核情報

2016. 4.26

使用済みMOX燃料の発生熱は問題ないと経産省──処分場の容量に大きな影響
──再処理法案審議で第2再処理工場の「夢」の開陳

4月20日、衆議院経済産業委員会における再処理法案に関する質疑の中で、経産省は、使用済み燃料から再処理で取り出したプルトニウムを通常の原子炉で燃やした際に出てくる使用済みウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の崩壊熱について「数年程度で十分に低くなる」から特別な扱いが必要になるということはない」と述べました。これはプール貯蔵を念頭に置いての発言でしょう。しかし、現時点では使用済みMOX燃料は一般に地下処分場に送られると見られており、使用済みウラン燃料と比べた発熱量の高さは大きな問題です。必要な処分場の容積を決めるのは、ゴミの体積ではなく、発熱量だからです。再処理で処分場の必要規模を縮小したつもりでも、そこに使用済みMOX燃料を入れることになれば、元の木阿弥、経産省の主張する廃棄物の「減容化」は意味をなさなくなります。

参考

大きな発熱量の差

下の図が示すように、取り出し後50年から300年にかけての使用済みMOX燃料の発熱量は、使用済みウラン燃料の発熱量の約3倍から5倍強という割合になっています。

200年の使用済みMOX燃料は、取り出し後20年の使用済みウラン燃料と同程度の崩壊熱を持っています。そして、使用済みMOX燃料では、50年後の使用済みウラン燃料の発熱量レベルまで冷えるのに300年以上かかります。

  • 核種崩壊生成計算コード ORIGEN2を使った姜政敏(カン・ジョンミン)博士(「天然資源防護協議会(NRDC)」)による計算(2016年4月)

拙速の採決

自由化で電力会社が潰れた場合も原子力発電所の使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理が円滑に進むことを保証するために再処理事業主体を認可法人として設立し、原発電力会社から同法人に再処理費用を使用済み燃料発生時点に払い込ませる法案が4月21日衆議院を通過しました。その前日衆議院経済産業委員会で野党質疑をした後、そのまま採決、翌日、本会議で採決という乱暴な経緯でした。

観念動力?──使用済みMOX燃料を再処理するといえば問題が消える?

経産省は20日の質疑で、「私どもは、使用済みMOX燃料をもう一度再処理したいと思っています」述べてこの問題が存在しないことにしようとしているようです。「使用済みMOX燃料をそのまま廃棄物として扱うわけではなくて、使用済みMOX燃料も再処理をし、そこからまた有用資源を取り出して発電に使っていく、こういう考えをとっているわけでございます」という説明です。ところが、「使用済みMOX燃料をどう再処理するかという点につきましては、これは六ヶ所再処理工場では対象としないということは申し上げられます。それから、その主体、方法についてはこれからの検討事項であるというふうにお答え申し上げたいと思います」とのことです。

要するに、使用済みMOX燃料は、六ヶ所再処理工場では再処理できないということです。選択肢は、

  1. 長期保管後、処分場に送る
  2. 第2再処理工場で再処理して、取り出したプルトニウムは高速炉で燃やす、

のどちらかです。このプルトニウムを軽水炉で燃やすのは、後で見るように非常に難しいからです。

総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会報告書「原子力立国計画」(2006年8月8日)によると、六ヶ所再処理工場に続く再処理工場では、軽水炉の使用済みウラン燃料に加えて、使用済みMOX燃料や高速炉使用済み燃料も再処理することになっています。この再処理工場についての議論は、2010年頃開始する予定でした。

参考:

将来の奇跡を期待して──(観念動力で)月にでも持って行けば?

しかし、この議論は始まってもいません。また、高速増殖炉の商業的導入開始は、2005年の原子力政策大綱でも、2050年頃以降ということでした。楽観的な推進派でもこの予定どおり計画が実現すると思っている人はまずいないでしょう。本格的な何十基もの高速(増殖)炉の展開となると、これを追求することにしたとしても少なくとも来世紀にまたがる話でしょう。つまり、将来成功するかどうか、また、技術的に成功するとして費用がどのくらいになるか、まったく分からない計画が成功することを前提にしないと現在の再処理計画の説明ができないということです。「使用済みMOX燃料はいずれ月に持って行こうと思っています」というのと大差ない希望的観測に従って現在の計画の妥当性を論じるものです。思ったところで、問題はなくなりません。これほど遠い将来の予算規模も分からない計画の成功を前提にした再処理推進法案を一日の議論で通してしまったということです。

20日の衆議院経済産業委員会での質疑から

◆逢坂委員

まず話を整理させていただきますと、使用済みMOX燃料は使用済みウラン燃料よりも毒性が高いということでよろしいですね。崩壊熱についてはいかがですか。一般的に使用済みMOX燃料の方が、崩壊熱容量というふうに言ってよいかどうかわかりませんけれども、それは高いというふうに指摘をされているわけですが、これは使用済みウラン燃料と比べていかがでしょうか。

◆多田政府参考人

お答え申し上げます。崩壊熱についてでございますが、委員御指摘のとおり、使用済みウラン燃料に比べますと、使用済みMOX燃料の方が長期的に見て崩壊熱は下がりにくい、こういう傾向にございます。ただ、燃料取り出し直後の両者を崩壊熱レベルで比較いたしますと大きな差異はない、また、両者とも崩壊熱は数年程度で十分に低くなるということでございますので、使用済みMOX燃料が、使用済みウラン燃料に比べまして、崩壊熱という点で特別な扱いが必要になるということはないのではないか、このように認識をいたしております。

……使用済み燃料を再処理して、それを取り出して、もう一度上の方で発電に使う、そこで使用済みのMOX燃料が出てまいります。私どもは、使用済みMOX燃料をもう一度再処理したいと思っております。……使用済みMOX燃料をどう再処理するかという点につきましては、これは六ケ所の再処理工場では対象としていないということは申し上げられます。それから、その主体、方法についてはこれからの検討事項であるというふうにお答え申し上げたいと思います。……使用済みMOX燃料の再処理工場の稼働時期について、今現時点で定かに申し上げられることはありません。私どもといたしましては、稼働が行われるまでの間、しっかりと安全に使用済みMOX燃料についても保管していくということをやりながら、その稼働の準備を進めるということではないかと思っております。

「核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)」『原子力計画におけるプルトニウムの分離──世界の民生用再処理の現状、問題点と今後の展望』 (英文、pdf)第10章、11章「核変換、経済性」日本語版(pdf)から

  • MOX燃料の複数回利用は商業規模では試みられていない

    プルトニウムを軽水炉で複数回再利用するというのは商業規模では試みられていない。これは、プルトニウムを再利用すると、軽水炉で支配的な遅い中性子では核分裂しないプルトニウム同位体の割合が増えていくからである。また、遅速中性子炉では、核分裂を起こさないまま中性子捕獲が続く確率が相当程度あり、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムを複数回利用すると、キュリウム244の含有率が高くなる。キュリウム244は自発核分裂を高頻度で起こす。燃料工場では、その際に生じる貫通力の強い中性子が大きな危険要因となり、長期の間隔を開けながら、厳重な遮蔽の下での遠隔操作による作業を行うことが必要となる。

  • 体積比較と再処理廃棄物

    処分場の容積の低減という利点の欠如

    アレバ社──フランスのラアーグ再処理工場を運転し、中国と米国に同じような再処理工場を売ろうとしている政府所有の会社──は、再処理は「廃棄物の体積を5分の1に削減」すると主張している。日本の経済産業省も似たような主張をしている。比較されているのは、使用済み低濃縮ウラン燃料1トンの体積と、その使用済み燃料の再処理で生じる高レベル廃棄物の体積とである。

    しかし、この比較から抜けているのは、再処理とプルトニウムのリサイクルで生じる長寿命の中レベル及び低レベルの廃棄物で、これも深地下処分場に埋設しなければならない。フランスのケースに関して行われた詳細な計算は、不確実性を伴うものの、再処理とMOX燃料製造過程で生じる放射性廃棄物で深地下処分を必要とするものすべてを含めると、再処理廃棄物と使用済みMOX燃料のために掘削される地層処分場の容積は、元の使用済み低濃縮ウラン燃料のためのものと同じとなることを示している。

  • 鍵は発熱量

    さらに、廃棄物の体積の比較は、放射性廃棄物地層処分場の面積が廃棄物の体積ではなくその発熱量によって決まることを無視している。たとえば、スウェーデンとフランスの処分場の設計では、水の流れに対するバリアーを追加するために、高レベル廃棄物の入ったキャニスター(容器)はベントナイト粘土で囲まれている。この粘土は、水の流れの減速及びイオン吸収の性質をフルに発揮するには100°C未満に保たなければならない。このため、それぞれのキャニスターに入れられる発熱性の廃棄物の量が制限されると同時に、互いの温度を大きく上げることがないようにキャニスター同士の間に一定の間隔を置かなければならない。1トンの使用済みMOX燃料と、この燃料を作るのに必要なプルトニウムを得るために再処理しなければならない約7トンの使用済み低濃縮ウラン燃料から生じる高レベル廃棄物とを合わせた発熱量は、再処理をしていない使用済み低濃縮ウラン燃料8トンの放射性崩壊熱と比べると、炉からの取り出し後10年〜200年の期間では、約1.2倍になる(原注)。従って、再処理して分離したプルトニウムをMOX燃料として1回リサイクルするというのは地層処分場の面積の縮小には余り役立たない。

    原注:燃焼度53MWt-days/kgHMの低濃縮ウラン燃料及びMOX燃料に関するJungmin Kangによる計算。

使用済みMOX燃料の地層処分を想定──MOX「経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)」の報告書「核燃料サイクルのバックエンドの経済性」(pdf)

使用済みの再処理回収ウラン燃料及びMOX燃料の貯蔵期間は50年間(最終処分まで)と想定され、中間貯蔵コストは、使用済み再処理回収ウラン燃料及びMOX燃料ともに、使用済みウラン燃料と同じと想定される。使用済みMOX燃料は、中間貯蔵施設で冷やし、容器に入れて処分する。使用済みMOX燃料の処分に必要な容積は、使用済みウラン燃料の処分に必要な容量の2.5倍になると想定される。

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原子力規制委員会田中俊一委員長:「高速炉を動かさない限りは、処理したMOX燃料は使えない」
──炉心全部にMOX燃料を使う計画のJ-POWER(電源開発)大間原発について

原子力規制委員会記者会見録(pdf) 2014年11月19日

○記者 最後にしますが、まさに今、伺おうと思ったことを全て先走ってお話しいただいているのですけれども、設置許可申請の場合には使用済燃料の処分の方法をきちんと明示する必要があると思うのですが、仮にフルMOX、プルサーマルをする場合は、現状では使用済のMOXを再処理できる施設は日本にないわけで、こういった場合、審査ではどういった観点でチェックされるのでしょうか。

○田中委員長 どうしましょうか。おっしゃるとおり、MOXの使用済燃料を再処理するためには新しい再処理工場を造らなくてはいけないことですから、しゃくし定規に言えば、新しい再処理工場を造るということ。今の政策で言えば、そういうことになるのだと思います。

○記者 それは現実的とお考えでしょうか。

○田中委員長 それは私が答える立場にはありません。

……

○記者 それと、先程MOXの関係で、MOXの使用済に関して別途処理する工場を云々という発言をされていましたけれども、MOX燃料というのは、再処理というか、ある程度処理したとしても、更にMOXで使うというのは、ほとんど効率が悪過ぎて使えないと私は聞いていたのですが、特に軽水炉では効率がかなり悪いと伺っていたのですが。

○田中委員長 そのとおりです。ですから、高速炉を動かさない限りは、処理したMOX燃料は使えないという理解の方がいいと思います。


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