将来分?
    3. 二つの計算の本当の違いは過去分 計算対象:1.6万トン vs 3.2万トン
    4. トリックを表で示すと?
    5. 4月19日と27日の計算について事務局がすべきだった正しい説明の例
    6. 第二再処理工場建設費?
    7. 4月27日配布資料で見ても分かるインチキの構図:2回の計算でほとんど変わらない直接処分コスト
    8. 前回は20年についての計算だったと最後までごまかす事務局
    9. 19日の計算で直接処分費として算入されていなかったは、1.45兆円+中間貯蔵費だけ
    10. 近藤委員長の指摘を無視した勝手な足し算提案?



今回(4月27日)の計算の概要

六ヶ所再処理工場で再処理する計画の3.2万トン、どちらの処理・処分方法がお得?

今回の計算は、基本的には、これまでの投資分を無視して、六ヶ所再処理工場で再処理する予定の3万2000トンをこれから再処理するのと直接処分するのとどちらが得かを比べたもの。投資分にせよ、これからかかる費用にせよ、電気料金か税金かは別として、いずれにしても国民が払わされると考え、国家として、これからどれだけの費用が必要となるのかという計算をしたものだ。

答えは、再処理だと15.4兆円、直接処分だと11.8〜12.6兆円となった。差は2.8〜3.6兆円だ。この計算では、六ヶ所再処理工場約2.2兆円プラスαが計算から外されている。また、六ヶ所再処理再処理工場の廃止措置関連1.78兆円が、再処理政策を今放棄してもかかるということで、直接処分の方に加算されている。2006年に使用済み燃料を使ったアクティブ試験を始めて施設を汚してしまったことの付けだ。結論は、このような操作をしても2.8〜3.6兆円の差が出るということだ。

計算については詳細を見てみなければ分からない部分があるが、2011年11月10日に原子力委員会が再処理モデルが約2円/kWh、直接処分モデルが約1円/kWhと発表していたのだから、この順番になるのは当然だ。

松村委員が以前からこのような計算を要求していた。鈴木座長が既投資分を計算に入れないと4月12日に約束したとき、このようなものが出てくると期待されていた。山地委員が、計算に入れないのは良いが、これまでどのくらいかかったかを算出してみた方が良いと述べたことからすると、六ヶ所再処理工場の2.2兆円という建設費が、実際はどれくらいになっているのかが示され、それは、両方のシナリオから外して、今後かかる費用が計算されるはずだった。ところが、事務局がこの指示を無視して前回の計算を示した。

事務局は、松村委員が提案したような計算をするのは大変だと渋り続けていたようだが、2011年秋にやったモデル計算は、六ヶ所再処理工場の例を使い、建設・運転・廃止措置・処分などの各要素を計算し、積み重ねて総額を出した後、燃料が生み出す電力量で割ってバックエンドを計算したはずである。すでにあるデータの処理が優秀な事務局スタッフ等にそれほど難しいとは信じがたい。現に、19日に松村委員が、これまでの投資を計算に入れず、これからいくらかかるかというやり方でも見せて欲しいと強く要求した結果、計算は1週間で出てきた。

計算方法の明確化を

伴委員は、4月19日の会合で、計算方法が明示されていないので、コメントのしようがないと述べている。これは、27日の計算にも当てはまる。

各委員の他、外部の専門家の検証に耐えられるようデータの詳細と計算方式を早急に明示し、マスコミにも説明すべきだ。山地氏が要請した六ヶ所再処理工場に対する投資費用全額の提示も必要である。

建設費 2.2兆円 +α の詳細の代わりに、「減価償却費の見合い分」1.78兆円などという帳簿上の概念が入っているのは、日本原燃側の主張を全面的入れた計算になっていることの証明ではないのか。

参考

前回の計算との比較

二つの計算をケース II で比較

今回の計算は、六ヶ所で処理される予定の3.2万トン(800トン/年x40年)を再処理した場合と、直接処分した場合とについてこれからかかる費用を見るものだから、前回との比較をするには、ケース II を使うのが便利である。

全発電全体に占める原発の比率が2030年に20%(5.6兆kWh:設備容量3000万kW)になるケース II では、2030年までに発生する使用済み燃料は、既発生分と合わせると、ちょうど3.2万トンになるからである。

2010年末時点の使用済燃料の総量は約1.7万tUである。2030年までに追加で発生する使用済燃料の発生量は、約1.6万tUであり、合計で約3.2万tUとなる。

出典 資料第1−2号 ステップ3の評価:2030年まで(原子力比率 II のケース)(改訂版)(PDF:1.19MB)

*1.7万トン+1.6万トン=3.2万トンと足し算が合わないのは、四捨五入の関係だろう。

二つの計算についての説明 違いは将来分?

以下は、資料第1−5号 ステップ3の経済性評価の方法について(PDF:342KB)を使いながらの事務局の説明

前回の計算

再処理コストについての説明: 20年分だけにつき将来にわたり計算

2ページに「3.2万tUの使用済燃料に係るバックエンド総費用の年度展開」「総費用を3.2万 tUで除し、1tUが発生する電力量で除して単価に変換(円/kWh)」「2010〜2030年の発電電力量を乗じる」とある。要するに、六ヶ所で処理予定の総量3.2万トンに関わるバックエンドについて、地層処分後300年まで総費用を計算し、キロワット時当たりに換算、それに2010〜2030年の20年間の発電量を掛けて、20年間に発生する使用済み燃料のバックエンド費用を算出するということ。


2012/4/27   原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(第13回)

資料第1−5号(pdf) 2ページ

以下の引用部分は、原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会 2012年4月27日第12回 音声から再現

この考え方は、発電時点で発生しうる費用ベースの核燃料サイクルの総費用と言うべきものだろうと考えてございます。・・・

使用済み燃料を再処理します、それから最終処分します、それから再処理施設については廃止処分が必要となります。こういうような費用の総額を足し合わせまして、その中で2010年から2030年までの間に準備しておくべき費用を算出するというのが考え方でございます。・・・2005年から事業費として展開がされます。再処理の費用があった後で、再処理施設の廃止措置という費用があります。それからガラス固化体の地層処分というのがありまして、最後はモニタリング等の管理もありますので約300年ということになります。

で、これらに必要な費用をすべて、足し合わせまして、それで、円/kWhに換算をし直して、長方形のような形にすると。その中で2010年から2030年に発生した分の費用を前回は出させていただいております。

六ヶ所の再処理工場につきましては、大体年間800トンの定格処理量で、40年の寿命と考えて、かけ算をして3万2000トンの使用済み燃料を処理することを標準的な処理量と考えておるわけですけども、[これまでは]40年で全体のコストを回収する考え方だったの対し、今回[4月19日の計算では]、2010年から2030年の20年間を考えていますので、全体としては、トータルのコストの一部分を切り出したような数字になっているものでした。

*これはその通り。

直接処分コスト(3ページ)についての説明  こちらも「20年分だけ計算」?

全量直接処分の考え方ですけれども、使用済み燃料の貯蔵期間がありまして、それで、直接処分の処分場ができたときに、処分をすると言うことで、処分に必要な費用を計算する。

これらの全体の費用をやはり同じように円/kwhに換算をする。この長方形のような形にして、この中で2010年から2030年に発生する費用の部分を切り出してお示ししたのが前回の考え方だったわけでございます。


2012/4/27   原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(第13回)

資料第1−5号(pdf) 3ページ

*このページの一番下の、「上記以外に、以下の費用も算出」という一番重要な部分に全く言及しないのは、説明責任の無意識回避かペテンか。これがペテン的足し算に当たる部分だ。

今回の計算の説明 遠い将来まで計算?

全量再処理の場合に必要となるトータルの絵姿は変わっていません。この中で、2011年より前、過去に発生した費用は除きましょうと言うことと、これからなんですけど、減価償却費等々のものは外しましょうと。残りのものがすべて事業費となると考えて、計算をするものでございます。

これは将来を見通して発生する費用ベースで考えるタイプの総費用と考えればよろしいのではと思っております。この数字を全部足し合わせたものとなっておりますので、一言で言えば、発生する費用の総費用量が出てくると言うことかと思います。先ほどのように2010年から2030年の20年間に限るというようなことはしておりません。


2012/4/27   原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(第13回)

資料第1−5号(pdf) 5ページ

*分かりにくい図だが、緑の部分は、帳簿上の減価償却費を前回は計算に入れていたが、今回は外したことを示している。


2012/4/27   原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(第13回)

資料第1−5号(pdf) 6ページ

今回、2011年というのが登場するのは、「2010年末」と同意だろう


二つの計算の本当の違いは過去分 計算対象:1.6万トン vs 3.2万トン

2−3ページの図を見ると、20年間の計算だけをしている印象が残るかもしれないが、実際は、総費用は、遠い将来まで計算して出して、単位当たりのコストを出してるのだから、どの時点の使用済み燃料発生量をとっても、その使用済み燃料のバックエンドコストは遠い将来まで入っている。そして、シナリオTもUも六ヶ所再処理工場で処理出来る最大量3.2万トンは2030年までに発生する。だから、六ヶ所再処理工場で処理可能な量についていうと、違いは2010−2030年の20年間だけを見るか、既発生分も合わせて見るかだ。問題は、19日の計算が、説明通りのやり方になっていないことだ。

  • 再処理シナリオ:事務局の説明通り、20年間に発生する1.6万トンだけについて遠い将来までのコストが入っている。
  • 直接処分シナリオ:3ページにあるように、事務局は、1.6万トン分以外に、次のような項目を「シナリオを実現するために今後追加となる費用」として加算することを提案した。その結果、3.2万トンの関連費用のほとんどを、2020−2030年の 20年間のコストに入れてしまった。

「上記以外に、以下の費用も算出」「シナリオを実現するために今後追加となる費用」とは?

(下に示したのは他のページを参考にしたまとめ):

1)再処理工場未償却資産に見合う費用 1.78兆円(基本的に六ヶ所再処理工場の建設費のこと)

2)六ヶ所再処理工場廃止措置費用(1.78兆円)及び既発生ガラス固化体等処分費用(0.04兆円) 合計 1.82兆円

3)過去に発生した使用済み燃料1.7万tUを直接処分に変更する場合に不足となる費用 1.02兆円
総計:4.62兆円

3)の意味はこういうことのようだ。

すでに発生している1.7万トンについて、再処理シナリオでは、地下処分用費用が過去の電力料金に組み込まれ、積立金として確保されている。直接処分シナリオでは、再処理で発生するガラス固化体の地下処分の代わりに、使用済み燃料の地下処分が必要となる。だから、この1.7万分のガラス固化体処分費と使用済み燃料処分費の差額を、2010−2030年のサイクルコストに追加することを事務局は提案した。つまり、再処理シナリオでは、1.7万トンの再処理費用、ガラス固化体処分費用、六ヶ所再処理工場建設・廃止措置費用などが基本的に1.7万/3.2万の割合で過去の費用として除外される一方、直接処分シナリオでは、この1.7万トンに関係する処分費用、六ヶ所再処理工場建設・廃止措置費用などのほとんどを2010−2030年のコストに組み入れるという計算だ。

つまり、違いは将来にではなく、過去にある。

トリックを表で示すと?

4月19日、事務局は、12日の座長の説明・委員等の議論を全く無視して、次のように発言した。

ベース値というものを計算しまして、そのベース値に「シナリオを実現するために今後追加となる費用」というものを加えたものを総費用としてはどうかというご提案でございます。・・

出典

この「ご提案」内容を表にするとだいたいこんな感じだろう。

事務局の提案:

再処理シナリオでは、2010−2030年の発電に使われた燃料に関するコストだけを計算(緑の部分) 

直接処分では、2010−2030年の発電に使われた燃料に関するコストに加えて、既発生分の1.7万トンに関連したバックエンドコストの大部分も、 2010−2030年のサイクルコストとし計算(黄色の部分)

ケース II(2030年設備容量3000万kW)の場合:計算対象期間の終わりの時点で
累積発生量がちょうど六ヶ所の処理容量(3.2万トン)に到達
 過去分計算対象期間
(2010−2030年)
燃料サイクルコスト既発生量1.7万t関連費用20年で発生する1.6万tの関連費用 
直接処分費用計算フロントエンドフロントエンド 
中間貯蔵中間貯蔵 
六ヶ所建設六ヶ所建設*総額1.78兆円(建設費自体ではなく減価償却費用として事務局が計上)
六ヶ所廃止措置など**六ヶ所廃止措置など****廃止措置総額1.78兆円+既存ガラス固化体処分0.04兆円
[直接処分費]−[積立金徴収のガラス固化体地下処分費]= 1.02兆円使用済み燃料地下直接処分費赤枠部分:事務局が計算対象期間の費用として加算するよう提案した追加費用 合計4.62兆円 +α
黄色部分:計算対象期間の直接処分シナリオの費用として計上することを事務局が提案した部分
再処理費用計算フロントエンドフロントエンド緑色部分:計算対象期間の再処理シナリオの費用として計上することを事務局が提案した部分
中間貯蔵中間貯蔵
六ヶ所建設六ヶ所建設
再処理運転再処理運転
六ヶ所廃止措置六ヶ所廃止措置
ガラス固化体地下処分費ガラス固化体地下処分費

4月19日と27日の計算について事務局がすべきだった正しい説明の例

シナリオ II を例に取ると、前回は2010年〜2030年の20年間に発生する1.6万トンだけを見たが、今回は、六ヶ所再処理工場の処理予定量3.2万トンを再処理した場合と、直接処分した場合とについて、今後かかる費用を計算する。これは、既発生分1.7万トンも含めた2030年までの累積発生量と同量である。前回は、1.6万トン、今回は3.2万トンのすべてについて今後発生するサイクル・コストを見ると言うことだ。ただし、実を言うと、前回も、直接処分に関しては、既発生分1.7万トンに関わるバックエンド費用のほとんどが、2010〜2030年の20年間の1.6万トンのコストに上乗せされていた。直接処分が高いかのような計算になっていたのはそのためだ。今回は、再処理についても、前回の直接処分のような計算をしたということだ。今回は3.2万トン vs 3.2万トンで公平な計算、前回は、1.6万トン vs 3.2万トンと不公平な計算だった。

第二再処理工場建設費?

2010年の設備容量約5000万キロワットを維持するとういケース I では、2010−2030年の途中で六ヶ所再処理工場の処理可能量を超えて使用済み燃料が発生し始めるので、実際の政策としては、全量再処理シナリオなら、第二再処理工場建設への投資について考えなければならない。均等にトン当たりの費用をモデル計算で算出したあと、恣意的なシナリオについて計算する中で、この膨大なコストの発生が無視されている。政策論としては重要なポイントだろう。2005年の政策大綱では、2010年頃、第二再処理工場について検討し始めることになっていた。

4月27日配布資料で見ても分かるインチキの構図:2回の計算でほとんど変わらない直接処分コスト

以下は、4月27日の「資料第1−2号 ステップ3の評価:2030年まで(原子力比率 II のケース)(改訂版)」(PDF:1.19M)より

16ページ 19日のものを若干修正したバージョン

合計の欄は核情報が追加

経済性:発電時点で発生し得る費用ベースの核燃料サイクルの総費用
−シナリオを実現するために今後追加となる費用−

  シナリオ1,2シナリオ3
六ヶ所再処理
事業中止に伴う費用
@再処理工場及び既着工済MOX工場の建物・設備の未償却資産見合いの費用1.78 兆円
A廃止に必要な廃棄物処理設備等*の建設費及び既存施設も
含めた工場全体の廃止までの操業費
 *:現在未建設だが操業中と廃止中に使用する設備
ベース値に含む0.27 兆円
B上記@及び2の建物・設備の廃止措置費用同上1.51 兆円
C発生済廃棄物(ガラス固化体及びTRU廃棄物)の輸送・処分費同上0.047 兆円
D回収済Puの貯蔵管理・処分関係費用同上α

既発生分の使用済燃料の直接処分とガラス固化体の費用差
(1.7万トン×(14,500万円/tUー8,500万円/tU)

1.02 兆円
合計 4.62 兆円

出典:日本原燃からの提供等に基づく

16ページ


18ページ 19日計算を若干修正したバージョン

合計の欄は核情報が追加

経済性:発電時点で発生し得る費用ベースの核燃料サイクルの総費用
−比率 II (総発電電力量5.6兆kWh)まとめ−

 
シナリオ1
(全量再処理)
シナリオ2
(再処理/処分併存)
シナリオ3
(全量直接処分)
   中間貯蔵分を再処理中間貯蔵分を直接処分 
1ベース値8.3兆円8.3兆円8.1兆円5.6~5.7 兆円
2未償却資産の 見合い費用1.78兆円
廃止に必要な設備・ 廃止措置費用等ベース値に含むベース値に含むベース値に含む1.825兆円
既発生分の使用済燃料の
直接処分とガラス固化体の処分費用差
1.02兆円
小計 4.62 兆円
合計8.3兆円8.3兆円8.1兆円10.22~10.32 兆円
上記の他に立地自治体との条件の変更に伴い下記費用が発生する可能性がある。
3 0.03兆円0.39兆円

18ページ


19ページ 新しく入った表

赤ワクの強調は核情報

経済性:将来を見通して発生する費用ベースの核燃料サイクルの総費用

使用済燃料を再処理し、最終処分するとともに、再処理施設の廃止措置等に必要な 費用から、2011年以前に支出した費用、六ヶ所再処理工場の初期建設費の減価償却 費を引いて算出
(資料第1-5号参照)。なお、割引率は0%とした。 単位:兆円
 
シナリオ1
(全量再処理)
シナリオ2
(再処理/処分併存)
シナリオ3
(全量直接処分)
兆円,割引率0% 中間貯蔵分を再処理中間貯蔵分を直接処分 
ウラン燃料
MOX燃料※
(フロントエンド計)
3.40
0.94
(4.34)
3.40
0.94
(4.34)
3.40
0.94
(4.34)
4.00

(4.00)
再処理等
中間貯蔵
高レベル廃棄物処分
直接処分
(バックエンド計)
8.17
0.16
2.74

(11.1)
8.17
0.16
2.74

(11.1)
8.09
0.16
2.72
0.04~0.04
(11.1)
1.78
1.68
0.04
4.30~5.10
(7.80~8.60)
合計15.415.415.411.8~12.6
上記の他に立地自治体との条件の変更に伴い下記費用が発生する可能性がある。
 0.03兆円0.39兆円

19ページ

出典


前回は20年についての計算だったと最後までごまかす事務局

18ページと19ページの額が大分違っているのがご覧いただけると思いますけれども、繰り返し申し上げますけれども、先ほどは、20年間の事情?を計算しておった。今回はそうではないものですから、額は変わってきていると言うことがありますし、割引率が、3%と0%という違いもありまので、その辺で全体的に大きく出ていると言うことでございます。

そんなことはない。両ページの合計を比較すれば、二つの計算方式で全量直接処分の数字がほとんど変わっていないことが分かる。3.2万トンに関連したほとんどの費用が、既発生分も含め前回の計算に含まれていたからだ。再処理の方が大幅に膨らんでいるのは、既発生分1.7万トン関連が新たに計算に入ったからだ。

19日の計算で直接処分費として算入されていなかったは、1.45兆円+中間貯蔵費だけ

27日の計算と比べて、19日の計算で入っていなかったのは、既発生分1.7万トンに関する費用のうち、中間貯蔵と使用済み燃料の地下処分費用に関わる部分の一部だけだ。

直接処分費の差

算入されていたのは

[直接処分費]−[積立金徴収のガラス固化体地下処分費]= 1.02兆円

  16ページによると直接処分費=1.7万tx( 14,5000万円/t )= 2.47兆円

  ガラス固化体処分費 = 1.7万t x 8,500万円 = 1.45兆円

◆つまり、今回の計算に付け加えられるのは、1.45兆円と1.7万t の中間貯蔵だけということだ

 *既発生分のフロントエンドは全く入っていないが、19ページはこれから発生する費用の計算なので、同じく入っていない。

逆に計算から外されたのは 1.78兆円+α

今回外された既投資分は、18ページにある未償却資産の見合い費用1.78兆円

それと、廃止措置関係ですでに支出したもの ?円

これらを計算に入れると

10.22〜10.32兆円 + 1.45兆円 − 1.78兆円 = 9.89〜9.99兆円 ( + 1.7万t の中間貯蔵)

これが、今回計算の11.8〜12.6兆円に相当する。

両者の違いは、主として、今回割引率を0としたことから来るものだろう。

繰り返して言うと、19日と27日の計算の差は、将来分ではなく、既発生分の扱いの違いである。将来ではなく過去。ポイントは、1.6万トン vs 3.2万トンだ。


費用計算対象期間を1年とするとさらに明らかになるペテンの構図

2010〜2030年が計算対象期間となっているのは、経産省総合資源エネルギー調査会「基本問題委員会」やエネルギー環境会議「コスト等検証問題委員会」での議論に合わせるためであって、特に意味があるわけではない。この計算対象期間を2010年末から2011年末にして考えると、事務局の「ご提案」の無茶さがさらに浮き彫りなる。ここでは、全体としては、ケースUにおいて、2011年の大地震がなかったとして、1年間で0.1万トン(1000トン)の使用済み燃料が発生したとするモデル計算を考える。2030年末までに既発生量約1.7万トンを合わせた累積発生量が3.2万トンとなるとする点は、小委員会で議論されているケースUと同じだ。

18ページの数字を使って、この1年間に発生する0.1万トンのベース値を計算すると

再処理  8.3 兆円 X (1/32) = 約0.26兆円

直接処分 5.6〜5.7兆円 X (1/32)= 約0.18兆円

事務局の「ご提案」だと、これに、直接処分の方だけ「シナリオを実現するために今後追加となる費用」4.62兆円を追加しなければならない。

従って

再処理シナリオ 0.26兆円

直接処分シナリオ 4.8兆円

この結果、直接処分は割高であることが判明したということになる。この構図を表で示すと下のようになる。

こんなことをしていては、世界の笑いものになるだろう。

ケース II(2030年設備容量3000万kW)の場合:2030年末の時点で
累積発生量がちょうど六ヶ所の処理容量(3.2万トン)に到達
 過去分
(2010年末までの既発生分)
費用計算対象期間
(2010年末−2011年末)
計算対象期間後
2011年末−2030年末
燃料サイクルコスト既発生量1.7万t関連費用1年で発生する0.1万t の関連費用1.5万t 関連費用 
直接処分費用計算フロントエンドフロントエンドフロントエンド 
中間貯蔵中間貯蔵中間貯蔵
六ヶ所建設六ヶ所建設六ヶ所建設*総額1.78兆円(建設費自体ではなく減価償却費用として事務局が計上)
六ヶ所廃止措置など**六ヶ所廃止措置など**六ヶ所廃止措置など****廃止措置総額1.78兆円+既存ガラス固化体処分0.04兆円
[直接処分費]−[積立金徴収のガラス固化体地下処分費]= 1.02兆円使用済み燃料地下直接処分費使用済み燃料地下直接処分費赤枠部分:事務局が計算対象期間の費用として加算するよう提案した追加費用 合計4.62兆円 +α
黄色部分:計算対象期間の直接処分シナリオの費用として計上することを事務局が提案した部分
再処理費用計算フロントエンドフロントエンドフロントエンド緑色部分:計算対象期間の再処理シナリオの費用として計上することを事務局が提案した部分
中間貯蔵中間貯蔵中間貯蔵
六ヶ所建設六ヶ所建設六ヶ所建設
再処理運転再処理運転再処理運転
六ヶ所廃止措置六ヶ所廃止措置六ヶ所廃止措置
ガラス固化体地下処分費ガラス固化体地下処分費ガラス固化体地下処分費

近藤委員長の指摘を無視した勝手な足し算提案?

2005年の現大綱を議論していた2004年、「政策変更をすると、六ヶ所再処理工場のプールに貯蔵中の使用済み燃料を各地の原発に送り返すことを青森県が要求する。各地のプールが満杯となって原子力発電所が順次停止となり、火力発電で代替するしかなくなる。このコストを政策変更コストとして直接処分コストに加算すべきだ」というような主張がなされ、これによって直接処分の方が高くなるとの結論が出された。4月12日、近藤原子力委員会委員長は、こんな足し算は間違いであり、どうしても足すならそのような事象が起きる確率を計算し、それを掛けるという方式をとる必要があると説明した。ところが、18と19 ページの表はともに、「六ヶ所再処理工場から国内各発電所に返送する」場合を想定した費用0.05兆円などが「経済性:シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用−立地自治体との条件の変更に伴い追加の可能性のある費用」として挙げられている。その数字は、足して下さいと言いたげだ−−まるで近藤委員長の発言をあざ笑うかのように。

参考



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